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「トリプルネガティブ乳がん」の症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

 更新日:2024/03/05
「トリプルネガティブ乳がん」の症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

トリプルネガティブ乳がんとは?Medical DOC監修医がトリプルネガティブ乳がんの症状・原因・生存率・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

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「トリプルネガティブ乳がん」とは?

トリプルネガティブ乳がんとは、乳がん細胞表面にホルモン受容体であるエストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン受容体(PgR)、HER2(ヒト表皮成長因子受容体2型)というタンパクが陽性ではない乳がんのことです。乳がん全体の約15%を占め、他のタイプと比べ進行が早く、再発率が高いとされています。

トリプルネガティブ乳がんの代表的な症状

乳房のしこり

トリプルネガティブ乳がんに特有の症状はありませんが、一番多い症状が乳房のしこりです。乳がんによるしこりは痛みがないことが多いです。良性の乳腺腫瘍や乳腺症、皮膚腫瘍でもしこりを自覚することがあります。触っただけでは分からないので、早めに乳腺科を受診してください。

血性乳頭分泌

乳頭から液体が出てくることを乳頭分泌といいます。水や乳汁のような分泌は問題ないことが多いですが、赤や茶色などの血性分泌物がみられた場合は要注意です。乳管内乳頭腫などの良性腫瘍のことが多いですが、乳がんの可能性もあります。早めに乳腺科を受診してください。

乳頭乳輪のただれ

乳頭や乳輪の皮膚の湿疹が改善しない場合、パジェット病という特殊な乳がんの可能性があります。皮膚科を受診し、良くならない場合は乳腺科を受診してください。

乳房の変形

乳がんでは乳房の大きさの左右差、赤み、皮膚や乳頭のへこみがみられることがあります。元々ある陥没乳頭は問題ないですが、新しく出現した変形は乳がんの可能性があるため、早めに乳腺科を受診してください。

トリプルネガティブ乳がんの原因

生活習慣

トリプルネガティブ乳がんに特有の原因はありませんが、飲酒は乳がん発症リスクを高めます。また、喫煙も乳がん発症リスクを高める可能性があります。閉経後の肥満も乳癌になるリスクを高めることが確実とされており、閉経前ではリスクを高める可能性があると報告されています。

糖尿病

糖尿病のある人は糖尿病でない人と比べて乳がんになるリスクが1.2~1.3倍とされており、糖尿病の人の乳がんになるリスクが高いことはほぼ確実です。

ホルモン補充療法、ピル

更年期障害の治療であるホルモン補充療法により乳がん発症リスクがわずかに高くなることが報告されています。また、ピルや低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬の使用により乳がん発症リスクがわずかに高くなる可能性があります。これらの薬を使用する場合は婦人科の主治医とよく相談して決める必要があります。

月経歴、妊娠・出産、授乳との関係

エストロゲンという女性ホルモンに暴露されている期間が長いほど、乳がん発症リスクが高くなります。「初経年齢が早い」ほど、「閉経年齢が遅い」ほど乳がん発症リスクが高いと報告されています。また、出産経験がない人の乳がん発症リスクが高いことは確実で、初産年齢が高い人で乳がん発症リスクが高いこともほぼ確実です。授乳経験のない人の乳がん発症リスクが高いことも確実です。

遺伝

乳がんの5~10%は遺伝性であるといわれています。血縁者に乳がんの方がいる女性は、いない女性に比べて2倍以上乳がんを発症しやすいといわれています。遺伝性乳がんの多くでBRCA1またはBRCA2遺伝子に変異があることがわかっています。卵巣がんも発症しやすいため「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」と呼ばれます。

