「盲腸癌のステージ別・生存率」はご存知ですか?症状についても解説!【医師監修】
盲腸癌のステージについてご存知でしょうか。ステージによって治療法や検査方法も異なってきます。本記事では、盲腸癌のステージについて下記の内容を中心に解説していきます。
- ・盲腸癌とは
- ・盲腸癌のステージ
- ・盲腸癌の検査方法
盲腸癌のステージについて理解するためにも、参考にしていただけると幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
盲腸癌とは
盲腸癌は大腸の入口付近にある盲腸に発生する癌であり、直腸癌やS状結腸癌など大腸の他の部位に発生する癌の一種とされています。
この病気は自覚症状が出にくいことがあるため、発見が遅れる傾向にあります。
盲腸癌の症状
盲腸癌では初期段階で症状があらわれることは少ないようです。盲腸の位置が大腸の入り口付近であるため便がまだ柔らかく、癌による通過障害が起きにくいことが特徴です。しかし、癌が大きくなると触診でわかるほどのしこりができたり、癌からの出血が原因で貧血になることもあり、採血検査で指摘されることがあります。
急性虫垂炎を併発した結果、盲腸癌が発覚することがまれにあります。
盲腸癌のステージと生存率
ここでは、盲腸癌のステージと生存率について解説します。
0期
ステージ0では癌は盲腸の内側の粘膜層にとどまっており、大腸壁の深い層にまで浸潤していません。この段階では癌は非常に局所的で、周囲の組織やリンパ節、遠隔の臓器には広がっていないと考えられます。そのため根治的治療が可能で、かつ予後は非常に良好で5年生存率は約94.0%と報告されています。
Ⅰ期
ステージⅠの盲腸癌は大腸の粘膜下層層にとどまるか粘膜下層を超えて固有筋層まで浸潤していますが、それ以上の外膜や周囲の組織などの深い層には達しておらず、リンパ節転移や他の臓器への遠隔転移はまだ見られません。また、ステージⅠの盲腸癌の5年生存率は約94.5%と報告されており、予後は良好です。
Ⅱ期
ステージⅡの盲腸癌は大腸の固有筋層を超え、大腸壁のさらに外側の層まで癌が浸潤していますが、この段階ではまだリンパ節転移や遠隔転移は見られません。また、ステージⅡの盲腸癌の5年生存率は約88.4%とされており、予後は良好ですがステージⅠに比べるとやや低下します。
Ⅲ期
ステージⅢの盲腸癌は大腸の近くにある所属リンパ節に転移していますが、他の臓器にはまだ転移していない状態です。また、ステージⅢの盲腸癌の5年生存率は約77.3%とされています。
Ⅳ期
ステージⅣの盲腸癌では、肝臓や肺、骨など他の臓器への血行性転移や腹膜播種が見られます。また、癌は所属リンパ節を超えて、より遠く離れたリンパ節にも転移しています。ステージⅣの盲腸癌の5年生存率は約18.7%とされており、遠隔転移の存在が予後を大きく左右するため、予後は不良です。
盲腸癌の検査方法
ここでは、盲腸癌の検査方法について解説します。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は大腸の病気や異常を調べるための医療検査であり、通常では大腸のポリープや癌を見つける目的で実施されます。
大腸内視鏡検査では必要に応じて鎮静剤や鎮痛剤を投与したあと、内視鏡が肛門から挿入され大腸の内部を慎重に検査します。異常が見つかった場合はポリープの切除や組織のサンプル採取をし、検査後は鎮静剤の影響が薄れるまで回復室で休息をとり、鎮静剤の影響が完全になくなったら帰宅します。
検査結果は後日医師から報告され、組織検査をした場合は結果が出るまでに数日かかることがあります。
注腸造形検査
注腸造影検査は、大腸の構造や異常を画像化するための放射線を用いた医療検査です。
この検査ではバリウムと空気を肛門から注入して大腸内部をコーティングし、X線を使用して患部の詳細な画像を取得します。バリウムがX線に反応して大腸の内壁を鮮明に映し出すことにより、癌の存在や大きさ、位置を正確に識別できるため、大腸癌の診断に有効とされています。また、注腸造影検査によって大腸の狭窄などの異常も確認できます。
検査の前日には大腸を空にするために下剤を服用する必要があり、大腸内部が清潔な状態になることでより鮮明な画像を撮れます。
CT検査
CT検査は、X線を利用して体の断面画像を撮る医療画像診断法です。
この検査では、体の周囲からX線を送り込み、体の異なる組織や器官が示す吸収率の違いをデジタル処理によって画像化します。この方法により、骨、筋肉、脂肪、臓器などの体内組織の詳細なビジュアルが提供され、精密な診断が可能になります。CT検査の大きな利点は、通常10〜15分程度で完了するため、患者の苦痛を最小限におさえられる点です。また、CT検査は、癌診断において有効とされており、癌の有無や転移の確認、癌の広がりを調べる際に重要な役割を果たします。腫瘍の位置や大きさ、周囲組織への影響を評価できます。
