「認知症のテスト」はどんなことをするかご存知ですか?セルフチェックリストも解説!
公開日:2025/08/25


監修医師:
秋谷 進(東京西徳洲会病院小児医療センター)
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1999年、金沢医科大学卒業。金沢医科大学研修医を経て2001年国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)小児神経科、2004年6月獨協医科大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)小児科、2016年児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職(東京西徳洲会病院小児医療センター)。専門は小児神経学、児童精神科学。
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「認知症」とは?
認知症とは特定の病名ではなく、何らかの原因で脳の機能が低下し、記憶や判断力などに支障が出て日常生活が困難になっている「状態」のことです。原因によって、「アルツハイマー型認知症」や「レビー正体型認知症」など、さまざまなタイプがあります。認知症のテストは具体的にどんなことをするの?
「認知症かもしれない」と病院を受診すると、まずご本人の状態を把握するために、いくつかの質問形式のテスト(認知機能検査)が行われます。これは、記憶力や注意力、言語能力などがどの程度保たれているかを客観的に評価するためのものです。 ここでは、代表的な2つのテストをご紹介します。Mini-Mental State Examination(MMSE:ミニメンタルステート検査)
MMSEは、世界中で最も広く使われている認知機能のスクリーニング検査です。 質問は「今日の年月日は?」「ここはどこですか?」といった時間や場所に関するもの(見当識)や、いくつかの言葉を覚えてもらい後で思い出してもらう(記憶)、簡単な計算、指定された図形を書き写す(視空間認知)など、11の項目で構成されています。 このテストによって、記憶、見当識、注意力、計算能力、言語能力といった、脳のさまざまな機能が全体的にどの程度保たれているかを30点満点で評価します。 一般的に、23点以下の場合に認知症の疑いがあるとされています。改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
HDS-Rは、日本で広く用いられている認知機能検査です。 MMSEと同様に質問形式で進められますが、MMSEよりも記憶に関する項目の比重が大きく、すべて口頭でのやりとりで行われるのが特徴です。 MMSEと同じく、認知機能の全体的な状態を30点満点で評価し、20点以下の場合に認知症の疑いがあるとされています。認知症のセルフチェック法
ここでは、認知症の初期に見られることのある変化をリストアップしました。ご自身や大切なご家族の様子を思い浮かべながら、当てはまる項目がいくつあるかチェックしてみましょう。【記憶に関する変化】
□ 同じことを何度も質問したり、話したりする □ 物の置き場所を忘れ、いつも探し物をしている □ 大切な約束の日時や場所を忘れてしまうことがある【判断力・段取りの変化】
□ 料理や買い物など、慣れた家事の段取りが悪くなった □ ATMの操作や公共料金の支払いで戸惑うようになった □ テレビやエアコンなど、リモコンの操作に手間取るようになった【時間や場所の感覚の変化】
□ 今日が何月何日か、何曜日かがすぐに思い出せないことがある □ 普段からよく知っているはずの道で、迷ったり戸惑ったりした【人柄や意欲の変化】
□ ささいなことで怒りっぽくなったり、疑い深くなったりした □ これまで楽しんでいた趣味や活動に、興味を示さなくなった □ 服装や身だしなみに、以前ほど気を遣わなくなった【会話の変化】
□ 話している最中に「あれ」「それ」といった言葉が増え、物の名前がなかなか出てこない もし、このチェックリストで5つ以上当てはまる項目があった場合、それは認知症のサインである可能性が考えられます。 もちろん、この結果だけで「認知症だ」と決まるわけではありません。しかし、ご本人やご家族が感じている「何かおかしい」という感覚は、とても大切なサインです。 当てはまった数が少なくても、「以前はこんなことなかったのに」と強く気になる症状が一つでもある場合は、一度かかりつけ医や物忘れ外来などの専門医療機関に相談してみることをオススメします。認知症の検査法
認知機能テストで認知症が疑われた場合、その原因や種類を特定するために、さらに詳しい検査が行われます。画像検査(頭部CT・MRI)