トリプルネガティブ乳がんのステージ別・生存率

トリプルネガティブ乳がん・ステージ0の生存率

ステージ0は「非浸潤がん」といい、がん細胞が乳管・小葉の中にとどまっています。適切な治療を行えば、転移や再発することはほぼありません。トリプルネガティブ乳がんは進行が早いため、このタイミングで診断されることは稀です。症状はないことが多く、検診で発見されます。乳腺科でマンモグラフィー、乳腺エコー、造影MRI検査を行い、確定診断のために針生検を行います。全タイプの乳がんで5年生存率、10年生存率ともに100%であり、完治を望むことができます。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ1の生存率

ステージ1はしこりが2cm以下でリンパ節転移がない段階です。ステージ0との違いは「浸潤がん」であり、転移する可能性をもつことです。全タイプの乳がんで5年生存率は99.8%、10年生存率は99.0%であり、完治を望むことができます。乳房のしこりを自覚する場合があります。ステージ0と同様に乳腺科で検査を行います。また、ステージ1以上では遠隔転移がないかPET-CT等で確認します。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ2の生存率

ステージ2はステージ1と比べて、しこりが大きかったり、脇のリンパ節に転移があったりする状態です。ⅡA期はしこりが2~5cmでリンパ節転移がない、もしくはしこりが2cm以下で脇にリンパ節転移があります。ⅡB期はしこりが5㎝を超え、リンパ節転移がない、もしくはしこりが2~5cm以下で脇にリンパ節転移があります。全タイプの乳がんで5年生存率は95.5%、10年生存率は90.7%です。適切な治療を行うことで完治を目指します。乳房のしこりの症状があります。乳腺科でステージ1と同様の検査を行い、リンパ節転移が疑われる場合は、脇のリンパ節に針を刺す細胞診を行います。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ3の生存率

ステージ3はステージ2と比べてリンパ節転移があり、しこりの範囲も広がっている段階です。ⅢA期はしこりが5cmを超え、脇にリンパ節転移がある、もしくはしこりの大きさにかかわらず脇のリンパ節が固定されているか胸骨の横のリンパ節転移があります。ⅢB期はしこりの大きさに関係なく、胸壁に固定されたり、皮膚のむくみや潰瘍があったりします。リンパ節転移がない場合や、脇か胸骨の横のリンパ節にのみ転移があります。ⅢC期はしこりの状況にかかわらず脇か鎖骨上にリンパ節転移がある、もしくは脇と胸骨の横にリンパ節転移があります。全タイプの乳がんで5年生存率は80.7%、10年生存率は68.6%です。ステージ2より低いですが、完治を目指して治療します。乳房のしこりや変形を認め、皮膚にがんが露出している場合もあります。検査はステージ2と同様です。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ4の生存率

ステージ4はしこりやリンパ節転移の状況にかかわらず、他の臓器へ転移している状態です。全タイプの乳がんで、5年生存率は38.7%、10年生存率は19.4%であり、完治は難しくなります。乳がんは骨、肺、肝臓、脳に転移する傾向があります。骨に転移すれば背中や腰の痛み、肺に転移すれば息苦しさ、脳に転移すれば頭痛や麻痺などが現れることがあります。検査はステージ3と同様ですが、脳転移が疑わしい場合は頭部MRI検査を行います。

トリプルネガティブ乳がんのステージ別・治療法

乳がんの治療は、①手術(乳房部分切除術または乳房全切除術±再建)②放射線治療③薬物治療を組み合わせて行います。入院が必要な治療は手術のみです。乳房部分切除術は約3日の入院、乳房全切除術±再建は1-2週間の入院が必要です。ホルモン療法やHER2を抑える薬は効果がないため、抗がん剤で治療します。再発リスクが高い場合や転移性乳がんでは、免疫チェックポイント阻害剤を併せて使用します。BRCA1またはBRCA2遺伝子変異がある場合はPARP阻害剤を使用します。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ0の治療法

乳腺外科で手術を行います。可能であれば乳房部分切除術を行い、その後1か月程度温存乳房に放射線治療を行います。がんが広範囲に広がっている場合は、乳房全切除術±再建手術をします。ステージ0は転移の可能性が低いので、抗がん剤の治療は行いません。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ1の治療法