またCT検査は大腸内視鏡検査のように体内に器具を挿入する必要がなく、侵襲性が低いため患者にとって比較的快適な検査法です。ただし、CT検査では組織サンプルを採取できないため、生検などで組織の詳細な分析が必要な場合は他の方法を用いる必要があります。また、X線を使用するため妊娠中の女性や、特定の健康状態を持つ患者には適さない場合がある点も注意が必要です。
MRI検査
MRI検査は、強力な磁石と電波を使用して体の断面図を画像化する医療検査です。CT検査とは異なりMRIではX線を使用しないため、被曝のリスクが少ないとされています。これは、特に妊娠中の女性や、繰り返し画像診断を必要とする患者にとって大きな利点です。
MRI検査の特徴の1つは、検査中にトンネル状の装置内で大きな音が発生することです。これは一部の患者にとっては不快または不安を引き起こす可能性がありますが、この音は磁石が生成する強力な磁場と関連しており、検査の正確性には影響しません。
MRI検査は軟部組織の構造を非常に詳細に映しだせるため、脳、脊髄、関節、筋肉などの詳細な画像を提供します。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は、癌の種類に応じて体内で特徴的に産生されるタンパク質や他の物質のレベルを測定する医療検査です。
この検査では、血液や他の体液中の腫瘍マーカーと呼ばれる特定の物質の値を調べることで癌の可能性を探ります。癌細胞は、正常な細胞とは異なる物質を生成または過剰に放出するため、これらの物質のレベルが基準値を超えている場合は癌の存在が疑われます。腫瘍マーカーのレベルが高いことは癌の兆候だと考えられますが、これだけで癌が確実に存在すると断定することはできません。また、癌があるとしても、その進行度や具体的な位置を特定することはこの検査だけでは不可能です。腫瘍マーカー検査は、他の診断手段と組み合わせて使用されることが一般的です。
PET検査
PET検査は、特定の放射性物質を利用して体内の画像を作成する医療画像診断法です。
この検査ではFDG(フルオロデオキシグルコース)という、放射性フッ素を付加したブドウ糖の形の物質を患者に注射します。癌細胞は通常の細胞よりも多くのエネルギーを消費するため、このブドウ糖をより活発に取り込む傾向があります。PET検査は、他の検査方法では癌の様子が明確にわからなかった場合に特に有効とされています。
例えばCTやMRI検査で異常が見つかっても、それが癌なのか他の病変なのか不明確な場合はPET検査を用いて確認します。PET検査により、癌の早期発見、進行度の評価、治療効果のモニタリング、再発の検出などが可能となります。
PET検査の1つの制約として、非常に小さな癌やブドウ糖をあまり取り込まないタイプの癌では、検出が困難な場合があります。また、FDGは正常な脳組織や炎症部位でも活発に取り込まれるため、これらの領域と癌の区別をつけることが必要です。
盲腸癌の治療
ここでは、盲腸癌の治療について解説します。
内視鏡治療
内視鏡治療は大腸癌を治療する際の選択肢の1つであり、特に初期段階の癌に適用される方法です。
内視鏡治療は、癌細胞がリンパ節に転移している可能性が低い場合、つまり癌の広がりが限定的で内視鏡による切除が可能な大きさの癌に対して実施されます。治療過程では内視鏡という細長い管状の機器を用いて大腸内部にアクセスし、直接癌細胞を取り除きます。内視鏡の先端にはカメラと小さな手術器具が取りつけられており、これによって大腸の内部を詳細に観察しながら精密な手術ができます。この方法は全身麻酔や開腹手術に比べて侵襲が少なく、患者の回復が早いという利点があります。そして取り除いた癌組織は病理検査に送られます。病理検査によって癌の種類や悪性度、再発や転移のリスクを評価し、今後の治療方針を決定します。
もし病理検査の結果、癌が進行している、または再発や転移のリスクが高いと判断された場合は追加の治療が必要になることがあります。これには、外科手術や化学療法などが含まれることがあります。
外科手術
外科手術は、内視鏡による治療だけでは癌を完全に取り除くことが難しい場合に選択される治療法です。
外科手術では癌細胞が存在する部位だけでなく、癌が広がっている可能性のある周囲の組織も一緒に切除します。このように広範囲を取り除くことにより、癌の再発を防ぐことが可能になります。外科手術のプロセスは、癌の位置、大きさ、広がりによって異なります。癌が大腸の特定の部位に限定されている場合、その部位のみを切除できます。
