「肺がんの検査方法」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!【医師監修】
肺がんは、生命に欠かせない呼吸の機能を担っている「肺」に発症します。初期の自覚症状がほとんどなく、がんの中で死亡者数が多いがんです。
この記事では肺がんを確定する検査方法について、肺がんになりやすい人や肺がんの治療方法とともに解説します。
肺がんについて知り、早期発見のための肺がん検診を受けるきっかけとなれば幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺の細胞や気管支ががん化した状態を肺がんといいます。早期では症状がほとんどなく、症状を自覚する頃には進行していることが多いです。
ほかのがんに比べて進行が早く、リンパ節・肺のほかの部分・脳・骨・肝臓・副腎などほかの場所に転移しやすいのも肺がんの特徴の1つです。日本ではがんの中で死亡者数が多いのが肺がんで、40歳頃から罹患率が増え始めます。
肺がんと診断される方の数・死亡者数ともに男女比は約2:1と男性のほうが高くなっています。5年相対生存率は約35%です。
肺がんを確定するための検査方法
肺がんの診断は、まず胸部X線検査で状態を確認し、異常が発見された場合は胸部CT検査で病変の大きさや場所を確認します。
がんの疑いがある場合に行われるのが細胞や組織を採取して調べる病理検査です。ここからは、肺がんの主な検査方法の詳細について解説します。
胸部X線検査
肺がんが疑われた場合、最初に実施することが多いのが胸部X線検査です。レントゲンと呼ばれることもあり、一般的な健康診断で検査項目に入っていることからなじみ深い検査の1つかと思います。
X線を照射した状態で胸部を撮影し、肺がんの疑いのある影の有無を画像で確認します。肺がんの検査では造影剤を使う必要はなく、検査時間は5分ほどです。
喀痰細胞診
喀痰細胞診は、喫煙歴が長いなど肺がんのリスクが高い方を対象に実施されます。数日分の痰を採取し、痰の中のがん細胞の有無を調べる検査方法です。
CT検査
CT検査は胸部X線検査や喀痰細胞診で異常が認められた場合に、状態をより詳しく調べるために行われます。体の横方向からの二次元的な画像となるX線検査に対して、CT検査では三次元的に体の断面を画像にすることが可能です。
気管支鏡検査・生検
気管支鏡検査・生検は直径5mmほどの内視鏡を鼻または口から挿入し、気管支の観察と細胞・組織の採取を行う検査です。
実施の際は喉に麻酔をかけてから内視鏡を入れることで痛みを軽減しますが、稀に出血や気胸(肺に穴が開く)といった合併症が起きることがあります。
経皮的針生検
経皮的針生検は気管支鏡検査による検査や組織採取が難しい場合に用いられます。X線・CT・エコーなどで病変の位置を確認しながら、細い針を体の外側から刺して細胞や組織を採取する検査です。
胸腔鏡検査
胸腔鏡検査は胸部を小さく切開し、内視鏡を直接挿入して細胞や組織を採取する検査方法です。
手術の実施が予定されている場合は、胸腔鏡検査と手術を同時に実施することがあります。全身麻酔で行うことが多く、体への負担が大きい方法です。
がん遺伝子検査
がん遺伝子検査はがんの遺伝子に異常がないかを調べる検査です。採取した組織や細胞をもとに、必要に応じて行われます。医師の判断による場合は保険診療での検査が可能です。
遺伝子に異常があることが判明した場合は、遺伝子変異に応じた治療が行われます。遺伝子検査により薬の効きやすさや副作用の出やすさがわかるため、患者さんに適切な治療薬の種類や投与量を判断できます。
肺がんになりやすいのはどのような人?
