「軟骨肉腫の初期症状」はご存知ですか?原因や治療法も解説!【医師監修】
軟骨肉腫は約100種類存在する骨軟部腫瘍の1つです。発生原因は不明な点が多く、現在も様々な研究が行われています。
また治療法も他の骨軟部腫瘍と比較し選択肢の幅が少なく、発生箇所によっては更に狭まることが特徴的です。
今回は軟骨肉腫の初期症状についてや、検査方法・原因について解説していきます。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
軟骨肉腫とは?
軟骨肉腫とは骨軟部腫瘍の一種であり、悪性腫瘍の中では骨肉腫に次いで2番目に多く発症が確認されています。
発症は30~50代に多く、骨盤・大腿骨・上腕骨に発生しやすいのが特徴です。
軟骨肉腫は悪性ではない腫瘍が変化して発症する、二次性軟骨肉腫も存在します。症状の進行が遅く自覚症状も感じにくいため、早期発見が難しいのが特徴です。
軟骨肉腫の初期症状
上記でも解説しましたが進行が遅く、痛みが急激に強くならないことから症状に慣れてしまう傾向があります。そのため診断確定が遅くなることは珍しくありません。
進行させないために重要なのは、些細な変化を見逃さないことです。発症は30代以降が特に多いため、一定の年齢に達したら意識するようにしましょう。ここから軟骨肉腫の初期症状について解説していきます。
痛みがない
初期の軟骨肉腫は痛みを伴わない場合が多いです。肉腫は発生してもすぐに痛みは伴わず、進行することで骨・筋肉・神経が破壊され、痛みが発生します。
悪性腫瘍は痛みが伴うもの、というイメージを持つ方は少なくありませんが、痛みが伴わないものも存在します。そのため痛くないから・自覚症状がないからと腫れを放置しないよう気を付けましょう。
骨が弱くなる
骨に発生する悪性骨腫瘍の多くは、骨が弱くなるため骨折しやすくなるのが特徴です。このように病気が原因で発生する骨折を、病的骨折と呼びます。
骨折により軟骨肉腫が発覚した場合、治療中は骨が脆い状態が続くため、発生した箇所に負荷をかけないよう心掛ける必要があります。
場合によっては治療期間の延長にもつながるため、周囲からの協力を得ながら日常生活を過ごしましょう。
軟骨肉腫の検査
骨軟部腫瘍は悪性・良性を合わせると、合計100種類近く存在します。日本国内での症例も少ないため、確定診断は大学病院・専門外来など設備の整った病院で行うのが一般的です。
検査はどのような自覚症状があるか・病歴・年齢を確認する問診から、X線・MRI・シンチグラフィーによる画像検査、腫瘍の組織を採取した病理検査など多岐にわたります。
ここからは軟骨肉腫が疑われる症状の検査について、どのようなものが行われるか解説していきます。
画像検査
問診が終了した後に行われる検査として代表的なものは、レントゲンによる画像検査です。
理由としては、軟骨肉腫が進行している場合、骨が綺麗に映らないことが多いためです。
健康な状態の骨をレントゲン撮影した場合、全ての骨が白く映ります。何らかの原因で骨が破壊されている場合、通常白く映る部分が黒っぽく映るため判断しやすいです。
レントゲンだけで判断が出来なかった場合、MRI・シンチグラフィーで更に詳しく検査を行います。
病理検査
画像検査により腫瘍の存在が確認できた場合、病理検査を行う必要があります。
病理検査で発生している腫瘍の採取は、全身麻酔で切開し採取・専用の針を差し込み組織を採取する2種類から選択可能です。切開し採取する方法であれば結果がほぼ確実に分かります。
しかし腫瘍の位置によっては、切開が負担になる可能性があるため、針による組織採取が選択されることも珍しくありません。
がんの遺伝子診断
骨軟部腫瘍の一部には遺伝性があることが、これまでの研究で判明しています。そのため腫瘍が発見された場合、特定の腫瘍ができやすい遺伝子異常が起きていないか遺伝子診断を行うことも、確定診断を行うための材料となります。
この診断は腫瘍が発生しやすい遺伝子異常が分かるだけであり、存在するからといって骨軟部腫瘍が確定するわけではありません。
しかしリー・フラウメニ症候群を始め、遺伝子異常によって複数のがんになりやすくなる疾患が存在するため、遺伝子診断は重要視されています。
軟骨肉腫の原因
軟骨肉腫は悪性の骨軟部腫瘍において、骨腫瘍に次いで発生頻度の高い悪性腫瘍です。しかしその発生原因については不明な部分が多く、現在も研究が続いています。
確定診断が行われない場合でも、自覚症状や検査を行ったタイミングで処置が必要だと判断した場合、術中診断と呼ばれる手術中に診断を下すことも珍しくありません。ここからは軟骨肉腫が発生する原因について解説していきます。
軟骨系の組織に悪性腫瘍が増殖
遺伝子異常などが原因で、軟骨系の組織に腫瘍が増殖することが、軟骨肉腫を発症する原因だと考えられています。
