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「腹膜癌のステージ分類」はご存知ですか?ステージ別の症状も解説!【医師監修】

 公開日:2024/01/08
「腹膜癌のステージ分類」はご存知ですか?ステージ別の症状も解説!【医師監修】

腹膜癌とは、腹膜という内臓を覆っている薄い膜に発生する癌のことです。
腹膜癌は、他の臓器からの癌細胞の転移によって起こることが多いといわれています。
また、腹膜癌のステージは、癌の進行度や広がりを示す指標であり、治療法や予後に影響します。
本記事では腹膜癌のステージについて、以下の点を中心にご紹介します。
・腹膜癌について
・腹膜癌のステージごとの症状
・腹膜癌のステージごとの治療
腹膜癌のステージについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

上 昌広

監修医師
上 昌広(医師)

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東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍 医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。

そもそも腹膜癌とは

そもそも腹膜癌とは
腹膜癌とは、腹部の一部または全体を覆っている「腹膜」と呼ばれる組織から発生する癌のことです。
腹膜癌は、他の臓器からの癌細胞の転移によって起こるとされ、原発性のものは稀なようです。
腫瘍の性質は卵巣癌に類似しており、病理学的にはほとんどが「漿液(しょうえき)性腺癌」に分類されます。
漿液性腺癌で腹腔内に腫瘍があっても、卵巣癌や卵管癌ではない場合に、腹膜癌と診断されます。
腹膜癌の原因は明らかではありませんが、卵管上皮から発生する「上皮内癌」が元となっているという見方もあります。
また、遺伝的な要因や生活習慣なども関係している可能性があります。
腹膜癌は、初期には無症状であることが多いとされ、進行すると腹水が溜まることによる腹部膨満感や、腹痛などを自覚する場合があります。
診断は、手術や画像検査、血液検査などで行われます。
治療法は、手術や抗癌剤治療などで、卵巣癌と同じ方法を用いることが多いようです。
腹膜癌は珍しい癌であり、検診や予防法も確立していません。
そのため、早期発見や早期治療が重要です。
不安や疑問がある場合は、医師に相談しましょう。

腹膜癌のステージの分類方法とは

腹膜癌のステージの分類方法とは
腹膜癌のステージとは、癌の進行度や広がりを示す指標です。
ステージは、癌の大きさや位置、リンパ節への転移の有無、他の臓器への転移の有無などによって決まります。
腹膜癌のステージは、T因子、N因子、M因子という3つの要素で表されます。
これらの要素は、それぞれ以下のような意味を持ちます。

T因子

T因子とは、原発巣(癌が最初に発生した場所)の大きさや位置を示す要素です。
T因子は、0~4の数字で表されます。
数字が大きいほど、癌が深く浸潤していることを意味します。
T0:癌が粘膜内に留まっていることを示す
T2:腹膜を超えて近隣の組織や器官に広がっている状態
T3:さらに癌が深く進行していることを示す
T4:隣接する大きな血管や主要な器官への浸潤を示す
T因子のステージが高いほど、癌が進行していることを意味します。

N因子

N因子とは、リンパ節への転移の有無や数を示す要素です。
N因子は、0~3の数字で表されます。
数字が大きいほど、リンパ節への転移が多いことを意味します。
リンパ節への転移がある場合、癌の広がりや再発のリスクが高まるため、治療の方針や予後の見込みに影響を与えます。
例えば、N0はリンパ節への転移がないことを示し、N3は多数のリンパ節への転移があることを示します。

M因子

M因子とは、他の臓器への転移(遠隔転移)の有無を示す要素です。
M因子は、0か1で表されます。
0は他の臓器への転移がないことを示し、1は他の臓器への転移があることを示します。
遠隔転移がある場合、癌は体の他の部位にも広がっていると考えられ、治療のアプローチや予後の見込みが変わります。
特にM1の診断は、積極的な治療や緩和ケアの選択が重要となります。
これらの要素を組み合わせて、ステージはI~IVのローマ数字で表されます。
ステージが高いほど、癌が進行していることを意味します。
例えば、ステージIは「T1N0M0」と表され、原発巣が小さく、リンパ節や他の臓器への転移がないことを示します。
ステージIVは「T4N3M1」と表し、原発巣が大きく、多数のリンパ節や他の臓器への転移があることを示します。
ステージは、治療法や予後に影響する重要な情報です。
しかし、ステージだけで個々の患者さんの状態や治療効果を正確に反映するものではありません。
そのため、ステージに加えて、症状や全身状態、合併症や副作用なども考慮して治療計画を立てる必要があります。
不安や疑問がある場合は、医師に相談しましょう。

