「肺がん発覚のきっかけとなる自覚症状」はご存知ですか?【医師監修】
肺がんにかかっている患者さんの数は多く、がんのなかでは3位の罹患数となっています。
肺がんは自覚症状のないまま進行するがんだといいますが、治療中の患者さんはどのようなきっかけで肺がんが発覚したのでしょうか。
今回の記事では肺がんが発覚するきっかけを中心に、肺がんの症状・検査方法・早期発見と予防のポイントを解説します。
自分の症状に不安を感じている患者さん、肺がんの発症リスクの高い患者さんに役立つ内容です。
監修医師:
山下 正勝(医師)
保有免許・資格
歯科医師
日本外科学会 外科専門医
緩和ケア研修修了
JATEC(外傷初期診療ガイドライン)コース修了
NST医師・歯科医師教育セミナー修了
嚥下機能評価研修修了
目次 -INDEX-
肺がんとは
肺がんとは肺の組織ががん化した状態です。がん化する肺の組織には、空気の通り道である気管支や、空気を取り入れる小さな袋状の組織である肺胞があります。
肺がんの種類は、腺がん・扁平(へんぺい)上皮がん・大細胞がん・小細胞がんの4種類に分けられます。それぞれ性質・進行の速さなどが異なり、特に小細胞肺がんは治療方法も大きく異なることを知っておきましょう。
また肺がんはがんのなかでも罹患数・死亡数が多い病気です。肺がんが進行する前に早期発見して、治療を開始するのが理想です。
肺がん発覚のきっかけと症状
肺がん発覚のきっかけや、肺がんに現れる症状を知って早期発見のヒントにしましょう。特に以下に該当する人は、肺がんのリスクが高まっているため注意が必要です。
- 喫煙習慣がある
- 慢性閉塞性肺疾患である
- 職業的曝露(ばくろ)を受けたことがある
- 過去に肺がんなった
- 家族に肺がんになった人がいる
職業的曝露とは特定の職業の患者さんが、がんの原因となる化学物質に日常的に接触することです。肺がんになる職業的曝露をもたらす化学物質には、アスベスト・ラドン・ヒ素・クロロメチルエーテルなどがあります。
健康診断・がん検診
定期的な健康診断には以下のようなメリットがあります。
- がんを含む生活習慣病の早期発見
- 生活習慣改善のきっかけ
- 健康への関心の高まり
特に肺がんは患者さん自身で発見するのは難しい疾患です。40歳を迎えたら、1年に一度の定期検診をおすすめします。
肺がんのがん検診の内容は、問診と胸部X線検査です。喫煙習慣が長い・喫煙本数が多い患者さんには痰の検査、喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)も追加されます。
ほかの疾患の検査・経過観察
肺がんは初期では自覚症状が出ません。そのためほかの疾患の検査で、偶然見つかることもあります。また肺がん治療後の経過観察で再発が見つかるケースもあります。
肺がんのなかでも非小細胞がんのステージI、またはIIで最初の手術を受けた患者さんの手術後5年間の再発率は36%です。
長引く咳・発熱などの自覚症状
肺がんは初期症状がないケースが多く、進行してから以下のような症状が現れます。
- 咳
- 痰
- 血痰(痰に血が混じる)
- 胸の痛み
- 動いたときの息苦しさ
- 動悸
- 発熱など
いずれも呼吸器系の病気と共通する症状です。さらに肺がんは無症状で進行するケースもあり、症状のみで肺がんを見極めることは困難です。
原因不明の咳・痰が2週間以上続き、発熱が5日以上続く場合は医師に相談してください。
肺がんの診断方法
肺がんを診断するためには、複数の検査を受ける必要があります。検査でチェックするのは以下のポイントです。
- 肺の様子に異常はないか
- 肺の異変の原因ががんか
- 肺がんの種類はなにか
- 肺がんは身体のどこに拡がっているか
検査は段階的に進められます。肺がんは症状が出ないため、病気の実感がわかない患者さんが検査の必要性に疑問を持ったり、がん確定の不安感から検査が億劫になるケースもあります。がんの早期発見のために、検査は早めに受けましょう。
胸部X線検査・CT検査
肺がんが疑われる影がないか画像検査を行います。胸部X線検査とはいわゆるレントゲン検査です。
胸部X線検査で疑わしい様子が見つかると、CT検査が追加されます。身体を輪切りにしたような画像データを作成し、病変の大きさ・場所・転移の有無を調べます。
喀痰細胞診
