がん治療の1つ「光免疫療法」とはどんな治療法?治せる病気や費用も医師が解説!

光免疫療法とは?Medical DOC監修医が光免疫療法の費用や治せる病気・メリット・デメリット・治療の流れなどを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「光免疫療法」とは?
光免疫療法は、がん細胞に特異的に結合する光感受性薬剤を投与後、がん部に近赤外線を照射してがん細胞を選択的に破壊する新しい治療法です。
がん細胞のみを狙い撃ちでき、副作用が比較的少ないことから、従来の治療が難しい症例でも効果が期待される治療として注目されています。
現在日本では、薬剤アキャルックス®️(セツキシマブサロタロカンナトリウム)の投与とレーザー光照射を組み合わせた治療法が、頭頸部のがんに対して保険適用となっています。
今回の記事では、光免疫療法の費用や効果、流れなどについて解説します。
光免疫療法の費用
光免疫療法に要する費用の概算をお示しします。
保険適用の場合
光免疫療法は、切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対して保険適用されています。そのため、3割負担の場合、薬剤費・照射費を含め約30〜40万円程度が目安となります。入院管理料や検査費が別途必要なこともあります。
高額療養費制度を利用すると、自己負担額が抑えられるため、事前に制度を確認しておくと安心です。
自費診療の場合
適応外疾患に用いる場合や臨床試験での治療など、保険が使えないケースでは 数百万円以上かかる場合があります。
薬剤自体が高額であり、特殊な照射機器が必要となるため、自費診療では高額になりやすい点は十分な注意が必要です。
光免疫療法で治せる病気
光免疫療法が治療の選択肢となりうる病気には以下のようなものがあります。
切除不能な局所進行頭頸部がん
現在、日本で光免疫療法として保険適用となっている病気の一つです。
頭頸部は、脳、眼球、脊髄、顔面皮膚を除いた、首から上の領域全体を指し、耳・鼻・口・のど(咽頭・喉頭)・甲状腺・唾液腺・首のリンパ節などが含まれています。
この領域のがん、特にがんが大きくなっているような場合、頭に神経・血管が密集しており、手術が難しいことがあります。
具体的には、切除不能と判断されるケースには以下のようなものがあります。
・再建術後であり、再手術のリスクが高い
・手術による根治性が低く、複数回切除後に再発がある
・患者さんの全身状態が悪く、身体に負担がかかる手術が難しい
特に病変が大きいという必要はなく、放射線治療後あるいは上記のようなケースで光免疫療法の適応となることがあります。
アキャルックス®はEGFR陽性の腫瘍に結合しやすく、近赤外線照射によってがん細胞膜を破壊します。
治療は主に 頭頸部外科・耳鼻科・放射線治療科 が実施します。
切除不能な局所再発頭頸部がん
手術や放射線治療を行なったものの、再発した頭頸部がんも保険適用となっています。再照射が難しいケースでも、光免疫療法で腫瘍縮小が期待されるケースもあります。
歯科口腔領域のがん
歯科口腔領域のがんは、頭頸部がんと重複する場合もあります。しかし、歯科口腔外科領域での光免疫療法はより新しく保険収載されたものです。歯科口腔領域のがんとしては、舌・歯肉・頬粘膜・口底・口蓋などにできる悪性腫瘍の総称で、多くは扁平上皮がんです。
適応判断や照射範囲の決定には 歯科口腔外科と放射線科の連携 が不可欠です。
食道がん
臨床試験として、現在手術や化学療法、放射線治療などの既存治療で治すことが難しい食道がんへの光免疫療法が行われています。どの医療機関でも行うことができるわけではありません。
婦人科系のがん
局所進行または再発外陰がんや腟がん、子宮頸がんに対する光免疫療法の臨床試験も行われています。こちらについても、しかし、一般医療機関では実施されておらず、実施施設はごく限られています。
光免疫療法のメリット
光免疫療法のメリットを以下にまとめます。
がん細胞を集中的に破壊できる
光免疫療法の大きなメリットは「がん細胞にのみ作用する」という点です。
正常細胞へのダメージが少なく、副作用が従来治療よりも軽減される場合があります。
抗腫瘍免疫の促進
光免疫療法によってがん細胞が破壊されると、がん特有の抗原が放出され、免疫細胞が活性化されることがあります。
これにより、照射部以外のがん細胞に対しても免疫が働く可能性が指摘されており、免疫療法との併用にも期待が寄せられています。
治療後の免疫賦活
治療後に体ががんを認識しやすくなる、免疫賦活効果が得られる症例もあります。
これは光免疫療法が局所治療でありながら、全身治療的な側面を持ちうる点として注目されています。
光免疫療法のデメリット
光免疫療法にはデメリットもあります。
治療薬の成分に過敏症がある方は禁忌
アキャルックス®は抗EGFR抗体がベースのため、抗体製剤にアレルギーがある場合には使用できません。
また、重度の皮膚障害や感染症があると治療が困難になることもあります。
頸動脈に腫瘍が及んでいる場合は避ける
