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「慢性骨髄性白血病の原因」はご存知ですか?検査や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/26
「慢性骨髄性白血病の原因」はご存知ですか?検査や治療法も解説!【医師監修】

「慢性骨髄性白血病」の病名は聞いたことがあっても、どんな病気なのか詳しくご存知の方は少ないかもしれません。

以前は治療が難しい病気でしたが、近年は新しい薬が登場して症状を長く抑えることが可能になりました。

この記事では慢性骨髄性白血病の原因や治療について、治療を行う血液内科について解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性骨髄性白血病の原因とは?

慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、略してCML)は、血液細胞(赤血球・白血球・血小板)のもとになる造血幹細胞に異常が起こり、がん化して骨髄の中で増え続ける病気です。
造血幹細胞が分化して血液細胞になる際に、23組ある染色体のうち9番目と22番目の染色体が切れて入れ替わりが起こりフィラデルフィア染色体が発生します。9番染色体にあるABL遺伝子と22番染色体にあるBCR遺伝子が一つになって、BCR-ABL1融合遺伝子が作られます。これが慢性骨髄性白血病の原因です。
BCR-ABL1融合遺伝子がBCR-ABL1チロシンキナーゼというタンパクを作り、白血病細胞を増やし続けます。白血病は遺伝子の異常によるものと考えられますが、遺伝子変異が起こる原因ははっきり分かっていません。また親から子への遺伝もありません。

慢性骨髄性白血病の診断のために行う検査

慢性骨髄性白血病の診断のために行う検査は、次の6つになります。血球の数・種類・成熟度合や、慢性骨髄性白血病に特徴的なフィラデルフィア染色体・BCR-ABL1融合遺伝子の有無を調べる検査です。

  • 血球検査
  • 生化学検査
  • 分子遺伝学的検査
  • 細胞遺伝学的検査
  • 骨髄検査
  • 画像検査

ここから詳しくご説明します。

血球検査

血液検査で、血球の数や種類を調べます。白血球の値が1万/μl以上と以上に高いとき、疑われるのが白血病です。白血球の種類と比率を調べる白血球分画検査も行います。
白血球には5つの種類(好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球)があり、それぞれ異なる役割があります。通常は一定の割合が保たれていますが、体内に異常があると比率の変化が起こるのです。慢性骨髄性白血病の場合、好中球と好塩基球の増加が見られます。また顕微鏡で目視したとき、未熟なものから成熟したものまで、さまざまな段階の細胞が観察されることが特徴です。
他にNAP活性の値も調べます。NAPとは血液細胞の成熟した好中球に含まれる酵素で、慢性骨髄性白血病ではこの値が低くなります。

生化学検査

生化学検査とは、血液を遠心分離機にかけて分離した血清の様々な成分を分析する検査です。慢性骨髄性白血病の場合、LDH・尿酸値・ビタミン12の増加が見られます。

分子遺伝学的検査

血液の遺伝子変異を調べる検査です。PCR法を用いてフィラデルフィア染色体から作られるBCR-ABL1融合遺伝子の量を測定します。

細胞遺伝学的検査

染色体の異常を診断するため、染色体検査を行います。遺伝子を顕微鏡で見るFISH法を用いて、血液中のBCR-ABL1融合遺伝子を調べます。

骨髄検査

骨髄組織を採取して行う検査です。白血病の標本を作って染色体を調べるGバンド法を用いて、慢性骨髄性白血病において特徴的なフィラデルフィア染色体が検出されるかを調べます。また骨髄像検査で細胞の種類や分化状態を調べます。

画像検査

慢性骨髄性白血病では白血球の増加により脾腫(脾臓が腫れて大きくなること)が起きることが多いです。確認のため腹部エコー検査・CTなどの画像検査を行います。治療中も薬による副作用がないか、心電図やレントゲンなどの検査を実施します。
慢性骨髄性白血病の診断基準は、以下の通りです。

  • フィラデルフィア染色体またはBCR-ABL1融合遺伝子を確認
  • 白血球数が1万/μl以上に増加
  • 好塩基球の増加
  • 血液中に未熟な骨髄系細胞が存在している

慢性骨髄性白血病の治療

治療の中心は、薬物療法(分子標的薬)です。薬が効かないときや症状が進んだときは、造血幹細胞移植を実施します。

分子標的薬

従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすという問題がありました。2000年代より特定の病気の分子を標的として、攻撃する分子標的薬が登場しました。
慢性骨髄性白血病では、BCR-ABL1融合遺伝子がBCR-ABL1チロシンキナーゼというタンパクを作り、白血病細胞が増殖します。このタンパクの機能を抑える効果を持つのが、チロシンキナーゼ阻害薬です。
イマチニブ(商品名グリベック)が登場し、非常に高い治療効果をもたらしました。多くの患者さんで白血球の値が正常化して白血病細胞が低下します。その後新しい薬が開発され、現在ではイマチニブ・ダサチニブ・ニロチニブ・ボスチニブ・ポナチニブが利用されています。それぞれの患者さんの治療に選択肢が広がり、分子標的薬登場前に比べて治る確率が大幅に高まりました。
更に最近では治療効果の判定基準をクリアした後に薬を止めても、再発しない患者さんがいることも分かってきました。チロシンキナーゼ阻害薬によって、慢性骨髄性白血病は完治の可能性があると考えられます。

