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「プール熱」の症状・どれくらいで治るか・予防法はご存知ですか?

 公開日:2023/08/22
「プール熱」の症状・どれくらいで治るか・予防法はご存知ですか?

プール熱は夏に流行がみられる子どもの夏風邪の代表格です。

大人にも感染しますが多くは一般的な風邪と同様に扱われ、重症化することも稀なため、あまり聞き馴染みのない病気でしょう。

子どもが突然高熱を出し、病院を受診して初めてプール熱の用語を知ったという方も多いのではないでしょうか。

プール熱は症状が強いため辛そうにしている姿を見ると「何とかしてあげたい」と思うものですが、多くの場合1週間以内には快方へ向かい、予後も良好なことが多いです。

しかし非常に感染力が強く型も多い病気ですので、治癒後に何度もかかることがあります。

回復しても安心せずに、基本的な症状・感染予防・治療方法などについて知識をつけておくことは重要です。

本記事ではプール熱の原因・症状・治療方法などについて解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

プール熱(咽頭結膜熱)の原因や症状

熱を測る子供

プール熱とはどのような病気ですか?

プール熱とはアデノウイルスに感染することにより、高熱・のどの痛み・結膜炎の3症状を主として発症する病気です。医学用語では咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)といい、プールを介して感染することがあるためプール熱と呼ばれるようになりました。
しかし実際にはプールを介した感染より、通常の風邪と同様に飛沫感染・接触感染によるところがほとんどです。夏に流行する傾向があり、6月頃から感染者が増え始め7~8月頃にピークを迎えます。
ヘルパンギーナ・手足口病と並んで子どもの三大夏風邪に数えられ、5歳以下の小児が患者さんの8割を占めます。子どもが感染した場合、大人にも感染することのある感染力が非常に強い病気です。

プール熱の原因を教えてください。

先述したとおり、プール熱(咽頭結膜熱)の原因はアデノウイルスの飛沫感染・接触感染によるものです。アデノウイルスは型が多く、それらは似た症状を引き起こします。治癒してもまた別の型に感染し、何度も同じ症状をくり返すことがあります。
感染が多く報告されている型は2型・3型・7型のもので、プール熱と呼ばれる症状は主として3型により引き起こされるものです。その年によっては7型が流行することもあり、7型は呼吸器疾患を引き起こし重症化することもあるため、乳幼児は特に注意が必要です。

症状を教えてください。

主な症状は以下の3つです。

  • 【発熱】39~40度の高熱
  • 【のどの痛み】のどの強い痛み・扁桃腺の腫れ・膿
  • 【結膜炎】目のかゆみ・充血・目やに
  • これらの3症状全てが現れる場合もあれば、発熱・のどの痛みだけと、症状が1つしか出ない場合もあります。さらに頭痛・腹痛・下痢・リンパ節の腫れ・食欲不振・倦怠感などの諸症状をともなうことも少なくありません。
    また稀に肺炎・髄膜炎・脳炎などの合併症を引き起こし、重症化することもあるため注意が必要です。発熱は高熱が数日続くことが多いですが、39~40度の高熱・37~38度前後の微熱をいったりきたりすることもあります。

症状はどのくらいで治りますか?

多くの場合、発熱は約3~5日で落ち着いてきます。のどの痛み・結膜炎などの諸症状も約1~2週間で落ち着いてきますが、肺炎のような合併症を引き起こしている場合はこの限りではありません。
多くの場合は予後も良好であり、発熱が収まるとともに快方へ向かう患者さんがほとんどです。ただしプール熱は学校保健安全法で第二種感染症に定められています。これはインフルエンザ・麻疹・おたふくかぜと同様の扱いであり、主要症状がなくなった後、2日間は登校・登園が禁止となります。

プール熱(咽頭結膜熱)の治療方法

赤ちゃん

医療機関を受診する目安を教えてください。

プール熱はのどに強い痛みが現れるのが特徴です。そのため食欲不振になる患者さんも多く、脱水症状が懸念される場合は早めの受診を心がけましょう。
また高熱による熱性けいれん・重度の合併症を引き起こす可能性があります。いつもと違う様子が見られたら、すみやかに病院を受診しましょう。
頭痛・せき・吐き気が強いときにも体力の低下が懸念されます。受診を迷うときには、医療機関に相談すると良いでしょう。

