「急な便秘は大腸がん」を疑うべき?便秘以外の症状も解説!医師が監修!
近年大腸がんにかかる方が増えてきています。大腸がんは集団検診などで早期に発見しやすいがんで、早期のうちに対処すれば根治もできる予後のよいがんです。
大腸がんの症状の一つに便秘があり、急な便秘は大腸がんに気付くきっかけともいわれます。早期発見につながるかどうか、便秘と大腸がんの関係性を詳しくみていきましょう。
そして、便秘以外の大腸がんの症状や、がんと判定し治療するためのさまざまな検査方法を紹介します。大腸がんが気になる方は、参考にしていただければ幸いです。
監修医師:
松井 信平(医師)
目次 -INDEX-
大腸がんとは
大腸がんは結腸・直腸に発生するがんで、粘膜から直接発生するタイプと、粘膜が盛り上がった良性のポリープががん化するタイプがあります。
大腸がんが発生する部位で多いのは、肛門に近いS字結腸と直腸です。大腸の腸壁は、内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の5層で構成されています。
粘膜に発生したがんは腸壁を外側へ向かって浸潤(しんじゅん=浸みるように広がる)します。
漿膜の外に出て、腹膜上に散らばった状態が腹膜播種です。また、大腸壁内のリンパに乗ってリンパ節に転移したり、血流に乗って離れた臓器に転移したりします。
急に便秘になったら大腸がんかも?
ほかのがんと同じく、大腸がんの初期のうちは症状がほとんどありません。ある程度進行すると何らかの症状が出始め、大腸がんの場合は急に便秘がおこるといわれます。
大腸がんと便秘の関連性を解説しましょう。
大腸がんで便秘になる理由
大腸がんで便秘がおこる原因として考えられるのは、がんが進行して病巣が大きくなり、便の通過を妨げていることです。通りが悪くなって便の動きが停滞し、水分の吸収が進んで硬くなって便秘がおこります。
便秘とは逆に、通りが悪くなった結果腸の動きが活発化して、下痢になる場合もあります。便秘はがん病巣の位置にも関係があり、小腸に近い右側にある場合は便がまだ液状です。
そのため通過障害がおこりにくく、便秘はあまりみられません。肛門に近い左側では便の固形化が進んでいます。そこに病巣があれば便が通りにくくなり、便秘もおこりやすくなります。
急な便秘を放置するのは危険
便秘症で日常的に便秘がみられる方は、急な便秘も深刻に受け止めないかもしれません。ところが急な便秘は大腸がんの影響が考えられ、しかもその症状は初期ではなく進行している可能性があります。
急な便秘を軽く考えて放置するのは大変危険です。ステージ4以外なら遠隔臓器への転移がなく、切除による根治も期待できます。
急な便秘を放置せず、早く受診してください。
便秘以外の大腸がんの症状
大腸がんが進行するにつれて、便秘以外にもさまざまな症状が現れるようになります。病巣がある場所が消化器なので、症状も消化器関連が多いのが特徴です。
主なものを解説していきます。
血便・下痢・便が細くなる
がん病巣の組織は血管がもろく、大腸粘膜にできた病巣は通過する便にこすれる程度でも容易に出血します。
この血液が便に混ざって排泄されたものが血便です。また、病巣が便の通路を狭めるために、便を通そうと腸が活発に動くと下痢の症状が出ます。さらに、細い通路を通る便は細くなります。
残便感・お腹に張りがある
大きくなったがんの病巣で便の通路が狭められると、スムーズに排便ができません。
大腸内に残った便のために、すっきりしない残便感が続くようになります。また、次第に残便が多くなり硬くなるにつれて、腹部の張りを感じるようになるでしょう。
貧血気味になる
がん組織内のもろい血管からの出血は、多量になることはめったにありません。慢性的にじわじわと続くのががん組織からの出血の特徴です。
少量でも継続すれば出血量が多くなり、やがて貧血になります。多量の下血はなく便に混じる程度なので、気付かないことも多い症状です。
腹痛・嘔吐を繰り返す
がんが進行して大きくなるにつれて便秘の症状が強くなり、やがては大腸が詰まってしまいます。
便やガスがまったく出なくなる腸閉塞です。それに伴って、強い腹痛や嘔吐などの症状が繰り返されます。
この状態では命の危険もあり、入院して場合によっては緊急手術が必要です。
大腸がんの検査
急な便秘などの症状で大腸がんが疑われる場合は、確定させるための各種検査が行われます。
