「認知症の検査方法」はご存知ですか?医師が質問する項目も解説!

認知症の検査方法とは?Medical DOC監修医が認知症の検査方法・種類・検査費用・初期症状・原因・セルフチェック法などを解説します。

監修医師:
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)
目次 -INDEX-
「認知症」とは?
認知症とは、記憶力、判断力、言語能力などの認知機能が脳の障害や全身の疾患によって低下し、日常生活に支障が出る状態です。
認知症の種類
アルツハイマー型認知症
認知症の中で60%から70%がアルツハイマー型認知症であり、もっとも多くなっています。
新しいことを覚えられない、同じことを何度も聞き返すといった記憶力の低下が目立ち、日付や時間の認識ができなくなったり、買い物や食事の準備で失敗するようなことがみられます。
これらの症状はゆっくりと進行していきます。
血管性認知症
血管性認知症はアルツハイマー型認知症についで多い認知症です。脳卒中が原因で認知機能が低下して起こります。
アルツハイマー型認知症に比べて記憶力の障害は少なく、買い物や料理など目的のある行動をする遂行機能の障害が目立ちます。
まだら認知といって、ある分野のことはしっかりとできるのに他のことはさっぱりできなかったり理解できないといった症状も血管性認知症の特徴のひとつです。
脳卒中が起こると急に認知機能が悪化したり、脳卒中が再発するたびに段階的に認知機能が悪化していきます。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症、血管性認知症についで多い認知症です。認知機能の低下に加えて、幻覚(人、小動物、虫など)やパーキンソン症状が特徴的です。
認知機能は低下していてもその程度が変動することもあります。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は初期には記憶力の障害は目立ちませんが、自己中心的な人格変化と反社会的な言動が特徴的です。
行動に抑制がなくなり、信号無視や万引きなどを繰り返したり、その場にそぐわない発言をしたりします。
感情のコントロールができなくなり、社会生活や人間関係に問題が生じやすくなります。
病識が欠けており、病院を受診すること自体がむつかしく、受診したとしても診察や検査には非協力的な態度をとってしまうことが多いです。
認知症の検査法
認知症は問診、認知機能検査、画像検査が重要であり、血液検査も行います。髄液検査を行うこともあります。
認知機能検査
質問形式のテストで記憶力、言語能力、注意力などを評価して認知機能の低下を判断します。
診察で認知症が疑われた場合に最初に行うテストであり、その結果によってさらに検査が進められていきます。
CT、MRI
脳出血や脳梗塞、脳腫瘍といった認知機能を低下させる原因がないか、特徴的な脳の萎縮がないかを調べます。
認知症の種類によって萎縮が目立つ部位にちがいが出るので診断に役立ちます。
脳血流シンチグラフィー検査
CTやMRIは脳の形態を調べる検査であるのに対して、脳血流シンチグラフィー検査は脳の機能を調べる検査です。
脳の機能が低下すると、検査によって脳血流が低下している様子を確認することができます。認知症の種類によって血流が低下する部位にちがいがあり診断に役立ちます。
PET検査
認知症の検査でPET検査をする機会は限られていますが、PET検査でアミロイドという物質が脳にたまっていないか調べることがあります。
アミロイドはアルツハイマー型認知症との関連があるとされています。
血液検査
血液検査で認知機能を低下させる病気がないか調べます。例えば、甲状腺機能低下症は患者数が多く、治療できる疾患であるため見逃さないことが重要です。他にも認知機能を低下させる病気で血液検査で診断できるものはたくさんあるので、可能性がある疾患については調べておく必要があります。
認知症の検査費用
CTやMRIの設備によって費用にちがいがあり、多くの場合は保険診療で検査をすると思うので自己負担割合によっても費用は変わってきます。
保険診療で自己負担が3割の場合、CTは約4500円、MRIは約6000円、脳血流シンチグラフィー検査は約21000円、PET検査は約75000円が目安です。[1]
認知症の主な原因
認知症を起こす原因は多くありますが、代表的なものを紹介していきます。
神経変性疾患
先に紹介したアルツハイマー型認知症が代表的ですが、パーキンソン病なども認知機能低下を起こします。
症状はゆっくりと進行していきます。記憶力や注意力の低下が目立ってきた場合は早めに病院を受診してください。
脳血管障害
脳梗塞や脳出血が原因で認知機能が低下します。
発症すると急に認知機能が低下し、脱力やふらつき、しびれといった症状も出てくることが多いので、すぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。
外傷
頭部の外傷による後遺症や慢性硬膜下血腫によって認知機能が低下することがあります。
慢性硬膜下血腫は頭部外傷後、数日からときに数ヶ月後に出血によって認知機能を低下させることがあります。CT検査で診断し、手術で回復することができるので見逃さないことが重要です。