プール熱の治療方法を教えてください。

プール熱の原因であるアデノウイルスは、ウイルス感染であるため抗生剤が効かず、特効薬と呼ばれるものはありません。そのため対症療法が基本治療となります。
解熱剤・のどの炎症を抑える薬・整腸剤・点眼薬などを服用・点眼しながら回復を待ちます。自宅では症状が落ち着くまで安静にし、のどへの負担が少ない食べ物で栄養補給を行いましょう。味噌汁のように塩分のあるものはのどに刺激となるため、おかゆ・豆腐・ゼリー・プリンなどが食べやすいです。
冷たいスープも、のどへの負担を減らしながら栄養が摂れます。発熱により汗を多量にかくため、こまめな水分補給も大切です。オレンジジュースのように刺激のある飲み物は避け、経口補水液・リンゴジュースなどで補給すると良いでしょう。

プール熱は何日で治りますか?

発熱・のどの痛みは、ともに約3~5日で治まることがほとんどです。多くの場合1週間以内には主要症状が消え、2週間以内にはその他諸症状も治まります。ただし合併症を発症・重症化すると治療が長引くこともあります。

検査方法を教えてください。

アデノウイルスは迅速キットによる検査が可能なウイルスです。綿棒でのどの粘膜・まぶたの裏側をこすり取ってアデノウイルスに感染しているかどうか判定します。
迅速キットは多くのメーカーが出していますが、15~30分ほどで結果が出るものが多く、迅速な判定が可能です。ただし採取したウイルスの量が不足している・検査したタイミングが適切でないなどの条件によっては正確な結果が得られず、偽陰性となることもあります。
また迅速キットはアデノウイルスに感染しているかどうかは判定できますが、感染している型までは判別できません。基礎疾患がある患者さんが7型に感染すると重症化するリスクが高くなるため、経過を注意深く観察する必要があります。
このようにプール熱の検査は迅速キットを用いることが多いですが、プール熱はのどにはっきりとした症状が現れることも多いです。扁桃腺に白い膿が見られるといった特徴的な症状があれば、迅速キットによらず医師の所見によりプール熱と診断されることもあります。

プール熱(咽頭結膜熱)の予防

手洗い 子供

プール熱の予防方法を教えてください。

アデノウイルスは飛沫感染・接触感染が主な感染経路となるため、プール熱の予防には石鹸による手洗い・うがいが有効です。乳幼児のお世話をしている方であれば、オムツ交換・排泄後の手洗いを徹底しましょう。
目やにからの感染もあるため、感染者とのタオル・洗面器の共有も避けるのが望ましいです。プールに入る際は、プール前後のシャワー・洗顔・うがいを徹底しましょう。プールの塩素濃度が不十分な場合、目の粘膜からアデノウイルスが侵入・感染することがあります。
またアデノウイルスは非常に感染力が強いウイルスですので、流行の兆しが見られた場合、学校・保育園・幼稚園などから注意喚起されることもあるようです。身近に感染が見られる場合は人混みやプールを避けるのも予防効果があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

プール熱にかかると高熱が続きますので、症状が強く辛いときには解熱剤を活用して、水分・栄養補給ができるよう管理しながら病状の回復を待ちましょう。また病気の予後が良いことの多いプール熱ですが、迅速キットでは型の診断ができないため診断後の経過観察も重要です。
特に乳児が感染した場合は合併症を引き起こし、重症化するリスクが高まります。発熱・せきがなかなか治らない・呼吸がおかしいなど、いつもと違う様子が見られた場合は、すみやかに病院を受診するようにしてください。

編集部まとめ

親子
非常に強い感染力を持ち、毎年多くの感染者を出すプール熱ですが、残念ながら特効薬と呼ばれるものはありません。

症状が強いときに対症療法しかとれないのは辛いものですが、のどに負担の少ない飲食物を選び、適切な栄養・水分補給を行い安静にすることで回復の補助につながります。

プール熱の原因になるアデノウイルスは夏に限らず通年存在するものですから、予防を徹底し、ウイルスをもらわない・他者へ広めないことが大切です。

もし感染した場合は経過観察を注意深く行い、いつもと違う様子が見られた場合はすみやかに受診するようにしてください。

この記事の監修医師