「舌がんの症状」はご存知ですか?初期症状・末期症状も解説!【医師監修】
食事や会話といった日常生活に重要な役割を果たしている「舌」に発症するがんが舌がんです。
口の中に生じるがん(口腔がん)の中でもっとも発生率が高い舌がんですが、症状を知っていれば早期発見できる可能性が高いがんでもあります。
この記事では舌がんの症状や原因、診断方法とともに、舌がん以外の口腔がんの種類についても解説します。予防と早期発見に役立てていただければ幸いです。
監修医師:
若菜 康弘(医師)
目次 -INDEX-
舌がんとは?
口腔がんとは口の中にできるがんの総称で、舌がん(ぜつがん)は口腔がんの中でも舌にできるがんを指します。口腔がんは自分で見たり触ったりして確認できるため、他の部位のがんと比較して発見しやすいといえます。
舌がんは口腔がんの中でもっとも発生する割合が高く、口腔がん全体の約55%を占め、女性よりも男性の発症率が高いといわれています。
舌がんが発生する場所で多いのは舌両側の縁部分や裏側で、舌の先端や表面に発生することはあまりありません。がんは舌の表面の細胞から生じ、進行するにつれて深い場所へと広がっていきます。
舌がんを含む口腔がんはリンパ節や肺などに転移する可能性が高いため、早期発見と早期治療が重要です。舌がんの5年相対生存率は早期がんの場合で約90%、転移を伴う進行がんの場合で約50%となっています。
舌がんの症状
舌がんは、初期段階では痛みや出血があるとは限りません。ここからは見た目の変化や違和感など、舌がんの主な3つの自覚症状を詳しく紹介します。
舌に硬いしこりができる
舌がんの自覚症状の1つにしこりがあります。硬結と呼ばれる硬いしこりや腫れで、初期では痛みを伴うとは限りませんが、がんが進行するとしこりの硬さが増し、腫れが大きくなって痛みや出血が起こることがあります。口内炎と間違えやすいため、2週間以上治らない口内炎がある場合や、舌にしこりができた場合は医療機関を受診しましょう。
舌がただれる
舌の表面がただれたようになるのも舌がんの症状の1つで、赤く腫れる場合と白く変色する場合の2種類あります。
舌の粘膜が鮮やかな赤色になってただれる状態を紅板症といい、痛みを伴うのが特徴です。紅板症は約半分ががん化するといわれており、炎症部分が舌の内側にえぐれていく場合と、腫れて外側に盛り上がっていく場合があります。
一方、白くまだら状に変色する状態を白板症といい、舌の一部が白い膜に覆われたような状態になります。痛みはなく、擦っても取れないのが特徴です。
舌の表面にこのような違和感を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
舌の動きに対する違和感
舌がんが進行すると舌の動きに対する違和感が生じ、食事の際の飲み込みにくさや会話のしにくさといった症状が出てきます。舌は食事や会話など重要な機能を担っている部位です。がんが進行するほど治療後の機能回復に影響しますので、ささいな違和感であってもまずは医師に相談しましょう。
舌がんの原因
舌がんの原因は、他のがんと同様にはっきりとは解明されていません。いくつかの因子が関連し合ってがんの発生につながると考えられています。その中でも舌がんの発生と関連が深いとされているリスク因子を4つ紹介します。いずれも対策が可能なもののため、予防に役立ててください。
口腔内の不衛生
口腔内の不衛生は、舌がんをはじめとする口腔がんの発生要因の1つといわれています。口の中が不衛生な状態の具体例として以下のようなものがあります。
- 口の中や歯が汚れている
- 治療していないむし歯がある
- 舌苔(舌の白苔)がある
- 口の中が乾燥している
舌苔(はくたい)とは、舌の表面が白い苔のようなもので覆われている状態です。薄く白みがかっている状態は正常ですが、厚みのある白苔は細菌の温床です。舌苔は食べ物をよく噛んで食べる・会話をするなど舌を動かすことで自然と改善します。
口の中が細菌によって汚染された状態を放置すると、舌がんが発症しやすくなります。歯磨きを習慣化し、定期的に歯科検診を受けるなどして口腔内の衛生を保つようにしましょう。
口の中の乾燥は、積極的な水分補給や夜間の湿度管理といった工夫で改善が可能です。
飲酒
飲酒は舌がん発生の原因の1つで、喫煙に次いで影響力の高いリスク因子です。アルコールによる舌への刺激が慢性的に続くことでリスクが高まります。1日平均2合以上の飲酒はがん全体のリスクも高めるため、飲酒習慣のある方は摂取量を減らすよう心掛けましょう。
喫煙
喫煙は舌がん発生の最大のリスク因子とされています。がんの発生リスクを高める要因は、喫煙による舌への慢性的な化学的刺激と煙に含まれる発がん性物質です。舌がんをはじめとするがんの予防には禁煙も大切です。
炎症
舌や口内の粘膜の炎症も口腔がんのリスク因子の1つです。粘膜が炎症を起こす原因としては以下のようなものがあります。
- 尖った歯、傾いた歯、入れ歯などがあたって慢性的に擦れている部分がある
- 熱い飲食物により何度もやけどしている
- 刺激の強い食品(香辛料、酸味が強いもの、過度な塩気)をよく口にする
こうした刺激で舌の粘膜が繰り返し損傷することで、舌がんの発生リスクが高まるとされています。歯並びにより継続的に炎症を起こしている部分がある場合は、歯科で適切な治療と調整を受けましょう。また、刺激の強い食品が好きな方は、粘膜の回復が追い付かなくなるほど摂取しないよう食生活を工夫してみましょう。
舌がんの診断方法
舌がんは視診、触診、画像検査で状態確認を行い、細胞診や生体検査によって診断を確定します。
