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「エボラ出血熱」に感染すると現れる症状・致死率はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/02/21
「エボラ出血熱」に感染すると現れる症状・致死率はご存知ですか?医師が監修!

エボラ出血熱はかつてニュースなどでも報道された伝染病で、記憶のある方も多いのではないでしょうか。最近では報道されることもなくなって忘れてしまった人もいるかもしれません。

現代の世界では新型コロナウイルスによるパンデミックが問題となっているため、エボラ出血熱が現在でも収束せず問題になっている地域があります。

新型コロナウイルスによる感染と同様、エボラ出血熱は感染が収束していない病気です。グローバル社会となった現代では他人事ではない病気といえるでしょう。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

エボラ出血熱の原因と感染経路

防護服

エボラ出血熱の感染経路を教えてください。

エボラ出血熱は主に感染者の体液など(血液・分泌物・吐瀉物・排泄物)に触れることで感染する病気です。感染した猿など野生動物の体液や死体に触れて感染してしまう可能性もあるでしょう。感染する原因は、皮膚の細かな傷・眼・口の粘膜等が接触することでウイルスが体内に侵入することです。
なお通常は空気感染をすることはありません。人や猿の体液などへの接触以外でも感染の可能性があり、流行地域(主にコンゴ民主共和国などのアフリカ中央部)の洞窟に入ってエボラ出血熱に感染したコウモリと接触することでも感染します。ただしこのようなケースは日本国内ではほぼありません。

エボラ出血熱の原因となる病原体は?

エボラ出血熱の原因となる病原体は、フィロウイルス科の「エボラウイルス」です。エボラウイルスは現在まで6種類が確認されており、そのうちの4種類のウイルスが人に感染すると判明しています。
またエボラウイルスに感染することが確認されている動物は、オオコウモリ・サル・アンテロープが知られています。これらの動物の中でエボラウイルスに感染した死体や生肉(ブッシュミート)に直接触れたことが、自然界から人間社会にエボラウイルスが持ち込まれた原因ではないかと考えられています。
なおエボラ出血熱はラッサ熱・マールブルグ病・クリミア・コンゴ出血熱等とともにウイルス性出血熱に分類されている病気です。

エボラ出血熱が流行しているのはどの地域ですか?

これまでにコンゴ民主共和国などアフリカ中央部で流行が確認されています。これらの地域ではエボラ出血熱が確認されてから今までに20回を超える流行がありました。また2013年末から2014年の夏までの期間では、ギニア・リベリア・シエラレオネなど西アフリカ地域での感染が確認され、爆発的な感染流行になったとのことです。
2018年にはコンゴ民主共和国の北東部で感染が確認、2019年6月にはウガンダ共和国でも感染が発生しています。2019年9月にはWHOでは非公式ながら、タンザニアで最大の都市ダルエスサラームでエボラ出血熱の疑いのある患者が出たと発表されています。なお日本では現在感染の報告はありません。

エボラ出血熱の潜伏期間はどのくらいですか?

エボラウイルスに感染してから症状が現れるまで、2〜21日が潜伏期間です。通常は7〜10日程度が潜伏期間となることが多いとされます。潜伏期間の後、全身の倦怠感・発熱(38度以上の高熱)・頭痛・筋肉痛・のどの痛みなどが現れることになります。
このような症状が現れることをみると、風邪に似た症状と思われるかもしれません。しかし風邪と違って、これらの症状が突然現れ始めることがエボラ出血熱の特徴であるといえます。

エボラ出血熱の症状や治療方法

救急車

エボラ出血熱の症状は?

ウイルスに感染した後、潜伏期間がすぎると全身の倦怠感・38度以上の発熱・頭痛・筋肉痛・のどの痛みなどの症状から現れ始めます。これらの症状に続いて嘔吐や下痢といった症状が現れ、次いで現れるのが内臓機能の低下という症状です。エボラ出血熱による下痢は水様で、しばしば多量に出ることもあります。
重症になった患者では1日に10リットルを超えることがある症状です。こうした症状はコレラの症状とよく似ています。なおエボラウイルスの感染による出血症状は以前考えられていたよりもまれな症状になってきています(2000年のウガンダの例では出血の症例は約20%)。
そのため最近ではエボラ出血熱という病名ではなくエボラウイルス病(EVD)といわれるように変わってきています。

エボラ出血熱はどのように診断されますか?

