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「乳がんのステージ2」の症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2024/05/05
「乳がんのステージ2」の症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!

乳がんのステージ2では、がん細胞の広がりや転移はあまりみられず、早期で適切な治療を受けることで十分に治癒する可能性がある段階です。

乳がんのステージ2にはどのような症状があり、治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。

この記事では、乳がんステージ2の分類・主な症状・治療法のほか、早期発見の方法も紹介しますので、気になっている方はぜひ参考にしてみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

乳がんステージ2の分類

乳がんのステージ2は、しこりの大きさやリンパ節への転移の有無などによりIIAとIIBに分類されます。それぞれのステージにおける乳房の状態は以下のとおりです。

ステージIIA

ステージIIAと診断されるのは、

  • しこりの大きさが2~5cm以下でリンパ節の転移がない
  • しこりの大きさが2cm以下でリンパ節への転移がわずかな範囲である

場合とされています。

ステージIIB

ステージIIBは、

  • しこりの大きさが5cm以上でリンパ節への転移がない
  • しこりの大きさは2~5cmでリンパ節への転移が複数見られる

という状態です。ステージIIAよりもがんが進行し、リンパ節へ広がり始めている点でステージIIAと区別されます。

乳がんステージ2でみられる症状

自分で確認できる乳がんステージ2の症状には、次のようなものがあります。

しこり

乳がんの初期症状としてよくみられる乳房のしこりは、触るとあまり動かずにコリコリと硬く感じます。ステージ2ではしこりはまだ小さいですが、気付いた場合はできるだけ早く病院へ行きましょう。

皮膚の変化

乳がんが進行すると、乳房の皮膚が赤くなったり変色したりする場合があります。これは、炎症性乳がんという乳がんの一種によくみられる症状です。乳頭周囲の変色もステージ2の症状です。がんの腫瘍が皮膚を引っ張ることで乳房の色が変化する場合もあります。

乳頭からの分泌物

乳頭からの分泌物が通常の透明なものではなく、出血や茶褐色の分泌物が出たり、異常なにおいを感じたりすることがあります。

乳房の形の変化

ステージ2では乳房の形の大きな変化が見られることはあまりありません。しかし、場合によっては乳房が張る・皮膚が引き裂かれるようなしわができるなどの症状が表れることがあります。

乳がんステージ2の治療法

乳がんのステージ2では、がんの状態により複数の治療方法を行うことが一般的です。

手術

ステージ2の段階では、手術による腫瘍の切除が主な治療方法です。
手術の種類は、乳房の形を維持しながらがん組織だけを取り除く乳房温存手術と、乳房全体を切除する乳房全摘手術です。手術方法を決定する際には、がんの大きさや位置のほか患者さんの希望も考慮されます。
ただ再発リスクが高い患者さんなどの場合は、乳房全摘手術をすすめられることもあります。乳房全摘手術の場合、患者さんが希望すれば乳房再建を行うことも可能です。
乳房再建には、自分の体の一部を使う方法と人工物を使用する方法があり、患者さんの希望と身体の状態によって決定します。もしリンパ節への転移がみられる場合には、同時にリンパ節の一部、もしくは全体を摘出する手術が行われます。

放射線療法

放射線治療は、手術で切除した周囲にがん細胞が残っている可能性を考え再発を防ぐ目的で行われます。放射線が照射される場所は、手術した乳房やリンパ節の周囲です。放射線治療は通院または入院で数週間にわたって行われます。

化学療法

化学療法は、乳がんの状態によって手術前もしくは手術後に行われる薬物療法の1つです。
手術前の場合はがんを小さくしてより少ない範囲の切除に抑えるために、手術後の場合は再発防止を目的として抗がん剤が使用されます。抗がん剤の副作用を心配されるかもしれませんが、現在は副作用を軽減する薬も出ています。
またHER2(ハーツー)というがん細胞を増殖する作用のあるたんぱく質が原因のHER2陽性乳がんの場合は、HER2たんぱくに作用する抗HER2療法という薬物療法が有効です。抗HER2療法を行うことでがんが小さくなり、乳房温存の可能性が高くなる場合もあります。