視診、触診は口腔内を直接目で見たり触れたりして、患部の状態、大きさ、硬さ、形などを確かめます。
がんの疑いがある場合、正確な大きさや深さを調べるために行われるのが画像検査です。超音波(エコー)、CT、MRIなどで体内の様子を確認し、リンパ節など他の部分に転移がないかどうかも確認します。舌がんは咽頭や食道にもがんが同時発生する可能性があるため、内視鏡(胃カメラ)が用いられる場合もあります。
がんの診断確定には細胞診や生体検査といった病理組織学検査も行います。患部をこすったり切り取って採取した病変を顕微鏡で調べて、がん細胞の有無を確認します。
舌がん以外の口腔がんの種類
舌がん以外の口腔がんはどのようなものがあるのでしょうか。
口腔がんの罹患率は高齢化に伴って増加傾向にあります。口腔がんの症状や原因は舌がんと似ている部分が多いため、舌がんとあわせて注意しましょう。
頬粘膜がん
頬粘膜がんは頬の内側にできるがんで、初期段階では赤や白に変色するだけで痛みが無い場合や、口内炎と診断されることもあります。頬の内側を噛んだ覚えがないにもかかわらず腫れやただれが発生した場合は注意しましょう。
口腔底がん
口腔底がんは口内の底に相当する部分、舌の根元と下側の歯茎に囲まれたくぼみにできるがんです。舌を持ち上げなければ見えないため気づきにくい場所で、初期段階では赤や白に変色するだけで痛みが無い場合が多いですが、進行すると痛みを生じます。
硬口蓋がん
硬口蓋がんは口内の天井に当たる部分、上側の歯茎の内側から喉のあたりまでの範囲にできるがんで、口腔がん全体の3%と発生頻度はそこまで高くありません。舌先で触れられる場所ですが、見た目の変化を自身で確認することは難しく、歯科医院を受診した際などに偶然見つかる場合があります。
口唇がん
口唇がんは唇の外側や内側の粘膜部分にできるがんです。自覚症状として唇の腫れやしびれがあり、他の場所と比較して早期発見と治療がしやすい反面、手術後の形の変化が目立ちやすい場所です。異変を感じた場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。
下歯肉がん
下歯肉がんは下の歯茎にできるがんで、口腔がんの中では舌がんの次に発生頻度が高く、口腔がん全体の約15%を占めるがんです。奥歯の歯茎に発生することが多く、歯のぐらつきや歯茎の痛みをきっかけに発見される場合が多いようです。
舌がんの症状についてよくある質問
ここまで舌がんの症状や原因、診断方法、口腔がんの種類などを紹介しました。ここでは「舌がんの症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
舌がんの初期症状について教えてください
若菜 康弘(医師)
舌がんの初期症状としては、舌表面の色の変化や軽い炎症があります。初期の舌がんは痛みや出血がなく、触れてもわからない場合が多いです。色の変化には、赤みが強くなりただれたようになる場合と、白く変色する場合があります。
炎症は口内炎と間違われやすいですが、時間経過によって治らないのが特徴なので普段と違う状態が2週間経っても改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
舌がんの末期症状について教えてください
若菜 康弘(医師)
舌がんが進行すると、刺すような強い痛み、出血、飲み込みにくさ、話しにくさといった症状があらわれます。舌がんはリンパ節転移が起きやすく、咽頭や食道、肝臓、肺などへの遠隔転移を伴う場合もあります。初期段階で発見、治療して転移を防ぐことが重要です。
舌がんの治療方法について教えてください
若菜 康弘(医師)
舌がんの治療方法は、がんの進行度や患者さんの身体の状態によって異なります。治療方法によりますが治療期間は2週間から3ヶ月程度で、一般的にはがんが発生している部分を切除する外科手術が選ばれるケースが多いです。切除範囲はがんが進行するにつれて広くなり、広範囲を切除した場合は舌の機能を維持するための再建手術も行います。患者さんの身体の他の部分から皮膚や組織を移植し舌の機能を補うのが再建手術です。手術後は食事や会話の機能を取り戻すためのリハビリテーションを行いながら経過をみます。
がんの進行度によっては、放射線治療や抗がん剤を用いた化学療法を組み合わせる場合もあります。
編集部まとめ
舌がんの症状や原因、診断方法、口腔がんの種類について解説しました。
口の中にできるがんとして、舌がんは最も多いがんであることが知られています。初期では自覚症状がほとんどなく、治らない口内炎として放置されてしまうこともあります。進行すると表面が潰瘍になり周囲が硬いしこりのように変化してきます。
2週間以上たっても治らない口内炎に気が付いたら、早めに歯科や耳鼻咽喉科あるいは頭頚部外科の専門医を受診してください。
飲酒、喫煙、食事といった生活習慣を見直し、口内環境を衛生的に保って予防することも大切です。
舌がんと関連する病気
「舌がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
舌がんはその他の口腔がんや咽頭がん、食道がんを併発しやすいといわれています。いずれも過度な飲酒・喫煙が危険因子であることが共通しているため、生活習慣を見直しがんの予防に努めましょう。
舌がんと関連する症状
「舌がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記は舌がんと見分けにくい症状です。舌の異常は舌がんの可能性もあるため、自然に治らない炎症や異変がある場合は医療機関を受診しましょう。