がんの有無・可能性を確かめる検査から、位置や大きさを特定して治療につなげる検査です。それぞれ個別にみていきます。
病理検査
病理検査はがんの疑いがある組織内にがん細胞が存在するか、どのような種類のがんなのかを調べる検査です。
疑わしい組織を内視鏡で採取し、良性か悪性かの区分・異形の程度などを細胞レベルで調べ、確定します。この結果によって治療の方針が決定される、重要な検査です。
CT検査
CT検査ではX線を使って全身の断面画像を撮り、転移がんの存在を確認します。
大腸にがんの存在が認められた後、治療を始める前にほかの臓器への転移・リンパ節への転移がないか、手足を除く体幹をくまなく調べる検査です。この検査でもし転移巣が見つかれば、多くの場合手術ができなくなります。
大腸内視鏡検査
この検査は大腸粘膜の病変をカメラの画像で直接観察します。病変が見つかれば組織の一部またはすべてを採取し、病理検査で確定させる手順です。
使用する機種によっては、拡大画像や色・輪郭の強調画像によってより精密で正確な画像で観察できます。内視鏡を扱える医師がいればできる検査なので、小規模なクリニックでも検査が可能です。
検査の前に、大腸内の便を下剤で出してしまう処置が行われます。
便潜血反応検査
便に含まれる血液を検出して、大腸内の出血の有無を調べます。目視できない量の血液でも検出でき、大腸がんの早期発見に有効な検査です。
ただ、口腔から肛門までの間でおこった出血をすべて検知するので、陽性の場合は部位を特定するための精密検査が行われます。費用が安く手間もかからないので、自治体による集団検診で実施されることが多い検査です。
注腸検査
肛門から大腸内に造影剤と空気を注入して、粘膜に造影剤を付着させてX線撮影します。
この検査で大腸内にあるがんの位置・大きさ・形状・腸の狭窄の程度を知ることが可能です。内視鏡検査と同じく、大腸内の便を下剤で排出する事前処置が行われます。
大腸がんによる急な便秘についてよくある質問
ここまで大腸がんによる急な便秘・症状・検査などを紹介しました。ここでは「大腸がんによる急な便秘」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんの予防法を教えてください。
松井 信平 医師
- 禁煙
- 節酒
- 食生活の見直し(減塩・バランスなど)
- 適度な運動
- 適切な体重維持
- 感染症予防
こうしたポイントを押さえることが、がん予防につながります。
大腸がん以外で急な便秘になる原因は何ですか?
松井 信平 医師
- 食事の問題:食物繊維不足(水溶性・不溶性繊維をバランスよく摂る)
- ストレス:過度なストレス・緊張で腸の動きが低下
- 水分不足:水分不足で便が硬くなる
- 生活習慣の変化:旅行・就職・異動・運動不足など
- 大腸がん以外の病気:甲状腺機能低下・パーキンソン病・うつ病など
食事やストレスなどの生活習慣でも便秘になることがあるので、心当たりがある方は生活習慣を見直してみましょう。
編集部まとめ
ここまで、大腸がんと急な便秘の関係を解説してきました。急な便秘は大腸がんの症状ですが、やや進行した段階の症状であって早期発見にはつながりません。
大腸がんでおこる便秘以外の症状もみてきましたが、どの症状も進行しておこるものばかりです。症状による早期発見は難しく、検査を受けることが大切になります。
検査では大腸がんのごく初期から発見が可能で、兆候が見つかれば確認して治療につなげるまでさまざまな検査がありました。大腸がんが気になる方は、早めに検査を受けることをおすすめします。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
こうした病気になると、大腸がんの発症リスクが高くなることがわかっています。現在治療中の方は、大腸がんの内視鏡検査を定期的に受けてください。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連する症状は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血便は痔の方には見慣れた症状で、便秘や下痢などほかの症状もちょっとした体調不良でおこる珍しくない症状です。現れても特に警戒せず見過ごしがちですが、大腸がんの可能性があるので長引くようなら受診してください。