「膵臓がんの食事」で気を付けるポイントはご存知ですか?予防する食事も解説!
膵臓がんは、消化酵素やホルモンを分泌する膵臓にがんができる病気です。膵臓は食べ物の消化や血糖値に関わる臓器であるため、がんになると食生活にも影響を及ぼします。
では、膵臓がんの食事ではどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。
今回の記事では膵臓がんの治療と食事について詳しく解説します。また、避けるべき食品や栄養面で注意したいポイントも紹介するので、気になる方は参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
膵臓がんとは
膵臓がんとは膵臓にできるがんの病気で、一般的に膵臓の膵管にできるがんのことを指します。膵臓は胃の後ろにある細長い形をした臓器です。食べ物の消化を助ける膵液・血糖値を下げるインスリンというホルモンを分泌します。
作られた膵液は膵管を通って、隣接している十二指腸に注がれます。膵臓がんは、膵液を分泌するのに欠かせない膵管ががん化することで発症するケースが少なくないようです。腫瘍が小さくても膵臓周辺のリンパ節や肝臓に転移しやすい特徴があります。
また、初期の段階では症状が出にくく早期発見が難しいといわれています。進行すると食欲不振・腹部膨満感・背中や腰の痛みなどの症状が現れるほか、糖尿病を発症する場合もあるようです。
膵臓がんは、糖尿病や肥満などの生活習慣病・飲酒・慢性膵炎などが原因と考えられています。また、ご家族に膵臓がんを患った方がいる場合は発症リスクが高まるようです。
膵臓がん治療中の食事で避けるべき食品
膵臓がん治療中の食事は、体力を維持したり病状を管理したりするのに重要です。しかし、すべての食品が膵臓がんの治療に役立つわけではありません。
一部の食品はがんの進行を促進したり治療効果を抑制したりする可能性があります。ここからは、膵臓がん治療中の食事で避けるべき食品を紹介します。
高脂肪食品
脂質の過剰摂取は膵臓がんと関連するといわれています。そのため、ばら肉やもも肉のように脂身の多い肉・バター・揚げ物などの高脂肪食品の摂取を避けるようにしましょう。
塩分の多い食品
塩分の多い食品も避けるべきといわれる食品の1つです。特に干物・たらこ・塩辛などの塩蔵食品を多く摂取すると、がんのリスクが高まるといわれています。魚の干物をよく食べる場合は生魚に変えるとよいでしょう。
また、塩蔵食品だけではなく、塩分を多く含む調味料も控えることが望ましいです。味付けする際は減塩調味料を使う・お酢や柑橘類などの酸味を使うといった工夫をするのがおすすめです。
消化に悪い食品
膵臓がんになると消化機能が落ちる可能性があるため、消化に悪い食品も避けるべきでしょう。消化に悪い食品は脂肪の多い食品・食物繊維の多い食品です。
食物繊維の多い食品は、ごぼう・たけのこ・きのこ・海藻などが挙げられます。野菜を摂取する場合はキャベツや大根など食物繊維が少ないものを選ぶとよいでしょう。
香辛料が効いた食品
香辛料が効いた食品のように刺激のあるものも避けた方がよいでしょう。香辛料も消化に負担をかけるといわれています。膵臓がんの治療中は、カレーや唐辛子などを使用した料理を避けることが望ましいです。
なお、刺激物とされるコーヒーも膵臓がんに関連があるといわれているため、コーヒーも控えるようにしましょう。
アルコール
アルコールは膵臓がんの発症リスクを高めるものといわれており、治療効果を抑制する可能性があります。特に飲酒量が多いと膵臓がんと関連が強くなるとされるため、治療中は避けた方がよいでしょう。
ただし、お酒による影響は個人差があるため、飲酒量は医師に相談するのが望ましいです。
膵臓がん手術前後に栄養面で注意したいポイント
膵臓がんの治療では、基本的に手術が可能であれば膵臓の切除を行います。膵臓は消化や血糖値に関わる臓器であるため、切除すると手術前のような食事が難しくなると考えられます。
そのため、手術を受ける予定のある場合は、食事での注意すべきポイントを把握しておきましょう。ここからは、膵臓がん手術前後に栄養面で注意したいポイントを解説します。
手術前
手術は体に大きな負担がかかるため、手術前は十分な栄養が必要です。食事の基本となる栄養バランスのよい食事を意識して、十分なエネルギーを摂ることが大切です。
ただし、血糖値が高かったり血糖コントロールが不良であったりする場合は、糖質の摂りすぎに注意しましょう。
手術後
