「卵巣がんの原因」となる可能性の高い食べものはご存知ですか?医師が徹底解説!
卵巣がんの原因とは?Medical DOC監修医が卵巣がんの原因・原因となる可能性の高い食べもの・症状・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
「卵巣がん」とは?
卵巣がん(卵巣癌)とは、卵巣に発生する悪性腫瘍のことです。
卵巣は女性の生殖器の一部で、卵子を含む卵胞の貯蔵及び成熟の促進、排卵を行い、産生し、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)を分泌する役割を持っています。卵巣がんは、初期段階では症状がほとんど現れないことが多く、発見が遅れがちです。そのため、見つかったときはすでに進行していることが多く、早期発見が難しいがんの一つとされています。進行すると、お腹が膨れる感じや痛み、食欲低下、排尿時の痛みや排尿のしにくさ、便秘といった症状が現れます。
卵巣には、女性ホルモンを分泌する細胞(性索細胞)や、胚細胞、表層上皮の細胞、またそれらの間をとりなす間質細胞(かんしつさいぼう)などのさまざまな細胞があります。そのため、卵巣から発生するがんも、いろいろな種類のものがあるということになります。
卵巣がんの主な症状には、腹部の膨満感や痛み、頻尿、食欲不振、体重減少などがあります。しかし、これらの症状は他の疾患とも重なるため、卵巣がんを疑うのは難しいことがあります。そのため、定期的な婦人科検診や、不安な症状がある場合は早めに医師に相談することが重要です。卵巣がんのリスクを減らすためには、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
今回の記事では、卵巣がんの原因として考えられているものについて、また卵巣がんの予防には何が役立つと考えられるのかについて解説していきます。
卵巣がんを発症する原因
まずは、卵巣がんを発症する原因について解説していきます。現在、卵巣がんの危険因子として考えられているものをご紹介しましょう。
遺伝的要因
卵巣がんの発症には、遺伝的な要因が関わっている場合があります。
特に、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)という症候群がよく知られています。この病気は、主にBRCA1やBRCA2という遺伝子の変異によって引き起こされます。HBOCは乳がんや卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんといったがんのリスクを高めます。
そのため、もしも家族に卵巣がんや乳がんの方が多いなどといった場合、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けることがすすめられます。
年齢
上皮性(じょうひせい)の卵巣がんを発症するリスクを高める因子の一つに、年齢が高いということがあります。
卵巣がんが 40 歳未満の女性に発生することは、ゼロではありませんが少ないです。
ほとんどの卵巣がんは閉経後に発症し、卵巣がんの半数は 63 歳以上の女性に見られます。
出産が遅い、出産経験がない
高齢出産した女性、または出産経験がなかった女性は、卵巣がんのリスクが高くなります。
一生涯での排卵の回数が多くなることが、卵巣がんを発症するリスクと関連しているのではないかと考えられています。
太り過ぎまたは肥満
卵巣がんに限ったことではありませんが、肥満は多くのがんを発症するリスクの増加と関連しています。
卵巣がんのリスクと肥満に関しては明確な情報は現時点ではありません。しかし、肥満の場合、体脂肪が多くなり、結果エストロゲン産生が増加し、卵巣癌に関与している可能性が指摘されています。肥満の女性、すなわちBMI(Body Mass Index: 体重kg ÷ 身長(m)2)が30以上の女性は、卵巣がんを発症するリスクが高いと考えられます。ただし、必ずしも悪性度の高いタイプの卵巣がんになるわけではありません。さらに、もし卵巣がんになってしまった場合、肥満は卵巣がんの女性の全生存期間にも悪影響を与える可能性があると考えられています。適度な運動とバランスの取れた食事を心がけることが重要です。
子宮内膜症
子宮内膜症が卵巣がんの原因となる可能性があります。
子宮内膜症とは、子宮の内側の組織(子宮内膜)が子宮の外で成長してしまう状態を指します。現在では10人に1人の女性が罹患すると言われております。子宮内膜症になると、痛みや不妊の原因となることがあります。