その他
脳腫瘍は認知機能を低下させることがあります。手術で回復させることができる場合もあるのでCTやMRI検査が必要です。
脳炎や髄膜炎などの感染症も認知機能を低下させることがあります。原因によって抗生剤などの薬物治療で回復させることができる場合もあります。
他にも甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、ビタミン不足などの栄養障害、正常圧水頭症なども認知機能を低下させることがありますが、治療をすることで認知機能が回復することがあるのでしっかりと調べることが必要です。
認知症の前兆となる初期症状
年齢によるもの忘れは正常ですが、認知症は単なるもの忘れとはちがいます。認知症の初期症状について説明していきます。
体験したことを忘れる
日常生活でふと忘れてしまってすぐに思い出すことができない経験は誰にでもあると思います。例えば、昨日の夕食は何を食べたかすぐに思い出すことができないことは多いのではないでしょうか。なかなか思い出すことができなくても問題ありませんが、食べたこと自体を忘れてしまっている場合は心配です。
このように体験したことの全体を忘れてしまう場合は認知症の疑いがあり、病院で診察を受けるようにしましょう。
もの忘れの自覚がない
予定があったのに思い出すことができない、やろうとしたことを忘れてしまったといった経験もあると思います。
単なるもの忘れの場合は、忘れていることの自覚があり思い出そうとします。何かのきっかけで思い出すことでしょう。
認知症の場合は忘れていること自体の自覚がありません。困ったことがあっても取りつくろうような言動が見られます。
その他
日にちや曜日がわからなくなる、時間の感覚がわからなくなるといったことや、同じ服ばかり着るようになる、物事の段取りが悪くなるといった様子が見られるようになります。
認知症の場合はこのような症状が少しずつ悪化していき、日常生活に支障が出るようになります。
すぐに病院へ行くべき「認知症」
ここまでは認知症についてを紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
急に認知機能が悪化した場合は、脳神経内科
認知症にはさまざまな原因がありますが、急に認知機能が悪化した場合は脳梗塞や脳出血が起こっている可能性があります。
急にもの忘れの症状が出たり、身近にあるものの使い方がわからなくなった場合はすぐに治療を始める必要があるので、脳神経内科を受診してください。
受診・予防の目安となる「認知症」のセルフチェック法
・同じことを何度も聞いたり、言ったりする場合
・物の置き場所を忘れることが増えた場合
・会話の途中で話の流れがわからなくなる場合
・買い物や家計の管理がむつかしくなった場合
・今日の日付や曜日がわからない、今いる場所がわからない場合
「認知症の検査」についてよくある質問
ここまで認知症の検査などを紹介しました。ここでは「認知症の検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
認知症患者に行うテストはありますか?
上田 雅道 医師
簡単な質問に答えてもらうことでアルツハイマー型認知症の可能性があるかどうかを判断する方法があります。診察では問診の一環として短時間で行うことができます。
認知症テストで行う3つの質問事項について教えてください。
上田 雅道 医師
「現在、困っていることはありますか。」「3ヶ月以内で気になるニュースはありますか。」の質問に対して「ない。」と答え、「現在、楽しみはありますか。」の質問に対して具体的に答えた人は、その後の精密検査でアルツハイマー型認知症と判明する確率が高いとされています。
病院はもちろん、高齢者施設などでもスタッフが行うことができるので早期発見に役立つことが期待されます。
認知症はMRI検査で発見できるのでしょうか?
上田 雅道 医師
認知症はMRI検査だけで判断できるわけではありませんが、認知機能が低下するような脳の異常がないかどうか判断するために重要な検査のひとつです。
編集部まとめ
高齢化が進み認知症になる人が増えています。認知症にはさまざまな原因があり、しっかりと病院で検査を受けて診断を受ける必要があります。アルツハイマー型認知症など根本的に治すことは難しいですが、原因に合わせた治療、日常生活に必要な介護を受けることになります。
また認知症と非常に似た症状が見られる病気で治療ができるものもあります。このような病気を見逃さないようにしっかりと診断を受けることも重要です。
「認知症」と関連する病気
「認知症」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
その他の病気
- 正常圧水頭症
多くの場合には脳内の病気が原因となりますが、内科的な病気でも原因となることがあります。
「認知症」と関連する症状
「認知症」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- うつ
- せん妄
- 幻覚
物忘れだけではなく、上記のような症状も認知症の場合にはよくみられます。
参考文献