ステージ0と同様に手術を行います。可能であれば乳房部分切除術と温存乳房に放射線治療を行います。がんが広範囲に広がっている場合は、乳房全切除術±再建手術を行います。しこりが1cmを超える場合は術前または術後に抗がん剤を3~6か月行います。1cm以下の場合でも抗がん剤を行うことがあります。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ2の治療法

ステージ2では術前薬物治療で腫瘍を小さくしてから手術を行うことが多いです。術前後に抗がん剤±免疫チェックポイント阻害剤を3~12か月行います。可能であれば乳房部分切除術と温存乳房に放射線治療を行います。乳房全切除術±再建手術であっても、リンパ節転移がある場合は放射線治療を行うことがあります。術後は再発予防のために薬物治療を行います。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ3の治療法

特にⅢB、ⅢC期は局所進行乳がんといわれ、手術を可能にするために抗がん剤±免疫チェックポイント阻害剤の治療を行います。手術が可能となった場合には、手術を行い、その後放射線治療を行います。術後は再発予防のための薬物治療を行います。

トリプルネガティブ乳がん・ステージ4の治療法

ステージ4は薬による全身治療を行います。がんの治癒を目指すのではなく、がんの進行を抑えたり症状を和らげ、QOLの良い状態で長期の生存を目指したりします。1つの治療を行って効果があるうちは続け、効果がなくなったら別の治療に変更します。基本は通院ですが、症状が強い場合には入院治療が必要なことがあります。

「トリプルネガティブ乳がん」についてよくある質問

ここまでトリプルネガティブ乳がんの症状・原因・生存率・治療法などを紹介しました。ここでは「トリプルネガティブ乳がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

トリプルネガティブ乳がんは再発しますか?

山田 美紀山田 美紀 医師

トリプルネガティブ乳がんは他のタイプに比べて再発率が高いです。現在は抗がん剤に加えて免疫チェックポイント阻害剤も使用でき、再発率をさらに抑えることができます。早期発見し、適切な治療を受けることが重要です。

トリプルネガティブ乳がんは乳房を全摘出するのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

トリプルネガティブ乳がんという理由では全摘出しません。乳がんが乳房の広範囲に広がり、切除すると変形が大きくなる場合に全摘(±再建)を行います。遺伝性乳がんの場合は温存した乳房に再発する可能性が高いため、早期乳がんであっても全摘出を行う場合があります。

トリプルネガティブ乳がんは完治しますか?

山田 美紀山田 美紀 医師

抗がん剤がよく効くタイプであれば、早期発見し、適切な治療を行えば完治を望めます。最近は抗がん剤に加えて免疫チェックポイント阻害剤も使用できるようになり、さらに予後は良くなるでしょう。

編集部まとめ

トリプルネガティブ乳がんは他のタイプと比べ、進行が早く、再発率の高い乳がんです。抗がん剤でしか治療できませんでしたが、免疫チェックポイント阻害剤も使用できるようになりました。トリプルネガティブ乳がんに効果のある新薬の研究も進んでおり、予後が良くなることが期待されます。検診やセルフチェックで早期発見し、適切な治療を受けることが大切です。

「トリプルネガティブ乳がん」と関連する病気

「トリプルネガティブ乳がん」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

  • 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)

BRCA1またはBRCA2遺伝子変異のある乳がん患者さんは卵巣がんも発症するリスクが高まります。その場合は、婦人科とも連携して治療を行います。

「トリプルネガティブ乳がん」と関連する症状

「トリプルネガティブ乳がん」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房のしこり
  • 血性乳頭分泌
  • 乳頭乳輪のただれ
  • 乳房の変形

トリプルネガティブ乳がんに限らず、乳がんで起こりうる乳房の症状です。しこりや血性乳頭分泌は良性の乳腺腫瘤でも自覚する症状です。症状があれば、早めに乳腺科の受診をおすすめします。

この記事の監修医師