いくつかの研究では、子宮内膜症がある女性は、卵巣がんのリスクが高まる可能性があることが示されています。子宮内膜症による炎症反応やホルモンの変化が、卵巣組織の異常な増殖を引き起こし、がんへと進行するのではないか、と考えられています。つまり、子宮内膜症にならないようにすることも卵巣がんを予防するために重要とされます。
しかし、すべての子宮内膜症患者が卵巣がんを発症するわけではありません。また、子宮内膜症と卵巣がんの関係は複雑で、他の要因も関与している可能性があります。子宮内膜症になると、不妊の原因にもなります。そのため、子宮内膜症の診断を受けた場合、婦人科などを受診し、経過観察あるいは治療を行なっていくことが大切です。
卵巣がんの原因となる可能性の高い食べもの
卵巣がんの原因だと明確にわかっている食べ物は、現時点ではありません。そこで、ここでは食べ過ぎるとがんになるリスクを高める可能性がある食べ物についてご紹介します。
高脂肪食品
ファストフード、揚げ物、バター、クリーム、チーズなどの高脂肪乳製品の過剰な摂取は、肥満を引き起こす可能性があります。先程述べた様に、肥満は卵巣がんのリスクを高めると考えられています。高脂肪食品は、卵巣のエストロゲンというホルモンの分泌を過剰にしてしまい、卵巣がんができるリスクを高めてしまう可能性があると考えられています。
砂糖や精製炭水化物が多い食品
砂糖や精製された炭水化物を過剰にとることで、インスリン抵抗性が引き起こされます。インスリンは血液中のブドウ糖を低下させる働きのあるホルモンのことです。インスリン抵抗性が高まると、2型糖尿病になる危険があります。2型糖尿病では、慢性的に血液中のインスリンの濃度が高まり、これが発癌のリスクを高めることにつながるというメカニズムが考えられています。
冷凍食品や出来合いの食品
冷凍食品や出来合いの食品など超加工食品の摂取量が多いほど、がんの発症や死亡リスクが増大するという調査結果があります。この調査は英国で約20万人を対象に実施されています。調査対象者の半数超は女性で、特に卵巣がんのリスクが高いことが分かりました。
超加工食品には、出来合いのスープやソース、冷凍ピザ、調理済み食品、ホットドッグ、ソーセージ、フライドポテト、ソーダ、市販のクッキー、ケーキ、キャンディー、ドーナツ、アイスクリームなどが含まれています。健康のために超加工食品を減らすことは大切です。
アルコール飲料
ビールやワインなどといったアルコールの過剰な摂取は、卵巣がんを含むさまざまながんのリスクを高める可能性があります。
日本人男性を対象とした、アルコール摂取量と発がんのリスクを調べた研究があります。その結果は、1日あたりの平均アルコール摂取量が、純エタノール量換算で23g未満の人に比べ、それより多く摂取している人のがんになるリスクが高くなることが分かりました。
お酒を飲む場合は、以下のいずれかの量までにしておくようにしましょう。
- ・日本酒 … 1合
- ・ビール大瓶(633ml) … 1本
- ・焼酎・泡盛 … 原液で1合の2/3
- ・ウィスキー・ブランデー … ダブル1杯
- ・ワイン … グラス2杯程度
塩辛い食べ物
日本人におけるがんの要因として、重要なものの一つに塩分の過剰摂取があります。いくらや塩辛などの塩分濃度の高い食べ物は、特に胃がんのリスクを高めることが知られています。
卵巣がんと高塩分食の直接的な関係は明確ではありませんが、減塩によって高血圧や循環器疾患といった他の病気のリスクの低下にも効果が期待できます。
1日あたりの食塩摂取量を男性は7.5g未満、女性は6.5g未満にすることが厚生労働省から推奨されています。
卵巣がんの代表的な症状
それでは、卵巣がんの代表的な症状について述べていきます。
腹部の膨満や痛み
卵巣がんが進行すると、腫瘍や腹水のために腹部が膨らみ、不快感や痛みを感じることがあります。安静にする、軽いマッサージを行う、痛み止めの薬を服用するなどの対処法があります。しかし、根本的な解決にはならないため、症状が続く場合は医師の診察を受けることが重要です。
排尿や排便の異常
卵巣がんが膀胱や直腸に圧迫をかけると、頻尿や便秘などの症状が現れることがあります。適切な水分摂取、食物繊維の摂取を心がけることで、一時的に症状が改善することがありますが、症状が続く場合は医師に相談してください。
婦人科や消化器科を受診し、必要に応じて専門医の診察を受けることが重要です。
不正出血や月経異常
卵巣がんの進行により、月経周期が乱れたり、月経以外の出血が見られたりすることがあります。出血がひどい場合は安静にし、医師に相談することが重要です。
婦人科を受診し、早期に診断と治療を受けるようにしましょう。
卵巣がんの予防法
定期的に婦人科検診を受ける
