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「骨肉腫とユーイング肉腫の違い」はご存知ですか?それぞれの原因・症状も解説!

 更新日:2024/03/11
「骨肉腫とユーイング肉腫の違い」はご存知ですか?それぞれの原因・症状も解説!

骨肉腫とユーイング肉腫の違いについてご存じですか?本記事では、骨肉腫とユーイング肉腫の違いについて以下の点を中心にご紹介します!

  • ・骨肉腫とユーイング肉腫の原因
  • ・骨肉腫とユーイング肉腫の症状
  • ・骨肉腫とユーイング肉腫の治療

骨肉腫とユーイング肉腫の違いについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

骨肉腫とユーイング肉腫の違い

骨肉腫とユーイング肉腫は、ともに骨に発生する悪性腫瘍(がん)ですが、大まかに以下の点が異なります。

発生部位:骨肉腫は、骨の末端(骨幹端部)での発生が一般的である一方で、ユーイング肉腫は、骨の中心部(骨幹部)に発生しやすいとされています。骨肉腫は、膝や肩などの関節周辺に多く見られますが、ユーイング肉腫は、骨盤や胸壁、脊椎などに多く見られます。

発症年齢:骨肉腫は、10歳代の思春期に発症しやすいのに対し、ユーイング肉腫は、10歳前から20歳代に発症しやすいとされています。

症状:骨肉腫とユーイング肉腫は、ともに痛みや腫れなどの症状を引き起こしますが、ユーイング肉腫は、発熱や白血球の増加などの全身症状を伴うことが多いです。骨肉腫は、発熱や白血球の増加などの全身症状を伴うことは少ないです。

遺伝子異常:骨肉腫とユーイング肉腫は、ともに遺伝子の異常が発生の原因となりますが、その種類は異なります。骨肉腫は、染色体の数や構造に異常が見られますが、特定の遺伝子の転座(入れ替わり)は見られません。ユーイング肉腫は、11番染色体と22番染色体の転座によって、EWS-FLI1というキメラ遺伝子が形成されることが特徴です。このキメラ遺伝子は、細胞の増殖を促進することでがん化を引き起こします。

肉腫の種類について

骨にできる肉腫にはいくつか種類があることをご存知でしたか?有名な肉腫を4つ紹介します。

骨肉腫

骨肉腫は10代の若い人に多く見られ、膝や大腿骨などの四肢の骨に発生しやすいとされています。また、身長が高い人や過去に骨折を経験した人は、骨肉腫を発症する可能性が高いとされています。骨肉腫の症状は、腫瘍部位の痛みや腫れ、関節の可動域の制限、骨折しやすさなどです。診断は、画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)や生検(細胞診や組織診)で行われます。骨肉腫の治療は、化学療法と手術の併用が基本です。化学療法は、腫瘍の縮小や再発や転移の予防に役立ちます。手術は、腫瘍の切除や骨の再建を目的とします。予後は、腫瘍の大きさや転移の有無などによって異なりますが、5年生存率は約60%とされています。

軟骨肉腫

軟骨肉腫とは骨の悪性腫瘍の一種で、軟骨から生じる腫瘍です。骨肉腫に次いで2番目に多く、40〜50歳以降に発症しやすいとされています。軟骨肉腫には、軟骨を作っている細胞ががん化する一次性のものと、良性の骨腫瘍が悪性化する二次性のものがあります。軟骨肉腫は、骨盤や肋骨、脊椎などの中心部に多く発生します。軟骨肉腫の症状は、腫瘍部位の腫れや痛み、関節の運動制限、骨の破損や骨折などです。軟骨肉腫の治療は、手術療法が主体で、化学療法や放射線治療は影響力が小さいといわれています。手術では、腫瘍を周囲の正常な組織で包んで切除する広範切除術や、腕や脚を残して腫瘍を切除する患肢温存術などが行われます。予後は、腫瘍の悪性度や転移の有無などによって異なりますが、5年生存率は約70〜80%とされています。

ユーイング肉腫

ユーイング肉腫は10歳前後から20代の若い人に多く見られ、骨盤や大腿骨などの骨幹部に発生しやすいとされます。ユーイング肉腫は11番染色体と22番染色体の転座によって、EWS-FLI1キメラ遺伝子が形成されることが特徴です。ユーイング肉腫の症状は、腫瘍部位の痛みや腫れ、関節の運動制限、骨折しやすさなどです。また、発熱や貧血などの全身症状を伴うこともあります。ユーイング肉腫の治療は、化学療法と手術の併用が基本です。骨肉腫と同じように、化学療法は、腫瘍の縮小や再発や転移の予防に役立ちます。手術は、腫瘍の切除や骨の再建を目的としています。予後は、腫瘍の大きさや転移の有無などによって異なりますが、5年生存率は約60〜70%とされています。

