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「軽度認知障害」の初期症状はご存知ですか?認知症の違いも医師が徹底解説!

 公開日:2025/10/19
「軽度認知障害」の初期症状はご存知ですか?認知症の違いも医師が徹底解説!

軽度認知障害とは?Medical DOC監修医が軽度認知障害の症状や初期症状・原因・なりやすい人の特徴などを解説します。

石飛 信

監修医師
石飛 信(医師)

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2003年福井大学医学部卒。福井大学神経科精神科助教を経て、2013年国立精神・神経医療研究センター 思春期精神保健研究室長。2020年よりありまこうげんホスピタル診療部長。現在、主に精神科救急医療に従事。専門は児童精神医学。児童のメンタルヘルス向上を目的とした「かかりつけ医等発達障害対応研修」、「児童思春期の精神疾患薬物療法ガイドライン作成」に責任者としてかかわった。

「軽度認知障害」とは?

軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)とは、認知症と健康な方の中間のような状態を指します。
MCIの方は、同年代の方と比べて認知機能の低下がみられる状態です。しかし、必ず認知症にまで至ってしまうとは限りません。MCIの方のうち、1年以内に認知症に進行する人はおよそ10%とされています。そのほかの場合、MCIのレベルにとどまる方や、年相応のレベルにまで回復する方もいます。
今回の記事では、MCIと認知症の違いや、MCIや認知症のリスクと考えられている事項について解説します。

軽度認知障害と認知症の違い

MCIと認知症との違いは、日常生活への影響の有無にあります。
認知症は記憶障害や判断力低下により生活に支障をきたす状態ですが、MCIはまだ自立した生活が可能です。
以下に、MCIと認知症を比較してみましょう。

比較項目 軽度認知障害(MCI) 認知症(進行した段階)
記憶力 年齢の平均より低下 著しく低下
判断力 やや低下 明らかに低下
日常生活 ほぼ自立 介助が必要になることが多い
回復の可能性 改善・安定もありうる 原因によるが、回復が難しい場合が多い

特に、MCIでは記憶力の低下から始まることも多くみられます。以前よりも物忘れが多くなった、周りの方から物忘れを指摘されるようになった、という場合には、もの忘れ外来を受診することがすすめられます。早期に発見し、生活習慣を見直すことで、MCIの段階で進行を止められるケースもあります。

軽度認知障害の代表的な症状や特徴

MCIの代表的な症状としては以下のようなものが挙げられます。こうした症状があっても、日常生活動作は自立しています。

物忘れが増える

MCIでは、記憶障害が初期の段階から起こりやすいです。新たなことを覚えることが苦手になる場合もあります。最近の出来事を思い出せない、同じ話を何度もしてしまうといった記憶障害が現れます。ただし、日付や人の名前など一部を忘れる程度で、ヒントがあれば思い出せるのが特徴です。
対応としては、メモを取る、予定をカレンダーで管理するなど、生活の工夫が有効です。もの忘れ外来や神経内科、精神科などで検査が可能です。

注意力や集中力、判断力の低下がみられる

以前より、物事に対する注意力や集中力が低下することも症状としてみられます。複数の作業を同時に行うことが苦手になったり、買い物で計算間違いをしたりするなど、判断力の低下が見られます。
交通場面での判断ミスが増える場合もあり注意が必要です。
普段の生活で金銭管理や運転などに不安を感じた場合は、早めの相談が望まれます。

計画をたてて物事を進めることが苦手になる

MCIでは、遂行(すいこう)障害がみられることもあります。例えば、自分で計画を立ててものごとを実行することが難しくなる、人の指示を受けなければ何もできない、などの症状が現れます。

軽度認知障害の前兆となる初期症状

先に述べたようなMCIの症状が明確になる前に、以下のような症状が前兆として現れることがあります。気になる症状があるときには、物忘れ外来や脳神経内科外来などを受診しましょう。

うっかりミスが増える

記憶障害や注意障害の症状として、ものの置き忘れや、支払うべき公共料金の請求を忘れるなどのうっかりミスが増えることがあります。

約束を忘れる

記憶力の低下が、約束を忘れてしまうという形で現れることもあります。加齢による「ど忘れ」との違いは、「思い出せないままになってしまう」点です。

適切な言葉が出てこなくなる

言語障害の症状がみられることもあります。言葉を思い出すあるいは呼びます喚語(かんご)が困難になることや、言葉の理解ができなくなるといった症状です。知っているはずの単語や人の名前がすぐに出てこない「語想起障害」が現れることもあります。
会話中に「あれ」「それ」といった指示語が増えるのもサインの一つです。

軽度認知障害の主な原因

MCIと関連のある病気や状態には、以下のようなものがあると考えられています。

アルツハイマー病

アルツハイマー病は、認知症を引き起こす原因の多くを占めています。MCIの原因としても、約5割を占めるといわれています。
そのほかにも、レビー小体病など認知症の原因となる疾患もMCIの背景となりえます。

慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症

さまざまな脳の疾患も、MCIの背景となっている可能性があります。
慢性硬膜下血腫は、脳を覆っている硬膜と脳の間にゆっくりと血がたまる病気です。出血が脳を圧迫することで、頭痛やふらつき、認知症のような症状を引き起こすことがあります。
また、正常圧水頭症という病気でも、認知症に似た症状が現れる場合があります。ただし、これらの脳の病気を治療することで、認知症のような症状も改善することが期待できます。 

生活習慣病

糖尿病や高血圧、肥満、メタボリックシンドロームといった生活習慣病は、認知症になるリスクを高めます。また、脳卒中や脂質異常症と認知症も同様です。
特に、45〜64歳の中年期の方の場合、これらの病気は全て認知症の危険性を高めます。一方、高血圧と肥満、メタボリックシンドローム、脂質異常症は、65歳以上の高齢の方の場合には必ずしも認知症のリスクを高めるかどうか明らかでない部分もあります。
ただし、短絡的に、高齢の方であれば高血圧や、肥満、脂質異常症であっても問題はない、と考えることは避けましょう。

軽度認知障害になりやすい人の特徴

MCIになりやすい方の特徴としては、以下のようなものが考えられています。

血糖値が高い

血糖値が高いままになってしまう病気、すなわち糖尿病の方では、特に高齢の方で認知症になりやすくなるといわれています。糖尿病の方は、そうでない方と比較して約2倍認知症になりやすいという研究データもあります。
健康診断などで、血糖値が高いといわれた場合は放置しないようにしましょう。生活習慣の改善や、場合によっては糖尿病専門医の受診をし、適切な血糖値を保つようにすることが大切です。

血圧が高い

中年期に高血圧を有する方は、高齢期になってからアルツハイマー型認知症や血管性認知症になるリスクが高くなることが知られています。高血圧は、MCIや認知症のみでなく、脳梗塞などの脳血管障害のリスクも高めます。健康診断で高血圧と指摘された際には、かかりつけ医や内科の受診をするようにしましょう。
日常生活では、減塩を心がけることも大切です。高血圧の方の場合には、食塩摂取量として1日6g未満が減塩目標としてすすめられています。これは、小さじ約1杯分の量です。

太っている

中年期で肥満の方は、認知症になりやすくなります。なお、日本人の場合には体格指数(BMI:体重/身長の2乗)が25以上の方を肥満と定義しています。また、腹部の脂肪の量を示す腹囲では、男性85cm、女性90cm以上の場合は、腹部肥満が疑われます。
ただし、高齢の方では、急激な体重減少によって認知症が発症しやすくなることが示唆されています。BMIが20未満の方は医学的には痩せと判断されます。さらに、2年間でBMIが5%以上減少した方も、認知症になりやすくなる可能性があります。そのため、特に高齢の方の場合には、体重の変化を日々記録しておくことも大切です。
体重を適切に管理するためには、バランスの良い食事を1日3回とる、週3回以上の有酸素運動を行うなどの適度な運動が重要です。

「軽度認知障害」についてよくある質問

ここまで軽度認知障害について紹介しました。ここでは「軽度認知障害」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

軽度認知障害は完治するのでしょうか?

石飛 信石飛 信 医師

MCIから健常な状態に戻る割合は、16〜41%とされています。
MCIの段階からきちんとケアを行い、認知症にならないようにすることが大切です。
MCIから認知症への進行を予防するための方法としては、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの持病をきちんと管理することが重要です。さらに、適度な運動を行うことが推奨されています。

軽度認知障害はどれくらいの速度で進行するのでしょうか?

石飛 信石飛 信 医師

研究によっても異なりますが、1年で5〜15%の方がMCIから認知症へと移行することがわかっています。
早期の段階で、認知症予防の対策を講じることで、認知症への進行を遅らせることができたり、健常な状態に回復したりすることも期待できます。

編集部まとめ

今回の記事では、軽度認知障害(MCI)について解説しました。
MCIは、認知症の前段階として見逃してはいけないサインともなります。
「以前より物忘れが増えた」「なんだか言葉が出づらくなった」などの症状がみられる場合には、まずは物忘れ外来や脳神経内科外来などを受診しましょう。早めに行動することで認知症への進行を防ぐことができる可能性もあります。

「軽度認知障害」と関連する病気

「軽度認知障害」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経内科の病気

  • アルツハイマー病
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体病
  • 慢性硬膜下血腫
  • 正常圧水頭症

精神科の病気

内科の病気

  • アルコール中毒
  • ビタミンB12欠乏

認知症をきたす原因にはさまざまなものがあります。なかでも、MCIはアルツハイマー病を背景としている場合が多いです。早期発見、早期対応が大切です。

「軽度認知障害」と関連する症状

「軽度認知障害」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 注意力・判断力の低下
  • 言葉が出にくくなる
  • 計画をたてて物事を進めることが難しくなる

MCIでは、これらのような症状が現れることがあります。気になる場合には、認知症専門医の診察を受けるようにしましょう。

この記事の監修医師