「外傷性くも膜下出血」を疑う”5つの症状”はご存じですか?後遺症も医師が解説!

頭を強く打った後に激しい頭痛や吐き気が続く場合、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
外傷性くも膜下出血は、交通事故や転倒などの衝撃によって脳の表面に出血が広がる病気です。
放置すると命に関わることもあるため、早期の発見と適切な対応が重要です。
この記事では、外傷性くも膜下出血の症状や原因、注意すべき後遺症について解説します。
緊急性の高いサインも紹介しますので、ご自身もしくはご家族に気になる症状を見つけたら、早めに医療機関を受診しましょう。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
目次 -INDEX-
外傷性くも膜下出血とは
外傷性くも膜下出血とは、交通事故や転倒などの強い衝撃で脳表面の血管が損傷し出血する病気です。動脈瘤破裂が原因の一般的なくも膜下出血とは区別され、脳挫傷を合併することもあるため、慎重な管理が必要といえます。治療は出血量や意識状態で決まり、軽度の場合は止血剤などによる保存的治療で経過を見ることが一般的です。診断にはまず頭部CT検査を行い、必要に応じてMRI検査などを組み合わせて状態を把握します。
外傷性くも膜下出血の症状
外傷性くも膜下出血の予後は出血量などで大きく異なります。軽症なら自然回復も可能ですが、出血が多いと重篤な合併症のリスクがあります。特に注意が必要なのが、受傷直後は元気でも急変する意識清明期です。はじめは大丈夫だったからという自己判断は禁物です。早期発見のため、注意すべき5つの症状を確認しましょう。
激しい頭痛
受傷後に続く激しい頭痛は、脳内出血や脳圧上昇の危険なサインです。今まで経験したことのない痛みと表現されることもあります。時間が経つにつれて痛みが強くなる場合や、鎮痛剤が効かない場合は緊急性が高いため、速やかに医療機関を受診しましょう。
嘔吐
脳圧の上昇により、突然の吐き気や噴射するような嘔吐が見られることがあります。特に嘔吐が2日以上持続する場合や、吐血を伴う場合は極めて危険な状態です。脳への圧迫や頻回な嘔吐による消化管出血の疑いがあるため、迷わず救急車を呼ぶなど速やかに対応しましょう。
手足のしびれ
脳の損傷により、手足のしびれや脱力感、片側の麻痺などが現れることがあります。多くの場合、出血部位と反対側の手足に症状が出ます。完全に動かないだけでなく、身体が重く感じる、だるい、箸が持ちにくいといった軽度な異変が現れることもあるため、見逃さないよう注意が必要です。
言語障害
言語中枢が損傷すると、言葉が出てこない、相手の話が理解できないといった失語症や、ろれつが回らない構音障害が現れます。ご家族が、会話がかみ合わないことで気付くこともあるでしょう。言葉のやり取りが難しい場合は、脳の機能に障害が生じている可能性があります。
意識障害
受傷直後は意識があっても、時間の経過とともに出血が増え、急変する意識清明期に注意が必要です。呼びかけへの反応が鈍い、辻褄が合わない、ぼんやりしているといった様子は、意識レベルの低下を示す危険なサインです。慎重な経過観察が求められます。
外傷性くも膜下出血の原因
外傷性くも膜下出血の直接的な原因は、頭部への物理的な強い衝撃です。これは日常生活の予期せぬ場面で起こりえます。例えば、交通事故による激しい衝突や高い場所からの転落などが挙げられます。また、高齢の方であれば、つまずいて転倒した際の衝撃でも発症するリスクがあるでしょう。ここでは特に頻度が高いとされる主な原因について、具体的なシチュエーションを交えて解説します。
交通事故
交通事故は外傷性くも膜下出血の主要因です。直接頭を打たなくても、衝突の衝撃で脳が揺さぶられて発症することがあります。高エネルギー外傷として全身の損傷を伴うことも多く、事故直後は痛みに気付きにくいため、速やかな医療機関の受診が望まれます。
転倒や転落
高齢の方に多いのが転倒や転落による受傷です。加齢による筋力低下やバランス感覚の悪化により、リスクが高まります。高齢の方は脳の萎縮により、軽い衝撃でも血管が断裂しやすくなっています。手すりの設置など、転倒予防の対策が重要です。
外傷性くも膜下出血による後遺症
