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急性膵炎の症状・原因・治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

急性膵炎(読み方:きゅうせいすいえん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
半田理雄 医師(医療法人晃生会 半田クリニック 副院長)

 急性膵炎とは

膵臓には大きくわけて2つの機能があります。1つはインスリンやグルカゴンという体内の血糖値を調節するホルモンを作る内分泌という機能です。もう1つは膵液という消化酵素を作る外分泌という機能です。膵液は膵管という管を通って十二指腸に分泌され、はじめて消化酵素として活性化し、食べ物を消化します。通常はこれらの消化酵素が膵臓自身を消化しないように働いているのですが、何らかの原因でうまく機能しなくなったときに、膵臓が自らの消化酵素で膵臓自身を消化します。この現象が起こると、膵臓に浮腫、出血、壊死などの急性炎症が起こります(=急性膵炎)。

炎症は膵臓だけでなく、周囲の臓器や血流にのって全身に影響することもあります。重症の急性膵炎は、全身の症状が出現します。
日本での発症は年々増加傾向にあります。膵炎になる人は、女性は70歳代、男性は60歳代の方が多く、比較的男性に多い傾向があります。

半田理雄 医師 医療法人晃生会 半田クリニック 副院長監修ドクターのコメント
急性膵炎とは、アルコール等の影響で、刺激を受けた膵臓からの膵液(膵臓から膵管を通って出る消化液で、食べた肉や野菜等を溶かすほど強いもの)が過剰に出てしまい、血管が詰まって、それが自らの膵臓をやっつけてしまい炎症を起こすことです。アルコールを多く飲む方、脂っこいものを好む(中性脂肪の高い)女性、胆石性膵炎になったことがある方は、胆石もできやすくなるため、特になりやすくなります。

 急性膵炎の症状

上腹部痛や背部痛が多くみられます。吐き気や嘔吐、黄疸、発熱などを伴うこともあります。

急性膵炎の原因

急性膵炎の原因として多いのは、アルコールと胆石です。男性はアルコール性、女性は胆石性が多い傾向にあります。その他、薬剤性、外傷性、医原性、自己免疫性、高脂血症に伴うもの、原因不明(特発性)などがあります。
アルコールに関しては、飲酒量が多くなると膵炎の発症率が増すとわれます。胆石は、肝臓でつくられる胆汁の通り道である、胆道にできる結石です。膵臓の中にも膵液を運ぶ膵管という管があり、胆道と膵管は最終的に合流して腸に消化酵素を流しています。胆石が胆道の出口につまり、膵管の流れを阻害したときに、急性膵炎を発症します。
また慢性膵炎を患っている方の症状が急激に悪くなり、急性膵炎を起こす場合もあります。これを慢性膵炎の急性増悪といい、急性膵炎に準じて治療を行います。

急性膵炎の検査法

上腹部痛などの症状があり、血液検査や画像検査などから膵臓の炎症所見がある場合に、急性膵炎と診断します。

血液検査では、膵臓の消化酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどの酵素)がしばしば上昇します。また、体内の炎症反応の強さを示す値(白血球数やCRPなど)が高値になることがあります。胆石による膵炎の場合には、肝胆道系酵素(ASTやALT、γGTP、ALP、T-Bil)が高値となる場合もあります。

画像検査では、超音波検査やCT検査などで膵臓の腫大や炎症の波及所見が見られます。また重症例では膵臓の壊死や感染を伴うこともあります。

重症度の判定は診察所見や血液検査、画像検査などによって判定します。診断時だけではなく、治療経過中も、重症化のサインが見られないか、繰り返し評価しながら治療します。

急性膵炎の治療方法

治療の中心は、絶食と十分な点滴を行うことです。食事をすると膵臓の消化酵素がより活発になるため、絶食して膵臓を休めます。また急性膵炎は、おなかの中に浸出液(水が血管などから染み出した状態)がたまります。すると本来水分が必要な血管内で水分不足となります。そのため、十分な点滴が必要となります。その他の治療としては、抗生物質や膵臓の酵素を押さえる薬剤、胆石を除去する処置などを行います。
多くの場合、上記の治療によって数日から2週間程度で改善します。しかし、一部には治療にもかかわらず膵炎が進行して重症膵炎に移行することがあります。この場合、炎症が全身に波及し、腎臓、肺など他の臓器の機能低下(多臓器不全)が生じることがあります。人工呼吸器や血液透析を含めた集中治療室での治療が必要になることもあります。重症膵炎は死亡率10%という報告もあり、非常に危険な状態といえます。

半田理雄 医師 医療法人晃生会 半田クリニック 副院長監修ドクターのコメント
治療としては、食事をしてはならないため入院することとなります。点滴して安静にしておくことが一番です。治療期間は軽症で1週間程度、酷くなると腹膜炎になることもあり、数週間かかります。


この記事の監修ドクター

半田理雄 医師 医療法人晃生会 半田クリニック 副院長半田理雄 医師
医療法人晃生会 半田クリニック 副院長

PROFILE

「胃・大腸カメラ検査はつらい」と思われている方も多いかと思いますが、当クリニックではそうした方にも安心して検査を受けて頂くために、麻酔の使用、鼻からの胃カメラ検査、水浸法による大腸カメラの挿入、カプセル内視鏡の導入など、できる限り負担を軽減するように努めています。また、メディカルアロマテラピーの資格を持つ看護師がアロマを焚くなどして、リラックスできる検査空間作りにも努めています。早期発見・早期治療のためにも定期的に胃・大腸カメラ検査などを受けられて、ご自身の健康状態をチェックされることをおすすめします。

●担当診療科目
内科一般、胃腸科、肛門科、禁煙外来、在宅訪問診療

●所属学会・資格
日本外科学会
日本消化器外科学会
日本大腸肛門病学会
日本禁煙学会 認定指導医
八尾市立大正北小学校 学校医
保育園・放課後等デイサービス 嘱託医

●プロフィール
平成7年
大阪星光学院高校卒業
平成14年
香川大学医学部卒業
平成14年
大阪大学医学部附属病院 外科
平成15年
箕面市立病院 外科
平成20年
大阪大学医学部附属病院 消化器外科