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「上咽頭がんの再発率」はどれくらい?症状・原因も解説!【医師監修】

 公開日:2024/08/17
「上咽頭がんの再発率」はどれくらい?症状・原因も解説!【医師監修】

上咽頭がんは、治療により消えたことが確認された後でも、がん細胞が体のどこかに潜んでいて再発する可能性があります。

再発とは、外科的治療で取り切れなかったがん細胞や放射線療法で小さくなったがん細胞が、再び大きくなったり体のほかの臓器に現れたりすることです。

がんの再発と聞くと、その後の治療や予後が気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、上咽頭がんの症状や原因・再発や転移のリスク・再発した際の生存率・治療方法を解説します。

渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

上咽頭がんとは?

鼻の奥から食道まで続く管を咽頭といい、その上部が上咽頭です。その上咽頭に発生するがんを上咽頭がんといいます。転移しやすいのが特徴です。
中国南部や東南アジアで多くみられ、その地域で伝統的に食されている魚が上咽頭がんのリスクを高めているといわれています。
人口10万人に1人の割合で発症するとされており、とても稀ながんです。日本では、年間500~800人程が発症するがんです。

症状

上咽頭がんは、初期の段階では自覚症状を伴わない場合がほとんどです。発見された際には、すでにリンパ節への転移がみられ頸部のしこりを認めることが多いようです。
そのほかには以下の症状があります。

  • 鼻づまり(鼻閉感)
  • 鼻血(鼻閉感)
  • 鼻水に血が混じる
  • 耳の詰まり感(耳閉感)
  • 聞こえにくい(難聴)
  • 目が見えにくくなる
  • 二重に見える(複視)

上咽頭は、耳や鼻をつなぐ管(耳管)や頭部に近い場所に位置しています。上咽頭にできた腫瘍により、周辺の臓器に影響を与え症状として現れるのです。
鼻・耳・脳神経に関わる症状がある場合、上咽頭がんの可能性が考えられます。気になる症状があれば、早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

原因

上咽頭がんの原因として、EBウイルス(エプスタン・バール・ウイルス)が関係しているといわれています。また、喫煙や過度な飲酒(アルコール摂取)も、上咽頭がんを発生させる要因です。
喫煙と飲酒は悪性腫瘍を発生するリスクを高めるとされています。禁煙することや過度な飲酒を控えることは、がん予防につながる大切な行動の1つです。

好発年齢

上咽頭がんは40~60歳で多くみられ、10~30歳以下の若年層でもみられるがんです。男女比は3:1と男性に多い傾向があります。働き盛りといわれる年齢で発症する場合が多いため、生活と治療のバランスを考慮し社会復帰を目指す取り組みが大切です。
担当医師と治療法をよく相談し、治療中や治療後のイメージが持てるようにしましょう。

上咽頭がんの再発・転移リスク

初回の治療でがんが消えたと確認された後に、再発したり、ほかの臓器に転移したりする可能性があります。
ここでは、上咽頭がんの局所再発率・転移巣再発・再発時期・転移しやすい部位について解説します。

局所再発率

局所再発とは、最初と同じ場所やそこに極めて近い場所にがんが再び現れることです。上咽頭がんの局所再発率は10~20%といわれています。
手術によってがん細胞を切除しきれなかったり、放射線療法で小さくなった腫瘍が再度大きくなったりする場合があります。

転移巣再発率

転移巣再発とは、原発巣から離れた臓器や器官にがんが発生することです。遠隔転移ともいわれます。上咽頭がんの転移巣再発率は50~60%といわれており、局所再発よりも高い割合で発生します。

再発時期

上咽頭がんは、初回治療が終了した後、2年以内に再発することが多いとされています。治療によりがんが消えたと診断された後は、定期的に受診し検査を受けることが必要です。
がんの進行具合や治療法により個人差はありますが、治療後2年以内は継続的に受診することが大切です。再発リスクが高い上咽頭がんの場合、少なくとも5年間は経過観察のため受診が必要となります。

転移しやすい部位

上咽頭がんは転移しやすい特徴があります。遠隔再発しやすいのは、骨・肺・肝臓・縦郭リンパ節・胃・副腎などがあげられます。

上咽頭がん再発後の生存率

上咽頭がんは再発する可能性が高いがんです。再発症例29例中、局所領域の再発治療後の3年生存率は25%、遠隔再発治療後の3年生存率は43%という報告があります。
また、上咽頭がんの全体の5年生存率は40%、早期であるstage1の場合の5年生存率は90%という報告もあります。再発してからの生存率は、再発部位や治療法により異なってくるでしょう。
より生存率を上げるためには、早期に発見できがんが進行する前に適切な治療を受けられることが大切です。

上咽頭がんの治療法

上咽頭がんの治療法として、放射線治療・薬物療法があります。また、再発時には、放射線治療と薬物療法を併用した治療法が一般的です。ここでは、上咽頭がんの治療法を詳しく解説します。