外傷性くも膜下出血は、適切な治療で命を取り留めても、脳のダメージにより後遺症が残る場合があります。症状は損傷部位や程度によって多種多様です。手足の麻痺といった身体的な障害だけでなく、記憶障害や感情抑制が困難になる高次脳機能障害が残ることも少なくありません。これらは外見からはわかりにくいため、ご家族や周囲の理解とサポートが不可欠です。ここでは、代表的な3つの後遺症について詳しく解説します。
運動障害
脳の運動野損傷により、片麻痺やふらつきなどの運動障害が残ることがあります。治療は理学療法士らによるリハビリが中心です。関節運動や筋力強化を通じ、日常生活動作の自立を目指します。回復には個人差がありますが、長期間のリハビリテーションを継続することで、歩行や社会復帰が可能になるケースも少なくありません。
高次機能障害
医学的には高次脳機能障害と呼ばれ、記憶や注意などの認知機能や社会的行動に障害が生じる状態です。外見からはわかりにくいため、周囲からやる気がない、性格が変わったと誤解されやすいのが特徴といえます。主な症状は以下のとおりです。
- 注意障害や易疲労性
- 遂行機能障害
- 記憶障害
- 社会的行動障害
具体的には、気が散りやすく極端に疲れやすい、計画的に物事を進められないなど、新しいことを覚えられないといった症状が現れます。患者さん本人も症状を自覚しにくいため、専門的な認知リハビリテーションや周囲の理解あるサポートが不可欠です。
感覚障害
脳の感覚野が損傷すると、触覚や痛覚が鈍くなったり、ジンジンとした異常な痛みが生じたりすることがあります。熱さや痛みに気付きにくくなるため、火傷や怪我のリスクが高まる点に注意が必要です。また、手探りで小銭を識別できないなど、繊細な感覚が失われることもあります。日常生活でのリスク管理を行いながら、感覚入力を促すリハビリテーションを継続することが大切です。外傷性くも膜下出血の症状についてよくある質問
嘔吐や頭痛がある場合の受診の目安はどのくらいですか?
嘔吐や頭痛がある場合の受診の目安はどのくらいですか?
頭を打った直後は無症状でも、脳内で出血している可能性があります。そのため、速やかに医療機関を受診することが望まれます。特に激しい頭痛や嘔吐、胸や腹部の強い痛みは、脳や内臓損傷の危険なサインです。大したことはないという自己判断は命取りになりかねません。緊急手術が必要な場合もあるため、迷わず救急車を呼んで医師の診断を受けましょう。
後遺症を改善する方法を教えてください。
後遺症の改善には、専門的なリハビリテーションの継続が大切です。回復には個人差がありますが、長期間かけて緩やかに機能が改善するケースも少なくありません。運動障害には理学療法や作業療法を、高次脳機能障害には認知リハビリテーションを行います。特に高次脳機能障害は専門施設が限られるため、主治医やソーシャルワーカーへの相談が重要です。また、ご家族が症状を正しく理解し、生活環境を調整することも大きな助けとなるでしょう。
編集部まとめ
外傷性くも膜下出血は、交通事故や転倒などの外傷によって引き起こされる病気であり、激しい頭痛や嘔吐、意識障害などの症状が現れます。
迅速なCT検査による診断と、出血量や意識レベルに応じた適切な治療が必要です。
また、命を取り留めた後も、運動障害や高次脳機能障害といった後遺症が残る可能性があります。
しかし、専門的なリハビリテーションを根気強く続けることで、機能の回復や社会復帰を目指すことは十分に可能です。
万が一頭を強く打った際は、決して自己判断せず、速やかに医療機関を受診しましょう。
外傷性くも膜下出血と関連する病気
「外傷性くも膜下出血」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらの病気は症状が似ていたり、合併して起こったりすることがあります。特に脳動脈瘤によるくも膜下出血との見極めや、後遺症としての高次脳機能障害への理解は、適切な治療と回復のために重要です。
外傷性くも膜下出血と関連する症状
「外傷性くも膜下出血」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらの症状は、風邪や片頭痛など日常的な体調不良と似ているため、見過ごされやすい傾向にあります。しかし、頭部打撲後にこれらの症状が続く場合は、脳内で重大な異変が起きている可能性があります。いつものことと放置せず、普段と違う違和感を覚えたら、ためらわずに専門の医療機関を受診しましょう。
参考文献



