「軽度認知障害の前兆となる初期症状」はご存知ですか?末期症状も医師が解説!

Medical DOC監修医が軽度認知障害(MCI)の前兆となる初期症状・原因・治療法や家族のケア方法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
「軽度認知障害」とは?
軽度認知障害(MCI)とは、記憶力や注意力などの認知機能が加齢による範囲を超えて低下しているものの、日常生活はおおむね自立している状態を指します。
認知症とは異なり、日常生活への支障が少ないのが特徴です。ただし、MCIの方のうち年間約5〜15%が認知症に進行すると報告されており、早期発見と生活習慣の見直しが重要です。
軽度認知障害の前兆となる初期症状
MCIの初期症状は、加齢による「うっかり」や「ど忘れ」と区別がつきにくいことがあります。しかし、次のような変化が複数みられる場合には、神経内科や精神科、認知症外来、もの忘れ外来などの受診を検討しましょう。
うっかりミスや物忘れが増える
最近の出来事や約束を思い出せない、財布や鍵を頻繁に置き忘れるなどの症状が現れます。ヒントがあれば思い出せる場合もありますが、「思い出せないまま終わる」ことが続く場合は注意が必要です。
約束を忘れるようになる
記憶力の低下が進むと、約束をしていたこと自体を忘れてしまうことがあります。加齢による単なる「ど忘れ」であれば、時間が経ったり、誰かにヒントをもらったりすると思い出せることがほとんどです。
しかし、軽度認知障害では、周囲から指摘されても約束の内容が思い出せないままというケースが増えていきます。こうした変化が日常的にみられるようになった際には、早めに専門医へ相談することが大切です。
注意力や判断力が低下する
買い物で計算を間違える、料理中に火をつけっぱなしにしてしまうなど、複数の作業を同時にこなす力が落ちてきます。交通場面での判断ミスが増える場合もあります。
運転や金銭管理に不安を感じた場合は、早めに専門医へ相談をすることをおすすめします。
計画的に行動できなくなる
物事を段取りよく進めることが難しくなり、予定を立てても実行に移せないなどの「遂行(すいこう)機能障害」が見られます。家族から「最近ぼんやりしている」と指摘されるケースも少なくありません。対策としては、カレンダーやメモを活用し、予定を「見える化」する習慣をつけるとよいでしょう。
感情の起伏が激しくなる
イライラや不安感、意欲の低下など、心理的な変化が先行することもあります。認知機能の低下だけでなく、軽度のうつ病が背景にある場合もあります。そのため、精神科または心療内科での相談が有効なケースもあります。
軽度認知障害の進行速度
MCIはすべてが認知症に進行するわけではありません。
1年で5〜15%の方が認知症へ移行し、一方で16〜40%の方は回復または安定するともいわれています。血圧・血糖のコントロールや運動習慣、社会的交流を維持することで、進行を防ぐことができる可能性があります。
軽度認知障害の末期症状
MCIには末期という概念はありませんが、MCIが進行すると認知症と診断される状態になります。認知症をきたす原因としてはアルツハイマー型認知症が最も多くみられます。そこで、ここではアルツハイマー型認知症の末期にみられる症状をご紹介します。
コミュニケーションがとれなくなる
言葉の理解や発語ができなくなるため、意味のある会話やコミュニケーションが難しくなります。時折、単語やフレーズを発する程度となることもあります。
身の回りのことを自分でできなくなる
食事や着替え、トイレ、その他の日常的なセルフケアが難しくなります。周りの介助なしでは、生活が困難になることもあります。
寝たきりになる
支えなしでは座ったり、頭をあげたりすることができなくなる場合もあります。最終的には、立つ、座る、歩く、などの基本的な運動能力を失い、寝たきり状態になります。
軽度認知障害の主な原因
MCIの背景には、脳や全身の疾患が関与していることがあります。
アルツハイマー型認知症や脳血管障害
MCIの約半数はアルツハイマー病が原因とされます。また、脳梗塞や脳出血による血管性障害も関係する場合があります。特徴としては、記憶障害、理解力の低下、行動の変化などが見られます。
生活習慣病
糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、認知症になるリスクを高めると考えられています。特に、中年期(45〜64歳)にこれらを持つ方は、認知症リスクが高くなることが知られています。
慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症
慢性硬膜下血腫などの外傷性疾患や、正常圧水頭症などの髄液循環が妨げられる疾患では、脳を圧迫されることでさまざまな症状が現れます。そして、一時的に認知症に似た症状が出ることがあります。これらは治療によって改善することがあるため、MRIやCT検査での確認が重要です。
家族が軽度認知障害になったらどのようにケアすればいい?