ホルモン療法

ホルモン療法とは、女性ホルモン(エストロゲン)に対して薬を使う薬物療法です。
ホルモン受容体陽性乳がんというエストロゲンが増えることでがんが進行するタイプの乳がんの場合に選択されます。治療には、エストロゲンを減らしたり、ホルモン受容体とエストロゲンが結合するのを阻止したりする薬を使用します。

乳がんを早期発見する方法

乳がんは自己診断でも発見することが可能な病気です。そして、発見されるのが早ければ早い程生存率は高くなります。
手遅れになる前に定期的なセルフチェックを行い、乳がん検診を受けましょう。セルフチェックを行う正しいタイミングは、生理が始まってから1週間後以降です。
閉経された方なら毎月1回定期的にチェックしましょう。セルフチェックの方法は、以下のとおりです。

  • 鏡で乳房の形(へこみやひきつれ)と色の変化を確認
  • 乳房全体を触ってしこりの有無をチェック
  • 乳房を上下左右から部分的に触って異常の有無を確認
  • 乳頭からの分泌物とただれをチェック
  • わきの下にしこりがないかチェック

チェックは入浴時やお風呂あがり、寝ころんだ状態で行います。
入浴時にチェックする場合は、石鹸を泡立てて手に付けると異常に気付きやすいのでおすすめです。乳房に触れるときは、指の腹で円形を描きながら行います。
チェック時の注意点としては、手を下ろした状態・片手ずつ上げた状態の両方を確認することです。
セルフチェックは、始めのうちは手順や段取りが複雑で面倒に感じるかもしれません。しかし毎月定期的に行っているうちに自然と短時間で行なえるようになります。もし少しでも異常を感じたり、違和感があったりしたときは、必ず医療機関で受診してください。
また、定期的な乳がん検診もきちんと受けましょう。

ステージ2の乳がんについてよくある質問

ここまで乳がんステージ2の分類・症状・治療方法や早期発見の方法などを紹介しました。ここでは「乳がんステージ2」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんのステージ診断はどのようにして行われるのでしょうか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

超音波検査やMRI検査などによりがん細胞がどのくらい広がっているかなどを確認し、CT検査でリンパ節や他臓器への転移の有無を調べます。リンパ節への転移がないかどうかをさらに詳しく調べる場合は、穿刺(せんし)吸引細胞診や針生検という検査を行います。穿刺吸引細胞診とは病変に直接針を刺して吸引した細胞を調べる検査です。一方針生検は病変部の組織を採取して調べる検査で、穿刺吸引細胞診よりも太い針を使用します。そのため針生検では局所麻酔が必要です。これらの検査によりステージの診断とがん組織の状態を確認します。

乳がんステージ2の生存率はどれくらいですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

治療方法や患者さんの状態にもよりますが、乳がんステージ2の5年生存率は83.3~90.9%となっています。

編集部まとめ

今回は、乳がんステージ2の分類や症状・治療方法などを解説しました。

乳がんは早期発見しやすいがんの1つです。また、ステージ2の段階なら手術において乳房を残せる可能性も高くなります。

大切なのは、定期的なセルフチェックと乳がん検診です。早期発見で適切な治療を受ければ、決して怖い病気ではありません。

もし家族やご自身に気になる症状があった場合はできるだけ早く、最寄りの医療機関に相談してください。

乳がんと関連する病気

「乳がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科系

  • 線維腺腫
  • 乳管内乳頭腫
  • 乳腺嚢胞
  • 葉状腫瘍

葉状腫瘍はまれに悪性化することがありますが、それ以外のほとんどが良性腫瘍です。しかし簡単に自己判断せず、気になる症状がある場合はきちんと医療機関を受診してください。

乳がんと関連する症状

「乳がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • しこり
  • 乳房のハリ
  • 乳頭からの異常な分泌液

以上のような症状が見られた場合でも必ずしも乳がんだとは限りません。むやみに怖がらず、まずは医療機関で診察してもらいましょう。万一乳がんだと診断されても、適切な治療を受けることで、今までどおりに生活することも十分可能です。早期発見をするためにも、きちんと受診してください。

この記事の監修医師