「大腸がんを発症しやすい年齢層」はご存知ですか?症状・原因も医師が徹底解説!
大腸がんにかかりやすい年齢層とは?Medical DOC監修医が大腸がんを発症しやすい年齢層・年齢別の生存率・なりやすい人の特徴・症状・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
渡邉 一輝(横浜わたなべ内科・内視鏡クリニック 院長)
医学博士。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医の資格を有する。
目次 -INDEX-
「大腸がん」とは?
大腸は食べ物の最後の通り道です。大腸は大きく分けて結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分かれています。小腸に続いて右下腹部から始まり、時計回りにおなかの中をぐるっと大きく回り、肛門に繋がります。
大腸がんとは、大腸表面の粘膜にできる悪性腫瘍です。良性のポリープ(主に腺腫)ががん化して発生するものと、正常な粘膜の細胞から直接発生するものがあります。2019年における、日本の大腸がんの罹患数は男性が8万7827人、女性が6万7753人と男女共に臓器別で2番目に多く、近年増加傾向にあります。
大腸がんを発症しやすい年齢層
年齢別の罹患数では、下のグラフのように大腸がんは、40歳から年を重ねるにつれて増加し、70歳代がピークとなります。大腸がんは中高年で発症しやすいがんと言えます。
しかし、一部に生まれながらに持っている遺伝子の異常が原因で大腸がんを発生しやすい家系の方もいます。リンチ症候群や家族性大腸腺腫症といった遺伝性大腸がんの家系の方では、若年から大腸がんを発生することもあり注意が必要です。
大腸がん年齢別の生存率
2014年~2015年に大腸がんと診断された方の5年ネット・サバイバル(純粋にがんのみが死因となる状況を仮定して計算する方法)は、70.9%でした。今回は年齢別の特徴について解説いたします。
10代〜30代の生存率
先のグラフの様に15歳~39歳の大腸がんの割合は、全年齢のうちわずか1.3%と非常に少ないです。10代~30代では大腸がんになる方は多くはありません。しかし、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群のような遺伝性の大腸がんでは、若年から大腸がんが発生しやすいと言われています。
2014年~2015年に大腸がんと診断された方の5年ネット・サバイバルは、73.9%でした。40歳代の生存率より低い結果です。40代以降と比較するとがん検診などが行われていない年齢であり、早期発見が難しかった可能性が考えられます。また、遺伝性大腸がんの方が多いことより、若年より繰り返し大腸がん発生のリスクがある事も原因の一つと思われます。
40代の生存率
40歳代の大腸がんの割合は全年齢のうち4.2%です。40代より徐々に罹患率が上昇していきます。40代以降は大腸がんの発生に気を付ける必要があります。
2014年~2015年に大腸がんと診断された方の5年ネット・サバイバルは、76.4%でした。10~30代のいわゆるAYA世代と比較すると生存率の上昇がみられます。AYA世代と比較し、健康診断やがん検診などで早期に発見できる割合の増加によるものと考えられます。
50代の生存率
50歳代の大腸がんの割合は全年齢のうち11%です。年齢が上がるにつれて、大腸がんの罹患率も増えています。
2014年~2015年に大腸がんと診断された方の5年ネット・サバイバルは、76.6%でした。生存率でのピークは50代でした。
60代以上の生存率
60歳代の大腸がんの割合は全年齢のうち28.4%、70歳代が33.4%、80歳以上は21.8%となっています。70歳代が最も割合が多いという結果でした。罹患率では80代がピークとなっています。中高年で多いがんと言えるでしょう。
2014年~2015年に大腸がんと診断された方の5年ネット・サバイバルは、60代で75.5%、70代で71.8%、80代以上で59.3%でした。50代の生存率よりやや低下しています。年齢の上昇に伴い体力的な面、そのほかの臓器障害を伴う方も多く、手術や化学療法の十分な治療ができないことによると考えられます。
大腸がんになりやすい人の特徴
大腸がんになりやすい人の特徴をまとめました。これらに当てはまる方は、是非定期的な
がん検診もしくは大腸カメラの施行を考えましょう。
