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「皮膚がんの症状」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

 更新日:2024/02/15
「皮膚がんの症状」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

皮膚がんの見た目は、ほくろや湿疹と似ている場合があります。そのため、皮膚がんと気付かずに放置しているうちに進行してしまったというケースもあるでしょう。

この記事では、皮膚がんでよく見られる症状のほか、検査・治療の方法についても詳しく解説していきます。

記事の後半では、皮膚がんを早期発見するためのポイントも紹介しますので「皮膚の異常がなかなか治らず気になる」という方もぜひ参考にしてください。

高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

皮膚がんとは

皮膚は大きく分けると表皮・真皮・皮下組織・皮膚付属器の4つの組織に分類できます。この組織のいずれかから発生するがんを「皮膚がん」と呼びます。
がんとは、もともと自分の細胞だったものが異常に増殖することで正常な細胞まで破壊してしまう病気です。胃がん・大腸がん・肺がんなど患者数が多いがんは、世間での認知度も高いでしょう。
一方、皮膚がんは患者数も少なく、症状や治療についての認知度も上記のがんと比較すると低いといえます。こうした背景もあり「皮膚に異常があっても命にはかかわることはないだろう」と認識される場合もあるようです。皮膚がんは早期発見・治療すれば9割近くが完治する可能性のある病気です。
しかし、皮膚がんが皮膚の深くまで広がれば臓器のがんと同じく血液・リンパの流れに乗って内臓・脳にまで転移することもあります。たとえば、皮膚がんの中でも悪性度の高い「悪性黒色腫」の場合、リンパ節転移がみられた場合の5年生存率は40%、遠隔転移がみられる患者さんの5年生存率は数%です。
こうした視点からみても、皮膚がんは他のがんと比べて「軽いがん」とはいえません。このような認識をしっかりと持ち、気になる症状を見つけたら早めに皮膚科を受診することをおすすめします。

皮膚がんの症状

皮膚がんにはさまざまな種類があり、種類によって初期の見た目・症状は異なります。ごく初期の場合は、皮膚科医でも判断が難しい場合もあるでしょう。
では、患者さんたちはどのような症状で「なにかおかしい」と気付いて受診に至るのでしょうか。

出血

初期の皮膚がんでは、痛み・かゆみといった症状は出にくいとされています。これが、皮膚がんが放置されやすい理由の1つといえるでしょう。
こうした段階の皮膚がんは、病変が皮膚の表層である「表皮」にとどまっている状態です。この表皮と呼ばれる部分には血管がなく、がんにより組織が壊されても出血しません。
しかし、表皮より深くにある「真皮」から先は血管が存在します。そのため、皮膚がんが表皮から真皮へ広がっていくと、皮膚からの出血がみられるようになります。

滲出液が出る

みなさんにも「擦り傷などが湿ってきた」という経験があるかもしれません。この傷が湿ってくる状態の原因は、体内から染み出す滲出液です。
この滲出液自体は傷を修復する作用があるとされ、悪いものではありません。しかし、滲出液が出ているということは組織が破壊されている証拠でもあります。
皮膚がんが進行した場合も、がん細胞により組織が破壊されるため滲出液が出ることがあります。がんによる組織の破壊で滲出液がみられる場合、外傷とは異なり滲出液により治癒が進むことはないでしょう。
滲出液が出ても組織の破壊が止まらないと、滲出液が過剰に出ることでかえって炎症がひどくなり、痛みなどを感じることもあります。

皮膚がんの検査

上記のような症状のほか「ほくろが目立ってきたが、がんだろうか」と気になって受診をした場合、医療機関ではどのような検査を受けるのでしょうか。
今回は、皮膚がんが疑われる場合の代表的な検査を2つ紹介します。

ダーモスコピー

ダーモスコピーとは、「ダーモスコープ」という器具を用いて皮膚病変の様子を観察する検査です。ダーモスコープは拡大率の高い虫眼鏡のようなもので、ライトが付いています。この器具で皮膚の異常を観察すると、下記のような内容を確認できます。

  • 色素の色調
  • 色素のパターン
  • 色素の分布

色素の状態を知ることで、皮膚の異常が色素性良性疾患か皮膚がんかを正確に診断できる可能性が高まるでしょう。色素性良性疾患とは、ほくろ・シミ・良性腫瘍などのことです。
ダーモスコピーは「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」においても鑑別診断にきわめて有効とされており、また痛みがなく行えるという点も大きなメリットです。
しかし、あくまでも表面からの観察により病気を判別しようというものであり、ダーモスコピー検査のみでは正確な診断に至らない場合もあります。