腹膜癌のステージの種類とは

腹膜癌のステージの種類とは
腹膜癌のステージは、癌の進行度や広がりを示す指標で、以下のように分類されます。
腹膜癌のステージは、手術や画像検査などによって判定されます。
ステージによって治療法や予後が変わってきます。

0期

癌細胞が上皮内に留まっており、リンパ節や他の臓器への転移はありません。
症状はほとんど現れず、検査などで偶然発見されることがあります。

1期

癌細胞が筋肉層まで浸潤していますが、リンパ節や他の臓器への転移はありません。
症状としては、軽度の腹痛や膨満感が現れることがあります。

2期

癌細胞が筋肉層を超えて浸潤していますが、リンパ節への転移はありません。
または、筋肉層で留まっていますが、リンパ節への転移があります。

3期

癌細胞が筋肉層を超えて浸潤し、リンパ節への転移もあります。
この段階では、癌の広がりが一段と進行し、症状も重くなってきます。
腹部の圧迫感や痛み、体重の減少などが見られます。

4期

原発巣から他の臓器へ癌細胞が転移しています。
腹水や腹壁などにも癌細胞が広がっており、このように癌のできた臓器から癌細胞がこぼれ落ちて、お腹の中に種を蒔くように散らばって広がることを「腹膜播種」といいます。
この段階では、緩和ケアや症状を和らげる治療が中心となります。

腹膜癌のステージごとの症状について

腹膜癌のステージごとの症状について
腹膜癌は、腹部を覆う腹膜や卵巣の表層から発生する珍しい癌です。
卵巣癌や卵管癌と同じく、初期の段階では症状が出にくいという特徴があります。
このため、早期発見が難しく、進行した段階での診断が多いとされています。
以下で、腹膜癌の症状について詳しく解説します。

早期では症状がほとんど出ない

腹膜癌は早期では症状がほとんど出ないとされています。
これは、腹膜癌は他の臓器に発生した癌細胞が剥がれ落ちて転移してくることで発生することが多く、その際にも痛みや出血などを引き起こさないためです。
また、腹部の内部にあるため、外見的にも変化を感じにくいといわれています。
そのため、腹膜癌の早期発見は困難であり、定期的な健診や検査を受けることが重要です。

進行すると腹部膨満感が現れる

腹膜癌は進行すると、腹部膨満感や食欲不振などの症状が現れます。
これは、癌細胞によって「腹水」と呼ばれる液体が貯留されることで引き起こされます。
腹水は、正常な場合でも少量存在しますが、炎症や感染などによって増えることもあります。
しかし、その場合でも数日で治まるとされています。
一方、腹水貯留型の腹膜癌では、長期間にわたって増加し続けることで、圧迫感や呼吸困難などを引き起こします。
腹水を減らすためには、抗生物質や利尿剤などの投与や、穿刺(せんし)と呼ばれる針で液体を抜く処置などが行われます。
しかし、これらは一時的な対処であり、根本的な治療ではありません。そのため、腹膜癌の原因となっている癌の治療が必要です。

腹膜癌のステージごとの5年生存率について

腹膜癌のステージごとの5年生存率について
腹膜癌の治療や予後を考える際、「5年生存率」は重要な指標となります。
5年生存率は、診断後の5年間で生き残る確率を示すもので、癌の進行度やステージによって異なることが知られています。
ステージが進行するに連れて、生存率は低下していく傾向があります。
以下で、腹膜癌のステージごとの5年生存率について詳しく解説します。

若い数字の時期では生存率が80%以上

腹膜癌のステージは、0期~4期までありますが、0期や1期など若い数字の時期では、生存率が高いとされています。例えば、国立がん研究センターによると、0期や1期の場合、5年生存率は80%以上になります。これは、早期に発見された場合、手術や化学療法などで根治的治療を行えるからです。
しかし、残念なことに、早期の腹膜癌は自覚症状に乏しく、発見される機会が少なくなります。そのため、定期的な健診や検査を受けることが重要です。

数字が増えた時期では生存率が50%以下に

一方で、2期や3期など数字が増えた時期では、腹膜癌の生存率は低くなります。
例えば、国立がん研究センターによると、2期や3期の場合、5年生存率は50%以下になります。
これは、腹膜癌が進行した場合、腹腔内の他の臓器やリンパ節へ転移し、手術で完全に切除することが困難であったり、化学療法で制御することが難しかったりするからです。
特に4期では、原発巣から他の臓器への転移や腹水などで重篤な症状を引き起こし、5年生存率は10%以下になります。
進行した腹膜癌は、緩和ケアや在宅ケアなどで痛みや苦しみを和らげる治療が中心となります。

