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40代から発症する「前頭側頭型認知症」は進行が早い?平均寿命や症状も医師が解説!

 公開日:2026/04/02
40代から発症する「前頭側頭型認知症」は進行が早い?平均寿命や症状も医師が解説!

前頭側頭型認知症の進行速度とは?メディカルドック監修医が前頭側頭型認知症の進行速度・進行別の症状・原因・治療法などを解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

プロフィールをもっと見る
・和クリニック 院長
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。

「前頭側頭型認知症」とは?

前頭側頭葉変性症(FTLD)は、前頭葉と側頭葉を中心とした神経細胞の変性や脱落によって、行動異常、精神症状、言語障害などが出現する病気です。FTLDは、症状に基づいて以下のように分けられます。

  1. 前頭前野の萎縮が主体の行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)
  2. 側頭極ならびに中・下側頭回などの萎縮がある意味性認知症(SD)
  3. 左優位でシルビウス裂周囲の限局性萎縮を呈する進行性非流暢性失語(PNFA)

そして、前頭側頭型認知症(FTD)はこの3つの概念を含む臨床診断名として使われています。なお、bvFTDとSDは日本では指定難病になっています。
前頭側頭型認知症は、記憶障害が主症状となるアルツハイマー型認知症とは異なり、初期から性格や行動に変化が現れるのが特徴です。比較的若い年齢(40~60歳代)で発症することが多く、進行が早い傾向があります。

「前頭側頭型認知症」と「認知症」の違い

認知症は、後天的に脳の神経細胞の働きが徐々に悪化し、認知機能低下が生じ社会生活に支障が生じた状態のことです。日本では、アルツハイマー型認知症が最も多く、ついで血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症という順になっています。つまり、前頭側頭型認知症は、認知症の一種であるということです。

最も多いアルツハイマー型認知症との違いは以下のようになります。

項目 前頭側頭型認知症 アルツハイマー型認知症
主な症状 人格・行動の変化 記憶障害
発症年齢 50〜60歳代が多い 65歳以上が多い
進行速度 比較的早い 徐々に進行
原因部位 前頭葉・側頭葉の萎縮 海馬・大脳皮質の萎縮

前頭側頭型認知症の患者は、社会的なルールを守れなくなったり、暴言や無関心が目立つようになったりします。アルツハイマー型認知症のような記憶障害は初期には目立ちません。

前頭側頭型認知症の進行速度

前頭側頭型認知症の進行の速さには個人差があります。一般的には、アルツハイマー型認知症よりも若い年齢で発症し、平均では発症してから8年ほどで死亡に至るとされています。
また、前頭側頭型認知症の進行は比較的速く、アルツハイマー型認知症と比べても生存期間が短いことが報告されています。アメリカで行われた大規模な多施設研究では、前頭側頭型認知症患者の診断時から死亡までの生存期間の中央値が4.2年でした。これに対し、アルツハイマー型認知症患者では6.0年となりました。このことから、前頭側頭型認知症はより早い進行を示し、適切なケアやサポートの重要性が高いことが分かります。

前頭側頭型認知症の進行別の症状

前頭側頭型認知症は、時間の経過とともに症状が悪化していきます。
前頭側頭型認知症の進行度を定量化するために、前頭側頭型認知症評価尺度(Frontotemporal dementia rating scale,FTD-RS)が開発されています。
これは、行動、外出や買い物、家事や電話の使用、金銭管理、薬の管理、食事の準備と摂取、自己管理と移動の領域にわたる30項目の質問票を使用します。
各項目は、介護者によって頻度が評価され、それらをもとに6つの重症度ステージに分類されます。ここでは初期、中期、末期の症状に分類して説明します。

初期症状

初期の段階は、FTD-RSでの非常に軽度(Very Mild)、軽度(Mild)の段階と言えるでしょう。
軽度の社会的行動の変化(社交性の低下、ルールを守れなくなる)や、些細な性格変化(無関心や感情の平板化)がみられます。また、軽度の金銭管理のミスや計画性の低下も現れてきます。家事や仕事のパフォーマンスが少し低下しますが、まだ自立可能です。
アルツハイマー型認知症とは異なり、初期の段階では記憶障害はそれほど強くはありません。

中期症状

中期の段階は、FTD-RSでの中等度(Moderate)、重度(Severe)の段階といえます。
行動異常(常同行動や脱抑制、暴言、異常な食習慣)が目立つようになります。また、言語の問題として、意味の理解が困難、会話が単調になることもあります。衛生管理が低下し、入浴を嫌がる、着替えをしないといった行動がみられることもあります。また、自分での食事管理が難しくなり、異常な食行動が目立つようになります。しかし、介助が必要な場面が増えるものの、まだ部分的に自立している状態です。

