「アテローム血栓性脳梗塞」の症状はご存知ですか?ラクナ梗塞との違いも医師が解説!
アテローム血栓性脳梗塞とは?Medical DOC監修医がアテローム血栓性脳梗塞の症状・原因・後遺症・予後・治療法・リハビリなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)
目次 -INDEX-
「アテローム血栓性脳梗塞」とは?
脳に血液を送る比較的大きな血管(主幹動脈)がつまることによって起こる脳梗塞をアテローム血栓性脳梗塞といいます。動脈硬化によって血管がせまくなったり、血栓という血液のかたまりによって血液の流れが悪くなり脳梗塞になります。
アテローム血栓性脳梗塞と脳梗塞の違い
脳梗塞にはいくつかの分類があり、そのうちの一つがアテローム血栓性脳梗塞です。他には心原性脳梗塞とラクナ梗塞などがあります。
アテローム血栓性脳梗塞の代表的な症状
アテローム血栓性脳梗塞では、力が入りにくい、しびれ、ろれつが回らない、言葉が出てこない、などの症状がみられることが多くなります。
このような症状が出たときは、すぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。
力が入らない
手や足に力が入らないといった症状がみられることがあります。
症状の強さはさまざまで、手で物をうまくつかむことができない、落としてしまうといった症状から、うでを動かすことができなくなってしまうこともあります。
足についても歩く時に足を引きずる、ふらつくといった症状から、立つことができず足が動かないといった強い症状まで出てしまうこともあります。
力が入らないといった症状は手のみ、足のみといったこともありますが、手足ともに症状が出て、顔にも症状がみられることもあります。
症状が出るのは特殊な場合を除いて、左右どちらか一方になります。
しびれ
しびれが腕、足、顔などに出ることがあります。しびれだけが症状として出ていることもありますが、力が入らないといった症状も同時にみられることも多いです。
しびれも左右どちらか一方に出て、力が入らないといった症状もある場合は左右同じ側に出現します。 また、感覚がにぶいといった症状もみられることがあります。
ろれつが回らない、言葉が出てこない
ろれつが回らない、言葉が出てこないといった症状がみられることがあります。
言葉の症状も程度が軽く、ほとんどわからない場合から、ろれつが回らず話している言葉を聞き取ることができないほど強く症状が出ることもあります。
ろれつは回りますが、思っている言葉を話すことができないという症状が出ることもあります。また、聞いた言葉を理解することができないといった症状が出ることもあります。
アテローム血栓性脳梗塞の主な原因
アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化を悪化させる生活習慣や病気が原因となります。代表的な原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病、喫煙、大量飲酒などが挙げられます。
生活習慣病
高血圧、糖尿病、脂質異常症は動脈硬化の原因となり、アテローム血栓性脳梗塞のリスクを高めてしまいます。
高血圧は、上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上、あるいはこれら両方を満たす場合です。高血圧の原因は多くありますが、塩分の過剰摂取、肥満、体質などさまざまなことが組み合わさって起こります。
糖尿病はインスリンが不足したり、働きがわるくなることによって血糖(血液中のブドウ糖)が多くなりすぎた状態が続く病気です。糖尿病の多くは2型糖尿病と呼ばれ、遺伝要因と、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境要因が加わって起こります。
脂質異常症はLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が高い、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い、中性脂肪が高い状態のいずれかを満たす場合です。高脂肪食、体質などが原因となります。
これらの生活習慣病は初期には自覚症状がないことが多く、健康診断で見つかることもあります。健康診断で生活習慣病の指摘を受けた場合は、早めに内科を受診して診察を受けるようにしてください。
喫煙
喫煙は動脈硬化を進行させ、アテローム血栓性脳梗塞のリスクを高くしてしまいます。
喫煙を始めた年齢が若い、喫煙本数が多い、喫煙期間が長いほどリスクが高くなるので、喫煙習慣がある人はすぐに禁煙をするようにしましょう。
大量飲酒
過剰なアルコール摂取によってアテローム血栓性脳梗塞のリスクが高くなります。
