「骨肉腫の主な4つの症状」はご存知ですか?原因や治療法も解説!【医師監修】
骨肉腫は、原発性悪性骨腫瘍で主に10代に多い希少がんです。とくに膝関節周辺に痛み・腫れがあることから成長痛と勘違いしてしまうことがあります。
骨肉腫と成長痛の症状を見分けることは、子どもはもちろん大人でも難しいため、医療機関を受診し医師の診察を受けましょう。
また、骨肉腫にも種類があり複雑で、種類や進行の程度によっても治療方法が変わってきます。病気や治療方法を理解し、納得しながら治療するとよいでしょう。
まずは、骨肉腫の症状を見落とさないためにも、病気について知ることが必要になります。本記事で、骨肉腫や症状についての知識が深まれば幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
骨肉腫とは?
原発性の悪性骨腫瘍の中で最も多くみられるのが骨肉腫ですが、悪性腫瘍全体の0.2%にあたる非常に稀ながんです。
発症部位として、大腿骨遠位部(膝上の骨)と脛骨近位部(膝下の骨)に好発し、全体の70%を占めています。次いで、上腕骨近位骨幹端(肩関節近くの骨)に好発し、全体の10%を占めています。多くは10代の小児に発生し、骨肉腫患者の60%が10代です。
骨肉腫の最も多い型は、骨内通常型が主です。他にも亜型として、骨内高分化型骨肉腫・円形細胞骨肉腫・表在骨肉腫・傍骨骨肉腫・骨膜骨肉腫・表在高悪性骨肉腫があります。骨肉腫の治療は化学療法を行いますが、亜型によっては化学療法を行いません。悪性腫瘍の中では希少がんですが、10代の小児で発生の頻度が高く、治療の組み合わせも種類によって異なります。
骨肉腫の症状
骨肉腫の症状は、成長痛と似ていますが、腫れや熱感が出現する場合は骨肉腫の可能性があります。以下、骨肉腫の特徴を紹介していきましょう。
初期症状
初期には、症状が出ない場合があります。軟骨の腫瘍では、痛みはほとんどなく、関節の腫れ・発赤の症状が出てくるでしょう。骨の腫瘍では、関節に痛みがあります。
痛み
痛みは、数週間〜数ヵ月単位で繰り返すことがあるため、10代では成長痛と勘違いするでしょう。判断基準として、以下が挙げられます。
- 怪我をした覚えがないのに痛みがある
- 1ヵ月以上経過しても痛みが改善しない
- 痛みの出現と消失を繰り返し、改善しない
成長痛と似ている症状ですが、痛みのみで判断しないことが大切です。
腫れ
骨肉腫の特徴として、関節の腫れ・しこりが出現します。腫れ・しこりの悪化によって可動域制限が出て、関節の曲げ伸ばしがしづらくなるでしょう。
軟骨の腫瘍は、痛みがないこともあります。放置してしまいそうですが、以下の場合は医療機関を受診しましょう。
- 関節の曲げ伸ばしがしづらい程、腫れの悪化がある
- しこりが5cm以上となる
- 発赤が出てくる
場合によっては、腫れ・しこりが目で見てわからないこともあるでしょう。しかし、レントゲン検査・CT検査・MRI検査をすると、腫瘍の大きさが確認できます。
骨折
腫瘍によって、腫瘍周囲の骨がもろくなり骨折する可能性があります。骨折により、初めて病気に気づくこともあるでしょう。
熱感
好発部位の皮膚が赤くなり、熱感が出現します。成長痛にはない症状のため、骨肉腫など他の病気を疑う指針になるでしょう。
骨肉腫の原因
骨肉腫の腫瘍細胞には遺伝子の変異が確認されており、以下の病気では骨肉腫の発生が判明しています。
- 網膜芽細胞腫
- Li-Fraumeni(リー・フラウメニ)症候群
網膜芽細胞腫は、網膜がんで乳幼児に多くみられ、二次がんとして骨肉腫を発症します。遺伝子の変異が原因で骨肉腫を発生させるのは、Li-Fraumeni(リー・フラウメニ)症候群です。骨肉腫以外のがんも発生させるリスクがあるでしょう。
骨肉腫の主な種類
骨肉腫には、軟骨肉腫・ユーイング肉腫・骨巨細胞腫と種類があります。以下、紹介していきます。
軟骨肉腫
軟骨肉腫は軟骨基質に形成される悪性腫瘍であり、原発性悪性腫瘍全体の18%です。10〜70代の年齢層に均等に発生し、発生頻度に男女差はありません。
好発部位は骨盤・大腿骨・上腕骨・肋骨・肩甲骨です。確立された治療は、手術療法のみとなります。広範切除術という腫瘍のできた骨と周りの筋肉をともに切除する手術を行うのが一般的な治療方法です。
しかし、患肢温存手術が不可能な場合は、患肢の切除術を行うこともあるでしょう。
ユーイング肉腫
ユーニング肉腫の多くは、20歳未満の小児の骨に発生しますが、高齢者にもみられます。骨以外の体中の軟部組織に発生しますが、主な好発部位は、四肢・骨盤・肋骨です。
炎症症状が強いのが特徴で、局所の痛み・腫れ・熱感が出現します。ユーイング肉腫は、成長痛と勘違いする可能性があるでしょう。血液検査の所見でも、白血球数の増加・赤沈値の亢進・CRPの亢進がみられます。
化学療法や放射線治療が有効で、局所療法は放射線治療と手術療法の併用で行われることが多いです。遠隔転移の予防には手術の前と後に化学療法が行われます。
骨巨細胞腫
骨巨細胞腫は20代に多く発生します。再発率が高く、肺に転移する可能性があることから中間悪性腫瘍とWHOで分類されています。好発部位は、大腿骨遠位端・脛骨近位端・橈骨遠位端です。
良性・悪性とどちらもあるのが特徴です。治療では、主要部分の切除に加えて、骨の欠損部への骨移植を行います。再発した場合は、骨の摘出後に人工関節を挿入することになるでしょう。手術が難しい場合は、デノスマブという注射薬を使用します。
