「乳幼児への新型コロナワクチンは重症化防止に効果あり」米国CDC発表
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、乳幼児における新型コロナウイルスワクチンの有効性について「重症化抑制に効果がある」という結果を発表しました。この内容について、武井医師に伺いました。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
CDCが発表した内容とは?
CDCが示した、新型コロナウイルスワクチンの乳幼児への有効性について教えてください。
CDCの研究チームは、モデルナ製とファイザー製のワクチンに、乳幼児の重症化を防ぐ効果があるかどうかを調べました。調査はモデルナ製を対象としたものと、ファイザー/ビオンテック製を対象としたものに分けて実施され、モデルナ製の調査では生後6カ月~5歳の9万人以上、ファイザー製の調査では生後6カ月~4歳の約8万1000人がそれぞれ対象となりました。
ワクチン未接種の乳幼児の陽性率は、モデルナ製の調査で5.5%、ファイザー製の調査で5.9%でした。どちらかのワクチンを1回だけ接種した部分接種のみの乳幼児では、陽性率はわずかな低下にとどまりましたが、推奨回数の接種を終えた乳幼児では陽性率は3%未満に減少しました。特に、受診の14~59日前にファイザー製ワクチンの3回目接種を終えていた乳幼児では、陽性率はわずか1.1%という数字が出ました。また、該当する乳幼児の数は少なかったものの、1価ワクチンの接種を推奨回数終えてから、2価ワクチンのブースター接種を受けた乳幼児では、陽性率が極めて低い結果となりました。さらに、乳幼児も成人と同様、ワクチンによる免疫が時間の経過とともに低下することが示唆され、受診2カ月以上前にワクチンを接種した乳幼児では、予防効果が低下していました。
日本小児科学会が示している考えとは?
日本小児科学会は子どもへのワクチン接種について、どのような考えを示しているのでしょうか?
小児への新型コロナウイルスワクチンの接種をめぐっては、5類に移行したことや、WHO(世界保健機関)が2023年3月に「生後6カ月~17歳の健康な小児へのワクチン接種は優先順位が低く、国ごとの状況を踏まえて検討すべきだ」とされていることから、日本小児科学会は接種の意義について改めて検討しました。
検討の中で日本小児科学会は、WHOが子どもに対する接種は有効かつ安全としていることや、複数の研究報告で発症予防や重症化予防の効果があることを確認しています。しかしその一方で、国内では未感染の子どもが多いとみられており、感染すると稀に急性脳症や心筋炎を発症し、後遺症が残ったり死亡したりするケースもあるという考え方をまとめています。
こうした考え方を踏まえて日本小児科学会は、対策の緩和で多くの子どもが感染することが予想されていることから、ワクチン接種は重症化を防ぐ手段として重要だとし、引き続き「すべての小児に接種を推奨する」としています。
新型コロナウイルスの感染者数が増えている中、注意すべきことは?
新型コロナウイルスの感染者数が増えている中、子どもたちの感染を防ぐために注意すべきことを教えてください。
乳幼児には、新型コロナウイルスの感染に対する特効薬がありません。治療薬も重要ではありますが、それ以上に感染しないような対策、とくにリンパ球機能の低下となる寝不足、過食、ストレスなどを避け、適度な運動も心がけてください。
まとめ
乳幼児における新型コロナウイルスワクチンの有効性について、CDCが「重症化抑制に効果がある」という結果を発表したことが今回のニュースでわかりました。乳幼児へのワクチン接種については慎重に考える人も少なくなく、今回のような研究結果は注目を集めそうです。