「卵巣がん」による「腹水」が溜まるとどんな症状が現れる?医師が監修!
卵巣がんは進行すると腹水が溜まることが多く、腹部の不快感や膨満感などを自覚します。
腹水はさまざまな原因で出てくる体液です。卵巣がんの場合の腹水は、がん細胞による炎症が腹腔内で起こることにより出てきます。
ウエスト回りが大きくなった・お腹の張りが気になるなどの症状があらわれるのが特徴です。
この記事では、卵巣がんによる腹水の概要・腹水が溜まると生じる症状・治療方法を解説します。
お腹の膨らみは腹水によるものなのか気になる方は、最後までご覧ください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
卵巣がんとは?
卵巣がんは、子宮の左右にある卵巣にできる悪性腫瘍のことです。若年層の発症は少なく、40歳代から患者数が増える傾向にあります。
初期の段階では、自覚症状がほとんどありません。徐々にがんが進行すると、着ていた服のウエストがきつくなってきた・下腹部にしこりが触れる・食欲が減るなどの症状が現れます。
また、腫瘍が大きくなると卵巣の近くにある膀胱や直腸が圧迫されます。そのため、頻尿や便秘、脚のむくみなどが出やすくなるでしょう。また、卵巣がんは進行が早く、転移を起こす場合があります。
卵巣がんの腹水について
腹水とは、がんにより腹腔内に体液が異常に溜まる現象です。腹水の貯留が約1000~1500ミリリットル認められると腹水と診断されます。ここでは、卵巣がんによる腹水を詳しく解説します。
卵巣がんが進行してから出る症状
卵巣がんは進行すると、卵巣の表面からがん細胞が腹腔内に散らばる腹膜播種が起こります。この腹膜播種が腹水を発生させる原因です。
腹水が溜まると、腹部膨満感・腹痛・胸やけ・食欲不振・息切れなどの症状が現れます。全身のだるさや体重増加により、体力が消耗される場合もあるでしょう。
腹水が溜まっていることは、がんが進行しているサインです。
腹水によってお腹が前に突き出ることもある
正常な方でも少量の腹水は、腹腔内に存在しています。しかし、がんが進行すると腹水が徐々に多くなっていきます。
多量に溜まるとお腹がぱんぱんに膨れ、前に突き出てくることもあるでしょう。
また、胸郭が圧迫され呼吸困難になる場合もあります。
卵巣がんの腹水以外の症状は?
前述しましたが、卵巣がんは進行すると腹水が溜まります。ほかにはどのような症状がみられるのでしょうか。
ここでは、卵巣がんの腹水以外の症状を解説します。
初期は症状があまりない
卵巣がんは、初期の段階ではほとんど症状がみられません。自覚症状がないため気付きにくく、知らない間に進行している可能性が高いがんです。症状を自覚してから受診し卵巣がんの診断を受けるケースも少なくありません。
服のウエストがきつくなる
大きくなったがんや腹水によりお腹が膨れるため、普段着ている服のウエストがきついと感じるようになります。また、腹部膨満感を自覚する方も多いでしょう。
お腹が張っている感じ・お腹が重い感じ・げっぷが出るなどの症状です。お腹周りの変化が、腹腔内の異変のサインかもしれません。
下腹部にしこりができる
卵巣は骨盤内の深いところにある臓器です。通常は体表から触れることができませんが、がんが進行し腫瘍が大きくなると下腹部にしこりとして触れる場合があります。
食欲不振
大きくなった腫瘍が腹部を圧迫し、腸の動きを妨げる場合があります。腸の動きが悪くなることで、食欲が低下すると考えられています。
食欲が低下すると食事の量が減るため、体重減少を伴うのです。食欲不振と体重減少を自覚した場合は、体に異変が起きている可能性があるため注意しましょう。
頻尿・便秘
卵巣の周囲には、膀胱や腸などの臓器があります。卵巣の腫瘍が大きくなることで、周囲の臓器が圧迫されます。
また、膀胱が圧迫されると尿意を頻回に感じ頻尿になり、腸が圧迫されると腸の動きが悪くなり便秘になるのです。
足のむくみ
卵巣がんが進行してから出る症状の1つに腹水があります。
その腹水が多量に溜まると腹腔内の圧が高くなり、静脈やリンパ液の流れを悪くします。体内の血液やリンパ液の流れが滞るため、足がむくむのです。
足がだるかったり、むくんでいる部分を指で押した後すぐにもとに戻らない場合は、足がむくんでいるサインです。
卵巣がんの治療方法
卵巣がんの治療には、以下の2つの方法があります。
