「骨肉腫の治療法」はご存知ですか?症状や検査方法も解説!医師が監修!
骨肉腫が骨のがんであるということは多くの人に知られています。ただし、骨肉腫の症状や治療方法となると漠然としたイメージではないでしょうか。
骨肉腫は中学生や高校生ぐらいの世代に発生しやすい悪性腫瘍です。主に膝の周りに発生して痛みや腫れなどの症状があります。
なお、検査で骨肉腫と診断されると手術や化学療法で長い治療が必要になる病気のため、正しく理解し治療をすることが重要です。
本記事では骨肉腫の治療方法・症状・検査について解説します。
監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
目次 -INDEX-
骨肉腫とは?
骨肉腫は10~20代の若い世代に発症することが多い、骨に発生する悪性腫瘍(がん)です。ただし、小児に限らず骨肉腫の約3割は40歳以上の人にも発生しています。
なお、日本では1年間に200人程の発生頻度で、悪性腫瘍のなかでは非常に稀ながんです。主な発生部位は以下になります。
- 大腿骨と膝関節
- 上腕骨
- 股関節
- 骨幹
- 骨幹端部
また、ほかのがん治療による放射線照射後に、二次性骨肉腫が発生する場合もあります。
小児の骨肉腫の治療方法
骨肉腫は外科的治療(手術)で腫瘍を取り除く方法が用いられますが、手術前後の化学療法が再発率減少や治療率を挙げることにつながっています。
ここからは骨肉腫のさまざまな治療方法の詳細を解説します。
外科治療
手術では、腫瘍の露出を防ぐために周囲の健康な組織で包んで腫瘍を切除します。これを広範切除といい、骨肉腫の手術の原則ですがこの方法は患肢の温存が極めて難しくなります。
また、骨肉腫は骨端線のすぐ近くにできることが多く手術でこの部分を残すことがほとんど不可能です。かつては四肢切断が多かったのですが、現在は90%近くが温存できるようになっています。その場合、処理骨やほかの部分の自分の骨を移植して再建手術を行います。
薬物療法
骨肉腫は手術のみの治療と比較すると手術の前後で薬物療法を行うことで再発率を大きく下げることができます。なお、薬物療法を2~3ヵ月間行い、手術、数ヵ月の薬物療法の流れで骨肉腫の治療が行われるのが一般的です。
ただし、薬物療法には副作用があります。
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 口内炎
- 白血球の減少
- 感染症
- 腎障害
- 聴力障碍
なお、薬物療法はいくつかの種類を組み合わせて使用します。
放射線治療
がん治療によく用いられる放射線治療ですが、骨肉腫では治療効果があまり認められないため放射線治療を行うことはほとんどありません。ただし、以下の場合には放射線治療を用いることがあります。
- 安全性を考慮した広範切除が困難な場合
- 患肢温存術が困難な場合
- 手術前後の補助的治療
また、背骨や骨盤に骨肉腫が発生して広範囲の切除が難しい場合に粒子線治療を行うことがあります。
緩和ケア
がんになると支持療法が必要になります。身体への負担や治療効果で将来への不安が増すといわれるがんですが、緩和ケアを受けることでがんに対するつらさや不安を和らげることができるのです。
子どもは病気による障害の適応能力が優れているため周りの人が病気を理解して声に耳を傾けることは、子どもが障害を克服する手助けになるのです。
小児の骨肉腫の症状
小児の骨肉腫の症状は成長痛など子ども特有の症状と類似することがあり病気の特定が遅れる場合があります。そのため、子どもに痛みや腫れなどがみられる場合は、様子を観察し症状が続くようなら医療機関で検査をしましょう。
ここからは骨肉腫の症状を解説します。
発生部位の痛み
小児の骨肉腫の初期症状には患部の痛みがありますが、急に身長が伸びた場合などは脛などの痛みを訴えることがあります。これを成長痛といいますが、症状が似ているため骨肉腫を見逃すことがあるので注意が必要です。
なお、成長痛は4~8歳頃にみられ、ほとんどの場合夜間に下肢の痛みを訴えます。また、痛みがでたりでなかったりを繰り返しますが左右両方の脛やふくらはぎが痛くなるのが特徴です。また、マッサージや痛み止めで症状は改善されます。
