FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「糖尿病と膵臓がん」の関係性はご存知ですか?膵臓がんの予防法も解説!【医師監修】

「糖尿病と膵臓がん」の関係性はご存知ですか?膵臓がんの予防法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/08/04
「糖尿病と膵臓がん」の関係性はご存知ですか?膵臓がんの予防法も解説!【医師監修】

早期発見・早期治療が重要となるがん治療において、初期症状が乏しい膵臓がんは発見が遅れやすいがんです。

腹痛などの症状を自覚する頃には、かなり進行している場合もあります。

また、膵臓には血糖値を下げるインスリンを分泌する機能があり、膵臓がんによってインスリンの分泌量が減少し糖尿病になる可能性もあるでしょう。

今回は、そのような膵臓がんのリスク因子と早期発見のポイントに触れながら、糖尿病との関係について解説していきます。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

プロフィールをもっと見る
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

膵臓がんとは

膵臓がんは、膵臓から分泌される消化液が通る膵管に発生するケースが大半です。膵管は膵臓中に張り巡らされているため、膵臓がんは膵臓のどの部分にも発症するでしょう。膵臓は頭部・体部・尾部に分けられ、がんが発症する部分によって初期症状が異なります。
例えば、がんが膵臓の頭部で発症した場合、頭部のそばにある胆管ががんによって圧迫されやすいです。これにより、胆管を流れる胆汁の流れが悪くなり黄疸が出現しますが、身体の色が黄色になる黄疸は異変を察知しやすい症状のため、それが早期発見につながります。
逆にがんが膵臓の体部や尾部で発症した場合、黄疸の症状が出現しにくいので発見が遅れがちになります。

糖尿病と膵臓がんの関係

膵臓にはインスリン分泌能が備わっているため、がんによって糖尿病が急に発症するケースもあります。
また、糖尿病を患っている方ががんの発症によって急に血糖コントロールを乱すこともあり、膵臓がんと糖尿病には密接な関係があるのです。

糖尿病から膵臓がんを発症するケース

糖尿病は膵臓がんの危険因子とされ、糖尿病を発症していない健康な方よりも2倍程膵臓がんのリスクが高いと報告されています。
特にインスリンの抵抗性が高まる2型糖尿病では、インスリンの分泌量が多くなることでインスリンを産生する細胞の増殖が進み、結果的にがん細胞が発生するリスクが高くなるでしょう。

膵臓がんから糖尿病を発症するケース

膵臓にはインスリン分泌機能が備わっているため、膵臓にがんが発症した場合はインスリンの分泌能が落ちてしまい糖尿病を発症してしまうことがあります。
この経過によって発症する糖尿病は1型糖尿病に分類され、低下したインスリンの分泌を補うためにインスリンを注射する治療が必要です。

糖尿病以外の膵臓がんのリスク因子

糖尿病以外の膵臓がんのリスク因子は以下の5つです。

  • 遺伝
  • 飲酒・喫煙
  • 肥満
  • 慢性膵炎
  • 加齢

膵臓がんのリスク因子は、遺伝性の先天的なものから肥満など生活習慣に関わるものまで幅広くあります。
それぞれの因子がどのように膵臓がんの発症に関わっているのか、順番に解説していきます。

家族歴

日本人における家族性膵臓がんの関連遺伝子としてATM・BRCA1・BRCA2・PALB2などが関連していることが報告されています。
親子または兄弟姉妹に2人以上膵臓がんを発症している方がいる場合、遺伝が関連しているかもしれません。

飲酒・喫煙

喫煙自体が膵臓がんの発症リスクを上げるという見解は、多くの報告でほぼ一致しています。1日の喫煙本数にもよりますが、特に40本/日以上吸う男性の場合、死亡リスクを3.3倍にまで高めるでしょう。
次にアルコールですが、膵臓がんのリスク因子としては報告によって異なります。しかし、エタノールとして37.5g以上については、膵臓がんのリスク因子として報告されています。

BMI値・肥満

20歳代でBMIが30以上の男性では、膵臓がんの発症率が3.5倍増加したと報告されています。
しかし、BMI値と膵臓がんの間に相関関係はないといった報告もあり、明確な相関関係は明らかになっていません。

慢性膵炎などの膵臓疾患

慢性膵炎に罹患している方の膵臓がんリスクは13.3倍ともいわれており、膵臓がんの大きなリスク因子です。
また、慢性膵炎は遺伝性のものもあり、この場合の膵臓がんリスクはさらに高まることが報告されています。

