「子宮頸がんの原因」はご存知ですか?予防法も医師が解説!
子宮頸がんの原因とは?Medical DOC監修医が子宮頸がんの原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。
※以前、性交渉の回数やパートナーの数が多い場合はHPVの感染機会や多様性が高まるリスクが高くなるため、不特定多数との性交渉が子宮頸がんの原因となると記載がありましたが、経験人数が少なければHPVに感染しないわけではなく、子宮頸がんは性活動が活発でなくても発症する可能性はあります。誤った情報を掲載したこと深くお詫び申し上げます。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
「子宮頸がん」とは?
子宮は上部の袋状の「子宮体部(たいぶ)」と、子宮の入口 にあたる「子宮頸部(けいぶ)」に分けられ、この子宮頸部にできた悪性腫瘍のことを子宮頸がんといいます。多くの子宮頸がんは、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)という、がんになる前の状態(前がん病変)という状態を経てから、がんになります。
早期に発見すれば比較的治療しやすく、予後(病気や治療の今後の見通しのこと)のよいがんですが、進行すると子宮の切除が必要になって妊孕性(妊娠・出産する能力)を保つのが難しくなることもあります。もちろん末期まで進行すれば命を落とすこともあります。そのため上述のCIN・AISという前がん病変の段階で治療できるかどうか、つまり早期発見、早期治療が非常に重要です。
以下で子宮頸がんの主な原因と予防法について解説します。
子宮頸がんの主な原因
子宮頸がんの主な原因を解説します。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染
子宮頸がんの原因として、最も多くの割合を占めるのがヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。特に2種類のHPV(16型と18型)が、悪性度の高い子宮頸がんの50%近くに関与しているとされています。
HPVは主に性的接触によって感染します。ほとんどの人は性行為の開始直後にHPVに感染していますが、感染しても90%程度の人は自己免疫力でウイルスが自然に排除されます。一方、10%程度ではHPV感染が長期間持続してしまいます。この自然治癒しない一部の人はCINなどの異形成とよばれる前がん病変を経て、子宮頸がんに進行します。
症状は不正性器出血や性交時の出血、帯下の変化(水っぽくなる)などがありますが、HPVに感染しても初期症状は乏しい場合が多いです。
これらの症状が見られた際はもちろんですが、症状がなくても20歳以上の女性は2年に1回の子宮頸がん検診をお勧めいたします。受診すべき診療科は婦人科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。
子宮頸がんの予防法
HPVワクチンの接種
子宮頸がんの予防法として最も効果的なのは、HPVワクチンの接種です。先述のように、子宮頸がん及びその前の状態(前がん病変)の原因になるのは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ですが、これにはさまざまな型があります。特に16型・18型の2種類は子宮頸がんの原因の50~70%を占めるとされており、従来公費によって受けられた2価・4価のHPVワクチンはこの2種に対して効果が認められていました。ただし令和5(2023)年4月から、9価ワクチンというものも公費で受けられるようになっております。これは16型・18型も含めた7種類の型に対応しております。この7種類の型で子宮頸がんの原因の80~90%を占めるとされていますので、より予防に効果的なワクチンが公費で受けられるようになったといえます。
ワクチン接種のリスクとして、さまざまな副反応が一定の確率で報告されていますが、その確率の少なさや因果関係の検証から、安全性は確認されています。2021年に厚生労働省は最新の知見をもとに、ワクチン接種を積極的に勧めるよう活動を再開しており、世界保健機関(WHO)も安全性に関する懸念はなく、このワクチンそのものが多様な副反応の直接の原因である可能性は否定的としています。
HPVの特徴として、性交渉によって感染が成立するため、初の性交渉より前にワクチン接種を行っておくことで最大の予防効果が期待できます。それを受けて、日本では小学校6年生から高校1年生相当の女子であれば誰でも無料で接種可能となっています。
また、この期間で接種を受けられなかった方を対象に、キャッチアップ接種という制度も準備されています。
具体的には
- ・平成9年度生まれ~平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)の女性
- ・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない女性
が、令和4(2022)年4月~令和7(2025)年3月の3年間、HPVワクチンを公費で接種できます。
そして初めての性交渉より前にワクチン接種を行うことで最大予防効果があると述べましたが、性交渉を経験した後でも一定の効果は認められています。
性交渉の経験がある方は、HPVのどれかの型には感染している可能性がありますが、一方で1人の方が全てのHPVの型に感染している可能性も低いです。そのため、性交渉の経験があっても一定の予防効果は得られるものと考えられています。
2年ごとの子宮頸がん検診
子宮頸がんのさらに効果的な予防法の一つに、2年ごとの子宮頸がん検診があります。先述のHPVワクチンを接種しても絶対に子宮頸がんにならない、というわけではありません。一定の確率で子宮頸がんになる可能性は残っているため、定期的な検診が必要不可欠です。またワクチン接種ができていない方は、なおさら検診の必要性は増します。日本婦人科腫瘍学会は20歳以降の女性に、2年ごとの検診を推奨しています。
序盤に述べた通り、早期発見・早期治療が非常に重要な病気です。ぜひ子宮頸がん検診を受診することをお勧めいたします。
禁煙
子宮頸がんの予防法として、喫煙者の場合は禁煙も効果的です。
先述の通り、喫煙者はそうでない人に比べて子宮頸がんにかかるリスクが高くなります。それ以外にも、肺がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がんで、喫煙との因果関係が明らかになっています。あります。また、がん患者の喫煙は、生命予後(何年生きられるかという指標)を悪化させることも知られています。子宮頸がんも、それ以外のがんの予防でも、禁煙は非常に効果的です。
「子宮頸がんの原因」についてよくある質問
ここまで子宮頸がんの原因を紹介しました。ここでは「子宮頸がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がんの影響で男性が発症する病気はありますか?
馬場 敦志(医師)
子宮頸がんの原因となるHPVは男性にも影響があります。具体的には尖圭コンジローマや咽頭がんや肛門がん、直腸がん、陰茎がんの原因となることが知られています。
子宮頸がんを発症しやすい人の特徴を教えて下さい。
馬場 敦志(医師)
HPVワクチン接種を行っていない人、子宮頸がん検診を定期的に受けていない人、HIVに感染している人です。
子宮頸がんの原因としてストレスは関係がありますか?
馬場 敦志(医師)
ストレスと子宮頸がんの関係性は示されていません。
編集部まとめ
子宮頸がんの原因とその予防法を解説しました。
特に強調したいのは、「HPVワクチン接種を行う」「子宮頸がんの定期検診を受ける」の2点です。正しい知識と行動があれば、子宮頸がんは予防できる病気です。がんの中には早期発見や予防、治療が難しく、判明した時点で手の打ちようがない、天命と諦めざるを得ないものが数多くあります。それらに比べると、子宮頸がんは明確な予防法と早期発見の手段がわかっているだけ、幾分かマシと言えます。ご紹介した2点の予防だけはぜひ実施していただきたいと思います。
「子宮頸がんの原因」と関連する病気
「子宮頸がんの原因」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
子宮頸がんの原因となる病気、前がん病変はこれらが挙げられます。自覚症状が出ない場合もありますので、定期的な検診は欠かさず行いましょう。
「子宮頸がんの原因」と関連する症状
「子宮頸がんの原因」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状は子宮頸がんとその前がん病変の状態で見られうる自覚症状です。これらが見られた際は、一度婦人科で診察を受けることを勧めます。