軟骨肉腫と結びつく遺伝子異常として現在報告されているのは、EXT1・EXT2の2種類です。骨腫瘍には、放射線照射後に発症が確認される2次性骨腫瘍という症状が存在します。
頻度は低いものの軟骨肉腫でも同様の発症経緯が報告されており、軟骨肉腫も放射線が関係している可能性があります。
原因不明
上記のように、軟骨肉腫は悪性骨肉腫の中でも2番目に多く発症が確認されてるにもかかわらず、現在も発症のメカニズムが分かっていません。
そのため早期発見には自覚症状にいち早く気づき、医療機関を受診することが重要です。
また良性から悪性に変異する症例も報告されているため、1度良性と診断された方でも30代以降は変異の可能性があることに注意しておきましょう。
軟骨肉腫の治療
骨軟部腫瘍の治療は、手術療法・化学療法・放射線療法の3つを主軸に行われます。しかし軟骨肉腫は手術療法のみが選択されることが多いです。
理由として、現在の化学療法・放射線療法は手術療法と比較した際、十分な効果が期待できないためです。そのため、健康な組織と共に腫瘍を切除する術式が多く採用されています。
ここからは軟骨腫瘍の治療について解説していきます。
手術治療
四肢に悪性腫瘍ができた場合、以前は腫瘍を含めた骨を切断することも珍しくありませんでした。現在もまれに切断術が行われることがありますが、多くの場合は周囲の健康な組織を含めて腫瘍を切除する、広範切除式による切除が一般的です。
しかし場合によっては、手術では切除できない部位に軟骨腫瘍が発症する場合があります。具体的な例を挙げると、胸部・脊髄といった発症する事例が少ない部位です。
その場合は放射線治療に切り替え、治療が行われます。
化学療法
化学療法は現在のところ、軟骨肉腫に関して有効な治療法が見つかっていません。抗がん剤も作用より副作用が大きいと判断されることが多いです。
上記の理由から、軟骨腫瘍は手術治療・放射線治療の2種類で治療が行われます。
放射線治療
通常の放射線治療も、軟骨腫瘍には効果的ではないといわれています。そのため治療において放射線を用いる場合は、重粒子線と呼ばれる、放射線の1種を利用した治療を用いることが一般的です。
手術不可能な位置に腫瘍が発生した場合、重粒子線治療は保険適用が受けられます。
適用には複数の条件を満たしている必要があるため、病院に確認してみましょう。
「軟骨肉腫」についてよくある質問
ここまで軟骨肉腫の初期症状・原因などを紹介しました。ここでは「軟骨肉腫の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
軟骨肉腫は手術が必要ですか?
甲斐沼 孟(医師)
軟骨肉腫は基本的に手術を要します。治療方法としては化学療法・放射線療法も主軸として行われますが、効果が薄い・副作用が重いなどの懸念があります。外科手術がメインの治療方針となるでしょう。
ただし以前のように四肢を切断する方針から四肢を温存する方針へとシフトしています。実際にどのような手術を行うのかは主治医に充分確認されてください。
軟骨肉腫を早期発見するコツはありますか?
甲斐沼 孟(医師)
軟骨肉腫は痛みなどの自覚症状に乏しいため早期発見が難しいとされます。進行が遅いことにより違和感に慣れてしまう点も、発見が送れる要因の一つといえるでしょう。
早期発見するコツは少しでも違和感を感じたら病院を受診し医師に相談することです。軟骨肉腫は専門の医師でないと正確な診断が難しいケースもあるため、可能であれば専門の医師を訪ねるようにしましょう。
編集部まとめ
今回は軟骨肉腫について解説してきました。軟骨肉腫は、悪性腫瘍の中では骨腫瘍に次いで発症が多く確認されています。
自覚症状が少なく、進行してから見つかることも珍しくありません。
治療は外科治療による切除が効果的であり、他の骨軟部腫瘍のように化学・放射線治療の効果が薄いなど、治療が困難なのが特徴です。
発症が多く確認される年代に特徴があるため、初期症状に気づいた場合は整形外科・専門外来で検査を受けましょう。
軟骨肉腫と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
軟骨肉腫は骨軟部腫瘍の1つであり、発症箇所・発症する年齢に偏りがあります。しかし良性・悪性含め100種類以上存在するため、診断を確定するには病理検査が必要不可欠です。腫瘍の発生を自覚した場合、出来るだけ早く専門機関で検査を受けましょう。
軟骨肉腫と関連する症状
「軟骨肉腫」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 骨折
- 腫瘤(イボ)
- 疼痛
軟骨肉腫は骨に腫瘍が発生するため、骨折しやすくなります。また発症した周囲に腫瘤が発生するケースも報告されているため、同時に発生した場合は注意が必要です。発症経緯によっては疼痛も発生する場合があります。