しかし癌が広範囲に広がっている場合はより広い範囲の大腸を取り除く必要があります。これは、癌の根本的な治療と再発防止のために重要です。
薬物療法
薬物療法は、癌治療において重要な役割を担う方法の1つです。
薬物療法では、抗癌剤や分子標的薬などの薬剤を用いて癌細胞を縮小させ、その進行や再発を抑制します。使用される薬剤は多岐にわたり、癌の種類、進行度、転移の有無、および治療の目的に応じて選択されます。
抗癌剤は癌細胞の分裂を阻害することで、癌の進行を遅らせることが目的です。
一方、分子標的薬は癌細胞の特定の分子や経路を標的とし、より選択的に癌細胞に作用します。分子標的薬の開発は、薬剤の効果を高めて副作用を減少させることを目指しています。
しかし薬物療法は正常な細胞にも影響を与える可能性があり、これが副作用の原因となります。代表的な副作用には、吐き気、倦怠感、便秘や下痢などがあります。これらの副作用は治療の効果と患者の生活の質を考慮しながら、患者と医師が共同で管理していく必要があります。
盲腸癌についてよくある質問
ここまで盲腸癌を紹介しました。ここでは盲腸癌についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
盲腸癌の検診はどのくらいの頻度で受ければいいですか?
中路 幸之助(医師)
盲腸癌、広く大腸癌に含まれる疾患について考えると、定期的な検診の重要性が高いとされています。
特に大腸癌の場合、早期に発見すれば治癒の可能性が高い一方で、早期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いため、定期的なスクリーニングが強く推奨されます。盲腸癌を含む大腸癌の検診に関しては、一般的に年に1度の受診が推奨されています。検診によって、無症状の段階で癌を発見し、早期に治療することが可能となります。早期発見は、癌の治療成績を大きく改善させるため、特に大腸癌のように進行すると症状があらわれやすい癌では、定期的な検診が重要です。
盲腸癌の予防法にはどのようなものがありますか?
中路 幸之助(医師)
盲腸癌を含む大腸癌の予防には、日常生活における健康管理が非常に重要です。
まず食生活を見直すことが大切で、バランスの取れた食事を心がけ、特に食物繊維やカルシウムを豊富に含む食品を積極的に取り入れることが推奨されます。野菜やきのこ類、牛乳や乳製品は良い選択肢です。また、加工肉や赤肉の摂取を控えめにし、高カロリーの食品を過剰に摂ることを避けることで肥満の予防にもつながります。
アルコール摂取は癌リスクを高めることが知られているため、節酒することも大切です。そして喫煙が多くの癌のリスク要因であることから、喫煙者は禁煙を目指すことが推奨されます。
加えて、定期的な運動は大腸癌の予防に効果的とされているため、ウォーキングやジョギングなど軽い運動を日常に取り入れ、エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使うなど日常生活で運動する機会を増やすことが大切です。
編集部まとめ
ここまで、盲腸癌のステージについて解説してきました。盲腸癌のステージについてまとめると以下のとおりです。
⚫︎まとめ
- ・盲腸癌とは、大腸の入口付近にある盲腸に発生する癌であり、直腸癌やS状結腸癌などの、大腸の他の部位に発生する癌の一種である
- ・盲腸癌のステージは、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分けられる
- ・盲腸癌の検査方法には、大腸内視鏡検査、注腸造形検査、CT検査、MRI検査、腫瘍マーカー検査、PET検査などがある
盲腸癌と関連する病気
盲腸癌と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
遺伝子診療科の病気
リンチ症候群を発症すると、大腸癌関連の癌になりやすい傾向があります。また、通常より早い段階で発症することが多い病気でもあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。
盲腸癌と関連する症状
盲腸癌と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- お腹のしこり
- 便秘
- 出血
これらの症状が当てはまる場合には、盲腸癌などの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。