「前頭側頭型認知症」を発症すると「人格」にどのような変化が起きる?医師が解説!
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前頭側頭型認知症を発症すると人格にどのような変化が起きる?Medical DOC監修医が前頭側頭型認知症の人格変化する原因・初期症状・末期症状・進行速度・なりやすい人の特徴・予防法などを解説します。
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監修医師:
神宮 隆臣(医師)
目次 -INDEX-
「前頭側頭型認知症」とは?
前頭側頭型認知症は、認知症のタイプの一つです。アルツハイマー型認知症とは異なり、比較的若年で発症するといわれています。また、記憶障害よりも行動や人格、言語能力の変化が目立ちます。特に人格変化は、患者自身だけでなく家族や周囲の人々にも大きな影響を及ぼします。
この記事では、前頭側頭型認知症が引き起こす人格変化について、原因や進行速度、予防法まで詳しく解説します。
前頭側頭型認知症を発症すると人格にどのような変化が起きる?
前頭側頭型認知症を発症すると人格がどのように変化するのかを説明します。
感情の鈍麻・共感力の低下
他者の気持ちを理解したり、共感する能力が低下したりします。そのため、家族や友人に対して冷たく感じられることがあります。
抑制の欠如・衝動的行動
行動のコントロールが効かなくなり、衝動的に不適切な言動をとることがあります。例えば、突然怒鳴る、暴言を吐くなどの行動が見られます。
無関心・意欲の低下
趣味や仕事への興味を失い、家にこもることが増えます。以前は熱中していたことへの関心が薄れ、活動量が著しく低下します。
ルールやマナーの軽視
公共の場でのルールや社会的マナーを守れなくなります。例として、信号を無視したり、他人の物を勝手に使ったりするなどの行動が挙げられます。
食事の変化
欲求を抑えられず、過度に食べ過ぎたり、同じ食事内容に固執したりするなどの行動が目立ちます。これにより健康問題が発生することもあります。
前頭側頭型認知症を発症すると人格変化する原因
ここでは、前頭側頭型認知症を発症するとなぜ人格変化が起こるのかについて解説します。
前頭葉の機能が低下するため
前頭葉は意思決定や感情のコントロール、社会的行動を抑制する役割を担っています。前頭側頭型認知症ではこの部分が萎縮し、感情の抑制が難しくなったり、突発的な行動が見られたりするようになります。これが、人格や性格の変化につながる主な原因です。
後方連合野への抑制障害が起こるため
後方連合野は視覚や聴覚などの感覚情報を統合し、状況を理解する役割を担っています。前頭側頭型認知症では、前頭葉からの抑制が弱まることで後方連合野が過剰に活動し、感情の暴走や衝動的な行動が引き起こされます。
これにより、場にそぐわない発言をしたり、社会的なルールを無視したりする行動が見られることがあります。特に突然怒り出したり、感情の起伏が激しくなったりするのは、この抑制障害が関与していると考えられます。
辺縁系への抑制障害が起こるため
辺縁系は記憶や情動反応を司る領域であり、側頭葉の一部も含まれます。前頭側頭型認知症では、この領域の抑制が利かなくなるため、快楽を求める行動や衝動的な食事・買い物が増加します。また、感情が抑えられなくなり、他者への共感が失われることも特徴です。
このように、前頭葉や側頭葉の機能低下が連鎖的に影響し、人格変化を引き起こします。
前頭側頭型認知症の前兆となる初期症状
前頭側頭型認知症では、アルツハイマー型認知症で特徴としてみられる物忘れは目立ちません。一方、以下のような症状が早期発見のポイントになります。
好きだった趣味をしなくなる
以前熱心に取り組んでいた趣味や活動への興味が薄れ、無気力になります。好きだった音楽やスポーツも放置されることが多くなります。
家族が趣味や活動を促しても無関心が続く場合は、無理に強要せず穏やかに接しましょう。小さな成功体験を積ませることが有効です。
脳神経内科や精神科を受診し、早期診断を目指しましょう。症状が進行する前に専門医に相談することが重要です。
ぼんやりしている時間が多くなる
何もせずにぼんやりと過ごす時間が増え、周囲への関心が薄れることがあります。話しかけても反応が鈍くなることが特徴です。
声をかけて一緒に散歩をしたり、簡単な会話を楽しんだりすることで刺激を与えることが効果的です。物忘れ外来や認知症外来を受診し、状態を評価してもらいましょう。早期の対応が進行を遅らせる鍵となります。
言葉がゆっくりになる
言葉を思い出すのに時間がかかり、会話のテンポが遅くなります。特に読み間違いが増えるといったことが目立ちます。
会話のペースを患者に合わせて、焦らせずにゆっくり話を聞きましょう。ジェスチャーなども活用してコミュニケーションを取りやすくします。
脳神経内科や言語聴覚士がいる病院での検査をおすすめします。早期の言語訓練が効果的です。
前頭側頭型認知症の末期症状
前頭側頭葉認知症は、ゆっくりと進行していきます。
精神機能の廃絶
末期になってくると、初期から中期で見られていた情動行動などが少なくなります。意欲低下が激しくなり、コミュニケーションが取れなくなったり、食事をとらなくなったりしてしまいます。
排尿や排便が難しくなる
前頭葉の障害により、排尿や排便の感覚が鈍り、失禁や便秘が増えます。尿意や便意を感じ取れなくなることが特徴です。また、前述の意欲低下も相まって、排泄機能はどんどん弱っていきます。
排泄リズムを整え、定期的にトイレに促すことが重要です。介護用のオムツを使用することも考慮しましょう。泌尿器科や消化器内科で相談し、適切なケアを受けることが必要です。
筋力低下や嚥下困難が起こる
筋力が低下して立ち上がることが難しくなったり、食べ物を飲み込んだりすることが困難になります。誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
柔らかい食事やとろみをつけた飲み物を取り入れ、誤嚥を防ぎます。リハビリで嚥下機能を維持することが重要です。
前頭側頭型認知症はどれくらいの速度で進行する?
