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「濾胞性リンパ腫(ろほうせいりんぱしゅ)」というリンパ系の「がん」はご存知ですか?

 更新日:2024/01/09
「濾胞性リンパ腫(ろほうせいりんぱしゅ)」というリンパ系の「がん」はご存知ですか?

濾胞性リンパ腫がどんな病気なのかご存じですか?
本記事ではヒトの免疫システムから濾胞性リンパ腫の原因や症状、治療などについて以下の点を中心に紹介します。

免疫システムとB細胞について
濾胞性リンパ腫とは
濾胞性リンパ腫の治療法

濾胞性リンパ腫について知るためにぜひ最後までお読みください。

免疫システムとB細胞

免疫システムとB細胞

異物から身体を守る免疫システムとはどのようなものですか?

免疫システムは、私たちの身体を異物や病原体から守るための複雑な防御機構です。
免疫システムは、主に2つの機構で構成されています。
第一線で働くのは「非特異的免疫」で、皮膚や粘膜などのバリアで異物の侵入を防ぐ役割を果たします。
また、病原体に対しては白血球の一部であるマクロファージや好中球が直接攻撃することもあります。
もう一つは「特異的免疫」で、異物に対する個別の応答を担当します。
この免疫応答は抗原と呼ばれる異物によって引き起こされ、抗体を作り出すB細胞と抗原を攻撃するT細胞が関与します。
B細胞が抗体を産生し、T細胞が異物を攻撃することで、免疫システムは病原体を排除します。
免疫システムはまた、記憶の機能を持っています。
初めて出会った異物に対しては時間がかかる場合がありますが、二度目以降の接触では迅速な免疫応答をします。

B細胞について教えてください

B細胞は特異的免疫の1つであり、骨髄で形成され、リンパ組織やリンパ節などに分布しています。
B細胞は免疫応答において、異物や病原体に対して特異的な抗体を生成する能力を持っています。
この抗体は、体内の異物や病原体を識別し、結合して排除する役割を果たします。
B細胞は免疫応答の過程で活性化され、抗体を産生するために増殖します。
また、一部の活性化されたB細胞は「記憶B細胞」となり、将来の同じ抗原に対する再感染時に迅速かつ強力な免疫応答を引き起こします。
B細胞は免疫システムにおける重要な役割を果たし、感染症や病気から身体を守る上で欠かせない存在です。
また、B細胞の異常な増殖や機能障害は、リンパ系の疾患や免疫不全症の原因となることもあります。

濾胞性リンパ腫の原因について教えてください

濾胞性リンパ腫は、リンパ系のがんの一種であり、その原因は複数の要素に関連しています。
濾胞性リンパ腫の主な原因は、遺伝的な変異と環境要因の相互作用であるとされています。
遺伝的な変異の一つは、B細胞の成熟過程で重要な役割を果たす遺伝子の異常です。
この異常が濾胞性リンパ腫の発症を促進する可能性があります。

環境要因としては、慢性的な免疫刺激や感染症が関与しています。
長期間にわたる免疫刺激は、B細胞の活性化と増殖を引き起こし、異常な形成と成長を促す可能性があります。
さらに、特定の感染症、例えばヘリコバクターピロリ菌やエプスタイン・バールウイルスなどの感染も濾胞性リンパ腫のリスクを高める要因として知られています。

しかし、濾胞性リンパ腫の具体的な原因はまだ完全に解明されていません。
研究は進行中であり、さまざまな要素が相互に作用することで病態が形成される可能性があると考えられています。

濾胞性リンパ腫とは

濾胞性リンパ腫とは

濾胞性リンパ腫の症状について教えてください

濾胞性リンパ腫の症状は、ゆっくりと進行することが特徴です。
初期の段階では症状がほとんど現れないこともありますが、進行すると次のような症状が現れる場合があります。
腫れたリンパ節:
首、腋窩、鼠径部などのリンパ節が腫れる場合があります。
全身の不調:
倦怠感、体重減少、発熱などの全身的な症状が現れる場合があります。
冷感・発汗:
夜間の多汗や寒気を生じる場合があります。
腹部症状:
腹部腫脹、消化不良、腹痛などの腹部関連の症状が現れる場合があります。
皮膚症状:
皮膚に紅斑や結節が現れる場合があります。

これらの症状は、個人によって異なる場合があり、進行の速度や症状の重さも患者によって異なります。
濾胞性リンパ腫は他の疾患と症状が類似することもあるため、医師の診断が重要です。

濾胞性リンパ腫の検査について教えてください

身体検査:
腫れたリンパ節の確認や肝臓・脾臓の腫大などの身体的な異常の評価が行われます。
血液検査:
血液中の腫瘍マーカーや免疫グロブリンのレベル、血球数などが調べられます。
リンパ節生検:
異常なリンパ節から組織サンプルを取り、顕微鏡で詳細な検査をします。
骨髄生検:
病巣の確認や、腫瘍の細胞型を評価するため、骨髄からサンプルを採取します。
画像検査:
X線、CTスキャン、MRI、PET-CTなどを使用して、内部の臓器やリンパ節の状態を評価します。
これらの検査を組み合わせることで、濾胞性リンパ腫の診断や病期の評価が行われます。
病理組織学的な特徴や免疫学的な検査結果なども考慮され、総合的な診断が下されます。