加齢

膵臓がんの発症頻度は加齢とともに上昇し、50歳以上になると急増します。しかし、発症頻度としては決して高い方ではありません。

早期発見のポイントと予防法

膵臓がんの予防法としては、まず生活習慣の見直しから始めることがおすすめです。費用をかけずすぐにできるだけでなく、喫煙や多量飲酒を控えることでほかの病気のリスクも下げることができます。
また、膵臓がんを早期発見するためには定期的に腹部超音波検査・MRI検査を行い、短いスパンで膵臓全体を評価することが必要です。

人間ドックを利用する

人間ドックのなかで膵臓がんを早期発見することに特化したのが膵癌ドックです。腹部超音波検査やMRI検査だけでなく、血液検査や超音波内視鏡検査なども行うことができます。
特に、超音波内視鏡検査は膵臓がんを高感度で検出することができ、膵臓がんの診断に関しては有用です。

血糖自己測定器や薬局で血糖値を測る

膵臓がんにより1型糖尿病を発症した場合、インスリンだけでなく血糖自己測定器も導入されます。これは、低血糖を防ぐために定期的に血糖値を把握する必要があるからです。
血糖測定器は薬局に置いているところもあるので、糖尿病や膵臓がんの診断を下されていない方も、一度自分の血糖値がどのくらいなのか測定してみましょう。

食事・運動に気を配る

これまでお伝えしてきたとおり糖尿病や肥満は膵臓がんのリスクを高めます。このような糖尿病や肥満は、暴飲暴食・運動不足など不摂生な生活習慣が原因の1つです。
こうした生活習慣の改善はすぐに実行でき、いろいろな疾患の発症リスクを抑えることができるのでぜひ取り入れてみてください。

飲酒・喫煙を控える

飲酒や喫煙はそれぞれ膵臓がんを発症する独立した危険因子とされ、体に取り入れる量によってリスクが変動することが報告されています。飲酒や喫煙を一切断つことはなかなか難しいので、少しずつ量を減らしていくことから始めてみましょう。

糖尿病と膵臓がんの関係についてよくある質問

ここまで、糖尿病と膵臓がんの間には密接な関係があることを解説してきました。ここからは、糖尿病と膵臓がんの関係性のなかからよくある質問について紹介していきます。

糖尿病・膵臓がん治療を並行して行う場合の注意点を教えてください。

久高 将太医師久高 将太医師

すい臓がんの治療ではがんの進行具合などにもよりますが、選択肢として手術・抗がん剤などの薬物治療・放射線治療があります。これらの治療の安全性を高めるためには、血糖コントロールを乱さないことが重要です。なぜなら、糖尿病によって血糖コントロールが乱れていると放射線による皮膚トラブルによる感染症など、治療による合併症が増加します。治療に伴うトラブルを減らすために、まずは血糖コントロールを良好に保つことが大切です。

膵臓がんの症状にはどのようなものがありますか?

久高 将太医師久高 将太医師

腹痛や食欲不振、黄疸などがあります。黄疸など普段の生活でめったに出現しない症状が出現した場合はすぐに受診しますが、腹痛や食欲不振程度では受診しない方も少なくありません。この日常でよくある症状であるが故に受診の遅れにつながります。定期的にMRI検査などを行える人間ドックを活用してみるのもよいかもしれません。

編集部まとめ

膵臓がんは初期症状があまりないため、発見が遅れてしまいやすいがん種の1つです。人間ドックなどの定期健診による早期発見が予防につながります。

膵臓がんになるリスクとして、糖尿病・肥満・喫煙・飲酒など生活習慣が関りとして深いです。

生活習慣の改善を図るために、暴飲暴食を辞め運動習慣を取り入れることから始めてみましょう。

膵臓がんと関連する病気

乳がんと関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

これらの疾患は膵臓がんになるリスクを上げるため、膵臓がんと関係が深い疾患といえるでしょう。慢性膵炎は遺伝性のものもあるので、予防という観点では難しいかもしれません。しかし、定期的な検診を行い早期発見をすることが早期治療のために有効と考えられます。

膵臓がんと関連する症状

「膵臓がん」と関連する症状は4個程あります。
各症状で疑われる病気・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 食欲不振
  • 背中の痛み
  • 黄疸

食欲不振や腹痛は日常で生じやすい症状なので、見過ごされることも多いでしょう。しかし、これらの症状以外に、持病の糖尿病の急激な悪化や黄疸などの症状が出現した場合は、ぜひ早めに医療機関で受診してください。

この記事の監修医師