エボラ出血熱に感染した疑いがある人の診断では、血液・咽頭拭い液・尿などからウイルスそのものやウイルスの抗原・遺伝子の検出・血清から抗体の検出によって感染の有無を調べます。さらにエボラ出血熱の発生地であるアフリカ中央部の各国やその周辺の地域(ガボン・スーダン・コンゴ民主共和国・象牙海岸・ウガンダ共和国など)への旅行や滞在の調査も行われます。
さらに熱帯雨林地域への立ち入りはなかったのかを調べることも診断の要素です。野生動物などの自然宿主から人への感染経路は現在でも不明であるため、診断には人から人への2次感染の可能性を調べることにもなります。
感染者の血液・体液・分泌物・排泄物などとの直接接触はなかったかなどの確認も行います。なおアフリカでの大流行では、注射器・ビニール手袋・マスクなどの医療用品不足に起因する院内感染が大きな要因となっていました。

エボラ出血熱の治療方法は?

エボラ出血熱に対して確立された治療方法は未だにありません。少しでも症状を軽くするために点滴(補液)と対症療法を行うことになります。
感染が判明した後はできるだけ早期に治療を開始することが重要だと考えられています。しかし、少しずつではありますがエボラウイルスに対し可能性のある治療法の評価が進みつつある状況です。

エボラ出血熱の致死率について

カーテン

エボラ出血熱の致死率はどのくらいですか?

エボラ出血熱による致死率は、これまでの感染状況や行われた医療的処置から推測することができます。こうした推測から、エボラウイルスの種類と感染者に対して提供される医療レベルによって、致死率が変わることがわかってきています。
データ的に致死率は25〜90%の範囲で変化しますが、おおむね50%程度です。ウイルスの種類による致死率のデータは、ザイール型が致死率約90%、スーダン型が致死率は約50%となっています。なお死に至る場合の症例では、発症後約1週間で死亡することが多いというデータがあります。

後遺症が残ることはありますか?

エボラ出血熱の後遺症として報告されている症状は、関節痛視力障害聴力障害などがみられます。
この他にも頻尿・頭痛・倦怠感・筋肉痛・記憶喪失・ぶどう膜炎などの症状が報告されています。

エボラ出血熱はワクチンで予防できますか?

エボラ出血熱に対してのワクチンは、現時点で確立されたものはありません。ただし臨床試験の段階に入っています。現在行われているものは3種類のエボラワクチンの臨床試験です。ただし、現時点ではその効果や安全性の問題が懸念されている状況でもあります。
3種類のワクチンのうちエボラDNAワクチンは、単独使用では効果が低いと思われているワクチンです。そのため他のワクチンと併用する必要性があるとされています。またアデノウイルスベクターを用いたエボラワクチンでは、十分な効果を発揮するために大量のウイルスを培養する必要があるようです。
そのためワクチン製造の効率化が課題となっています。もう1種類の水疱性口炎ウイルスベクターを用いたエボラワクチンでは、生ワクチンとして接種するために接種による副反応が問題となっているようです。それぞれの課題を克服し、副反応の可能性を抑え安全性を高めた効果的なエボラワクチンの開発が完了すれば、ワクチンでの予防が可能になります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

エボラ出血熱は、今の日本では報道されることが少なくなりました。それによってかつての病気だと思われる方が少なくないかもしれません。それは現在、日本での感染者がいないことにも起因していると考えられます。しかしアフリカの中央部をはじめとする各国で、感染の心配があります。
感染のニュースが報道されなくなったことで、関心が薄くなってしまっていることは仕方ないのかもしれません。それでも人類の敵といえるウイルスはまだ数多く存在するということも覚えておいてほしいものです。

編集部まとめ

建物
エボラ出血熱の現状は、現在の日本ではあまり知られることがない病気といえるかもしれません。新型コロナウイルスの感染がパンデミックとなり数年が経ちましたがいまだに収束に至っていません。

そういった状況ゆえにインフルエンザも懸念される感染症ですが、新型コロナの影響が大きくて関心が薄れてしまったように思われます。

関心がなくてもウイルスの脅威は去ったわけではありません。新型コロナウイルスではワクチンが開発されましたが、エボラ出血熱ではいまだ試験段階です。

ワクチンや治療薬の開発は非常に待たれるところです。それはやがて感染が拡大してしまうという恐れを予防するためにも期待したいところです。

この記事の監修医師