喫煙習慣があり肺がんリスクが高い患者さんに実施される、痰のなかにがん細胞がないか調べる検査です。
現在は禁煙している患者さんや加熱式たばこを使っている患者さんも対象です。3日間起床時に痰を取ってもらい、検査します。
気管支鏡検査・生検
気管支鏡検査は、電子カメラで気管支内を観察する検査です。気管支鏡とは先端に電子カメラが付いた細い管で、患者さんの鼻・口から気管支内に挿入します。
主な目的は画像検査で調べた病変の観察と、生検のための組織の採取です。生検とは病変の組織を顕微鏡で調べる検査で、生検組織診断とも呼ばれます。
経皮的針生検
気管支鏡では病変に届かないときには、体表から針を刺して病変がある部分の組織を採取します。
ただし合併症リスクがあるため、患者さんの健康状態によっては実施できません。
胸腔鏡検査
胸を小さく切開して内視鏡を挿入し、病変がある部分の組織を採取します。肺だけでなく、転移が疑われる胸膜・リンパ節の組織の採取もできる点が優れています。
肺がんの早期発見のポイントと予防
肺がんは自覚症状がないという特徴から、健康診断・検査しなければ発見が難しい病気です。肺がんの早期発見と予防のために、なにができるでしょうか。
自治体の肺がん検診
各自治体は、少ない自己負担額で受けられるがん検診を実施しています。これは厚生労働省が定める、がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針によって推し進められている事業です。
肺がん検診も含まれ、40歳以上であれば年に1回の頻度で問診・胸部X線検査と、必要あれば喀痰細胞診の検査が受けられます。詳細は各自治体に確認しましょう。
遺伝子検査
体質的にがんにかかりやすいかを調べる検査を、遺伝子検査と呼びます。遺伝子検査を受け患者さん自身のがん発症リスクを知っておくことは、がんのリスク管理に有効でしょう。
ただし市販の遺伝子検査の信憑性には疑問があります。がんに関連する遺伝子検査は、知識を持った医師の指導のもと医療機関で調べることをおすすめします。
喫煙習慣の見直し
喫煙習慣は肺がんリスクを増大させます。肺がん予防のために、喫煙習慣を見直してください。喫煙者はタバコを吸わない人と比べ、男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんにかかりやすいというデータがあります。
肺がん発覚のきっかけについてよくある質問
ここまで肺がん発覚のきっかけ・検査の内容・早期発見のポイント・予防法などを紹介しました。ここでは「肺がん発覚のきっかけ」に関するよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんの初期段階での生存率はどのくらいですか?
山下 正勝 医師
2024年時点の肺がん初期段階(I期)と診断された患者さんの、3年後の生存率は83.2%、5年後の生存率は74.0%です。なお生存率とは、診断から一定期間後に患者さんが生存している確率を指します。
肺がんのリスク因子を教えてください。
山下 正勝 医師
- 喫煙・受動喫煙している
- 汚染物質と接触する環境にいる
- 遺伝子的に肺がんになりやすい
該当する患者さんは定期検査を受ける、リスク因子を遠ざけるなどの方法でリスク管理をしましょう。
編集部まとめ
肺がんは自覚症状なく進行する病気です。肺がんを発見するためには、医療機関で検査を受けなければなりません。
検査には肺がんを発見する胸部X線検査・CT検査や喀痰細胞診、病変を肺がんと確定するための気管支鏡検査と生検などがあります。
早期発見するためには、年に一度の肺がん検診が有効です。また遺伝子検査で肺がんになりやすい体質か調べたり、喫煙習慣を見直したりすると予防につながります。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 小細胞肺がん
- 非小細胞がん
- 扁平上皮がん
肺がんには上記のように種類があり、進行速度・転移のしやすさ・治療方法が異なります。肺がんが疑われる場合は、早急に種類を特定して治療を開始する必要があります。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「この症状が出れば肺がん」と断定できるような特徴的な症状はありません。上記の症状が不自然な期間続くようであれば、医療機関で受診をおすすめします。