放射線治療

放射線治療とは、がん細胞に放射線を当ててがん細胞を破壊し消滅させたり小さくしたりする治療法です。
上咽頭がんは低分化・未分化な組織型が多く、放射線治療に対する感受性が高いのが特徴です。そのため、上咽頭がんの治療では病期に関わらず標準治療として行われます。
体の表面から当てる外部照射を、週5日・1日1回を6~7週間のペースで30~35回受けます。

薬物療法

上咽頭がんの薬物療法は、がんの治癒や身体機能の温存を目的として行われます。以下の薬物療法があげられます。

  • 化学放射線療法(放射線療法と同時に行う)
  • 導入化学療法(化学放射線療法の前に行われる)
  • 補助化学療法(化学放射線療法の後に行われる)

化学放射線療法は、進行がんの場合に放射線療法と併用し薬物療法を行う治療法です。
導入化学療法は、化学放射線療法の前に行われる薬物療法です。薬物療法により腫瘍を減らし、治療の効果を高めることを目的に行います。
複数の薬剤(細胞障害性抗がん薬)を組み合わせたり、分子標的薬を併用したりして行います。
補助化学療法は、化学放射線療法の後に行う薬物療法で、治療効果をさらに高めたい場合に行う薬物療法です。
薬物療法を行う際には、薬の作用や副作用などの説明をしっかりと受けるようにしましょう。

再発時の治療法

上咽頭がんが再発した際の治療は、延命や症状の緩和を目的とした治療が行われます。原発巣再発の場合は、初回の治療と同じく放射線療法を選択するのが一般的です。
しかし、放射線療法は臓器への障害が懸念されています。そこで近年推奨されているのがIMRT(強度変調放射線療法)です。
コンピューターで放射線の量を調整でき、複雑な形のがんに対して適切な量を照射できるのです。放射線治療後に現れる副作用を軽減できると期待されています。
遠隔転移の場合には、化学療法が行われます。また、頸部リンパ節再発の場合、治癒切除が期待できる頸部郭清が行われることがあります。重要な臓器への転移が確認された時は、放射線の再照射を選択する場合が多いようです。

上咽頭がんの再発についてよくある質問

ここまで上咽頭がんの概要や再発などを紹介しました。ここでは「上咽頭がんの再発」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

再発時も放射線治療を行いますか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

再発時の治療法のところでも解説しましたが、原発巣に再発した場合、初回の治療と同様に放射線治療が行われます。従来の放射線療法では、線量が臓器に蓄積されることで側頭葉壊死や咽頭出血などの合併症を起こす症例が多くみられました。そこで、近年注目されているのがIMRT(強度変調放射線療法)です。効果を発揮したいがんに対して適切な量の放射線を当てることができるため、多臓器への影響を少なくすることが期待されています。

初回の治療法によって再発率を下げることは可能ですか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

初回の治療法は、再発するリスクを下げることにつながります。原発巣のがんや転移しているがんを放射線療法や薬物療法、外科的治療で取り除いたり小さくしたりすることで、再発するリスクを軽減できるのです。しかし、初回の治療でがんが消失したと判断された場合でも、再発するリスクはあります。再発した場合にも、早期に発見し早期に治療を受けることで生存率を高めることができます。

編集部まとめ

上咽頭がんは、多臓器へ転移したり再発したりするリスクがあるがんです。

初期の段階では症状がないため気付きにくく、リンパ節への転移により発見される場合があります。

そのほかの症状では、耳・鼻・脳神経の症状が出現します。

上咽頭は外科的治療が難しい場所に位置しているため、治療法の第一選択は放射線療法です。また、がんの進行状況により薬物療法を併用する場合もあります。

初回治療後2年以内に再発するリスクがあるため、定期的な通院と検査を受け早期発見につなげることも大切です。

上咽頭がんと関連する病気

「上咽頭がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭に分類され、鼻の奥から食道までの食物や空気が通る部分です。上咽頭がん以外にも、咽頭にできるがんはあります。また、咽頭の近くにはリンパ節が多く集まる頸部があるため、リンパ節転移により頸部腫瘤を認める場合もあります。頭頚部に気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

上咽頭がんと関連する症状

「上咽頭がん」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについて詳細はリンクからMedical DOCの開設記事をご覧ください。

関連する症状

  • 鼻づまり(鼻閉感)
  • 鼻水に血が混じる
  • 耳がつまる感じ(耳閉感)
  • 聞こえにくい(難聴)
  • 目が見えにくくなる
  • 二重に見える(複視)
  • 頸部の腫れ(頸部腫瘤)

上咽頭がんは進行すると、鼻・耳・脳神経などの症状が現れます。上記のような症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。がん治療は、早期発見・早期治療が大切です。

この記事の監修医師