皮膚生検

ダーモスコピーで皮膚がんが疑われた場合、がんが疑われる部分を切除して「皮膚生検」と呼ばれる組織検査に出します。皮膚生検は、疑わしい組織を顕微鏡で観察することで、がんであるかどうかなどを調べる検査です。
皮膚がんは、早期のうちに発見できれば転移していることは稀です。しかし、皮膚の生検を行って進行した皮膚がんと診断された場合は、内臓・リンパ節への転移している可能性があります。
転移が疑われるケースでは、進行度・転移の有無などを確認するためにCT・MRI・PETCTなどを行うことがあります。
加えて、CT・MRIといった検査で転移が確認されなかった場合、「本当にリンパ節に転移がないか」を調べるために行うのがセンチネルリンパ節生検です。センチネルリンパ節とは、がんの発生部位から見てがん細胞が最初にたどり着くリンパ節のことです。
このリンパ節にがん細胞が存在しなければ、他のリンパ節へ転移している可能性は極めて低いと考えられます。

皮膚がんの治療

上記のような検査で皮膚がんと診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。今回は、薬物療法・手術という2つの方法について紹介します。

薬物療法

皮膚がんが広範囲に転移している場合や、手術後に転移が疑われた場合などには、抗がん剤を用いた薬物用法を行うことがあります。また、皮膚がんは転移した臓器によってさまざまな症状が現れるでしょう。
このようなときには患者さんの苦痛を軽減するために鎮痛剤など対症療法的な薬剤療法も行います。なお、同じように手術では対処できない場合に皮膚がんの種類・状態により放射線療法を行うこともあります。

手術

皮膚がんの基本的な治療は、がんを切除することです。皮膚がんの治療では、取り残しがないように病変の周囲を広めに切除します。
そのため、患者さんが考えているよりも広範囲の切除となる場合があります。縫い合わせることが困難なほど広範囲の切除を行ったときには、失われた皮膚を補うために自分の身体の別の部位から皮膚を移植する可能性もあるでしょう。

いぼ・ほくろ・湿疹と間違えやすい皮膚がんとは?

皮膚がんにはいくつもの種類があり、それぞれ病変の見た目・症状には違いがあります。ここからは、皮膚がんの中でもいぼ・ほくろ・湿疹と間違われることの多いものをいくつかみていきましょう。

有棘細胞がん

有棘細胞がんとは、表皮の中にある「有棘細胞」から発生するがんです。見た目は湿疹のように見えることが多く、見た目だけでは判断が難しいこともあります。
中には「湿疹として治療していたが数週間たっても改善しない」と別の病院を受診したら、有棘細胞がんと診断されたという方もいるようです。有棘細胞がんは高齢者に多く、下記のような部位に好発する病気です。

  • 外線を浴びやすい部位(顔や手足)
  • 長年残っているやけどや傷の痕
  • 放射線治療を受けた部位
  • 女性の外陰部

このうち、女性の外陰部に発生する有棘細胞がんにはヒトパピローマウイルスへの感染が関係しているとされます。
有棘細胞がんの前段階とされる病気としては、湿疹や擦り傷のような見た目の「日光角化症」のほか、後述する「ボーエン病」などが挙げられます。有棘細胞がんは、表皮にとどまっているうちに治療を行えば予後は良好ながんです。しかし、進行すると滲出液・感染による悪臭などの対応に苦渋する患者さんも多いでしょう。

爪の根元に生じた悪性黒色腫

悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚の中にある色素細胞から発生したがんと考えられています。色素細胞とは、皮膚のメラニン色素を作っている細胞です。
悪性黒色腫の多くは黒っぽいシミ・できもののような外見で、ほくろとの判別が難しい皮膚がんとされています。また、爪の根元に発生した悪性黒色腫も、皮膚にできた場合と同じく「見た目ではがんとは思わなかった」という理由で受診が遅れがちです。
爪の付け根に悪性黒色腫が発生すると、爪が付け根から先まで太い線が入ったように黒くなります。もしくは、指先を強く挟んでしまったときのように爪全体が黒くなる場合もあるでしょう。なお、爪に黒い線が入ったように見える原因には悪性黒色腫のほかに爪のほくろ・血豆などがあります。
爪の根元に悪性黒色腫ができた場合の症状には下記のような特徴があるため、気になる症状がある方は参考にしてください。

  • 爪だけでなく指先の皮膚も黒ずむ
  • 黒い線が徐々に太くなる
  • 爪自体が変形してくる
  • 爪が伸びても黒い線が移動しない

悪性黒色腫は病気の進行が速く、発症から1~2カ月で全身の状態にまで影響が出ることもあるといわれています。
また、治療した場合にも再発・転移の割合が高いため「皮膚や爪の様子がなにかおかしい」と感じたら、ためらわず早期に受診することが重要です。

