「悪性リンパ腫の治療期間」はどのくらいかご存知ですか?治療法や副作用も解説!
悪性リンパ腫をはじめとする「造血器悪性腫瘍」は治療が長期にわたることもあるため、治療中の学業・仕事について不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、悪性リンパ腫の治療期間のほか、どのような治療が行われるのか・治療による副作用などについて解説します。
記事の後半では、治療から仕事復帰までの期間など「悪性リンパ腫についてよくある質問」にも答えていきますので、併せて参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫とは、造血器悪性腫瘍(血液のがん)の一種です。造血器悪性腫瘍には、悪性リンパ腫のほかに白血病・骨髄腫などが含まれます。
そのなかで、悪性リンパ腫とは血液中の「リンパ球」ががんになる病気です。
リンパ球にもさまざまな種類があるため、がん化する細胞の種類などにより悪性腫瘍は100以上のタイプに分かれます。
悪性リンパ腫の代表的な症状は首・わきの下・鼠径部を中心としたリンパ節の腫れ・しこりです。痛みは出にくいですが、症状が急激に強くなった場合には痛みを感じることもあるでしょう。
その他、発疹・発熱などの全身症状が現れる場合があります。
悪性リンパ腫の治療期間はどのくらい?
悪性リンパ腫の治療では、数年程かかるケースがほとんどです。
ただし、治療期間内でも入院が必要な時期・自宅で治療できる時期があります。
入院が必要な期間
悪性リンパ腫の治療期間のうち、入院が必要な期間は平均して半年~1年程です。
患者さんが義務教育を受けている年齢だった場合には、入院期間中は病院内にある院内学級に転校するという形で勉強を続けることが可能です。
なお、入院している間も医師の許可が出たタイミングで一時的に自宅で過ごせることがあります。
入院後の通院期間
入院での治療が終わった後は、通院を続けながら内服薬での治療などを行います。退院後の治療期間は、平均して1年~1年半程です。
この期間は、治療の副作用・病気の再発に注意する必要はありますが、健康な方とほぼ同じ生活を送ることができます。
体調に支障のない範囲で、就学・就労も可能になるでしょう。
悪性リンパ腫の治療方法
臓器のがんでは手術を行うイメージが強いかもしれません。
しかし、血液のがんでは全身が治療範囲となる可能性が高いため化学療法・放射線治療が治療の中心となります。
また、必要に応じて造血幹細胞移植を行う場合もあります。
化学療法
化学療法は、がん細胞を攻撃する薬を投与することで、がんを減少・消滅させるための治療方法です。
悪性リンパ腫の場合は、単剤または数種類の抗がん剤を組み合わせたり、化学療法と放射線治療を組み合わせたりします。
治療方針は患者さん自身の全身状態のほか、どのタイプの悪性リンパ腫かなどを考慮して決定します。
放射線治療
放射線治療とは、高エネルギーの放射線を人体に照射することでがん細胞を攻撃して、がんを減少・消滅させるための治療方法です。
悪性リンパ腫の場合は、放射線治療のみで治療を行うほか、化学療法と併用することで高い効果が期待できるとされています。
また、次に紹介する造血幹細胞移植に際して、体内にある腫瘍細胞・造血細胞の大部分を死滅させることを目的として全身照射を行います。
造血幹細胞移植
造血幹細胞とは、白血球・赤血球などの血液細胞のもとになる細胞です。
移植を行う場合には、患者さん自身の造血細胞を使用する自家移植と、ドナーから造血細胞の提供を受ける同種移植があります。
主に、化学療法・局所的な放射線療法のみでは治癒が困難と判断された場合などに選択される治療法です。
臓器にリンパ腫がある場合は手術を行うことも
悪性リンパ腫では、がん細胞が全身に存在する場合が多いです。
そのため、血液に乗って全身に効果を発揮する化学療法などが治療の主な選択肢となります。
しかし、リンパ腫がリンパ節ではなく臓器に存在する場合は、まれに手術を行う場合があります。
悪性リンパ腫の治療の主な副作用
悪性リンパ腫の治療では薬物・放射線などによりがん細胞を攻撃します。
しかし、がん細胞だけを選択して攻撃することは難しく、正常な細胞も治療の影響を受けるのです。
そのため、悪性リンパ腫の治療では下記のような副作用が見られる可能性があります。
感染症にかかりやすくなる
