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「大腸がんが再発する可能性」はどのくらい? 再発を防ぐためにできることを医師に聞く

 公開日:2025/05/03
「大腸がんが再発する可能性」はどのくらい? 再発を防ぐためにできることを医師に聞く

大腸がんは、がんの中でも再発率が比較的低いとされていますが、進行度やがん細胞の残存によって再発リスクは高まります。再発には局所再発や遠隔転移などがありますが、どのようにすれば再発を防ぐことができるのでしょうか。今回は、大腸がんの再発リスクや治療、予防方法について、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長の柏木宏幸先生に詳しく解説していただきました。

柏木 宏幸

監修医師
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)

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2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。

大腸がんの再発率は高い?

大腸がんの再発率は高い?

編集部編集部

大腸がんは再発率の低いがんなのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんは、がんの中でも再発率が比較的低いとされています。大腸がんの再発率はステージⅠ(粘膜の筋層までに留まっている段階):約5.7%、ステージⅡ(周囲に広がっている段階):約15%、ステージⅢ(リンパ節転移を認める段階):約31.8%と報告されており、全ステージの平均再発率は18.7%とされています。ほかのがんと比較しても、5年生存率が高いがんであることから再発率の低いがんと言えます。

編集部編集部

大腸がんの再発率が高くなるのは、どのような場合ですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんの再発率を左右する要因は、大腸がんを切除した後に体内にがん細胞が残っていた場合や進行していた場合です。進行の程度に関しては、深達度(粘膜からがんが発生し、粘膜の下にどれほど浸潤しているか)、リンパ節転移や遠隔転移(肺や肝臓)の有無により判断されます。進行しているほど、治療による完全な切除が難しくなります。内視鏡または手術で切除しますが、再発するケースの多くが目に見えないがん細胞の残存によるものです。肛門に近い直腸がんは、手術時の視野が限られるため、周囲の臓器や神経、機能への影響も考慮することから、治療の難易度が高くなります。腫瘍切除の余地が限られ、最小限の範囲での切除となることが多く、部位としては直腸がんの再発リスクが高くなります。

編集部編集部

一度再発すると、何度も再発する可能性が高くなるのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

がん細胞が残存している場合や進行している場合に再発するなので、一回起こると何度も再発する可能性は高くなると考えられます。しかし、再発した後の治療で十分に治療できている場合には、再発のリスクは減少します。医師も繰り返しの再発が起こらないような治療を考え、おこなっています。

大腸がん再発後の治療方法

大腸がん再発後の治療方法

編集部編集部

大腸がんの再発にはどのような種類があるのか教えてください。

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんの再発は①局所再発②遠隔転移③腹膜播種(ふくまくはしゅ)④吻合部(ふんごうぶ)再発の4種類が挙げられます。 ①局所再発は、大腸がんを切除した領域または付近にがんが再び出現した状態です。がんを切除しても、わずかにがん細胞が残ってしまった場合や、治療した大腸がんが進行していた場合に起こります。 ②遠隔転移は、大腸がん(原発巣)とは違う臓器に転移性腫瘍が発生した状態です。大腸がんでは肺や肝臓への遠隔転移が起こりやすいため、経過観察中に遠隔転移(肺転移、肝転移)が発見されるケースもあります。 ③腹膜播種とは、腸の外側を覆う膜(腹膜)にがんが転移した状態です。 ④吻合部再発は、手術によって大腸がんを切除して、大腸と大腸をつなぎ合わせた部分(吻合部)に大腸がんが再発した状態です。いずれも手術の際にがん細胞が腹腔内や腸、リンパ節に残っているようなケースで起こる可能性があります。

編集部編集部

再発した場合、一般的にどのような基準で治療方法が選択されますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんが再発した場合の治療方法は、「再発大腸がんの治療指針」によって定められています。まずは、再発した部分を切除することで治療できると判断した場合には手術での切除がおこなわれます。切除が困難と判断された肝転移や肺転移の場合、全身の健康状態(パフォーマンスステータス)が問題なければ薬物療法(抗がん剤)や放射線治療をおこないます。治療により再発したがんが縮小した場合、手術による切除が可能となることもあり、切除が困難なケースでは薬物療法と放射線療法が中心となります。

編集部編集部

再発した場合、完治する可能性はあるのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

手術によって再発した大腸がんの切除が可能である場合には、完治する可能性はあります。また、手術が不可能と判断された場合でも薬物療法の効果によりがんが縮小して手術が可能となり、完治することもあります。再発の状況に応じて、完治の可能性も異なるため、大腸がんの治療後は、再発する可能性を考えて定期検査を受けることが大切となります。

大腸がんの再発を早期発見、予防する方法

大腸がんの再発を早期発見、予防する方法

編集部編集部

大腸がんの治療後、再発を確認するための検査はどのような流れでおこなわれますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

内視鏡治療で完全に切除できた場合には、局所再発の有無を確認するために大腸内視鏡検査での定期検査がおこなわれます。手術で切除した場合には、大腸内視鏡検査以外にも手術後3年間は3ヵ月に1回の頻度で通院し診察、血液検査、6ヵ月ごとに画像検査(CT)を受けます。その後、2年間(手術後4〜5年)は6〜12ヵ月に1回の頻度で検査(血液検査、CT)を実施することが一般的です。定期通院・検査では問診、診察、採血による腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の測定、胸部レントゲン検査、CTや腹部超音波、大腸内視鏡などの検査が、必要に応じておこなわれ、状況に応じてMRIやPETも検討されます。

編集部編集部

大腸がん発症後、再発を予防するために病院ではどのようなことをおこなうのですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がん治療後は、大腸がんの再発を早期に発見するために、主治医は定期的に検査をおこなうことを案内します。大腸がんの再発の約80%は手術後3年以内、95%以上は5年以内に見つかります。そのため、治療後5年間の経過観察が必要とされ、5年経過すると再発、死亡する可能性は低下すると言われています。再発した場合においても早期発見し、早期治療をおこなうことが大切です。また、ステージⅢ(リンパ節転移を認める段階)の大腸がんでは3〜6ヵ月間の術後補助化学療法が推奨されますので、再発予防のために術後の薬物療法が必要となります。

編集部編集部

自分自身でできる再発予防についても教えてください。

柏木 宏幸先生柏木先生

まずは早期発見が大切であるため、定期通院・定期検査を忘れないことが重要です。さらに、体調に異変を感じた場合には主治医に相談することをお勧めします。大腸がんの予防と同様に再発予防としても①偏った食生活の改善、②加工肉や赤肉類の食べすぎに注意、③カルシウムの摂取、④食物繊維の摂取、⑤節酒、⑥禁煙、⑦運動不足の解消、⑧腸内環境を整える、⑨肥満を改善するなどの生活習慣の見直しが大切です。

編集部まとめ

大腸がんは、再発の可能性がまったくないわけではありませんが、治療後の経過観察と適切な生活習慣によって、再発の予防や早期発見が可能です。特に手術後3〜5年間は再発のリスクが高まるため、定期的な検査を欠かさず受けることが重要とのことでした。また、日常生活の中で食習慣や運動、喫煙・飲酒などを見直すことも、再発予防に有効です。本稿が読者の皆様にとって、大腸がん治療後の生活を見直すきっかけとなりましたら幸いです。

医院情報

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院
所在地 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-21-1 ラグーン池袋ビル6F
アクセス 「池袋駅」35番出口より徒歩3分
「東池袋駅」2番出口より徒歩5分
診療科目 消化器内科、内視鏡内科、内科

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