がんの発生原因は十分に解明されていませんが、たばこを吸っている人は肺がんのリスクが高くなります。非喫煙者と比較して、喫煙者は男性で約4倍・女性で約3倍肺がんになりやすいといわれています。
「1日の喫煙本数 × 喫煙年数」の数値が大きいほどリスクが高く、既に禁煙していてもたばこを吸っていた期間が長い方は注意が必要です。喫煙以外では、受動喫煙・大気汚染・アスベストなども肺がんのリスクを高めることが知られています。
また間質性肺炎・慢性閉塞性肺疾患(COPD)など肺に持病を持つ方についても、肺がんを発症しやすいといわれています。
肺がんの治療方法
肺がんは「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に大別でき、この組織型分類によって治療方法が異なります。ここからは、各治療方法について詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法では、薬によりがんの治癒・進行の抑制・症状の緩和を目指します。肺がん治療に使用される薬は主に次の3種類です。
- 細胞障害性抗がん薬:がん細胞の増殖の仕組みを阻害することでがん細胞を攻撃する薬です。非小細胞肺がんおよび小細胞肺がんの治療薬として使用されます。がん以外の細胞も影響を受けます。
- 免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞を攻撃する免疫の働きを助ける薬です。非小細胞肺がんおよび小細胞肺がんの治療薬として使用されます。
- 分子標的薬:特定の分子を標的とする薬で、非小細胞肺がんの治療で使用されます。がん以外の細胞に影響を与えずピンポイントで効果を発揮させることが可能です。がん遺伝子検査により異常が見つかった場合は、遺伝子異常に対応する分子標的薬を使用することがあります。
治療の際は上記の薬を複数組み合わせる場合や、放射線療法や手術と併用する場合があります。
放射線療法
放射線療法はがんに放射線を照射することで、がんの治癒・進行の抑制・症状の緩和を目指します。非小細胞肺がんの場合は、がんを手術で切除できない場合に放射線療法が用いられます。
範囲が限定的な小細胞肺がんについても放射線療法の対象です。患者さんの体の状態が良い場合は、放射線療法と薬物療法(細胞障害性抗がん薬)を組み合わせた「化学放射線療法」の実施が可能です。
手術
がん細胞を切除する治療法が手術です。非小細胞肺がん・小細胞肺がんともに手術によってがんを取りきることができる場合に選択されます。切除範囲によって次の3つの方法がありますので確認しましょう。
- 縮小手術:がんの大きさが2cm以下の場合の手術方法で、がんのある部分のみを切除します。切除範囲が狭く、肺の機能を温存することが可能です。
- 肺葉切除術:肺の中にある区画を肺葉といい、右肺は3つ・左肺は2つの肺葉に分かれています。肺葉切除術ではがんのある肺葉を切除します。周囲のリンパ節の切除をあわせて行うのが一般的です。
- 片側肺全摘手術:左右の肺のうち、がんがある方の肺をすべて切除する方法です。がんの広がりが大きく肺葉を越えている場合や気管支に及んでいる場合に実施されます。体にかかる負担が大きいため、患者さんの体の状態を考慮したうえで検討されます。
小細胞肺がんの場合は基本的に肺葉切除術が実施され、縮小手術や片側肺全摘手術が行われることは少ないです。非小細胞肺がんでは、病期やがんの広がりに応じて切除範囲が決められます。
肺がんの検査についてよくある質問
ここまで肺がんの検査方法・治療方法などを紹介しました。ここでは「肺がんの検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
転移の有無を調べるための検査について教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
肺がんから別の場所への転移の有無を調べる検査としては、CT検査・MRI検査・PET-CT検査・骨シンチグラフィがあります。CT検査は肺がんの検査にも使われますが、胸部の周辺臓器・リンパ節への転移、腹部の肝臓・副腎などへの転移を調べるためにも利用されます。MRI検査は磁気を使って体内を詳細に画像化する検査で、脳や骨への転移を調べることが可能です。
肺がん検査を定期的に受けたほうが良いのは何歳からですか?
甲斐沼 孟(医師)
肺がん検診は40歳から1年に1回検査を受けることを強くおすすめします。肺がんは部位別のがん死亡者数が最も多いがんで、かかる人が増加するのは40歳代からです。ほかのがんと同様に、早期発見・早期治療によりがんで命を落とす可能性を下げることができます。ただし早期の肺がんは自覚症状がなく、早期発見のためには定期的な肺がん検診を受けることが重要です。肺がんの検査は主に胸部X線検査で行われます。喫煙歴が一定以上の方は胸部X線検査に加えて喀痰細胞診が有効です。
編集部まとめ
肺がんの検査方法・なりやすい人の特徴・治療方法について解説しました。初期では自覚症状がない一方で、進行が早く転移しやすいのが肺がんの特徴です。
胸部X線検査により早期発見が可能な病気でもありますので、40歳以降は1年に1度、定期的に検診を受けるようにしましょう。発見が早いほど治療の選択肢が広がり、治癒しやすくなります。
たばこを吸う習慣がある方は肺がんになりやすいうえ、受動喫煙による周囲の方の肺がん発症リスクを高めてしまいます。早めの禁煙により、自身と周囲の方の健康を守りましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 間質性肺炎
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
いずれも肺がんの発生につながりやすいといわれている病気です。長引く咳・痰・息切れといった肺がんに似た症状が出現します。肺がんと同じく喫煙と関係が深い病気でもあるため、喫煙習慣がある方は禁煙をおすすめします。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんは症状が出る頃には既に進行しており、治癒が難しくなるといわれています。肺がん以外の病気の場合もありますが、上記の症状を自覚した場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。特に原因不明の咳・痰・発熱が5日以上続く場合は要注意です。