家族歴
大腸がんは、家族歴と関係があると報告されています。大腸がんの20~30%は何らかの遺伝子素因の関与のため、大腸がんや大腸ポリープができやすい家系であると言われています。さらに、生まれながらに持っている遺伝子の異常で大腸がんになりやすい遺伝性大腸がんの方が約5%います。遺伝性大腸がんには、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群があります。これらの家系では、若いころから大腸がんになりやすく注意が必要です。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の患者さんでは、長期にわたって治療をしている経過中に大腸がんが発生することがあります。炎症性腸疾患を持つ方では、一般の方より大腸がんとなるリスクは高いと言われています。近年は治療薬が進歩し、腸管粘膜炎症の治癒を以前より維持できるようになっています。粘膜の治癒を維持できれば、大腸がんの発生リスクは低下します。しっかりと治療を継続することが重要です。
生活習慣の乱れ
今までの研究で大腸がんに関連しているさまざまな危険因子が分かってきました。この中には、生活習慣と影響しているものが多く認められます。
男性でBMI25以下と比較しBMI27~29.9では大腸がんになるリスクは1.4倍、BMI30以上で1.5倍の結果でした。また、身体活動量が多い群では、大腸がんの危険性が低下するとの報告もあります。肥満、運動量の低下が大腸がんのリスクとなっていると考えられます。
食事では、赤肉・加工肉の多量摂取が大腸がんのリスクとなると報告があります。元々日本人は、赤肉・加工肉の摂取量が少ない人種であるため、通常量であれば問題ないと考えられますが、偏食で肉の摂取量が多くならないように注意が必要です。また、食物繊維摂取が少ない方では大腸がんのリスクが高くなる可能性も報告されています。
食事で肉の摂取量が多く、野菜などの食物繊維摂取の少ない方では大腸がんの危険性が高くなると考えられます。
喫煙、アルコール多飲
男性では、飲酒しない人と比較してアルコール摂取量が一日純エタノール量46g以上で大腸がんの発生率が2.1倍となります。また、一日当たりの純エタノール量23g~46gの方でも1.4倍大腸がんのリスクが上昇すると報告されています。アルコールの多飲は大腸がんのリスクの1つです。(純エタノール量23gとは日本酒1合、焼酎0.6合、ビール大瓶1本です。)
喫煙は男女ともに喫煙しない人と比較して、喫煙する人は大腸がんの発生率が1.4倍上昇します。タバコをやめた人も、リスクは1.3倍でした。喫煙も飲酒と同様に大腸がんのリスクの1つです。
アルコールを多く飲む方、喫煙者は大腸がんになりやすいといえます。一でも早く禁煙し、アルコールは1日日本酒1合以下にとどめましょう。
大腸がんの代表的な症状
大腸がんは早期での自覚症状に乏しく、わかりづらいことが多いです。大腸がんで出やすい症状について解説いたします。参考にして、気になる症状があった場合には、早めに消化器内科を受診しましょう。
便に血が混じる
便が腸管内を通過する際に、大腸がんに接触して出血することがあります。この場合に、便の表面に血が付着していたり、便に血が混ざったりすることがあります。見た目ではわからないこともあり、便潜血検査で初めてわかることも少なくありません。
腸で少量の出血が続くことで、徐々に貧血が進行して気が付くこともあります。健康診断や普段の採血検査で貧血が急に進行している場合には要注意です。
便通の異常
大腸にがんがある事により腸管が狭くなり、これによりさまざまな便通の異常が出ることがあります。便秘や下痢、また便が細くなる、残便感があるなどの症状です。便通異常が持続する場合には、一度消化器内科を受診して相談してみましょう。
お腹の張り
さらに大腸がんが大きくなり、腸管が狭くなることで、おなかが張ってきます。また、進行すると、完全に腸が詰まってしまい腸閉塞となることもあります。腸閉塞では、便が出なくなり、腹痛や嘔吐の症状が出ます。また、完全に閉塞していなくとも便の通過が悪くなることで食欲が低下し、体重が減ってしまうこともあります。これらの症状が出た場合には、早急に消化器科を受診しましょう。
大腸がんの主な原因
