「膵臓がん」を発症すると「背中にどんな痛みの特徴」が現れるの?医師が監修!
膵臓がんは目立った症状がないまま進行しやすく、早期発見が難しい難治性のがんとして知られています。
背中の痛みは、膵臓がんでみられる代表的な症状の一つです。膵臓がんは、早い段階で適切な治療をすればよくなる可能性もあります。
本記事では、膵臓がんの背中の痛みの特徴・対処法・治療法や、ほかにみられる症状を解説します。早い段階で病気を見つけるためにも、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
膵臓がんとは
膵臓から生じた悪性腫瘍で、80~90%は膵管上皮から発生する膵管がんです。原因は、家族歴・糖尿病・慢性膵炎・大量の飲酒・喫煙・肥満などといわれています。腫瘍が小さいうちから周囲に転移しやすいのが特徴で、難治性がんの一つとされています。
日本国内では肺がん・大腸がん・胃がんに続き、4番目に亡くなる患者さんが多いがんです。がんがある程度大きくなるまで目立った症状がなく、自覚症状が出た頃にはすでに進行しているケースが少なくありません。膵臓はお腹の深い部分に位置し、周囲にほかの臓器や血管があって腫瘍を見つけにくいのも、早期発見が難しい要因の一つでしょう。
2009年~2011年のがん種別統計情報(国立研究開発法人 国立がん研究センター)によれば、膵臓がんの5年生存率は8.5%です。ただし、がんの大きさが小さいうちに見つかれば生存率は上がるため、なるべく早い段階で見つけて診断・治療することが大切です。
膵臓がんにみられる背中の痛みの特徴
何らかの症状がきっかけで受診し、膵臓がんが見つかるケースは少なくありません。背中の痛みは、膵臓がんにみられる代表的な症状の一つです。
膵臓がんになったときの背中の痛みの特徴を解説するので、背中の症状が気になる方はぜひ参考にしてください。
主に腰上部から背骨中央部にかけて現れる
膵臓は背骨に近いところにあり、膵臓がんになると腰上部から背骨中央部分にかけて痛みが現れる場合があります。がんが進行して周囲にある組織や神経を圧迫すると、腰や背中に痛みを感じるでしょう。転移した部分に痛みが生じることもあります。痛みは一時的ではなく、持続するケースが多いようです。
痛みの程度や持続時間は、悪性腫瘍の位置や大きさなどによって変わります。痛みがあっても腰や背中の骨の画像診断では異常がみられないことから、がんの発見が遅れることも少なくありません。
鈍痛・焼けるような痛みを感じる
膵臓がんでみられる背中の痛みでは、鈍痛や焼けるような痛みがあるといわれています。鈍痛は、ズーンとした重い痛みが持続するのが特徴です。焼けるような痛みは、ジンジン・ヒリヒリするような痛みを指します。
がんが進行して神経を圧迫すると、背中に持続する鈍痛やヒリヒリする痛みを感じることが多いようです。
夜間に痛みを感じやすい
膵臓がんによる背中の痛みは、夜間に感じやすいといわれています。活動量が低下する夜間は免疫力が低下し、痛みを感じやすい傾向にあります。また、膵臓は胃の背中に近い部分にあるため、横になると圧迫されて痛みを感じやすいでしょう。
横になって休んでいても痛みが続く場合があり、睡眠や日常生活に影響を及ぼすことも少なくありません。
食後・体を曲げる動作時に痛みが増強する
膵臓がんでみられる背中の痛みは、食事の後や体を曲げるときなどに強くなるのが特徴です。膵臓に病気があると、脂っこいもの・辛いもの・アルコールを摂取した後に痛みやすいといわれています。
また、身体を伸ばすと痛み、前かがみの姿勢になると痛みが軽くなる傾向にあるようです。
膵臓がんによって背中の痛みを感じた際の対処法・治療方法
膵臓がんによる背中の痛みを感じたら、早めに医療機関で受診しましょう。早い段階で膵臓がんを発見し適切に治療をすれば、進行や痛みを抑えられる可能性があります。
膵臓がんの治療方法は、外科的療法・抗腫瘍療法・支持療法です。複数を組み合わせる場合もあり、どの治療方法を行うかは進行具合や患者さんの状態などによって異なります。
外科的療法
根本的に治療するには、外科手術でがんを切除する方法が効果的です。周囲の臓器にも広がっている場合は、胃の一部や十二指腸・胆のうなども切除します。がんの大きさが2cm以下かつ転移がなければ、外科手術で治る可能性があります。
ただし、手術ができる状態の患者さんは2~3割程度です。手術でがんを取りきれるか判断が難しい場合には、まず抗がん剤治療や放射線治療を行ってから手術を検討するケースもあります。
抗腫瘍療法
手術での切除が難しい場合は、抗がん剤や放射線を用いた抗腫瘍療法を行います。抗腫瘍療法でがんを小さくした後、手術をするケースもあります。抗がん剤治療は、がん細胞の増殖を抑えて病気の進行や転移を防止する治療法です。
放射線治療は膵臓から離れた臓器に遠隔転移していない場合に、がんに放射線を照射して進行を抑制する治療です。抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせて行うケースもあります。