手術後に食べてはいけないものはありません。しかし、手術後の体は消化吸収機能が低下しやすい状態であるため、吐き気や胃もたれが生じやすいと考えられます。消化のよい食事にし、無理のない範囲でゆっくり食事を摂ることがポイントです。
また、1回の食事量が減ってしまう場合は、1日の食事を5〜6回に分けて栄養を摂れるようにしましょう。また、手術後は血糖値を下げるインスリンの分泌が減ることで、血糖値が上昇しやすくなると考えられます。
食事量が少ない場合は食事を制限する必要はありませんが、食事量が増えてきたらジュースやお菓子など糖質の多い食品の食べすぎに注意しましょう。
膵臓がん予防のために取り入れたい食事のポイント
ここまでは、膵臓がんの治療中の食事のポイントや栄養面での注意点をお伝えしました。では、膵臓がんを予防するためにはどのような食事を摂ればよいのでしょうか。
ここからは、膵臓がん予防のために取り入れたい食事のポイントを解説します。
魚中心の食事を心がける
魚に含まれている多価不飽和脂肪酸を摂取すると、膵臓がんの発症リスクが低下する可能性があると報告されています。
そのため、魚を摂取すると膵臓がん予防につながると考えられます。特に肉中心の食事を摂っている場合は、魚中心の食事を心がけましょう。
果物を積極的に取り入れる
果物もがん予防に役立つとされる食品の1つです。特にみかんやグレープフルーツなどの柑橘類は、がん予防に効果があると考えられています。
日本で行われた研究によると、果物の摂取は膵臓がんの発症リスクの低下と関連していると報告されています。そのため、普段果物を食べない場合は、意識的に取り入れるとよいでしょう。
きのこ類を多く摂取する
きのこ類を積極的に摂取することも、膵臓がん予防につながるといわれています。膵臓がんの治療中の食事ではきのこの摂取は推奨できませんが、きのこ類に含まれるβ-グルカンなどの成分は抗がん作用が期待されているようです。
また、きのこ類などに含まれる食物繊維は体内の余分な糖・脂肪を体外に排出し、膵臓がんの原因となる生活習慣病の予防や改善に役立つことがわかっています。
膵臓がんの食事についてよくある質問
ここまで膵臓がんの治療と食事・避けるべき食品・栄養面で注意したいポイントなどを紹介しました。ここでは「膵臓がんの食事」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食べ方で意識した方がよい点はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
膵臓がんになると、消化吸収機能が低下するため、消化不良による下痢を起こしやすくなります。食事は消化のよいものにして、少しずつゆっくり食べるようにしましょう。また、一度に多く食べると負担がかかるため、1回あたりの食事量を減らし1日の食事回数を増やして栄養を十分に摂ることが大切です。
食欲がない場合は食事を控えてもよいですか?
甲斐沼 孟(医師)
膵臓がんの治療中では、食欲が低下する場合もあります。その場合は、無理に食べる必要はありません。無理のない範囲で食事を摂り、栄養を補給するようにしましょう。
編集部まとめ
膵臓がんは消化吸収に影響を及ぼすため、消化不良を起こしやすくなります。そのため、消化に悪い食品の摂取を控えるようにしましょう。
また、塩分の多い食品・香辛料を効かせた食品・アルコールの摂取も注意が必要です。
特に手術後は消化吸収機能が低下しやすいため、消化のよい食事内容で少しずつゆっくり栄養を補給することが大切です。
どうしても食欲がない場合は無理に食べようとせず、可能な範囲で食事を摂るようにしましょう。
膵臓がんを患ったからといって、食べてはいけないものはありません。膵臓がんの食事で少しでも不安なことがあれば、担当の医師に相談しましょう。
膵臓がんと関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 慢性膵炎
- 神経内分泌腫瘍
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)・ 慢性膵炎は膵臓がんを招く恐れがあります。また、神経内分泌腫瘍は膵臓に腫瘍ができる病気ですが、膵臓がんとは性質が異なります。
膵臓がんと関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹痛
- 食欲不振
- 腹部膨満感
- 黄疸
- 背中の痛み
腹痛や黄疸は肝臓がんにも現れる症状です。その他の症状はほかのがんの病気の症状と似ています。少しでも気になる症状があれば検査を受けるようにしましょう。
参考文献