基底細胞がん

基底細胞がんは皮膚がんの中で最も多く、表皮の最下層にあたる「基底細胞」から発生するがんです。ほくろに似ていますが、ほくろと比べると下記のような特徴があります。

  • 表面に光沢がある
  • 進行すると隆起してくる
  • 中央部が潰瘍になることがある
  • 潰瘍が進行すると出血する

これは、日本人に多い「結節・潰瘍型」と呼ばれる基底細胞がんの特徴です。このほかに、皮膚表面のみに紅斑が広がる「表在型」や、淡い紅色~うすだいだい色で光沢のある固い隆起として現れる「斑状強皮症型」などがあります。
主な原因は紫外線と考えられ、基底細胞がんの約70%は日光に当たりやすい顔・頭に発症します。そのほかには、熱傷・外傷の瘢痕・放射線による皮膚炎も基底細胞がんの原因となるでしょう。
内臓・リンパ節に転移することは稀ですが、潰瘍・出血が起こることが多いため注意が必要です。

ボーエン病

ボーエン病は、有棘細胞がんと同じく表皮の中にある「有棘細胞」から発生します。ただしボーエン病の場合は、がん細胞の広がりが表皮のみにとどまる「表皮内がん」と呼ばれる状態です。
ボーエン病になった部位は皮膚が紅くざらざらして、湿疹のようにみえるでしょう。有棘細胞がんと同じく「湿疹と思っていたが薬を塗っても良くならない」といった経緯で検査をしてボーエン病と診断される方もいます。
皮膚がんと気づかずに放置すると、がん細胞の広がりが真皮にまでおよび有棘細胞がんと同じ状態になるため注意が必要です。ボーエン病の好発年齢は中年以降で、発症には紫外線やヒトパピローマウイルスが関与していると考えられています。

ページェット病

ページェット病は、主に表皮の中にあるパジェット細胞から発生するがんです。ボーエン病と同じく表皮内がんに分類され、湿疹・たむしに似た症状がみられます。
発症すると赤い湿疹がみられるほか、皮膚の表面がかさぶたになったり、かゆみを感じることもあるでしょう。また、赤くなった皮膚の中に白・茶色などの病変が混じることもあります。
ページェット病は60歳以上の方に多く発症し、好発部位には乳房・わきの下・外陰部などです。乳房に発生したページェット病は「乳房ページェット病」という乳がんの一種として扱われ、それ以外の部位に発生したものを「乳房外ページェット病」と呼び皮膚がんとして扱います。
表皮にとどまっていたページェット病が真皮にまで広がった状態を「ページェットがん」と呼びます。

皮膚がんの症状についてよくある質問

ここまで皮膚がんの症状・検査方法・治療方法などを紹介しました。ここでは「皮膚がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

皮膚がんの検査方法は?

高藤 円香医師

皮膚がんで行われる検査は、前述したようにダーモスコピー・皮膚生検に加え、画像検査が主です。それぞれの方法は以下の通りです。

  • ダーモスコピー:ダーモスコープという拡大鏡のような器具を使用し、皮膚表面・皮膚内部・色素・血管などを観察します。検査の際、痛みは伴いません。皮膚がん(悪性黒色腫や基底細胞がん)とほくろ・シミを見分けるのに有効とされています。
  • 皮膚生検:確定診断の際に行われます。局所麻酔下でがんが疑われる部分の一部を切り取って、病理検査を行います。
  • 画像検査は:皮膚がんの診断がついた場合にがんの転移など、がんの進行具合を調べるために行います。画像検査には超音波検査・CT検査・MRI検査・PET-CT検査があります。

皮膚がんの初期症状について教えてください

高藤 円香医師

皮膚がんの初期症状は、ほくろ・シミ・湿疹のような皮膚の変化です。しかし、初期の段階では痛み・かゆみ・出血・潰瘍などの症状は見られないため「軽い皮膚疾患ではないか」「最近できたほくろ・シミだろう」と認識される患者さんが多いようです。

編集部まとめ

皮膚がんは、自分で見える場所にできるがんであることから「早期発見しやすい」といわれています。

しかし、実は症状を見ても「がんかもしれない」と感じる方は少なく、受診をしたときには既に皮膚がんが進行しているというケースが多いのも事実です。

まずは、皮膚がんであっても進行すれば転移をすることがあり、命にかかわる病気だという認識を持つことが大切といえるでしょう。

気になる症状を見つけたら「大したことのない病気かも」とためらわずに、まずは皮膚科の医師に相談することをおすすめします。

皮膚がんと関連する病気

「膀胱がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

日光角化症は紫外線による長期的な刺激で発生する皮膚疾患です。高齢者の顔に好発し、有棘細胞癌の前駆症状ともいわれています。一方、血管肉腫とは血管の細胞から発生するがんであり、皮膚がんとは異なる疾患です。しかし、皮膚に内出血のような症状が現れた後に隆起・潰瘍がみられるなど、症状としては皮膚がんと似ている部分があります。

皮膚がんと関連する症状

「皮膚がん」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 湿疹
  • 潰瘍

いずれも皮膚がんで現れることがある症状です。湿疹・潰瘍の原因となる病気は皮膚がん以外にもありますが、まずは原因を知るためにも皮膚科を受診することをおすすめします。

この記事の監修医師