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犬の嗅覚を使って新型コロナ感染検出が可能「PCR検査より迅速・的確・安価」

 公開日:2023/09/08
新型コロナ感染検出 RT-PCR検査より犬の方が迅速で的確との研究報告

アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校らの研究グループは、新型コロナウイルス感染の検出について「医療機関でのRT-PCR検査や抗原検査などよりも犬の方が迅速で的確、かつ安価に新型コロナウイルス感染を検出し得る」と明らかにしました。この内容について、郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容とは?

アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校らの研究グループが発表した内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回紹介するのは、アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校らの研究グループが実施し、学術誌「Journal of Osteopathic Medicine」に7月17日掲載されたものです。研究グループは、2019年12月~2023年4月の間に発表された、新型コロナウイルスのにおいをかぎ分ける訓練を受けた犬に関する29本の査読済み論文を用いて評価しました。対象となった論文では、32カ国400人以上の科学者が、147頭の犬の嗅覚による新型コロナウイルスの検出能力を検討しています。

解析の結果、犬の嗅覚を用いた新型コロナウイルス検査の感度は92.3%の論文で80%を超えており、特異度は97%を超えていると報告した論文もありました。犬は、呼気、唾液、気管支分泌物、尿、マスク、衣類などから新型コロナウイルスを検出でき、訓練を積んだ犬であれば、症状が出る前の患者や無症状の患者の検出も可能です。また、訓練時に経験のない新型コロナウイルスの新規変異株感染者や後遺症患者の検出も可能であることに加え、新型コロナウイルス感染者と別の新しい呼吸器系ウイルス感染者とを区別する能力があることも示されています。

研究グループは、「犬による新型コロナウイルス検出に関する研究は、国際的に見ても質が高く情報量も豊富であった。このことは、医療現場でついに医療用探知犬が利用できるようになったことを示している」と結論づけています。

今回の発表内容への受け止めは?

アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

これまでにも様々な病気で犬をはじめとした動物の嗅ぎ分けによる診断が試みられてきましたが、新型コロナウイルスに関して犬による嗅ぎ分けができる可能性があるというのは面白い研究です。実際に臨床利用することは中々難しいと思いますが、この嗅ぎ分け能力を別の疾患でも応用できるのではないかという期待が高まる研究と言えます。例えば、健診などで何らかの病気の嗅ぎ分けを犬にさせるなどの臨床利用は、できるようになるのかもしれません。

犬を新型コロナウイルス感染検出に活用することは実現できる?

アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校らの研究グループは「犬の嗅覚を利用した検査の方が、RT-PCR検査や迅速抗原検査などよりはるかに効率的。実際に、本研究で対象とされたある論文の著者は『今や、新型コロナウイルス検査のゴールドスタンダードは犬であり、RT-PCR検査ではない』とコメントしているほどだ」と話していますが、実際に新型コロナウイルス感染検出に犬が活用されることは実現可能でしょうか?

郷 正憲医師郷先生

実際に臨床利用できるかは、コストと流通が問題になります。迅速検査をどこのクリニックでもできるようになっている現在の状況に対し、全ての診療所に犬を配置するのはまず不可能です。また、犬を管理する手間、費用もかかってきますから、現実的とは言えないでしょう。

まとめ

アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校らの研究グループは、新型コロナウイルス感染の検出について「医療機関でのRT-PCR検査や抗原検査などよりも犬の方が迅速で的確、かつ安価に新型コロナウイルス感染を検出し得る」と明らかにしました。犬はこれまでも麻薬探知などさまざまな活躍をしてきましたが、新型コロナウイルス感染の検知でも有用であることが示され、改めて犬の嗅覚の鋭さには驚かされます。

この記事の監修医師