末期症状

末期の段階は、FTD-RSでの非常に重度(Very Severe)、深刻(Profound)に該当すると考えられます。
この段階では、完全に言葉を発しなくなり失語の状態になります。また、自発的な行動がほぼ消失し、無動性が目立ちます。嚥下障害が進行し、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。排泄管理が難しくなり、完全な介護が必要です。筋力低下により歩行困難、寝たきりになる可能性が高いです。

前頭側頭型認知症の主な原因

前頭側頭型認知症の原因について、現時点で明らかになっている点について解説します。

前頭葉・側頭葉の神経細胞の変性

前頭側頭型認知症の病態としては、脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が変性し、その部位の脳の働きが低下してしまうことにあります。例えば、行動障害が前面に出るタイプのbvFTDでは、MRIやCT検査で前頭葉や側頭葉の萎縮がみられます。一方で、頭頂葉や後頭葉の働きは保たれます。

異常タンパク質の脳内への蓄積

なぜ前頭葉や側頭葉の神経が変性してしまうのかについては完全には解明されていません。しかし、現時点では、神経細胞やグリア細胞に異常な蛋白質が蓄積し、細胞死を引き起こすのではないかと考えられています。例えば、神経細胞に蓄積する異常蛋白質としては、タウ蛋白、TDP-43蛋白、FUS蛋白などが同定されています。

家族歴

前頭側頭型認知症のリスクを高める唯一の因子として、家族歴があげられます。しかし、欧米では30~50%に家族例があるといわれていますが、日本ではほとんど認められません。家族性の前頭側頭型認知症の場合、タウ遺伝子、FUS遺伝子などの変異が見つかっています。

前頭側頭型認知症の治療法

根本的な治療法はまだ開発されていません。症状に合わせた薬剤を用いることが有効な場合があります。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

SSRIは、抗うつ薬として用いられています。前頭側頭型認知症の脱抑制や常同行動、食行動の異常などの行動障害に対し、SSRIが有効であったという報告があります。しかし、効果については現時点では限定的であり、また保険適応外であることに注意が必要です。

行動療法

精神症状や行動障害が目立つ場合、脱抑制や常同行動、食行動の異常が初期から見られます。こうした症状に細やかに対応し、社会的に許されるような行動へと置き換えていくことが可能な場合があります。デイケアや施設ケアでの取り組みのほか、家庭で介護する場合には、無理に行動を矯正せず、適宜訪問介護やレスパイトケアを活用することも良いでしょう。

抗精神病薬や抗てんかん薬

SSRIの他にも、抗精神病薬や抗てんかん薬が一部の症例で有効であったという報告もあります。しかし、これらの薬も保険適用外です。

「前頭側頭型認知症の進行速度」についてよくある質問

ここまで前頭側頭型認知症の進行速度などを紹介しました。ここでは「前頭側頭型認知症の進行速度」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

前頭側頭型認知症の寿命はどれくらいですか?

前田 佳宏医師前田 佳宏(医師)

前頭側頭型認知症や、その他の前頭側頭障害を持つ方は、通常、診断後6〜8年の余命があるといわれています。しかし、個人差はあります。ほとんどの方は、病気そのものの進行や、病気に関連する問題で亡くなります。例えば、嚥下困難となり食事や液体が誤って気管に入ることで生じる誤嚥性肺炎などが死因となることがあります。

前頭側頭型認知症の好発年齢について教えてください?

前田 佳宏医師前田 佳宏(医師)

前頭側頭型認知症の好発年齢は、アルツハイマー型認知症よりも若いことが多いです。40代後半から60代の方に好発するといわれています。こうした方は、社会的に仕事をしていたり子育ての最中であったりという場合も多いため、特に本人や周囲の負担は大きくなります。

まとめ

今回の記事では、前頭側頭型認知症の症状について、初期から末期にいたるまで解説しました。前頭側頭型認知症は現時点では根本的な治療法はありませんが、適切な対応やケアにより、患者の生活の質を維持することは可能です。早期の診断と周囲のサポートが重要となるため、異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。

「前頭側頭型認知症」に関連する病気

「前頭側頭型認知症」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳神経内科系

婦人科系

前頭側頭型認知症は単独で発症することもありますが、他の神経疾患や精神疾患と併発するケースが見られます。特に脳血管障害や甲状腺機能の異常が影響を及ぼすことがあり、全身の健康管理が重要です。

「前頭側頭型認知症」に関連する症状

「前頭側頭型認知症」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 感情の平坦化
  • 無関心・無気力
  • 衝動的な行動
  • 失語
  • 反復行動
  • 共感力の低下
  • 社会的ルールの無視
  • 抑制障害
  • 注意力の低下
  • 自発性の欠如
  • 思考の柔軟性の低下
  • 動作が遅くなる
  • 記憶力の保持
  • 自己中心的な言動

これらの症状は前頭側頭型認知症で出現するものですが、他の認知症や精神疾患でも類似した症状が見られることがあります。

この記事の監修医師