軽度認知障害(MCI)は、本人よりも家族が先に異変に気づくことも多い病気です。家族のサポート次第で、進行を遅らせたり、症状を安定させたりできる可能性があります。
繰り返される話に対しては一定の時間を決めて聴く
MCIの方は、話した内容を忘れやすくなったことによる自信の喪失や、不安感から「過去の自慢話」を繰り返すことがあります。家族としては同じような話を聴くことは負担に感じられるかもしれません。まずは、一定の時間を決めて話を聴き、なぜ何度も同じ話をするのかの背景を医師などの医療専門家に相談するようにするとよいでしょう。
環境を整えて混乱を防ぐ
日常生活の環境を整えることで、本人のストレスや失敗を減らすことができます。
例えば、見える工夫として予定や支払い日をカレンダーに書く、薬は曜日ごとに分ける、鍵や財布などの「置き場所を固定」するなどの工夫が有効です。また、ガスやIHの自動消火機能や転倒防止マットなどの危険対策、スマートスピーカーなどのテクノロジー活用も検討しましょう。
社会的つながりを維持する
人との交流は脳の刺激となり、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。近所のサークル、趣味活動、地域包括支援センターの予防プログラムなどを利用し、「外に出るきっかけ」をつくることが家族の重要な役割です。
家族自身のメンタルケアも大切に
「ついイライラしてしまう」と感じるときは、専門家に相談しましょう。地域包括支援センターや保健所の窓口、家族会などを活用してください。また、介護者が一時的に休息を取る「レスパイトケア(ショートステイやデイサービス)」の活用も非常に大切です。
「軽度認知障害の初期症状」についてよくある質問
ここまで軽度認知障害の初期症状などを紹介しました。ここでは「軽度認知障害の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
軽度認知障害が完治する確率はどれくらいなのでしょうか?
前田 佳宏(医師)
MCIの方のうち約16〜41%は、生活習慣の改善や治療で健常レベルに回復するとされています。なんだかおかしいな、と感じた場合には早めに認知症予防策をとることで、健常な状態への回復も期待できます。
まとめ
脳卒中は、決して運命によって決められた避けられない病気ではありません。日々の食事という「選択」の積み重ねによって、その発症を予防できる病気です。
「かるしお」などのテクニックを使い、出汁や酸味を活用して、我慢するのではなくおいしく塩分を減らしましょう。また、肉中心から魚や大豆中心へ、甘いジュースからお茶へ、極端な食事制限よりも、食べるものの質を変えることが血管を守ります。
自分の血管を知ることも重要です。血圧測定や健診を通じて、自分のリスク(高血圧や不整脈など)を把握し、早期に対処することが最大の防御です。
ある日突然襲ってくる脳卒中の発症を予防するために、ぜひ今日の食事から見直してみてください。
「軽度認知障害」と関連する病気
「軽度認知障害」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経内科系
- アルツハイマー病
- 脳血管性認知症
- レビー小体病
- 慢性硬膜下血腫
- 正常圧水頭症
- 脳腫瘍
精神科系
内科系
- アルコール中毒
- ビタミンB12欠乏
認知症をきたす原因にはさまざまなものがあります。なかでも、MCIはアルツハイマー病を背景としている場合が多いです。早期発見、早期対応が大切です。
「軽度認知障害」と関連する症状
「軽度認知障害」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 物忘れ
- 注意力・判断力の低下
- 言葉が出にくくなる
- 計画をたてて物事を進めることが難しくなる
MCIでは、これらのような症状が現れることがあります。気になる場合には、認知症専門医の診察を受けるようにしましょう。
参考文献



