「子宮肉腫の生存率」はご存知ですか?症状や診断方法も解説!【医師監修】
子宮肉腫は、珍しい病気で希少がんの一つです。特徴的な症状があるわけではなく、下腹部の痛みや違和感・腹部膨満感・出血から疑われることが多いです。
子宮筋腫として手術をしたものの、手術後の病理検査にて「子宮肉腫」と診断をされ、追加治療を勧められたというケースもあります。治療の難しいといわれている病気ですが、診断されたらどのような治療が行われているのでしょうか。
他の子宮関連のがんとの治療方法の違いや診断方法と合わせて、子宮肉腫のステージごとの生存率・余命・罹患率についてなどを解説します。子宮肉腫について知りたい方は参考にしてみてください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
子宮肉腫の症状
子宮肉腫とは、筋肉や臓器のすぐ下にある結合組織にみられる肉腫で子宮体部にできることが多いです。子宮肉腫はどのような症状が出るのかご存知でしょうか。まずはよく見られる症状について解説します。
下腹部痛
子宮肉腫の症状として、お腹が張って痛いという下腹部痛・腹部膨満感が起こることがあります。これは腫瘍が炎症を起こしたり、大きくなってきて他の臓器を圧迫することで起こると考えられています。
子宮筋腫と診断されて、経過観察をしていた腫瘤が閉経したらどんどん大きくなってきた場合には注意が必要です。
出血
不正出血は子宮肉腫の自覚症状として多い症状で、月経量が増える月経過多・月経が長引く月経異常が起こることがあります。
しかし出血は他の病気でも現れる症状であるため、不正出血があったり、月経量が増えたりしても必ずしも子宮肉腫であるとはいえません。また、子宮肉腫だからといって必ず出血があるわけでもなく、無症状の人もいます。
子宮肉腫の生存率
希少がんでかかったことがある人も他のがんと比べて少ない子宮肉腫ですが、生存率はどのくらいなのでしょうか。子宮平滑筋肉腫は浸潤度によってI期~IV期の4つに分類されています。
がんの進行度によっての生存率を確認していきましょう。
I期の子宮肉腫
子宮平滑筋肉腫はまれな疾患で、未だ難しい病気とされています。I期は腫瘍にとどまっているもので、サイズが5cm以下かそれ以上かによって2つに分けられています。
I期の生存率は、半分の人が生きている50%生存期間で8年です。
II期の子宮肉腫
II期は腫瘍が骨盤腔まで浸潤してきているもので、卵巣・卵管までのものとそれ以上のもので2つに分けられます。II期の50%生存期間は4年です。
III期の子宮肉腫
III期は腫瘍が骨盤外まで浸潤しているものです。
これは広がり具合によって3つに分けられていて、1部位・2部位以上・骨盤リンパ節か傍大動脈リンパ節転移のあるもので分けられています。III期の50%生存期間は2年です。
IV期の子宮肉腫
IV期は2つあり、膀胱粘膜か直腸粘膜に浸潤のあるものと遠隔転移のあるものに分けられています。IV期の50%生存期間は1年です。
婦人科の病気の診断方法について
婦人科関連の病気は数種類ありますが、それぞれ診断方法が違います。現在はどのように診断されているのでしょうか。今回は4つの病気の診断方法について解説します。
平滑筋肉腫
子宮平滑筋肉腫は子宮体部や筋肉内にできる悪性腫瘍であるため、多くの場合子宮内膜の検査では病変を採取できず発見が難しいです。
エコー・MRIなどの画像診断で肉腫の疑いが指摘されることがありますが、確定診断はできません。子宮筋腫の手術をした際の病理検査で肉腫と発覚することもあります。
卵巣がん
卵巣がんは内診や触診等で疑いがもたれた場合に超音波検査・画像診断・細胞マーカー検査を行います。
これらの検査の結果から総合的に良性腫瘍か悪性腫瘍かの判断をしますが、確定診断は手術で摘出した組織を病理検査によってなされます。
子宮体がん
子宮体がんの検査は大きく以下の2つに分けられます。
- がんがあるのか?という子宮体がんの存在の診断
- がんがあるとしたらどこまで広がっているのかという広がりの診断
まず子宮体がんの存在を調べる方法は細胞診・組織診で、一般的な子宮体がん検診はこの方法で、子宮内膜の組織を取って検査が行われています。