定期的に婦人科検診や健康診断を受けることで、卵巣がんを含むさまざまな病気の発見に繋がります。しかし、卵巣癌の評価のためには、経腟超音波検査(性交渉歴が無ければ、経直腸超音波検査)が必須になります。そのため、婦人科検診を受ける際には、経腟超音波も追加で行うようにしましょう。また、遺伝的な要因があると考えられるような場合、専門医やカウンセラーによる遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けることが勧められます。
健康的な体重の維持と適切な睡眠
健康的な体重を維持することは、ホルモンバランスを正常に保ち、卵巣がんを含む多くのがんのリスクを減らすことに役立ちます。カロリーの過剰摂取を避け、規則正しい食事と適度な運動を心がけることで、理想的な体重を維持しましょう。
また、7時間以上の睡眠が、卵巣がんのリスクを下げるという報告もあります。
さらに、ストレスが過剰にかかると、卵巣がんのみならず全てのがんのリスクが上がるということも報告されています。休養をとり、リラックスすることも大切です。
禁煙と適度なアルコール摂取
喫煙は多くのがんのリスク因子とされており、禁煙することで全体的ながんリスクを減少させます。また、適度なアルコール摂取は、卵巣がんを含むがんのリスクを低減させる可能性があります。
完全な禁煙と節酒を目指しましょう。
「卵巣がんの原因」についてよくある質問
ここまで卵巣がんの原因などを紹介しました。ここでは「卵巣がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がんは何歳以上になると罹患率が高くなりますか?
阿部 一也 医師
卵巣がんの年齢階級別罹患率(2019年)では、40歳以降で卵巣がんにかかる人は多くなり、50〜54歳で卵巣がんと診断される人はピークになります。特に閉経後の女性においては、罹患率が顕著に上昇することが多いです。しかし、これはあくまで統計上の傾向であり、卵巣がんは若年層にも発生する可能性があるため、年齢に関わらず、異常を感じた場合は医師に相談することが重要です。
卵巣がんを発症しやすい人の特徴を教えてください。
阿部 一也 医師
卵巣がんを発症しやすい人にはいくつかの特徴やリスク因子があります。家族に卵巣がん・乳がんの方がいる方では遺伝的に卵巣がんを発症しやすい可能性があります。そして未婚または子供を産んでいない、または遅い年齢での初産も、卵巣がんのリスクを高めるとされています。また、子宮内膜症や乳がんの既往がある場合もリスクが高まることがあります。さらに、肥満、喫煙、高脂肪食の摂取などがリスクを高める可能性もあります。
卵巣がんの前兆となる初期症状について教えてください。
阿部 一也 医師
卵巣がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、卵巣がんは発見が難しく、「サイレントキラー」とも呼ばれます。
卵巣がんの発症と性行為に関連性はありますか?
阿部 一也 医師
卵巣がんの発症と性行為の関連性については、現在でもさまざまな研究が行われていますが、明確な因果関係はまだ確立されていません。
ただし、一部の研究では、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が卵巣がんのリスクを上げるのではないかと報告されています。性行為によってHPVに感染することで、間接的に卵巣がんのリスクに影響を与える可能性はあると考えられます。
ただし、これらの研究結果はあくまで関連性を示すものであり、性行為そのものが直接的に卵巣がんを引き起こすという証拠はありません。卵巣がんのリスクを下げるためには、定期的な健康診断やリスク因子の管理が重要です。
編集部まとめ
今回の記事では、卵巣がんの原因や予防方法について解説しました。
卵巣がんのリスクを高めるものとしては、遺伝的な要因がもっとも大きいと考えられています。一方、肥満や子宮内膜症など、ご自身でケアできる可能性のあるものもあります。今回の記事が参考になれば幸いです。
「卵巣がんの原因」と関連する病気
「卵巣がんの原因」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)
- 子宮内膜症
内分泌科の病気
卵巣がんの原因としては、遺伝性乳がん・卵巣症候群は重要です。家族に卵巣がんや乳がんの方がいる場合には、一度遺伝カウンセリングなど専門の外来を受診することを検討してみましょう。
「卵巣がんの原因」と関連する症状
「卵巣がんの原因」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹部の膨満感や圧迫感
- 下腹部の痛みや不快感
- 排尿・排便の変化
- 不正出血
これらの症状は卵巣がんに特徴的ではなく、他の病気でも見られます。そのため、こうした症状がある場合には、医療機関を受診するようにしましょう。