腹膜癌のステージごとの治療について

腹膜癌のステージごとの治療について
腹膜癌は、腹部を覆う腹膜や卵巣の表層から発生する珍しい癌です。
卵巣癌や卵管癌と似た症状を持ち、早期発見が難しいとされています。
卵管癌・腹膜癌の治療データは乏しく、病理組織学的に類似する卵巣癌に準じて治療が行われます。

若い数字の時期

0期や1期など若い数字の時期では、手術や化学療法などで根治的な治療を目指します。
手術では、子宮の全摘術、両側卵巣と卵管の切除、骨盤や傍大動脈リンパ節の生検または郭清、大網切除、腹腔内の腫瘍切除などを行います。
手術後、残存する癌細胞を取り除くために、化学療法や放射線治療が併用されることもあります。

数字が増えた時期

2期や3期など数字が増えた時期では、癌細胞を手術で完全に切除することが困難であったり、化学療法で制御することが難しかったりします。
そのため、生存率は低くなり、5年生存率は50%以下になります。
特に4期では、原発巣から他の臓器への転移や腹水などで重篤な症状を引き起こし、5年生存率は10%以下になります。
腹膜癌が進行した場合は、緩和ケアや在宅ケアなどで痛みや苦しみを和らげることも重要です。
また、手術前に抗癌剤治療を行って手術可能な状態に持っていくこともあります。

腹膜癌のステージについてよくある質問

ここまでを腹膜癌のステージについて紹介しました。ここでは「腹膜癌のステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腹腔癌のステージごとの治療方法を教えてください

上 昌広上 昌広 医師

腹腔癌のステージごとの治療方法は以下の通りです。
・0期や1期:内視鏡治療や手術で、根治的治療を目指します。
内視鏡治療では、内視鏡を使って大腸の内側から癌を切除します。
手術では、子宮の全摘術や両側卵巣と卵管の切除、骨盤や傍大動脈リンパ節の生検または郭清、大網切除、腹腔内の腫瘍切除などを行います。
・2期や3期:手術で完全に切除することが困難だったり、化学療法で効果的に制御することが難しかったりします。
そのため、手術と化学療法(抗癌剤治療)を組み合わせて行います。
・4期:原発巣から他の臓器への転移や腹水などで重篤な症状を引き起こします。
そのため、根治的治療は困難であり、緩和ケアや在宅ケアなどで痛みや苦しみを和らげることが中心になります。
また、手術前に抗がん剤治療を行って手術可能な状態に持っていくこともあります。

腹膜癌の診断方法を教えてください

上 昌広上 昌広 医師

腹膜癌の診断方法には、以下のようなものがあります。
・画像検査:CTやMRIなどで、腹部の状態や腫瘍の大きさや位置を調べます。
また、PET-CTなどで、がん細胞の活動や他の臓器への転移の有無を調べます。
・血液検査:CA125という癌マーカーを測定します。
CA125は、卵巣癌や腹膜癌などで高くなることがあります。
・腹腔鏡検査:全身麻酔をしてお腹に小さな穴を開け、腹腔鏡と呼ばれる細い内視鏡を挿入してお腹の中を直接観察します。
腹水を採取し、その中にがん細胞が含まれているか調べることで、診断の手助けとなります。
・経皮的生検:皮下に局所麻酔をして針で組織を採取し、病理検査によって癌細胞の存在や種類を確認します。これらの検査によって、腹膜癌の確定診断やステージが決まります。
ステージによって治療法や予後が異なります。

まとめ

まとめ
ここまで腹膜癌のステージについてお伝えしてきました。
腹膜癌のステージの要点をまとめると以下の通りです。
・腹膜癌は、腹部を覆う腹膜や卵巣の表層から発生する癌。
卵巣癌や卵管癌と似た症状を持ち、早期発見が難しいとされている
・早期の腹膜癌はほとんど症状を示さないが、進行すると腹水貯留による腹部膨満感や、食欲不振、腹腰痛、不正出血、排便の異常などが現れる
・早期段階では手術を主体とした根治的治療を目指す。
進行すると治療は複雑となり、緩和的な手術や化学療法、放射線治療が中心となる

腹膜癌と関連する病気

「腹膜癌」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科・消化器内科の病気

  • 漿液性腺癌
  • 卵巣癌
  • 卵管癌
  • 乳癌
  • 胃癌
  • 大腸癌

腹膜癌と同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。

腹膜癌と関連する症状

腹膜癌と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状が当てはまる場合には、腹膜癌などの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師