濾胞性リンパ腫の診断(病期)について教えてください

濾胞性リンパ腫の病期(ステージ)は、病気の進行度合いや範囲を表す指標です。
病期の評価には以下のような方法が一般的に使用されます。
身体検査と画像検査:
リンパ節の腫れや臓器の拡大を評価するため、身体検査と画像検査(CTスキャン、MRI、PET-CTなど)が行われます。
骨髄生検:
骨髄内の腫瘍の存在や程度を評価するため、骨髄生検が行われます。
血液検査:
血液中の腫瘍マーカーや免疫グロブリンのレベル、血球数などが評価されます。

これらの検査結果を総合的に考慮し、Ann Arbor分類やリュックス分類などの病期分類が行われます。
一般的な病期分類は、ステージIからIVまでの4つのステージで進行度合いを示します。
ステージが進むほど、腫瘍の範囲が広がり、他の臓器への転移が起こる可能性が高まります。

濾胞性リンパ腫の治療法

濾胞性リンパ腫の治療法

濾胞性リンパ腫の治療法について教えてください

化学療法:
抗がん剤の投与により、がん細胞を破壊することを目指します。
リツキシマブ+シクロフォスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(R-CHOP療法)が一般的に用いられますが、進行度に応じて他の化学療法も選択される場合があります。
免疫療法:
モノクロナール抗体療法が行われます。
リツキシマブなどの抗体が、がん細胞に結合して破壊する働きをします。
放射線療法:
病巣部位に放射線を照射し、がん細胞を破壊することを目指します。
主に局所病変の制御や症状の緩和に使用されます。
自家末梢血幹細胞移植:
治療後の再発や高リスク症例において行われる場合があります。
患者自身の末梢血幹細胞を採取し、高用量化学療法後に再移植することで、正常な造血機能の回復を促します。

これらの治療法は単独で行われる場合もありますが、複合的に組み合わせることもあります。
治療計画は病期や患者の状態に応じて個別化され、医師との相談に基づいて決定されます。
症状がなく、臓器障害などがない状態で見つかった場合には、しばらく経過観察をする、Watch and Waitをとる場合もあります。

濾胞性リンパ腫の予後について教えてください

濾胞性リンパ腫の予後は、患者の病期や予後予測指標によって異なります。
一般的に濾胞性リンパ腫は進行がゆっくりとした病気であり、予後は良好であるとされています。
予後予測指標としては、国際プロジェクトで開発されたFLIPI(濾胞性リンパ腫国際予後指標)が用いられます。
FLIPIは、病期、年齢、血液中の乳酸脱水素酵素、ヘモグロビン、リンパ節外病変の存在などを評価し、リスクグループを分類します。
高リスクのFLIPIスコアを持つ患者は、治療後の再発率が高くなる可能性があります。
しかし、新たな治療法や自家末梢血幹細胞移植などの治療法の進展により、予後が改善しています。
治療結果や予後は個人によって異なるため、医師との定期的なフォローアップが重要です。
患者の具体的な病状やリスク要素を考慮し、適切な治療計画と予後予測が必要です。
再発するときは、おとなしいタイプの濾胞性リンパ腫として再発することが多いですが、なかには組織学的形質転換をおこして、経過が早いタイプのリンパ腫などに変化してしまうことがあり、その場合は強力な治療が必要となります。

濾胞性リンパ腫の治療を受ける上で気をつけることを教えてください

医師の指示に従う:
医師が立てた治療計画や指示に従うことが重要です。
薬の服用や治療スケジュールを守り、定期的なフォローアップを受けましょう。
副作用の管理:
治療には副作用が伴う場合があります。
副作用について理解し、適切なケアを受けることが大切です。
副作用や不安な点は医師や看護師に相談しましょう。
生活の調整:
治療期間中は休養と十分な睡眠を心がけ、バランスの取れた食事を摂ることが重要です。
適度な運動やストレス管理も大切です。
感染予防:
免疫が低下しているため、感染症に注意が必要です。
手洗いやマスクの着用、人ごみの避けなど、感染予防対策を徹底しましょう。
サポートを受ける:
治療中は身体的・精神的な負担がかかる場合があります。
家族や友人のサポートを受けるだけでなく、がんサポートグループや専門機関の支援も利用しましょう。

これらの注意点は、治療期間をより快適に過ごすためのものです。
医師や医療スタッフとのコミュニケーションを大切にし、自身の健康管理に意識を向けることが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします

濾胞性リンパ腫は、リンパ組織に発生するがんの一種であり、慢性リンパ性白血病の一部です。
腫瘍の成長による臓器の圧迫や機能障害、免疫系の弱体化による感染症のリスクが危険性としてあります。
適切な治療には化学療法、放射線療法、免疫療法などがあり、早期の診断と適切な治療によって腫瘍の進行や合併症の発生を抑制できます。
治療によるメリットは腫瘍の縮小や制御、症状の緩和であり、専門医の指導とフォローアップが重要です。
真摯に向き合い、早期の診断と適切な治療によってリスクを軽減できます。

編集部まとめ

濾胞性リンパ腫(ろほうせいりんぱしゅ)
濾胞性リンパ腫はどんな病気なのか紹介しました。要点は以下の通りです。

・B細胞は体内の異物や病原体と結合して排除する特異的免疫の1つであり、B細胞の異常が濾胞性リンパ腫と関連がある
・濾胞性リンパ腫は腫れたリンパ節、全身の不調、腹部症状、皮膚症状などを呈する
・濾胞性リンパ腫の治療には化学療法や免疫療法、放射線療法などがあり、治療中は医師の指示に従うことが重要

これらの情報が、濾胞性リンパ腫がどんな病気なのか知りたい方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師