大腸がんの主な原因は先にお話ししたように、家族歴、炎症性腸疾患、肥満、運動不足、喫煙、アルコールの多飲、赤肉・加工肉の過剰摂取、食物繊維摂取の減少などが挙げられています。これらの危険因子がある方では、特に定期的ながん検診などの検査を行いましょう。生活習慣などこれから改善ができる事に関しては次に挙げる予防を実践していきましょう。
大腸がんの予防法
禁煙・節酒
喫煙に関しては、一日も早く禁煙を考えましょう。なかなかやめられない場合には、禁煙外来を受診して禁煙治療薬などを使うことも検討しても良いでしょう。大腸がん以外のがんの原因ともなり得ます。思い立ったら、早めに禁煙を実行しましょう。
飲酒に関しては、日本酒にして一日1合以下程度の適量での飲酒が勧められます。
バランスの良い食事、適正体重の維持
食事はバランスの良い食事が勧められます。赤肉・加工肉の過剰摂取は勧められません。野菜・果物などの食物繊維をしっかりととり、バランスの良い食事が勧められます。
また、カルシウムを含む食事が大腸がんの予防の可能性があるとされています。今後の報告が待たれますが、いずれにしても偏りのないバランスの良い食事摂取が大切です。
生活習慣としては、適度な運動をしましょう。肥満を予防するためにも有酸素運動がお勧めです。体重はBMI25以下の適正体重を保つようにしましょう。
定期的な検診
40歳以上の方を対象に、多くの自治体でがん検診が行われています。少量の血液が便中に混ざっていることを調べる便潜血検査が一般的です。安価であり、体に負担をかけない簡単な検査ですので、是非毎年検査を行いましょう。便潜血検査の結果で1回でも陽性である場合、大腸がんの可能性もあります。大腸がんがあっても早期に発見し、治療を行うことが非常に大切です。がん検診を定期的に行うことで、早期に腸の異常を見つけることができます。
「大腸がんにかかる年齢」についてよくある質問
ここまで大腸がんにかかる年齢を紹介しました。ここでは「大腸がんにかかる年齢」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
20代・30代で大腸がんを発症する確率は高いのでしょうか?
渡邉 一輝 医師
一般的に大腸がんは40歳から増加するがんであり、20代、30代でのがんの発症は少ないです。しかし、遺伝性大腸がんでは若年での大腸がんの発生もあります。大腸がんの方が多くいる家系、遺伝性大腸がんと診断された方が家系にいる場合には、若くても症状があれば、消化器内科専門医を受診し、相談してみましょう。
大腸がんの罹患率が高い年齢層について教えてください。
渡邉 一輝 医師
大腸がんの罹患率は40歳代より徐々に上昇し、70歳代でピークとなります。40歳以降で非常に多いがんですので、是非40歳を過ぎたら大腸がん検診を受けましょう。
まとめ 大腸がんのリスクのある人は、若いうちから病院で相談しよう。
大腸がんは、日本で罹患率の高いがんの一つです。さまざまな危険因子が分かってきています。特に禁煙、節酒を実践し、生活習慣に気を付けましょう。また、家系で大腸がんが多い方は遺伝性大腸がんの可能性もあるため、若くても大腸がんを念頭に置いておく必要があります。大腸がんは他のがんと同様にステージにより生存率が変わります。ステージⅠのような初期の段階では90%以上の確率で治る病気です。症状があれば、もちろん早めに消化器内科を受診しましょう。また頻度の高い病気なので症状がなくても定期的に検診を受けることが大切です。
「大腸がんにかかる年齢」と関連する病気
「大腸がんにかかる年齢」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
代謝・内分泌科の病気
- 糖尿病
- 肥満
家族性大腸腺腫症やリンチ症候群などの遺伝性大腸がんの可能性がある方では20代ごろより大腸がんの発生があります。早めに消化器内科を受診して相談してみましょう。また、炎症性腸疾患の方は、治療を継続しましょう。いわゆる生活習慣病の方は、大腸がんのリスクが高いです。生活習慣を整え、定期的ながん検診を受けましょう。
「大腸がんにかかる年齢」と関連する症状
「大腸がんにかかる年齢」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 便に血が混ざる
- 貧血
- 便秘
- 下痢
- おなかの張り
- 食欲低下
これらの症状は大腸がんでみられる症状です。しかし、大腸がん以外の病気でもみられるため区別がつきづらいです。これらの症状が続く場合には、早めに消化器内科を受診して相談してみましょう。