照射によって腫瘍が急速に壊死するため、重要血管に浸潤している場合には破裂のリスクがあります。
そのため、頸動脈に接している腫瘍 は光免疫療法の対象外となることがあります。
保険適用以外の場合は高額になる可能性あり
保険適応外疾患や臨床試験では全額自費となり、高額な治療費が必要になるため注意が必要です。
光免疫療法の流れ
光免疫療法は以下のような流れで行われます。従来の手術や化学療法とは異なり、がん細胞に結合した薬剤に光を当てることで選択的に細胞を破壊するため、治療のタイミングや手順がとても大切です。
診察・検査
最初に行われるのは、腫瘍の状態を正確に把握するための検査です。
CT・MRI・PET などの画像検査で 腫瘍の大きさ・浸潤範囲・周囲の臓器との位置関係 を詳細に評価します。特に頭頸部は血管や神経、気道が複雑に入り組んでいるため、治療の安全性を確認するうえで欠かせません。
加えて、アキャルックス®が作用するかどうかを判断するために、EGFR(上皮成長因子受容体)陽性かどうか の確認を行います。
抗体医薬を用いる治療であるため、アレルギー反応などが起きないか、血液検査や既往歴の確認も丁寧に行われます。
なお、治療適応の可否は、「腫瘍が照射可能な範囲にあるか」「頸動脈など重要臓器に接していないか」など複数の要素から総合的に判断されます。
治療計画
治療が可能と判断されると、次に光照射のタイミング・角度・照射範囲などを設計する治療計画を作成します。
取得した画像データを専用ソフトに取り込み、腫瘍の形状や位置をmm単位で解析します。頭頸部ではわずかなズレが正常組織への損傷につながるため、以下が詳細に検討されます。
・どの角度から光を当てるか
・どの範囲に照射するか
・どの程度の出力で照射するか
照射時に口腔内に光ファイバーを挿入する場合や、皮膚表面から照射する場合など、腫瘍の場所によって照射方法が変わるのも特徴です。
また、薬剤投与後に光を照射するタイミングも非常に重要で、投与から24時間後がもっとも細胞破壊効果が高い とされています。
治療
治療の流れは以下のようになります。
1. アキャルックス®を静脈から投与
2. 24時間後、近赤外線を専用レーザーで照射
照射された腫瘍細胞は数分〜数時間以内に膜が破壊され、細胞死へと向かいます。
治療自体は痛みが少なく、局所麻酔で行われることがほとんどです。
治療後
治療後は一時的に腫れ・痛み・嚥下困難が出現する場合があります。
腫瘍の壊死による炎症反応で発熱することもありますが、ほとんどは数日〜数週間で改善します。
退院後は定期的な画像検査を行い、腫瘍の縮小や治療効果を確認します。
もしも追加治療が必要と判断された場合、4週間以上空け、繰り返し行うことも可能です。
「光免疫療法」についてよくある質問
ここまで光免疫療法を紹介しました。ここでは「光免疫療法」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
光免疫療法の完治率はどれくらいなのでしょうか?
木村 香菜(医師)
治療成績はがんの部位・大きさ・進行度により異なります。臨床試験では、腫瘍縮小率が高い症例が多く報告されており、再発例にも効果が期待されています。
ただし、光免疫療法は比較的新しい治療であり、長期予後に関するデータはまだ限定的です。今後の研究によってさらに明確になると考えられます。
まとめ
光免疫療法は、がん細胞を選択的に破壊し、副作用を抑えながら治療できる革新的な治療法です。手術や化学療法が難しい症例でも治療の可能性を広げる選択肢として注目されています。一方で、適応が限られていたり、保険適用外の場合は高額となったりなどの課題もあります。治療を検討する際は、大学病院やがんセンターなど、がんの治療に精通した専門医のいる施設で十分に相談することが大切です。
「光免疫療法」と関連する病気
「光免疫療法」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器内科系
光免疫療法が行われるケースがある病気としては、上記のようなものがあります。
「光免疫療法」と関連する症状
「光免疫療法」と関連している、似ている症状は16個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- のどの違和感
- 飲み込みにくい(嚥下障害)
- 声がれ(嗄声)
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- 口内の出血
- 耳へ響くような痛み(放散痛)
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- 外陰部の痛み・灼熱感
- デリケートゾーンの出血(性交時出血・不正出血など)
- 腟の違和感・腫れ
- おりものの増加・においの変化
- 下腹部〜骨盤の痛み
こうした症状が続いたときに検査をきっかけに腫瘍が見つかり、条件を満たす場合には光免疫療法が選択肢の一つとして検討されることもあります。早期発見のためにも、症状が続く場合は医療機関の受診が推奨されます。
参考文献