支持療法
支持療法は、膵臓がんの症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症の予防・緩和を目的に行う治療です。鎮痛薬で痛みによる行動制限や食欲低下を予防・緩和したり、制吐剤で抗がん剤治療による吐き気を抑えたりするのが代表例です。
放射線治療で、骨転移の痛みを緩和する場合もあります。辛い症状が続くと大きなストレスとなり、免疫力低下につながります。免疫力を上げて治療の効果を向上するには、支持療法も重要な治療法です。
背中の痛み以外に膵臓がんが疑われるその他の症状
膵臓がんでは、背中の痛み以外に以下のような症状が現れるのが特徴です。
- お腹の痛み・ハリ
- 血糖値の急上昇
- 黄疸
背中の痛みに加えて上記の症状が見られたら、膵臓がんの可能性も考えられます。以下では、背中の痛み以外で膵臓がんが疑われる症状を解説します。
お腹の痛み・ハリ
膵臓がんでは、お腹の鈍痛やハリを感じることがあります。膵臓は胃の裏側に位置しているため、みぞおちや胃のあたりに痛みを感じることがあるでしょう。
腫瘍によって膵管が詰まると、内部の圧力が上昇して炎症を起こし、腹痛を起こすこともあります。また、お腹のなかに水が溜まる悪性腹水を起こす場合があります。水が溜まると腹部の膨満感が生じ、お腹が張っているように感じるでしょう。
血糖値の急上昇
膵臓がんになると、血糖値が急上昇する場合があります。膵臓がんにかかった患者さんのなかには、糖尿病にもかかっている方が多くみられます。もともと糖尿病の治療をしていて急に血糖値が上がり受診したところ、膵臓がんが発覚するケースもあるでしょう。
膵臓では、血糖値を下げる役割を果たすインスリンという内分泌ホルモンを分泌しています。膵臓がんでインスリンの分泌機能が低下すると突然糖尿病を発症したり、糖尿病が悪化したりする可能性があるでしょう。
黄疸
黄疸は白目や全身の皮膚が黄色みを帯びる症状で、灰白色便やかゆみを生じることもあります。黄疸は、肝臓で作られる胆汁の流れが妨げられると現れる症状です。
胆汁は胆管を通って十二指腸に運ばれますが、膵臓がんにより胆管が圧迫されると黄疸になります。黄疸は膵臓がんが小さい段階でも胆管を圧迫すれば生じるので、診断のきっかけになる可能性があるでしょう。
膵臓がんの背中の痛みについてよくある質問
ここまで膵臓がんの背中の痛みの特徴・対処法・治療法などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの背中の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
背中が痛いと膵臓がんの確率が高いですか?
中路 幸之助(医師)
背中の痛みは、膵臓がん特有の症状ではありません。心筋梗塞や狭心症などの心臓病、尿管結石や腎盂腎炎などの腎臓病でも、背中の痛みが生じます。膵炎でも背中が痛くなるので、背中が痛いからといって膵臓がんの確率が高いとはいえないでしょう。ただし、膵臓がんの場合は早期発見が重要なので、背中の痛みが続く場合は早めに医療機関で受診しましょう。
膵臓がんが疑われる場合の検査方法を教えてください。
中路 幸之助(医師)
膵臓がんの検査では、まず血液検査・超音波検査をし、CT検査やMRI検査でがんの位置・大きさ・範囲などを調べます。がんの確定診断には、病理検査が必要です。組織の内部まで観察できる超音波内視鏡検査の際に、病理検査用の組織を採取する場合があります。このほか、造影剤を使用した検査や転移を調べるPET検査、腹腔鏡による検査を行うこともあります。
編集部まとめ
本記事では、膵臓がんで起こる背中の痛みの特徴や対処法・治療法などを解説しました。
膵臓がんは初期症状に乏しく、早期発見が難しいがんです。背中の痛みは、膵臓がんでみられる代表的な症状の一つです。
背中の痛みが続き、腹痛・血糖値上昇・黄疸などのほかの症状もみられる場合は、早めに医療機関で受診しましょう。
膵臓がんと関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
膵管内乳頭粘液性腫瘍も膵臓がんと同じく膵管にできる病気で、この腫瘍ががん化して膵臓がんを発症するケースがあります。急性膵炎や慢性膵炎でも背中の痛みが生じる場合があり、慢性膵炎は膵臓がんの危険因子となることがあります。
膵臓がんと関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹痛
- 腹部膨満感
- 黄疸
- 腰や背中の痛み
- 黄疸
- 全身の倦怠感
- 体重減少
上記に挙げた膵臓がんの症状は、ほかの病気でもみられる症状です。悪化するまで放置すると病気が進行する危険があるため、気になる症状が続く場合は早めに医療機関で受診しましょう。