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「悪性リンパ腫のステージ別・余命」はご存知ですか?緩和ケアについても解説!

 公開日:2024/01/26
「悪性リンパ腫のステージ別・余命」はご存知ですか?緩和ケアについても解説!

血液に発生するがんのひとつである悪性リンパ腫は、治療が難しく、場合によっては診断時に余命を宣告されるケースもあります。

事前に余命やがん治療についての知識を持ち、将来的なことを見据えて緩和ケアについても知っておくことがとても大切です。

本記事では悪性リンパ腫の診断プロセスから一般的な生存率、ステージ別の余命について詳しく解説していきます。

併せて末期がんになった際に受ける緩和ケアについてもご紹介します。参考になれば幸いです。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

悪性リンパ腫の基礎知識

悪性リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球に発生するがんです。病気のタイプは100種類以上あるため、早期に発見して適切な治療を行うことが重要です。ここではリンパ腫の主なタイプや症状、リスク因子・予防策について解説していきます。

リンパ腫の主なタイプとその特性

悪性リンパ腫は大きく分類するとホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられます。ホジキンリンパ腫は、白血球の中のリンパ球に発生するがんで、腫瘍細胞が増える特性を持っています。一方非ホジキンリンパ腫は、ホジキンリンパ腫のように特性を持たないリンパ腫の総称です。
リンパ球のうちどの細胞ががん化したかによって、B細胞性・T細胞性・NK細胞性に分けられます。また、がんの進行の早さや症状によって、それぞれの細胞性で3つの段階があります。

悪性リンパ腫の症状と早期発見の重要性

悪性リンパ腫の症状は、初期の段階だと、首・脇の下・足の付け根などリンパ節の多い部分にしこりがみられます。
多くの場合痛みはありませんが、しこりは数ヶ月間かけて徐々に成長し、その早さによっては痛みが出ることもあります。症状が進行するにつれて全身にも症状が現れる可能性が高いです。代表的な症状としては下記の通りです。

  • 原因不明の発熱
  • 発疹
  • 皮膚の腫瘤

さらにリンパ腫が他の臓器や器官にまで広がってしまうと、広がった先の臓器や器官によって異なる症状が現れます。早期に発見できれば薬物療法・放射線治療・造血幹細胞移植など患者さんの希望に沿った治療を選択しやすいため、早期に発見することが重要です。

リンパ腫のリスク因子と予防策

リンパ腫は真菌やウイルスなどの病原体に感染するリスクが高くなります。がん自体が原因となるだけでなく、薬物療法が影響するケースも珍しくありません。健康な人だと害がない弱い細菌でも感染リスクが高まるため、注意が必要です。これらのリスクを予防するためには、日常生活で意識を高めることが大切です。
基本的なことですが、手洗いとうがいは徹底しましょう。また、傷口が感染源になりやすいため、怪我をしないよう気をつけてください。

悪性リンパ腫の診断プロセス

悪性リンパ腫の症状である不明熱・リンパ節の腫れなどがみられた場合、医療機関ではどのような検査を経て診断に至るのでしょうか。
また、リンパ腫のステージングや、余命にもかかわる診断情報の伝え方についても解説します。

初期診断から確定診断まで

悪性リンパ腫を疑う症状で受診した患者さんに対して、まずは問診・触診を行い既往歴・リンパ節腫脹の度合い・その他の症状について確認していきます。また、初期に行う検査として代表的なものが血液検査です。
血液検査からはさまざまな情報が得られますが、中でもLDHのみに高値が認められるのが悪性リンパ腫の特徴的な所見です。その後は、必要に応じてCT・PET検査などを行います。こうした検査の結果をふまえた上で、確定診断のためにリンパ節生検を行います。
病変の場所により生検に使用できるリンパ節は異なりますが、体表から近い位置にある頚部リンパ節から検体を採取する場合が多いでしょう。

ステージングについて

悪性リンパ腫は、進行度に応じて1期~4期の4段階に分類されます。各病気のステージング基準は下記のとおりです。

  • 1期:単独のリンパ節だけに病変がある
  • 2期:横隔膜からみて同側のみに2領域以上のリンパ節病変がある
  • 3期:横隔膜の両側に病変がある
  • 4期:リンパ節以外の臓器にびまん性・播種性の病変がある

