【闘病】1か月も続いた原因不明の発熱は「高安動脈炎」によるものだった
「自分は若いから体力もあるし、病気にはならないだろう」と思っている人は、少なくないと思います。また周囲の期待からつい無理をしてしまうこともあるでしょう。「頑張っている自分を大切にしていくことも必要です」と主張するのは、全身の血管の炎症である高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん)という外見ではわからない難病と闘っている佐藤あやさん(仮名)。長らく自身を苦しめた病とその治療の経過、苦心したことなどについて、話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年10月取材。
体験者プロフィール:
佐藤 あや(仮名)
長野県在住、1992年生まれ。家族構成:夫と二人暮らし。診断時の職業は看護師。2018年に高安動脈炎を発症。プレドニンなどで治療するも再燃を繰り返す。ウパダシチニブ(JAK阻害剤)の治験でかなり症状は落ち着いた。治療期間がとても長く、体力もかなり低下したが、家事や畑仕事、日常生活を苦痛なくできるまでに回復。発症後に現在の旦那さんと知り合って結婚し、忙しい日々を楽しく過ごしている。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
原因不明の発熱が1か月も続いた
編集部
馴染みのない名前ですが、高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん)とはどのような病気ですか?
佐藤さん
主に若い女性がかかることが多く(9割が女性)、大動脈などから分かれている大きな血管に炎症が起こり、血管の狭窄(きょうさく)や閉塞することによって、脳やほかの臓器に障害が起きる病気だそうです。原因不明の血管炎になります。
編集部
最初に気づいた症状、高安動脈炎が判明した経緯について教えてください。
佐藤さん
普段通り日勤から帰宅した時、急に高熱が出ました。思い返せば、高熱が出る数日前から首の圧迫感、頭痛、倦怠感がありました。その日は解熱剤を飲んで一晩眠れば治るだろうと思っていました。しかし翌日になっても解熱せず、水も飲めないような状況になったので、近くの病院の救急外来を受診しました。CTや胃カメラ、大腸検査など一通り検査しましたが診断がつかず、現在の病院を紹介してもらいました。およそ1か月かかって高安動脈炎と診断されました。
編集部
診断のためにどのような検査を受けたのですか?
佐藤さん
頸部から胸部にかけての造影CTと、採血で炎症反応(CRP、血沈)およびヘモグロビン量で貧血の程度を診ますと説明がありました。
編集部
病気が判明した時の心境を教えてください。
佐藤さん
原因不明の期間が1か月ほど続きましたので、最初は「診断がついて良かった」と思いました。看護師の私ですら知らない病名で、その後は不安もありました。
編集部
医師から、どのように治療を進めると説明されましたか?
佐藤さん
「まず入院でステロイド60mgの内服をして炎症をおさえます。併せて、頸部血管をエコーで診て、どの程度血管が厚くなっているか検査。退院できるステロイドの量は30mgなので、まずはそこを目指しましょう」とのことでした。
編集部
現在までの間に、どのような薬を使いましたか?
佐藤さん
治験に参加して症状が改善した
編集部
治験にも参加されたそうですね?
佐藤さん
先述の薬を使っていたのですが、少し改善しても再燃を繰り返していたため、ウパダシチニブ(JAK阻害薬)の治験に参加しました。
編集部
治験に参加されて、効果はどうでしたか?
佐藤さん
治験薬の効果が出ていて、現在はプレドニン8mgと治験薬で症状は落ち着いています。検査データも問題ないレベルになりました。
編集部
治療開始後、生活にどのような変化がありましたか?
佐藤さん
ステロイドを飲んでいると免疫が抑えられ、感染症に注意しなくてはなりませんので、仕事には行けない状況になりました。自宅療養期間が長く、感染症の危険から外出もほとんどできません。収入が無くなるので実家に戻りました。
編集部
改善してからの仕事はどのようになりましたか?
佐藤さん
長期間の休職により体力が低下したため職場の上司と相談し、非常勤のデスクワークに変えてもらい、体に負担がかからないようにしました。
編集部
治療中の心の支えとなったものは、何でしたか?
佐藤さん
家族と友達、ペットの犬に助けられました。
編集部
もし昔の自分に声をかけるとしたら、どんな助言をしますか?
佐藤さん
「辛い時期が長くても、必ず良くなる時が来るよ」と言いたいですね。現在の旦那も病気になってないと出会っていなかったですし、病気になったとしても、必ずいいことがあると思います。現在、病気と闘っていて辛くても、時間がかかってもゴールは必ずあります。闘っているのは自分1人ではなく、周囲にも支えてくれる人がいますから。
疲れやすく無理ができない。周囲の心遣いに感謝する日々
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
佐藤さん
現在病気の症状はほとんどないのですが、まだ疲れやすく、無理はできません。結婚して2人暮らしがスタートし、家事はほとんどこなせていますが、仕事は5時間の日勤を週3日で行っています。
編集部
この高安動脈炎を知らない方へ、一言お願いします。
佐藤さん
「若いから元気」ではありません。見た目では分かりません。一生このような病気と共に生きる人にとって、ほんの少しでも心遣いがすごく嬉しいですね。助けを求めている人がいたら、どうか力を貸していただきたいと思います。
編集部
医療関係者に望むこと、伝えたいことはありますか?
佐藤さん
病気になると、なにかと神経質になりますので、どんな不安なことでも話を聞いてほしいですね。聞いてもらえるだけでも気持ちが楽になります。
編集部
言いにくいこともありますよね。
佐藤さん
病状がなかなか落ち着かなかったため、セカンドオピニオンを希望した時がありました。先生が嫌だからという理由ではないため、当時の先生にはとても伝えづらく、かなり勇気が必要でした。もしセカンドオピニオンの希望など、医師に直接言いにくいことは、看護師さんなど別の医療関係者に相談することも1つの方法だと思いました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
佐藤さん
大好きな看護の仕事もできないくらい厄介な病気で、辛い日々でした。その中で、たくさんの人に支えられていることにも気付かされました。1人ではどうにもできないし、家族や友人、職場の人など色んな人に支えられながら現在は元気に普通の人生を歩んでいます。あと毎日頑張っている自分を褒めてあげて、たまには甘やかして大切にしてあげてください。
編集部まとめ
今回は高安動脈炎を治療中の、佐藤さんに話を伺いました。治験薬が奏功したことも大きいですが、それよりも職場や周囲の理解、現在の旦那さんの支えもあって、日常生活が送れるまで回復できたのではないかと感じました。見た目では病気に罹患している、そして困っていることがある、と周囲が気づきにくく苦しんでいる人がいるかもしれません。普段から声かけをして、本人からも話をしやすい環境を作ること、そして出てきた悩みに少しでも手を差し伸べることが、とても重要だと気づきかされました。