造血幹細胞移

チロシンキナーゼ阻害薬で治療の効果が見られないときは、造血幹細胞移植を行います。慢性骨髄性白血病は造血幹細胞の異常により罹患します。
異常な造血幹細胞を死滅させてから正常な造血幹細胞を移植する治療法が、造血幹細胞移植です。この治療では、前処置として大量の化学療法や放射線照射を行います。
その目的は、次の通りです。

  • 患者さんの免疫を抑制すること
  • 患者さんの造血機能を抑制すること
  • がん細胞の減少

その後ドナーからHLA(ヒト白血球抗原)が一致した正常な造血幹細胞を移植して、生着するのを待ちます。人間には異物を排除し攻撃する免疫機能がありますが、造血幹細胞移植では移植されたドナーの細胞が、がん細胞を排除する効果があるのです。
しかし免疫はがん細胞だけでなく、患者さん自身の体にも働いて患者さんの臓器や皮膚を攻撃する免疫反応が起こります。これが移植片対宿主病(GVHD)です。
GVHDは重症化する恐れがあるので、移植後は免疫抑制剤の服用が必要です。他にも感染症など様々なリスクがあり、この治療法は患者さんの年齢や体力などにより実施には制限があります。

慢性骨髄性白血病の進行

慢性骨髄性白血病の初期である慢性期はゆっくりと続いて、移行期を経て急性転化期へと進みます。

慢性期

自覚症状がないことが多いですが、微熱・体重減少・脾臓の腫れなどの症状が出ることもあります。白血球数と血小板数の増加が見られ、健康診断などの血液検査で白血球の異常から白血病が判明することが多いです。
慢性期は5〜6年続き、骨髄では異常な造血幹細胞がゆっくりと増殖していきます。

移行期

移行期になると異常な造血幹細胞は成熟する機能を失って、芽球(未熟な血球)が増加します。また造血幹細胞自体がより増殖し、正常な血液細胞が減少するのです。
治療が難しくなって、貧血・微熱・脾臓の腫れなどの症状が悪化します。

急性転化期

骨髄では芽球が大幅に増加し、血液中にも芽球が現れます。それと同時に正常な血液細胞は著しく減少し、貧血・発熱・出血・脾臓の腫れなど症状は更に悪化している状態です。
より強い抗がん剤や造血幹細胞移植を行いますが、治療はより難しくなります。

血液内科の主な疾患について

血液内科とは、血液細胞の異常やリンパ節などの血液疾患を専門に診察する科です。健康診断などの血液検査で異常が見つかり、受診される方が多いです。
血液疾患では近年、分子標的薬などの新薬や新しい治療法が登場し、今までは治りづらかった病気の完治が期待されます。血液内科の主な疾患は、以下の通りです。

  • 貧血:鉄欠乏性貧血・悪性貧血
  • 血液悪性疾患:白血病・多発性骨髄腫・悪性リンパ腫
  • 免疫学的疾患:血小板減少紫斑病・溶血性貧血

「慢性骨髄性白血病」についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の原因や治療などをご紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病」についてよくある質問にMedical DOC監修医がお答えします。

慢性骨髄性白血病の症状について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性期の症状は白血球が増えすぎるため、倦怠感・体重減少・微熱が続くなどの症状が出ることもあります。左肋骨の下にある脾臓が腫れて、胃の不快感やお腹の張りなどを感じる方もいますが、自覚症状はないことが多いです。移行期になると、貧血・発熱・リンパ節の腫れなど、全身の症状が悪化します。急性転化期まで進行すると正常な血球が大幅に減少して貧血・出血・感染症などの症状が重症化して、肝臓や脾臓の腫れが大きくなります。

慢性骨髄性白血病は完治しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

以前は完治が難しいと考えられ、生存期間の中央値は4~7年でしたが、分子標的薬が登場してからは長期生存率が9割と大幅に伸びました。治療の最初にイマチニブを投与すると、多くの患者さんで白血球数・血小板数が正常化します。薬を続けると寛解する方が7割にのぼります。薬の服用を止めても再発しない患者さんもいることから、慢性骨髄性白血病を完治できる可能性が出てきました。しかし、移行期や急性転化期まで進行してからの治療は難しく、症状のない慢性期に病気を早期発見することが重要と考えられます。

編集部まとめ

慢性骨髄性白血病の原因や治療について解説しました。

症状の出ないうちに治療を始めれば、完治する可能性があります。また罹患しても新薬・治療法が開発されたことで症状を抑えることが可能になりました。

定期的に血液検査を受けて早期発見することが重要です。

気になる症状がありましたら、お早めに病院で相談してください。

慢性骨髄性白血病と関連する病気

「慢性骨髄性白血病」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

白血病は4種類あり、骨髄性のものとリンパ系の幹細胞の異常によって起こるリンパ性の白血病があります。がん細胞の増える速度によって、急性と慢性に分かれます。急性骨髄性白血病が進行すると慢性骨髄性白血病になるのではありません。慢性骨髄性白血病の急性転化期の症状は急性骨髄性白血病に似ていますが、がんになる原因などが違います

慢性骨髄性白血病と関連する症状

「慢性骨髄性白血病」に関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上記のような症状があれば、できるだけ早く病院で相談しましょう。慢性骨髄性白血病は早期発見・治療をすることが重要です。

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