「胃がんを発症しやすい年齢層」はご存知ですか?胃がんになりやすい人の特徴も解説!


監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんとは、胃の壁にある細胞か何らかの原因でがん化し、無秩序に増えていく病気です。多くは胃の内側にある粘膜の細胞ががん化することで発生し、徐々に外側に向かって広がっていきます。また、胃がんの中には胃の壁を硬く厚くさせながら広がるタイプの胃がんもあり、これをスキルス胃がんと言います。胃がんを発症しやすい年齢層
胃がんは、50歳代以降で増加し始め、80歳代で最も多くなります。中高年の男性に多いがんと言えます。がんの中でも大腸がん、肺がんについで3番目に多く比較的日本人で多いがんです。 一方、スキルス胃がんは胃がんのうちおおむね10~15%程度の発生率と言われ、頻度はそれほど多くないですが、女性で20歳代の若者に多いと言われています。胃がん年齢別の生存率
2014年~2015年に胃がんと診断された患者さんのデータを基に集計された、国立がん研究センターが報告している院内がん登録の報告に基づいて解説します。 また、ここでの生存率は、ネットサバイバル(がんのみが死因となる状況を仮定して計算した生存率)を用いています。30代の生存率
30代のみの報告が無いため、0歳~39歳での胃がんの5年生存率を示します。0~39歳での胃がんの5年生存率は男性で63.8%、女性で55.5%、全体で61.5%となっています。40代以上での生存率と比較し、やや低いです。これは、若者では不調を感じた後に医療機関を受診するまでが、遅れてしまう可能性が考えられます。また、若年で多く発症するスキルス胃がんは、進行が早く予後が不良です。このため、この年代での生存率が低くなっていることも考えられます。40代の生存率
40代での5年生存率では、男性で71.2%、女性で70%、全体で70.7%です。30代までの生存率と比較してやや改善がみられます。40代での胃がん発生も少ないため、医療機関を受診することが遅くなり、胃がんの発見が遅れてしまうのかもしれません。50代の生存率
50代での5年生存率では、男性で76.2%、女性で73.5%、全体で75.4%となっています。全年齢の中で最も生存率が高い年代と言えます。60代以上の生存率
60代での5年生存率では、男性で74.5%、女性で73.9%、全体で74.4%となっています。70代での5年生存率では、男性で71.6%、女性で74.2%、全体で72.3%です。80代以上での5年生存率では、男性で59.9%、女性で60.2、全体で60%です。50歳代をピークとしてその後徐々に生存率は低下していきます。これは、年代が上がると胃がん以外の全身状態により治療が十分にできなかったり、合併症が起こることで命を落とすことも考えられます。胃がんになりやすい人の特徴
喫煙者
喫煙は胃がんのリスクであることが分かっています。非喫煙者と比較して喫煙者では胃がんのリスクが1.6倍となる事が報告されています。このため、禁煙をすることが大切です。アルコール多飲
アルコールの多量摂取は、胃がんのリスクです。日本の研究報告では、男性において、1日当たりのエタノール摂取量23g以上では非飲酒者と比較して胃がんのリスクが増加することが分かっています。このリスクは、エタノール量が増えれば増えるほどリスクが増加します。このリスクは、23~46g/日で1.09倍、46~69g/日で1.18倍、69~92g/日で1.21倍、92g/日以上で1.29倍です。女性ではこの傾向がはっきりしませんでしたが、飲酒量が男性より少ないためと考えられ、男性と同様に節酒することがすすめられます。 1日エタノール量23g/日未満(日本酒で1合、ビール500ml程度)での節酒を実践しましょう。塩蔵食品、塩分摂取量が多い
日本人は元々欧米より塩分摂取量が多いです。塩分摂取が多い、また塩蔵食品(干物、漬物、魚卵など)の摂取が多いことは、胃がんのリスクとなる事が分かっています。なるべく薄味に、また塩蔵食品の摂取を控えめにすることがすすめられます。胃がんの代表的な症状
みぞおちの痛み
