「肝臓がんの症状」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が徹底解説!
肝臓がんの症状とは?Medical DOC監修医が肝臓がんの症状・初期症状・末期症状・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
飯田 綾子(医師)
目次 -INDEX-
「肝臓がん」とは?
肝臓がんには分類があり、肝細胞がんと肝内胆管がんに大別されます。
そのうち、肝細胞がんが94%と大多数を占めます。この肝細胞がんの原因は、C型肝炎ウイルスが最多で、次にB型肝炎ウイルス、アルコールとなっています。
近年は抗ウイルス薬や肝炎ワクチンの発達によって、ウイルス性のものは減少傾向にあり、相対的に非アルコール性脂肪肝炎や原因不明の肝細胞がんが増加している状況です。
今回は肝臓がん、特に肝細胞がんの症状について説明していきます。
肝臓がんの代表的な症状
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、肝臓の病気は自覚症状が出にくいという特徴があります。これは肝臓がんにおいても同様で、初期の自覚症状は乏しく、がんが進行して初めて症状が出現することが多いです。
肝臓がんは基本的に慢性肝炎や肝硬変が背景にあるため、肝臓がんの症状と肝機能低下によって引き起こされるさまざまな症状と言えます。症状の種類は足のむくみ、黄疸、腹水、肝性脳症などです。ではそれぞれの症状について見ていきましょう。
黄疸
黄疸とは、肝臓の機能が低下しビリルビンとよばれる色素を代謝できなくなることで起こる症状です。白目の部分や皮膚が黄色くなったり、色のうすい便や黄褐色の尿が現れたりします。また、皮膚にかゆみを感じる方もいます。ビリルビンの数値は一般的な血液検査で確認できますので、黄疸が出ているかもと心配される方は一度かかりつけの内科や近くの病院を受診してください。
腹水・下肢のむくみ
肝臓がんの代表的な症状として、足のむくみや腹水(お腹に水が溜まること)が出ることもあります。これは肝機能の低下により、アルブミンという肝臓で合成されるタンパク質が減少してしまい、血管内に水分を保つことができないために起こります。血管内に水分をとどめておけないために、血管外のスペースである足の組織や、腹腔内というスペースに水分が溜まります。
摂取する塩分量を少なくすることで、ある程度症状を落ち着かせることは期待できますが、完全に改善するというわけでもありません。なかなか良くならない場合は早めに、近くの医療機関を受診してください。診断は血液検査や腹部超音波検査などを行うのが一般的です。治療には利尿剤が必要となることもあります。
肝性脳症
頭がぼーっとして意識や受け答えがはっきりしなかったり、手の指が震えたりする場合、肝性脳症が出現している可能性があります。
肝性脳症とは、肝臓の解毒機能が低下するために血液中のアンモニアなどの濃度が上昇することで発症します。
便秘やタンパク質の多い食事、消化管(食道や胃、腸など)からの出血で症状が悪化します。
便秘にならないように排便コントロールをしっかりと行い、分枝鎖アミノ酸製剤という薬剤を用いて再発しないように注意する必要があります。
肝性脳症を疑う症状が出た場合は、早急な対応が必要ですので早めに受診してください。専門の診療科は消化器内科や肝臓内科です。
胃食道静脈瘤
肝臓がんが発生する肝臓は、すでに肝硬変の状態となっていることが多いです。そして肝硬変では食道や胃に静脈瘤ができることがあります。
静脈瘤とは、肝臓が硬くなることで、肝臓を栄養する門脈という重要血管に血流が流れないようになり、それを補うように胃や食道の表面に側副路(本来の血流を補うように発達した別の血流路)を作って、血液が逆流してしまっている状態です。
静脈瘤それ自体には症状がないのですが、破裂すると大量に出血します。
気付かないうちに肝臓がんや肝硬変が進行していた場合、突然の吐血で発症し、そこで初めて肝臓の状態に気づくということもあります。
吐血や黒色便(便に黒いものが混じった状態)を認めた場合は、緊急止血術や輸血といった治療が必要になることもあるので、すぐに救急外来を受診してください。
代表的な症状
肝臓がんの前兆となる初期症状
肝臓がんの代表的な症状を示しました。では、肝臓がんの前兆となる症状はどんなものがあるのでしょうか?