ただし、がんは原発巣・がんの種類などにより広がり方の特徴が異なります。そのため、同じ「悪性リンパ腫」であっても発生源が消化管など他臓器であった場合はステージングの基準が異なる場合があります。

診断情報の患者さんへの伝え方

たとえ初期の悪性リンパ腫だったとしても、患者さんの中には「すぐには受け入れられない」「告知されてすぐ治療のことまで考えられない」という方もいるでしょう。さらに、病期が進行していれば患者さんのショックも大きいことが予想されます。
しかし、病名・病期・余命などをしっかりと伝えることは、選ぶことのできる治療方法を明確化することでもあります。そのため、患者さんに正確な情報を詳しく伝えることが一般的です。

悪性リンパ腫患者さんの余命と生存率

大きな病気では、医師から余命を宣告されたというケースもあるでしょう。一方で、医療現場では「5年生存率」という指標がよく用いられます。余命・生存率とはどのようなものなのでしょうか。

悪性リンパ腫と余命の関係

余命とは、病気ごとに決まった数字があるわけではなく医師が予測するものです。悪性リンパ腫と診断されてからの5年生存率は67.5%であり、男性は66.4%・女性は68.6%となっています。こうした数字と、患者さんの全身状態・病期などから余命を予測していきます。
ステージごとの生存率については、後述の「悪性リンパ腫のステージ別余命」で詳しく触れていくので、併せて参考にして下さい。

統計と個人の余命予測

余命の予測には明確な基準や計算方法はないため、同じ病気・同じ患者さんであっても別の医師が余命を予測すれば違う結果が出ることもあり得ます。
ただし、多くの医師が予測のもとにするのが「5年相対生存率」という統計データなので、前提条件が同じであれば余命の予測も似た数値になると考えられます。

悪性リンパ腫のステージ別余命

悪性リンパ腫は4つの病気のほか3つの「ステージ」に分けることができます。では、それぞれの生存率はどのような数値になっているのでしょうか。

初期ステージのリンパ腫と余命予測

リンパ腫は種類・悪性度などにより、同じ病気でも異なるステージに分類される場合があります。
そのため、今回はホジキンリンパ腫・非ホジキンリンパ腫の「1期」の数値について紹介します。ホジキンリンパ腫1期の5年生存率は91.4%、非ホジキンリンパ腫1期の5年生存率は86.7%です。

進行ステージのリンパ腫と余命予測

進行ステージのリンパ腫では、病期ごとの5年生存率は下記のとおりです。
なお、5年生存率とは「ある病気と診断された方のうち5年後に生存している方の割合」を「日本人全員のうち5年後に生存している方の割合」で割ったものです。決して「当該疾患になった方が5年後に生きていられる可能性」ではありません。

  • ホジキンリンパ腫Ⅱ期:84.6%
  • ホジキンリンパ腫Ⅲ期:65.3%
  • 非ホジキンリンパ腫Ⅱ期:74.3%
  • 非ホジキンリンパ腫Ⅲ期:64.0%

この数値をもとに、年齢・性別・選択する治療方法などを加味して余命を予測していくため、単純計算では余命を予測することは難しいでしょう。

末期ステージのリンパ腫と余命予測

末期ステージの参考値として、今回は病期「4期」の5年生存率について触れます。
ホジキンリンパ腫では4期の5年生存率は44.7%、非ホジキンリンパ腫では54.6%です。この数字だけみても初期ステージの5年生存率とは40%以上の差があり、早期発見・治療の重要性がわかるでしょう。