胃がんは早期では症状が無いことも多いです。進行すると、潰瘍を形成したり、胃の外側の漿膜までがんが到達することで痛みが出ることもあります。しかし、このような痛みは胃がんで特徴的ではなく、胃潰瘍などのほかの病気でもみられることもあるため注意が必要です。みぞおちの痛みが出た場合には消化の良いものを摂取し、痛みが1週間以上持続する場合には消化器内科を受診して相談をしましょう。しかし、痛みが強い時や黒い便が出る場合、ふらつきなどの症状がある場合には早急に受診することをお勧めします。胃の不快感、吐き気、食欲不振
胃がんの症状として、胃の不快感や吐き気を訴える場合もあります。また、食欲もなくなり体重が減少することも少なくありません。これらの症状は、他の消化器疾患でも起こる場合があり、胃がん特有の症状ではありません。一時的であれば、消化の良い食事で経過をみても良いですが、持続する場合には消化器内科で相談をしましょう。 また、食事制限をしていなくとも体重が減少することもあります。このような体重減少は、がんや甲状腺機能亢進症など治療が必要な病気が隠れている可能性があります。体重減少を伴う場合には、早めに受診して相談する方が良いでしょう。黒い便、貧血
胃がんに伴い、出血がみられることも少なくありません。胃からの出血の場合、胃酸により血液が酸化されて黒くなり、黒色便がみられることもあります。また、少量の出血が続くことで貧血が進行することもあります。血液検査で貧血が進行する場合には、かかりつけ医に相談をしてみるのも良いでしょう。胃がんの主な原因
ピロリ菌の感染
ヘリコバクターピロリ菌の感染が胃がんの発症に影響していることが分かっています。ピロリ菌陽性者の胃がんのリスクは陰性者の5.1倍と報告されています。このため、ピロリ菌が陽性である場合には、胃がんの発生に気をつけなければなりません。生活習慣の乱れ
胃がんの危険因子は喫煙やアルコールの多飲です。また、食事では塩分過多や塩蔵食品を多く摂ることがリスクとなります。そのほかにも男性ではBMI27以上と肥満があると、BMI23~25のグループと比較して1.23倍胃がんになりやすいことが報告されています。このように、生活習慣により胃がんのリスクが増加することが分かっているため、気をつけなければなりません。胃がんの予防法
ピロリ菌除菌
前述のように、ピロリ菌の感染が胃がんのリスクとなる事が分かっています。また、ピロリ菌を除菌することで、非除菌群と比較して胃がんのリスクが0.42と有意に低下することが分かりました。このことからも、万が一ピロリ菌感染が判明した場合には、除菌をおこなうことが胃がんの予防となるといえます。しかし、除菌後も完全に危険性がなくなったわけではありません。定期的な胃がん検診を行うようにしましょう。生活習慣の見直し
禁煙・節酒はもちろんのこと、減塩などバランスの良い食事をすること、適度な運動、適正体重を保つことも胃がんの予防となります。生活習慣の見直しを行うようにしましょう。定期的な胃がん検診
胃がんは症状がなく、初期ではわかりづらいです。しかし、初期に発見することが非常に大切です。定期的に胃がん検診を受けるようにしましょう。「胃がんにかかる年齢」についてよくある質問
ここまで胃がんにかかる年齢を紹介しました。ここでは「胃がんにかかる年齢」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
20代・30代で胃がんを発症する確率は高いのでしょうか?
和田 蔵人 医師
20代、30代の若年層での胃がんの発生率は決して高くないです。しかし、スキルス胃がんは20代で発生することが多いと言われています。若くても、胃の調子が持続的に悪い場合には、早めに消化器内科を受診しましょう。
胃がんの罹患率が高い年齢層について教えてください。
和田 蔵人 医師
胃がんの罹患率は50代以降に増加し始め、80代でピークを迎えます。50代以降では特に、胃がん検診を定期的に受けるようにしましょう。
まとめ
胃がんは日本において3番目に多いがんです。50代以降に罹患率が徐々に増加します。早期に発見できれば、予後は良いですが、がんが進行すると生存率が低下します。そのため、早期に発見し治療を開始することが大切であると考えられます。 また、予防することも大切です。禁煙、節酒、バランスの良い食事をし、減塩するように努めましょう。また、ピロリ菌の感染がある場合には除菌することも大切です。その上で定期的に胃がん検診を受けましょう。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- みぞおちの痛み
- 胃の不快感
- 吐き気
- 食欲低下
- 貧血
- 体重減少