倦怠感
肝機能が低下すると食欲が出ない、疲れが取れにくいなど倦怠感が現れます。肝機能の低下は血液検査で見つけることができます。禁酒、バランスの良い食事や、睡眠をよくとるなど生活習慣を見直しても倦怠感が続く場合は、一度かかりつけの医療機関を受診することをおすすめします。
こむら返り
こむら返りの原因はさまざまですが、肝硬変ではこむら返りがよく起こります。激しい運動をしたわけでもないのによく足がつるといった症状の方は、一度血液検査で肝臓の数値を見てもらうことをおすすめします。
右脇腹、みぞおちの横あたりの痛み
右季肋部(右脇腹、みぞおちの横あたり)の鈍い圧迫するような痛み、そして倦怠感や微熱といった症状が出ることがあります。
これは進行した肝臓がんで見られることがあり、厳密には初期症状ではないのですが、このような症状が肝臓がんを見つけるきっかけになることがあります。
早めにかかりつけを受診してください。
肝臓がんの末期症状
最後に肝臓がんの末期症状をお話したいと思います。
肝臓がんの症状は「がん」そのものによる症状よりも「肝機能の低下」による症状だと最初に述べました。肝臓がんの末期とは、がんに有効な治療がなく、いままで薬剤などで何とかコントロールできていた種々の症状が、コントロールできなくなった状態と言えると思います。また骨転移による痛みなど、転移による症状を伴うこともあります。
急激な体重減少
肝臓がんが進行して肝機能がさらに低下したり、がんが肝臓を主に栄養する血管に浸潤した場合、腹水が増加することがあります。大量の腹水のために胃が圧迫され、食事がとれなくなってきます。
対応策としては利尿薬を使用して尿から水分を排出することもありますが、大量にたまった腹水を利尿剤だけでなくすことは困難な場合が多いです。そのため、症状の緩和を目的に、注射器で直接腹水を抜くこともあります。
食事がとれなくなった場合は早めに医療機関を受診してください。
吐血・下血
先述のように肝硬変が進んで胃や食道に静脈瘤ができていた場合、急に破裂して大量に出血することがあります。肝臓がん末期での静脈瘤破裂は、たとえその後の緊急治療で止血できたとしても、肝機能がさらに低下してしまうため命に関わることもあります。
吐血、黒色便を認めた場合は、すぐに救急外来を受診してください。
急な激しい腹痛
肝臓がんがお腹の中で破裂した場合、急に激しい腹痛を伴うことがあります。早急な止血処置が必要となるため救急を受診してください。
肝性昏睡
肝臓がんのために肝機能がどんどん低下していくと、アンモニアなどがうまく解毒されず、アンモニア血中濃度がさらに高くなります。少しぼーっとする程度の脳症であれば、先に述べたように、分岐鎖アミノ酸製剤を投与したり、排便コントロールを行ったりすることで改善が期待できます。しかし肝臓がんの末期では、ひとたび脳症になるとそのまま昏睡状態となることもあります。このような状態になるまでにはいくらかの治療段階を踏んでいると思います。積極的な治療が困難なことも多いと思いますが、ご家族が受診を希望される場合は救急を受診させてください。
すぐに病院へ行くべき「肝臓がんの症状」
ここまでは肝臓がんの症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
急な激しい腹痛症状の場合は、救急科へ
急激な腹痛の場合は、肝臓がんがお腹の中で破裂した可能性が考えられます。また大量出血のために血圧低下なども認められることがあります。
緊急輸血や緊急止血が必要になりますので、救命救急センターを受診してください。
受診・予防の目安となる「肝臓がん」のセルフチェック法
- ・白目が黄色い場合
- ・尿が茶褐色である場合
- ・便が白い場合
- ・右脇腹付近に鈍痛がある場合
- ・下肢のむくみ、腹水を疑う症状がある場合
- ・手の指が震える、ぼーっとする症状がある場合
肝臓がんの予防法・早期発見方法
B型肝炎ワクチン接種
肝臓がんの予防として、最も重要な予防法は、B型・C型肝炎ウイルスに感染しない、ということです。
特に、B型肝炎ウイルスはワクチンで感染を予防することができ、2016年から定期接種となっています。もし、それ以前の方で人の体液(血液、性分泌液)などに触れる可能性のある方はワクチンを接種してください。
規則正しい生活習慣
肝臓がんの危険因子として肝硬変、アルコール過剰摂取、喫煙、肥満、脂肪肝、糖尿病が挙げられます。日常生活において、禁煙、節酒とカロリーを摂りすぎない食事、適度な運動を意識することが、肝臓がんのリスクを下げることができます。
健康診断
肝臓の病気は自覚症状が出にくいという特徴があるため、早期発見には定期的に健康診断を受けることが重要になります。健康診断では血液検査と、特に肝臓が心配な方は腹部超音波検査もおすすめします。
「肝臓がんの症状」についてよくある質問
ここまで肝臓がんの症状を紹介しました。ここでは「肝臓がんの症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肝臓がんで余命1ヶ月になるとどのような症状が現れますか?
飯田 綾子 医師
肝臓がんの末期症状として、黄疸や大量の腹水、肝性脳症が現れることが多いです。
肝臓がんの症状に全身のかゆみはありますか?
飯田 綾子 医師
肝機能の低下により黄疸が出ている場合、全身のかゆみが出ることがあります。
編集部まとめ
抗ウイルス治療のおかげで肝炎ウイルスによる肝臓がんが減った一方で、非ウイルス性の肝臓がんが増加しています。なかでも、アルコール性肝硬変や非アルコール性脂肪肝炎からの発がん割合が増加しています。アルコールの過剰摂取やカロリーの過剰摂取を控え、適度に運動をすることが肝臓がんの予防に繋がります。また、定期的に健診を受け、肝臓の数値を意識することも重要です。
「肝臓がんの症状」と関連する病気
「肝臓がんの症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
- 総胆管結石
- 胆管がん
- 胆嚢がん
肝臓がんの症状と同様の症状が出た場合、上記の可能性もあります。疾患により治療方法が変わるため、早めに内科を受診してください。
「肝臓がんの症状」と関連する症状
「肝臓がんの症状」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- お腹が張る
- 身体がだるい
- 全身がかゆい
- 身体がつる
肝臓がんの症状と考えられるものは上記が挙げられます。複数認める場合や長期間続く場合は、一度医療機関を受診しましょう。