リンパ球をはじめとする血液細胞は、がん細胞と同じく分裂する力の強い細胞です。この特徴から、血液細胞は抗がん剤の攻撃を受けやすいといえます。
そのため、抗がん剤を始めると免疫力が下がり感染症にかかりやすくなります。
また、健康な方であれば免疫力により自然治癒するような感染症でも、免疫力が低下している時には急激に悪化する危険性があるため注意が必要です。
脱毛
毛根の細胞も血液細胞と同じく分裂の速度が速い細胞です。
そのため、化学療法を始めると髪が抜ける可能性が高いでしょう。
脱毛は化学療法開始からおおよそ2週間後に始まりますが、治療が終わると毛髪は徐々に生えてきます。
吐き気
抗がん剤の副作用として代表的なものに吐き気があります。
近年は吐き気を抑えるための薬(制吐剤)の開発が進み、こうした薬で患者さんの体調をサポートしながら抗がん剤治療を進めることが一般的です。
しかし、吐き気のほかにも下痢などの消化器症状や口内炎などが現れることもあり、食事の摂取に影響がでたり、食欲がわかず食事があまり取れないという方もいます。
骨髄抑制
前述のとおり、化学療法は造血・血液に関する細胞に大きな影響を与えます。
そのため、すでに血液細胞になったリンパ球・赤血球だけでなく、血液を作る骨髄の機能そのものが障害される骨髄抑制が起こるのです。
骨髄抑制が起こると、赤血球の減少による貧血・白血球の減少による免疫力低下・血小板の減少による出血しやすさなどの影響が現れます。
悪性リンパ腫の治療期間についてよくある質問
ここまで悪性リンパ腫の治療期間・治療方法・治療の副作用などを紹介しました。ここからは悪性リンパ腫の治療期間についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
悪性リンパ腫の種類によって治療期間が異なりますか?
中路 幸之助(医師)
悪性リンパ腫の平均的な治療期間は、今回の記事でも紹介したとおり入院・通院を合わせると1年半~2年半程です。ただし、質問にあるように治療期間は悪性リンパ腫のタイプ・選択する治療法によって変わる可能性があります。
仕事復帰までの期間はどのくらいですか?
中路 幸之助(医師)
仕事の内容により復帰までの期間には差が出ますが、デスクワークなどについては入院での治療を終えれば復帰できる可能性があります。ただし入院生活で体力が低下している可能性が高く、また体調に波があると感じる方も多いです。身体を動かすことが多い業務の方はもちろん、デスクワークをしていた方であっても、時間短縮勤務・配置換えも含めた無理のない復帰計画を立てていく必要があるでしょう。その他、治療の副作用である免疫力の低下・脱毛などによる外見の変化などが復帰の障害になる可能性もあるため注意が必要です。不特定多数の人が多く集まる場所での業務を減らす・在宅でできる業務に切り替えるなど、業務内容の調整を行うことで復帰を早められる可能性があります。
編集部まとめ
悪性リンパ腫の治療期間は平均して1年半~2年半と、手術が可能な臓器のがんと比べて長期間にわたります。
しかし、治療期間のうち半分程は自宅での内服治療になる場合が多いでしょう。この期間は、体調の悪化が無ければ学校や職場にも行くことができます。
ただし、悪性リンパ腫の治療中には免疫力の低下・骨髄抑制など全身にさまざまな影響が出ます。
そのため、学業・仕事への復帰は医師・医療機関スタッフとも相談しながら、無理のない範囲で進めていきましょう。
悪性リンパ腫と関連する病気
悪性リンパ腫と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 白血病
- 骨髄腫
白血病・骨髄腫は、悪性リンパ腫と同じ「造血器悪性腫瘍(血液のがん)」に分類されます。そのため、治療法・療養中の注意点には似ている部分も多い病気です。
悪性リンパ腫と関連する症状
悪性リンパ腫と関連している、似ている症状は2個程あります。
各症状の原因・対処法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- リンパ節腫大
- 発熱
悪性リンパ腫の主な症状は、リンパ節の腫れです。痛みは伴わないことが多いですが、症状が急激に強くなった場合には首・わきの下などリンパ節が多く集まる部分が痛いと感じることもあります。また、白血球の働きが弱まり発熱を繰り返す場合があります。