認知症は主に 65 歳以上の人に発症しますが、前頭側頭型認知症は若い年齢で発症する傾向があります。 45〜65 歳の方が多いですが、より若い人や高齢者にも発症することがあります。他の種類の認知症と同様に、前頭側頭型認知症はゆっくりと進行し、数年かけて徐々に悪化する傾向があります。
前頭側頭型認知症になりやすい人の特徴
前頭側頭型認知症のリスクファクターについては、まだ研究段階ですが、以下のようなものが可能性として考えられています。
前頭側頭型認知症の人が近親者にいる
家族に前頭側頭型認知症を発症した人がいる場合、遺伝的要因が関与している可能性があります。特に親や兄弟が発症している場合は、同様のリスクが高まると考えられます。遺伝する前頭側頭型認知症の原因としていくつかの遺伝子が特定されています。また、前頭側頭型認知症の発症や進行に関わるのではないかとされている遺伝子も複数あります。
家族に前頭側頭型認知症を発症した人が複数いる場合は、認知症を専門にしている脳神経内科や精神科で診察を受けるようにしましょう。
太っている
生活習慣や体型については研究段階です。しかし、肥満が前頭側頭型認知症のリスクを高めるという報告もあります。特に、中年期以降の肥満は、前頭側頭型認知症の発症リスクを上昇させる一因とされています。
肥満は高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。生活習慣病は認知症の発症しやすくするとされます。つまり、肥満は脳の健康にも影響を与える可能性があります。
頭部外傷歴がある
過去に頭を強く打った経験がある人は、脳へのダメージが蓄積され、認知症のリスクが高まる可能性があります。特にスポーツ(特にラグビーなどのコンタクトスポーツ)や事故で繰り返し外傷を負った場合は注意が必要です。外傷による脳の損傷が慢性的な脳の炎症を引き起こし、前頭側頭型認知症の発症に関連している可能性が示唆されています。
前頭側頭型認知症の予防法
前頭側頭型認知症に対して、確立された予防法はありません。
しかし、以下のような方法によって、発症リスクを下げることができるかもしれません。
頭部外傷を避ける
頭部外傷を防ぐことで、脳へのダメージを減らし認知症リスクを軽減できます。
スポーツ中は適切な防具を着用し、転倒しやすい環境を改善することが重要です。
健康的な食事や定期的な運動
健康的な食事や定期的な運動には、脳の血流を良くし、神経細胞の健康を維持する効果が期待されます。
野菜や青魚を多く摂取し、脂肪分の多い食品を控えます。週に3回以上の軽い運動を心がけましょう。
生活習慣病を適切に治療する
高血圧や糖尿病を適切に治療することで、脳の血管や神経の健康が保たれます。
定期的に健康診断を受け、早期発見・早期治療を行います。減塩や糖分控えめの食事を心がけましょう。
「前頭側頭型認知症の人格変化」についてよくある質問
ここまで前頭側頭型認知症の人格変化について紹介しました。ここでは「前頭側頭型認知症の人格変化」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
前頭側頭型認知症の代表的な症状について教えてください。
神宮 隆臣 医師
前頭側頭型認知症の代表的な症状には、人格や行動の変化が挙げられます。初期段階では、次のような特徴が見られます。
・感情の鈍麻や共感力の低下:周囲の人への関心が薄れたり、思いやりが欠如したりすることがあります。
・抑制の欠如:場の空気を読まずに不適切な発言をするなど、衝動的な行動が増えます。
・同じ行動や言葉を繰り返す:特定の動作や言葉を何度も繰り返す「反復行動」が見られることがあります。
・興味や意欲の低下:趣味や日常の活動に対する関心が薄れ、無気力になることが多くなります。
・言語障害:言葉がゆっくりになったり、語彙が減少して簡単な言葉しか出てこなくなったりすることがあります。
これらの症状は進行するにつれ顕著になり、日常生活にも支障をきたします。早期に気づき、専門医に相談することが重要です。
編集部まとめ
前頭側頭型認知症に対する確立された予防法や治療法は現時点ではありません。そのため、前頭側頭型認知症による症状を理解し、患者が安心して過ごせる環境を整えましょう。もしも日常生活の中で気になる症状が見られた場合は、迷わず専門医に相談しましょう。
「前頭側頭型認知症」と関連する病気
「前頭側頭型認知症」と関連する病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経内科の病気
- アルツハイマー型認知症
- パーキンソン病
- 進行性核上性麻痺
- 脳血管性認知症
- 脳梗塞
- 脳出血
婦人科の病気
- 更年期障害
- 骨粗しょう症
前頭側頭型認知症は単独で発症することもありますが、他の神経疾患や精神疾患と併発するケースが見られます。特に脳血管障害や甲状腺機能の異常が影響を及ぼすことがあり、全身の健康管理が重要です。
「前頭側頭型認知症」と関連する症状
「前頭側頭型認知症」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 感情の平坦化
- 無関心・無気力
- 衝動的な行動
- 言葉が少なくなる(失語)
- 反復行動(同じ言動を繰り返す)
- 共感力の低下
- 社会的ルールの無視
- 過食や過剰な買い物などの抑制障害
- 注意力の低下
- 自発性の欠如
- 思考の柔軟性の低下
- 動作が遅くなる
- 記憶力の保持(物忘れが目立たない)
- 自己中心的な言動
これらの症状は前頭側頭型認知症で出現するものですが、他の認知症や精神疾患でも類似した症状が見られることがあります。