- 手術
- 薬物療法
ここでは、上記の治療方法を解説します。
手術
卵巣がんが疑われる場合、手術でがんをできるだけ取り除く方法が選択されます。
卵巣は骨盤の深い部分にあるため、腹部の皮膚から針を穿刺して組織や細胞を採取して行う検査ができません。そのため、がんであるかの確定診断や病期の判断は、実際に病変を調べる必要があります。
手術前に悪性腫瘍が疑われる場合は、手術する範囲を確定するために手術中に組織や細胞を病理検査を行うことがあります。これが術中迅速病理診断です。
また、腹水を採取しがん細胞が含まれていないかを調べる細胞診を行います。病理検査の結果により、病期がどの程度なのかがわかり治療方針を検討していきます。
薬物療法
薬物療法とは、がんを治す・がんの進行を抑える・がんによる症状をやわらげることを目的に行う治療方法です。化学療法・ホルモン療法・分子標的療法などさまざまな方法があり、がん細胞を攻撃します。
卵巣がんに対する薬物療法には、以下の3つがあります。
- 術後薬物療法
- 術前薬物療法
- 維持療法
術後薬物療法は、手術を行った後に手術の効果を高める目的で行われます。
術前薬物療法は、手術によりがんを取り除くことが困難だと判断された場合に行います。細胞障害性抗がん剤により腫瘍を小さくしてから、完全に腫瘍を取り除くことを目的として行われるのです。
維持療法は予後を伸ばす目的で行われる薬物療法です。術後薬物療法を行い、体内にがんが確認できない状態になった場合(寛解)、分子標的薬を用いて治療を続けて行う場合があります。
がんの進行具合や患者さんの身体状態・生活習慣などを考慮し薬物療法を検討します。
卵巣がんの腹水についてよくある質問
ここまで卵巣がんの腹水・腹水以外の症状・治療方法などを紹介しました。ここでは「卵巣がんの腹水」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がん以外のがんで腹水が溜まることはありますか?
馬場 敦志医師
- 大腸がん
- 胃がん
- 膵臓がん
- 子宮体がん
- 乳がん
上記のがんが発生すると、お腹のなかで炎症が起こります。これをがん性腹膜炎といいます。炎症によって血管内の成分が異常に多く出るため、腹水として溜まるのです。
腹水はどのようにして体外に排出するのでしょうか?
馬場 敦志医師
腹水を体外に排出する方法には、薬物を投与する方法や腹腔内にカテーテルを挿入する方法などがあります。薬物の投与では、利尿薬を日常的に使用し体外に腹水を排出します。腹水穿刺ドレナージ・腹腔静脈シャント・腹水濾過濃縮再静注法は、直接腹腔内にカテーテルを挿入して腹水を抜く方法です。それぞれにメリット・デメリットがあるため、どのような方法なのかをよく医師と相談することが大切です。
編集部まとめ
卵巣がんは、初期の段階では症状がない場合が多く、自覚症状が出たときには進行している可能性が高いがんです。
自覚症状の1つである腹水は、卵巣がんでは多くみられる症状です。
腹水が確認されると、がんが進行しているサインでもあります。腹水が多くなると、お腹が張ったり食欲不振になったりと付随する症状も出てきます。
卵巣がんはほかの臓器に転移しやすいため、早期に気付き治療を行うことが大切です。
早期発見・早期治療につなげるためにも、気になる症状がある場合には定期的な検診や受診をするようにしましょう。
卵巣がんと関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣は異変に気付きにくい臓器です。腹部エコーやCT検査・MRI検査などの画像検査で卵巣がんの疑いがあると診断される場合があります。定期的に検診を受けることで早期に異変を発見できる可能性があります。
卵巣がんと関連する症状
「卵巣がん」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- お腹が張る(張って苦しい)
- 下腹部の痛み
- 頻尿・便秘
- 腰痛
- 腹部の膨らみ
- 骨盤部の痛み
- 食欲低下
- 体重減少
卵巣がんは、進行すると腹部症状が現れます。お腹が張ったり膨らんだりすると、不快感が生じ食欲低下を引き起こす場合があります。上記のような症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。