悪性リンパ腫の緩和ケア

悪性リンパ腫の緩和ケアについて押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

  • 緩和ケアの種類
  • 症状管理の重要性
  • 心理的・精神的なサポート

それぞれ詳しくみていきましょう。

緩和ケアの種類

緩和ケアの種類とは、緩和ケアを受ける場のことです。主に通院・入院・在宅療養の3つに分かれています。通院の場合、治療を行っている病院などの外来や緩和ケア専門の外来などがあります。入院の場合は、がん治療を行う病棟・緩和ケア病棟で受けることが可能です。
緩和ケア病棟では、なるべく日常に近い生活ができるように個室になっていたり、キッチンがついていたりする場合もあります。季節のイベントや日常の交流会などの催しがあり、家族・友人などと一緒にイベントを楽しむことができる病棟もあります。緩和ケア病棟の種類は病院内に併設されている病棟・ホスピスなどの独立型施設などです。
在宅療養では患者さんの自宅で緩和ケアを受けることが可能です。住み慣れた自宅で患者さんのペースに合わせながら、リラックスして緩和ケアを受けることができるでしょう。どの種類も、悪性リンパ腫患者さんの心と体のつらさを緩和する目的は共通です。
また、緩和ケア専門の看護師が配属されている場合もあり、在宅療養でも訪問医師・訪問看護師・介護士などがチームとなり環境を整えています。

症状管理の重要性

緩和ケアにおける主な病状管理の1つは疼痛管理です。患者さんの疼痛の程度・病状によって使用する鎮痛薬を選択します。がん性疼痛のコントロールをしっかり行うことは患者さんのQOL(生活の質)を高めることに繋がりますので非常に重要であるといえるでしょう。
その他には持病の管理・褥瘡(床ずれ)などを含む全身の管理を行う必要があります。

心理的・精神的なサポート

緩和ケアでは心理的・精神的なサポートも行っています。どのような治療を受けたいのか・緩和ケアの場をどこにするのかなど、細かく患者さんの意思を確かめながら進めていきます。ケアは医師・看護師はもちろん、薬剤師・栄養士・介護士・ソーシャルワーカーなどを含むチーム体制でのサポートです。
患者さんが自分らしい生活を送れるように配慮しています。サポートの対象は患者さんだけではありません。家族の心のつらさも汲み取って支援していくのです。家族は自身の気持ちを抑えてしまうことが多々あり、悩み・つらさを表に出さずに抱えてしまうケースがあります。
緩和ケアではこのように抱えてしまっている家族に寄り添い、家族自身の気持ち・体をいたわりながら継続的にサポートしています。

悪性リンパ腫の余命についてよくある質問

ここまで悪性リンパ腫の余命について紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

悪性リンパ腫は完治しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

悪性リンパ腫は化学療法が有効で、半数以上の方が化学療法のみで治癒を期待できます。治療期間は半年と長いですが、通院のみで治療を終える患者さんもいます。

悪性リンパ腫の再発の可能性はどの程度ですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

膀リンパ腫細胞が残っていると治療終了後に増殖することがあり、再び症状が出る場合があります。これが「再発」という状態です。治療が終わってから2年以内に症状が出ることが多いです。なので、2年経っても症状が出ない場合は治った可能性が高いと考えられます。しかし完全に再発の可能性がなくなるのはいつなのかは分かりません。ただ、4年以上経過しても再発がなかった場合、それ以降に再発する可能性は1%以下といわれています。

編集部まとめ

悪性リンパ腫はタイプが非常に多く、患者さんによって症状・経過が異なります。そのため、治療が順調に進む方もいれば思うように進まない方もいます。

悪性リンパ腫になるとリンパ節や臓器の腫れなどの症状が出ます。腫れが引かない・腫れが大きくなってきたなど、気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

進行スピードが遅いタイプだと自覚症状が出にくいため、治癒が難しくなることもあります。そのため、定期的に健康診断を受けることも大切です。

悪性リンパ腫に関連する病気

「悪性リンパ腫」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

悪性リンパ腫の病気のタイプは100種類以上です。がん細胞の形態・性質によってB細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫・ホジキンリンパ腫に大きく分けることができます。B細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫はあわせて非ホジキンリンパ腫と呼ばれることもあります。

悪性リンパ腫に関連する症状

「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 腫れ・しこり
  • 発疹
  • 皮膚の腫瘤

腫れ・しこりは悪性リンパ腫でよく見られる症状です。足や首の付け根・脇の下などのリンパ節から確認できます。

この記事の監修医師