「肝臓がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】
解毒や分解など消化するために重要な働きをする肝臓ですが、がんを発症しても症状が現れることがあまりないため、気付かないケースがあります。
そのため、気付いたときにはがんのステージが進行しているケースも珍しくありません。
肝臓がんに罹患した場合、生存率はどのくらいなのでしょうか。本記事では、肝臓がんの生存率を範囲別に紹介します。
また、肝臓がんの症状・検査方法・治療方法を解説しますので、参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肝臓がんの生存率
肝臓がんを発症すると生存率はどのくらいなのでしょうか。ここからは肝臓がんが発症している範囲別の生存率を紹介します。
限局している場合
肝臓のみにがん細胞が発症した場合の生存率は高い傾向にあり、5年生存率は51.6%といわれています。
所属リンパ節に転移している場合
がん細胞が所属リンパ節へ転移したことが確認された場合、5年生存率は15.4%です。限局している場合と比べると生存率も下がります。
遠隔転移している場合
肝臓以外にがん細胞が遠隔転移している場合は生存率が低い傾向にあり、その確率は5年生存率で3.1%です。肝臓がんは男女ともにがんによる死亡率が高いがんのひとつです。
肝臓がんを含め、がんは早期発見・早期治療を行うことで生存率が高められます。
肝臓がんの症状
肝臓は沈黙の臓器といわれることから、症状が表面上に現れたときは病状が進行していることが多いです。
これから紹介する症状がすでに現れている場合、速やかに医療機関へ受診するようにしましょう。
腹部のしこり
がんに罹患したばかりだとしこりはないですが、がんが進行するとしこりが現れます。みぞおちあたりに触れるくらいのしこりができます。
圧迫感
お腹に腹水という液体が溜まるのも、肝臓がんの症状のひとつです。肝臓の機能が低下してアルブミンが少なくなることで、腹腔内に腹水がたまるのです。
たまった腹水は横隔膜を圧迫するため、呼吸がしにくく圧迫感を覚えます。
痛み
肝臓にがんが発症した場合、がん細胞が増殖すると肝臓の被膜が伸びます。伸びることで被膜にある痛覚を刺激し、右脇腹やみぞおち、右肩と肝臓のある右側に鈍い痛みがでるのです。
黄疸
肝機能が低下すると現れる症状のひとつで、皮膚や眼球部分が黄色くなる症状です。黄色くなる原因は、肝機能の低下により黄色の色素であるビリルビンが血液中に増えるからです。
増えることで粘膜や皮膚に沈着し黄色になります。黄疸は肝臓がん以外にも肝臓の機能が低下することでみられる症状でもあるため、必ずしも肝臓がんであるとはいいきれない部分もあるでしょう。
皮膚や眼球が黄色くなる以外に、尿の色が茶色く濃い色になったり、ビリルビンが皮膚にたまるとかゆみも伴ったりする場合があります。
一方、十二指腸で排出されるビリルビンは減るため、便の色が白っぽくなることがあります。
倦怠感
がんが発症したことにより、体の中ではさまざまな変化が現れています。主に痛み・栄養状態の悪化・貧血などが挙げられるでしょう。
これらは知らず知らずのうちに体に悪影響を及ぼし、疲れやすい・だるいといった症状、つまり倦怠感が現れます。倦怠感は日常生活にも支障をきたすほど辛くなることがあります。
肝臓がんの検査方法
肝臓がんと診断するには、下記の検査が行われます。
- エコー(超音波)検査
- 腫瘍マーカー検査(血液検査)
- CT・MRI検査
がんの大きさ・個数・発生している位置・広がり具合などをエコーを用いて確認します。腫瘍マーカーは血液検査にて行います。
腫瘍マーカーはがんを診断するための補助的な役割が目的です。エコー検査や腫瘍マーカー検査をしても判断がつかない、もしくはより詳しく肝臓の状態を検査する場合、CT・MRI検査も行います。
CT・MRI検査ではがんの血流も調べることから、造影剤を用います。これらの検査の結果から総合的にみて、医師が肝臓がんであるかどうかを判断するのです。
それでも判断がつかない場合は、がんと疑われる組織を一部採取して詳しく調べる肝生検を行う場合もあります。
肝臓がんの治療方法
肝臓がんの治療には、外科的治療や薬物治療など多様な方法があります。どの方法で肝臓がんの治療を行うかは、肝予備能・ステージ(病期)・肝臓の状態・患者さんの希望などから適切な治療方法を提案します。
手術
肝臓にできたがんとその周辺の組織を切除する治療です。手術が行えるかどうかは肝細胞癌治療アルゴリズムにて判断します。
肝障害が低い・がんの数は3個以下・がん細胞が肝臓で留まっている場合に手術が選択可能です。なお、がんの大きさは手術をできるかどうかに関係しないことが多いです。
化学療法
分子標的薬を使用した分子標的療法や免疫チェックポイント阻害薬・カテーテルを用いた細胞障害性抗がん薬を直接がん細胞へ注入する肝動注化学療法を行います。
分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬は役割が異なります。特徴は以下のとおりです。
- 分子標的薬:がん細胞がもつ特定の分子を標的とし、その部分にのみ働く薬
- 免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞が免疫細胞への攻撃を抑制するための薬
手術の選択が難しい進行性の肝臓がんや、肝機能が良好な場合に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療を選択します。
なお、これらの薬は副作用を伴うことがあります。食欲不振・吐き気・肝機能障害などです。
使用する薬ででる副作用としてどのようなものがあるのか、治療を始めるにあたってしっかり医師・薬剤師に相談するとよいでしょう。
肝臓がんについてよくある質問
ここまで肝臓がんの生存率・検査方法・治療方法などについてご紹介しました。ここでは「肝臓がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肝臓がんの治る確率を教えてください
甲斐沼 孟(医師)
早期発見し治療を開始した場合、治る確率は約90%といわれています。しかし、肝臓がんに罹患している患者さんはB型肝炎やC型肝炎など慢性肝疾患に罹患していることが多いです。
そのため、繰り返し治療が必要です。また、肝炎ウイルスをもっていたり発見が遅かったりすると根治は難しくなります。
肝臓がんの余命について教えてください
甲斐沼 孟(医師)
がんの発見が早ければ根治の可能性も高くなり、これまで通りの日常生活を送れるようになる方も多いです。しかし発見が遅れステージIVになると、前述の通り5年生存率は4.1%と低く、ステージによって大きく異なります。
まとめ
肝臓がんの生存率をはじめ、肝臓がんの症状・検査方法・治療方法などを解説しました。
医学が進歩した現代であっても、遠隔転移した肝臓がんの生存率は4%未満と低くなってしまいます。
しかし、早期発見・早期治療を行うことで生存率をあげることは可能です。自覚症状が現れにくい肝臓だからこそ、日々の変化や検診が大切になります。
小さな異変を逃すことがないようにしましょう。また、同じ症状が継続してでている場合はこの機会に医療機関へ受診することをおすすめします。
肝臓がんと関連する病気
「肝臓がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎臓科系の病気
- 腎臓がん
肝臓で起こる病気は自覚症状が現れにくいため、発見が遅れると手遅れになる可能性があります。日常生活の見直しと並行し、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
肝臓がんと関連する症状
「肝臓がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- かゆみ
- 倦怠感
- 黄疸
- 腹部腫瘤
- 腹水
同じ症状を繰り返している場合、「いつものことだから」と片付けないようにしましょう。大きな病気が隠れていることもあるため、曖昧にせず医療機関を受診してください。