次に子宮体がんと診断され、広がりを調べるために用いるものはCT・MRIなど画像診断で、近隣臓器やリンパ節への転移を調べる検査です。
子宮頸がん
子宮頸がん検査は市区町村の子宮がん検診なども行われていて、受けたことがある人・聞いたことがある人も多い検査です。
検診で行われているのは、細胞診のみでさらに詳しい検査が必要になったときには、コルポスコピー(膣拡大鏡診)・組織診が精密検査として行われます。
子宮頸がんと診断されたら、広がりを確認する検査としてCT・MRIといった画像診断が行われます。
平滑筋肉腫・卵巣がん・子宮体がんの治療方法の違い
子宮平滑筋肉腫・卵巣がん・子宮体がんの治療方法について解説します。
どの疾患も手術が第一選択となり、術後に薬物療法で再発を抑えるという治療方法です。平滑筋肉腫は、再発・転移を防ぐためにも全摘することが推奨されているので、肉腫部分だけを摘出した場合は再手術が勧められます。
卵巣がんはまず手術を行って、できるだけすべてのがんを取り除き、術後に手術進行期・組織型・異型度・手術でがんが取りきれたかどうかなどを考慮して次に行う薬物療法を決めます。手術でがんを取り、残っているがんが少ないほど予後が良好です。
早期発見で手術ができた場合には経過観察となることもあります。進行してがんが大きすぎる場合には、術前に薬物療法を行ってがんを小さくしてから手術をする場合もあります。
子宮体がんも手術が第一選択で、再発・転移を防ぐために子宮と卵巣・卵管を摘出することが標準治療です。しかし一定の条件を満たしていれば、子宮や卵巣を残すことが可能になる場合もあるので担当医と相談してみましょう。
子宮肉腫の生存率についてよくある質問
ここまで子宮肉腫の生存率・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「子宮肉腫の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮肉腫の余命はどれくらい?
馬場 敦志医師
子宮肉腫は患者さんの数が少ない疾患で、未だ難しい病気であるといえます。子宮肉腫の予後は5年生存率を見ると、病期を限定しない全体で約35%、III期・IV期では約10~25%です。他のがんと同じで進行しているほど予後は悪くなり、非常に悪性度の高い疾患とされていますので、気になる症状があればすぐに医療機関を受診しましょう。
子宮肉腫の罹患率について教えてください
馬場 敦志医師
子宮肉腫と診断される人の数は、1年あたり10万人に1人未満と非常に少ない数字です。1年の罹患率として計算すると0.001%以下になるので、本当にまれな病気であることが分かります。
編集部まとめ
今回は、子宮肉腫の生存率をはじめとして、症状や診断方法・治療方法などについて他の子宮関連疾患と比較しながら解説をしました。
子宮肉腫はまれな疾患で、まだ分かっていないことも多いですが他のがんと同じく早期発見・早期治療が生存期間を伸ばすために大切なことです。
ご自身またはご家族で気になる症状・異変があるという方は、1人で悩まずなるべく早く医療機関に相談してください。
子宮肉腫と関連する病気
「子宮肉腫」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
子宮関連の病気や近い部位での悪性腫瘍はいくつかあります。どの疾患だったとしても治療が必要となるので、気になる症状があるときには医療機関を受診し、早めに病気をみつけてもらえるきっかけを作りましょう。
子宮肉腫と関連する症状
「子宮肉腫」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 下腹部痛
- 出血
子宮肉腫の症状は、特徴的なものはなく他の子宮関連疾患でも起こるものばかりです。生理痛がひどいだけだと思ってしまったり、ただの月経不順と軽く考えて放置してしまう人が多いです。気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。