一方、骨肉腫の痛みは週単位・月単位に痛みがでることが多いのですが、ほとんどの場合痛みが完全に解消することはありません。
発生部位の腫れ
骨肉腫は、局所の痛みや腫れが数ヵ月〜半年間持続して発症します。一般的には肩や膝の周囲に痛みや腫脹を確認することが多いのですが、稀に病的骨折で骨肉腫を発症することもあるのです。
骨肉腫が疑われる場合に行われる検査
骨肉腫のようながんの検査ではさまざまな検査方法で診断を行います。また、この検査の結果により化学療法や手術などの治療計画が立てられるのです。
血液検査
骨肉腫のような骨の腫瘍は、血液検査を行っても異常が見つからないことがほとんどです。しかし、骨肉腫は、骨の代謝に関わる酵素であるアルカリホスファターゼ(ALP)の値が高くなる傾向があります。
また、高くなる要因として黄疸や骨の破壊・骨肉腫などがあるため、この値が高いことで骨肉腫の診断材料になります。ただし、成長期の小児はアルカリホスファターゼの値が普段から高いので注意が必要です。
画像検査
骨肉腫を診断するためにはレントゲン検査などの画像診断が重要になります。画像診断では骨肉腫の悪性度(グレード)を確認できるのです。
高悪性度の場合は、膝や肩などの骨肉腫が発生しやすい部位に骨膜反応(骨の外側にいびつな形の骨がある)や骨皮質の破壊(骨が虫食いに合ったように破壊されている)が画像にみられます。
CT検査は体の周囲からX線をあてることで、人体の吸収率をコンピュータ処理して体の断面を画像にする検査です。一方、MRI検査は、強力な磁石と電波で磁場を発生させて臓器や血管を画像化させる検査です。
どちらの検査もがんの有無や広がり、ほかの臓器への転移の有無を調べることができます。なお、目的によって造影剤を使用する場合があります。
骨シンチグラフィ検査は、撮影の3時間前に骨に集まる放射性薬剤(ガンマ線を出す薬剤)を静脈注射またはカプセルで服用します。この薬剤によって骨腫瘍や骨折箇所などの異常な部分を検知するのです。
それを特殊なカメラで撮影してコンピュータにより可視化されます。そのため、骨シンチグラフィ検査はがんの骨への転移の診断によく利用されます。
病理検査
病理組織検査は、患者さんの体内から腫瘍の一部を針や小手術で採取します。これを生検といいます。その後、採取された組織や細胞は病理医が観察して診断するのが病理診断です。
骨肉腫の治療についてよくある質問
ここまで骨肉腫の症状・治療方法・関連のある検査方法などについて紹介しました。ここでは「骨肉腫の治療」についてよくある質問にMedical DOC監修医がお答えします。
骨肉腫の治療の入院期間はどのくらいですか?
眞鍋 憲正医師
骨肉腫の治療では、術前の化学療法を3ヵ月程行ったのち患部の切除手術を行います。その後は術後の化学療法を6~9ヵ月間程行う治療方法が一般的です。ただし、術後の化学療法は治療がある間だけ入院することも可能な場合もあるので、担当のお医者さんと相談するとよいでしょう。
手術後も定期的な通院が必要ですか?
眞鍋 憲正医師
- 四肢(手足)機能の状態の確認
- 骨の再建状態の確認
- 薬物療法後の体調確認
- 再発の有無
なお、診察では手術部位のX線検査・胸部CT検査・胸部X線検査などが行われるでしょう。
編集部まとめ
骨肉腫は全体の60%が成長期の子どもの四肢に発生する悪性腫瘍ですが、発症する原因は明らかになっていません。
なお、骨肉腫の発症部位は約70%が膝関節周辺・膝に近い大腿骨・膝に近い脛の骨などになります。また、症状は患部の痛みと腫脹が主なものです。
また、子どもの下肢の痛みは成長痛と間違えやすい症状ですが、1ヵ月を過ぎても痛みが治まらない場合は病院で検査しましょう。
骨肉腫と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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骨肉腫は悪性度(グレード)が高い腫瘍といわれています。
骨肉腫と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
骨肉腫の初期症状には痛みが生じますが、子どもの成長痛と間違うことがあります。しかし、痛みが長期にわたる場合は1度医療機関を受診することをおすすめします。