骨巨細胞腫

骨巨細胞腫とは骨の表面にできる良性の腫瘍ですが、再発や肺への転移を起こすことがあるため、中間悪性の腫瘍として扱われます。20代前後の若い人に多く見られ、膝周囲などの骨端部に発生しやすいとされています。骨巨細胞腫の原因は不明とされ、腫瘍は巨細胞と間質細胞という2種類の細胞からなります。巨細胞は骨を破壊する役割を持ち、間質細胞は腫瘍の主体であり、遺伝子異常を持っています。骨巨細胞腫の症状は、腫瘍部位の痛みや腫れ、骨折しやすさなどです。骨巨細胞腫の治療は、手術療法が主体ですが、除去が困難なケースについては、デノスマブという薬物を使用する薬物療法が行われることもあります。手術では、腫瘍を局所的に切除する囊切除術や、腫瘍を拡大的に切除する広範切除術などが行われます。予後は、再発や転移の有無などによって異なりますが、5年生存率は約80%とされています。

骨肉腫とユーイング肉腫の原因

ここからは骨肉腫とユーイング肉腫の違いをより詳しくみていきましょう。まずはそれぞれの原因について解説します。

骨肉腫の原因

骨肉腫の原因は、明確には分かっていませんが、遺伝的な要因や放射線の影響などが関係している可能性があります。遺伝的な要因としては、遺伝性疾患や染色体異常が骨肉腫の発症リスクを高めるといわれています。例えば、リ・フラウメニ症候群やロス症候群などの遺伝性疾患や、トリソミー8やトリソミー13などの染色体異常です。放射線の影響としては、放射線治療や原子爆弾の被爆などが骨肉腫の発症リスクを高めるといわれています。放射線は、骨の細胞のDNAに損傷を与えて、がん化を促進する可能性があります。その他の要因としては、骨の外傷や感染、成長期のホルモンの変化などが骨肉腫の発症に影響するという説もありますが、確かな証拠は未だありません。

ユーイング肉腫の原因

ユーイング肉腫は、11番染色体と22番染色体の一部が入れ替わるという染色体の転座と呼ばれる異常が原因と考えられています。この染色体の異常により、EWSR1とFLI1という遺伝子が結合し、EWSR1-FLI1という融合遺伝子ができます。EWSR1-FLI1は、正常な細胞の分化や増殖を乱し、がん細胞に変化させます。また、ユーイング肉腫の発症には、染色体の異常だけでなく、環境的な要因や免疫系の機能低下などが関係している可能性があるとされています。しかし、具体的な要因はまだ明らかになっていません。
ユーイング肉腫は、白人や男性に多く見られることから、遺伝的な素因があるとも考えられています。

骨肉腫とユーイング肉腫の症状

骨肉腫とユーイング肉腫の症状についても詳しく見ていきます。

骨肉腫の症状

骨肉腫の主な症状は、腫瘍部位の痛みや腫れです。最初は運動時に痛みを感じる程度ですが、進行すると安静時や夜間にも痛みを感じたり、腫れが目立ったりします。また、骨が弱くなって骨折しやすくなることもあります。そのほか、発熱や貧血などの全身症状を伴うこともあります。骨肉腫は早期発見・治療が重要ですが、症状だけでは成長痛やスポーツ障害などほかの病気と見分けることは難しいです。そのため、何ヶ月も痛みが止まらない、運動不足にもかかわらず特定の部位が痛む、腫れが見られるといった症状がある場合、骨肉腫やその他の疾患の可能性も考慮に入れて、整形外科で一度きちんと診察してもらいましょう。

ユーイング肉腫の症状

ユーイング肉腫は、骨盤、大腿骨、脊椎などによく発生し、肺や他の骨に転移しやすいとされています。ユーイング肉腫の症状には、腫瘍がある部分の痛みや腫れ、発熱や貧血などの全身症状、また腫瘍ができた場所によってさまざまな症状が出る(例えば、胸部に発症すると胸水がたまる、骨盤に発症すると排尿障害が起こるなど)ことがあります。
ユーイング肉腫は小児や若年者に多い難治性のがんですが、近年の治療の進歩により、長期生存も見込めるようになってきています。骨肉腫と同じように早期発見と適切な治療が重要ですので、骨の痛みや腫れなどの症状がある場合は医師に相談してください。