骨肉腫の治療法
骨肉腫では、外科的手術と放射線治療または化学療法を組み合わせて治療します。以前は、患肢の切除術が主でしたが、現在は患肢の温存手術として広範切除術が広まっています。全体の治療期間は10ヵ月〜1年単位と長期的です。
その後も、予後や再発の経過をみるために、定期的な検査通院が必要となります。
手術療法
主な手術は、悪性腫瘍の病巣だけでなく、その周囲の軟部組織も切除する広範切除術を行います。再発の可能性を低くするのが目的です。
現在では、患肢温存手術と切断術の再発率はほぼ同じです。腫瘍を温存するのに重要な神経や血管を巻き込んでいる場合は、患肢の切断術を選択しなければなりません。手術によって欠損した骨は、以下の方法で再建します。
- 人工関節を挿入する
- 凍結処理骨を移植し再建する
- 腓骨を移植する
このような方法です。人工関節を挿入するメリットは、小児では成長の発達があるため、後に延ばせる機能を持った腫瘍用人工関節があります。デメリットとしては耐用年数が10〜20年で、新しい人工関節に入れ替えなければならず、再手術が必要となるでしょう。凍結処理骨のメリットは腫瘍のある骨を切除した後、液体窒素で腫瘍細胞を凍死させ、その骨を再建できることです。
デメリットとして、関節部分は凍結すると関節の機能を失ってしまうため、人工関節と凍結処理骨を併用することがあります。また、腫瘍のある骨自体に一定の強度がなければいけません。人工関節のように入れ替えの再手術は必要ないのがメリットです。しかし、骨の強度が一定以下の場合、人工関節への再手術となる可能性もあります。腓骨移植のメリットは、自分の正常な骨を移植するため、術後の脚長差を最小限に留められます。
デメリットとしては、関節の変性で機能予後は長期的にみると良好といえません。また、内反動揺性という関節が動揺する現象が起きる可能性があるでしょう。以前は、患肢の切断術が主でした。現在は、温存手術が可能となってきているため、手術の選択肢が広がっています。
放射線治療
骨肉腫では、放射線治療が効きにくく、単独の治療では根治が難しいでしょう。治療理由としては、切除範囲の縮小や再発率の低下を目的に補助的な役割を担います。
また、手術が困難な部位に腫瘍がある場合や全身状態が悪い場合も行うでしょう。腫瘍による疼痛や麻痺の症状を緩和する目的でも放射線治療を行います。脊椎や骨盤に好発した骨肉腫で広範切除術が困難な場合は、粒子線治療を行います。
化学放射線療法
化学療法は、抗がん剤を使用する治療方法です。治療理由として、手術前後に根治性を高める・進行期の腫瘍の増大を抑制するために行います。
手術で腫瘍部かつ周囲の軟部組織を切除しても、既に転移した微小ながんまでは取り除くことはできない可能性があります。その場合には、手術前後の化学療法が有効的です。
骨肉腫の治療薬として、アドリアマイシン・シスプラチン・イフォマイド・メトトレキセートを使用します。軟部肉腫の治療では、イフォマイド・アドリアマイシンを使用します。化学療法は、吐き気などのつらい治療というイメージがありますが副作用を軽減する薬もあり、不安な場合は医師に相談することが大切です。
骨肉腫についてよくある質問
ここまで骨肉腫の症状・種類・治療方法などを紹介しました。ここでは「骨肉腫の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨肉腫で受診するべき診療科は何科ですか?
甲斐沼 孟(医師)
膝関節や肩関節に痛みなどの症状が出現するため、まずは整形外科を受診しましょう。その後に専門科への紹介があるでしょう。
子どもの骨の痛みは骨肉腫ですか?
甲斐沼 孟(医師)
骨の痛みがあるだけでは断定できません。成長痛や怪我による骨折の可能性もあるでしょう。怪我をした覚えがないのに痛みがある・1ヵ月以上経過しても痛みが改善しない・痛みの波があり改善しない場合は、整形外科への受診をおすすめします。
編集部まとめ
骨肉腫は、希少がんですが、10代の小児に多い悪性骨腫瘍です。主に膝関節に痛みがあるため、成長痛と勘違いしやすいです。
成長痛では、関節の痛みがあります。腫れや関節の動かしづらさはなく、レントゲン検査での異常な所見はありません。
骨肉腫では、痛みが出ない場合もありますが、痛みの波が数ヵ月続きます。また、腫れによって関節の動かしづらさがあるでしょう。
腫れがない場合でも、レントゲン検査やCT・MRI検査によって、腫瘍の大きさが確認できます。
小児に多い希少がんであり、日常生活で気づくことは難しいでしょう。本記事で、成長痛と骨肉腫の症状の違いを理解でき、受診の有無が判断できれば幸いです。
「骨肉腫」と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 網膜芽細胞腫
- Li-Fraumeni(リー・フラウメニ)症候群
- 骨パジェット病
- ロスムンド・トムソン症候群
- ブルーム症候群
上記の病気から骨肉腫が発生する場合があります。 医療機関で定期的な検査を行いましょう。
「骨肉腫」と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 好発部の痛み
- 好発部の腫れ・しこり
- 好発部の発赤
- 好発部の熱感
- 炎症反応による発熱
- 腫れによる関節可動域の制限
- 腫瘍周囲の骨折
上記のような症状が気になるようであれば、整形外科へ受診することをおすすめします。