CTやMRIは、脳の形を画像として映し出す検査です。 本検査では、脳のどの部分が縮んでいるか(萎縮)、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍といった他の病気がないかなどを確認します。 アルツハイマー型認知症では記憶に関わる「海馬」という部分の萎縮が見られるなど、脳の萎縮パターンから認知症の種類を推測する手がかりが得られます。 また、外科手術で治療可能な認知症(正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など)を見つけるためにも不可欠な検査です。脳機能画像検査(SPECT・PET)
脳の「形」を見るCTやMRIに対し、SPECTやPETは脳の血流やブドウ糖の代謝といった「働き」を調べる検査です。 脳のどの部分の活動が低下しているかを色分けされた画像で確認できます。 アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、種類によって脳の活動が低下する場所に特徴があるため、鑑別診断(どの種類の認知症かを見分けること)に非常に役立ちます。血液検査・脳脊髄液検査
血液検査では、認知機能の低下を引き起こす可能性のある体の病気(甲状腺機能の異常やビタミン不足など)がないかを調べます。 脳脊髄液検査は、腰から細い針を刺して「髄液」という液体を少量採取する検査です。認知症の主な治療法
薬物療法
認知症の中核症状(記憶障害など)の進行を遅らせることを目的とした「抗認知症薬」が中心となります。 アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症で使われる薬があります。また、妄想や興奮、抑うつといった行動・心理症状(BPSD)が強い場合には、症状を和らげるために漢方薬や向精神薬などが使われることもあります。非薬物療法
薬を使わないアプローチも、穏やかな生活を支える上で非常に重要です。 ● 運動療法: ウォーキングなどの軽い運動は、脳の血流を良くし、心身の機能を維持するのに役立ちます。 ● 回想法: 昔の写真や馴染みのある音楽などを用いて、過去の楽しい経験を思い出し語り合うことで、精神的な安定や意欲の向上を図ります。 ● 音楽療法: 歌ったり楽器を演奏したりすることで、心を落ち着かせ、他者とのコミュニケーションを促します。 ● 作業療法: 料理や手芸、園芸といった具体的な作業を通して、残っている身体機能や認知機能を活かし、生活への自信や楽しみを取り戻します。認知症を予防する方法
生活習慣病を管理する
高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は、脳の血管にダメージを与え、血管性認知症やアルツハイマー型認知症のリスクを高めることがわかっています。 バランスの取れた食事、塩分・糖分の摂りすぎに注意し、かかりつけ医と相談しながらしっかりと管理しましょう。運動の習慣をつける
週に数回、30分程度のウォーキングなどの有酸素運動を心がけましょう。運動は脳の血流を改善し、神経細胞を保護する物質を増やす効果があります。社会活動に参加する
趣味や習い事、読書など、頭を使う活動を楽しみましょう。また、友人との会話や地域の集まりへの参加など、人との交流を保つようにしてみてください。脳にとって良い刺激となり、認知症予防にもつながります。「認知症のテスト」についてよくある質問
ここまで認知症のテストについて紹介しました。ここでは「認知症のテスト」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
認知症テストの長谷川式とMMSEの違いについて教えてください。
秋谷 進 医師
はい、どちらも認知症のスクリーニング検査として非常に優れたものですが、いくつかの違いがあります。 MMSEは国際的に広く使われており、言語的な質問に加えて、図形を書き写す課題が含まれているのが特徴です。 一方、長谷川式(HDS-R)は日本で開発されたもので、MMSEよりも記憶に関する質問の比重が大きく、すべて口頭でのやりとりのみで構成されています。 どちらか一方が優れているというわけではなく、どちらの検査も認知機能の状態を大まかに把握するのに非常に有用です。
編集部まとめ
認知症はご本人にもご家族にも辛い病気ですが、早めに気づけばそれだけ進行を抑えることができます。 そのためにも、早期発見が何よりも大切です。ぜひ上記のセルフチェックを活用して、早めに医療機関にも受診するようにしましょう。「認知症」と関連する病気
「認知症」と関連する病気は5個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 生活習慣病は血管や神経にダメージを与え認知症のリスク因子となります。うつ病も認知症の発症リスクとして知られています。甲状腺疾患や水頭症による認知症症状は治る可能性があります。「認知症」と関連する症状
「認知症」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 難聴
- 意欲の低下
- 物忘れ
- せん妄
- 睡眠障害