骨肉腫とユーイング肉腫の治療

骨肉腫とユーイング肉腫の治療法は似ています。治療法について以下に詳しく解説します。

骨肉腫の治療

骨肉腫の治療には以下の方法があります。

手術:骨肉腫はがん細胞が骨に侵入するため、手術でがんを取り除く必要があります。手術では、がんの部分だけを切除する温存手術や、がんのある骨を全部切除する切断手術があります。

化学療法:骨肉腫は、がん細胞が血液やリンパ液によって他の臓器に広がる可能性が高いため、化学療法でがん細胞を殺す必要があります。化学療法では、複数の抗がん剤を組み合わせて使用します。また、化学療法は手術の前後に行われます。手術の前に化学療法を行うことで、がんの大きさを小さくできるとされ、手術後に化学療法を行うことで、残ったがん細胞を除去できるとされています。

放射線療法:骨肉腫は、放射線に対して感受性が低いため、放射線療法は主な治療法ではありません。しかし、手術が困難な場合や、化学療法による改善が見られない場合、痛みを和らげるために放射線療法を行うことがあります。放射線療法では、がんの部分に高エネルギーの放射線を照射して、がん細胞を傷つけます。

以上のように、骨肉腫の治療は、手術と化学療法が中心となります。放射線療法は、補助的な役割を果たします。

ユーイング肉腫の治療

ユーイング肉腫の治療では、骨肉腫と同様に化学療法と手術、さらに放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われます。手術は腫瘍を取り除くことが目的で、可能な限り周囲の健康な組織を保護しながら行われます。また、放射線療法や化学療法は、手術だけでは不十分な場合や再発を防ぐために重要となります。

骨肉腫とユーイング肉腫についてよくある質問

ここまで骨肉腫とユーイング肉腫を紹介しました。ここでは骨肉腫とユーイング肉腫についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

骨肉腫とユーイング肉腫が多い年代を教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

骨肉腫とユーイング肉腫は、小児や若年者に多く見られます。骨肉腫は、骨が早く成長する部位に発生しやすいため成長期である10歳代に多く、全体の60%を占めます。ユーイング肉腫は、骨の中心部に発生しやすいため、発症年齢は全体のおおよそ半数が10歳から20歳の期間(10代)に集中しているといわれています。骨肉腫とユーイング肉腫は子どもの骨にできる悪性腫瘍において、それぞれ1番目と2番目に多い病気です。

骨肉腫とユーイング肉腫の予後を教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

骨肉腫の予後は、発症時に転移があるかどうかに大きく影響されます。転移がない限局性の場合は、5年生存率が約70%です。しかし転移がある場合は、5年生存率が約20%に低下します。また、腫瘍の大きさや位置、化学療法に対する反応性なども予後に関係します。ユーイング肉腫の予後も、転移の有無が重要な要因です。転移がない限局性の場合は、5年生存率が約60〜70%です。しかし、転移がある場合は、5年生存率が約20%以下になります。また、腫瘍の体積や化学療法に対する組織学的奏効度なども予後に影響します。

編集部まとめ

ここまで骨肉腫とユーイング肉腫の違いについてお伝えしてきました。骨肉腫とユーイング肉腫の違いの要点をまとめると以下のとおりです。

⚫︎まとめ

  • ・骨肉腫の原因は明確には分かっていないが、遺伝的な要因や放射線の影響などが関係している可能性がある
  • ・骨肉腫の主な症状は、腫瘍部位の痛みや腫れ、骨折傾向、発熱や貧血などの全身症状で、ユーイング肉腫の症状は、腫瘍がある部分の痛みや腫れ、発熱や貧血などの全身症状、また、腫瘍ができた場所によってさまざまな症状が出ることがある
  • ・骨肉腫とユーイング肉腫の治療は、ともに手術と化学療法が中心となり、放射線療法は、補助的な役割を果たす

骨肉腫とユーイング肉腫と関連する病気

骨肉腫とユーイング肉腫と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

  • 原発性悪性骨腫瘍
  • ユーイング肉腫ファミリー腫瘍
  • 骨転移

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

骨肉腫とユーイング肉腫と関連する症状

骨肉腫とユーイング肉腫と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 腫瘍部位の痛みや腫れ
  • 貧血
  • 麻痺
  • 感覚異常
  • 胸膜浸潤
  • 白血球の増加

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師