目安としては男性で44g/日 (ビールなら中瓶2本、日本酒なら2合に相当)、女性で22g/日 (ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合に相当)以上の飲酒でリスクが高くなります
アテローム血栓性脳梗塞の後遺症
アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は、力が入らない(麻痺)、しびれ(感覚障害)、ろれつが回らない(構音障害)、言葉が出てこない(失語)、といったものが代表的です。
他にも、認知機能が低下したり、てんかんを発症することもあります。
麻痺
手や足などの筋力が低下している状態です。
手で物をうまく使うことができなかったり、腕をあげたりすることが困難になることもあります。食事のときに食器を持つことができなかったり、着替えやトイレの始末が不自由になってしまうことがあります。
足の筋力が低下していることで、立ち上がりの動作や歩行に障害が出てしまうことがあり、移動に杖などの補助具、車椅子が必要になったり、症状が強い場合は寝たきりになってしまうこともあります。
このような運動症状は、体の状態が許せば早期からリハビリテーションをすることで回復を早めたり後遺症を軽くすることができる可能性があります。
感覚障害
しびれが続くことで不快感が続いたり、しびれの他に感覚がにぶくなるなどの障害でふらつきの原因になることがあります。
感覚の障害は回復しにくいことがありますが、リハビリテーションは重要です。
言語障害
ろれつが回りにくいために、周囲の人が聞き取りにくくなってしまうことがあります。
本人が言葉を声に出しにくい、言葉を理解しにくいといった症状がみられることもあります。これらの言語障害は周囲とのコミュニケーションの障害となってしまいます。意志が伝わりにくいことでストレスも大きくなってしまいます。
ろれつの障害があると、飲み込みの力も低下していることが多く、誤嚥のリスクもあり注意が必要です。言語、飲み込みについてもリハビリテーションが重要です。
アテローム血栓性脳梗塞の予後
アテローム血栓性脳梗塞の予後は、発症時の症状の強さ、後遺症、再発の有無によって大きく左右されます。
アテローム血栓性脳梗塞の再発率
国内の久山町研究によるとアテローム血栓性脳梗塞の再発率は1年で14.8%、10年で46.9%でした。10年経過するとほぼ半数が再発していることになり、再発率は高いと考えられます。再発を繰り返すたびに後遺症は強くなり、日常生活に制限が強くなり、身体機能は低下してしまう可能性があります。飲み込みの機能が低下すると誤嚥(ごえん:飲み込んだものが気管や肺に入ってしまうこと)による肺炎を起こしやすくなり、生命に関わることもあります。
再発を100%防ぐことはできませんが、適切に治療を受けることで再発のリスクを減らすことはできます。
アテローム血栓性脳梗塞の治療法
アテローム血栓性脳梗塞の治療は大きく薬物治療、外科的治療とリハビリテーションに分けられます。
薬物治療
アテローム血栓性脳梗塞の薬物治療は抗血小板薬が中心です。アスピリンなどの内服薬のほか、点滴でアルガトロバンという抗凝固薬を投与します。
いずれも血液をかたまりにくくする薬で、血液を流れやすくする働きがあります。
アテローム血栓性脳梗塞の治療はできるだけ早く始めることが重要です。発症から数時間の場合は、条件を満たせばt-PA静注療法といって血栓をとかす治療を行うことがあります。
外科的治療
t-PA療法に続いて脳血管内治療で血栓を回収することがあります。血栓を回収することができると、血液の流れがよくなります。アテローム血栓性脳梗塞は発症してから脳梗塞の範囲が広がり、症状が悪化することがあるため、血栓を回収することができると症状を悪化することを防ぐことができる可能性があります。
脳血管内治療を行うには発症早期であることが必要であり、いくつかの条件を満たす必要があるため治療を受けられる人は限られています。
リハビリテーション
リハビリテーションを可能な限り早期に始めることは、身体機能の回復に重要です。
ただし発症早期は身体の状態によってはリハビリテーションに制限がかかることもあり、状態に合わせて始めていくことが必要です。
アテローム血栓性脳梗塞の後遺症を軽減するリハビリ
リハビリテーションは実際の症状に合わせて行います。同じアテローム血栓性脳梗塞が原因であっても症状によってリハビリテーションの方法や期間はさまざまです。
運動機能のリハビリテーション
主に手足のどの部位にどの程度の運動機能の障害があるのかを評価して、状態に応じてリハビリテーションを行います。
まずは基本動作の自立が重要であり、ベッド上で寝返りをうつ、ベッド上ですわる、自分ですわる、立つといった動作ができるか確認します。歩行に問題があれば、歩行訓練を行います。必要に応じて車いすへの移動、つえや歩行器を使った練習を行います。
日常動作としては、食事やトイレ、着替え、入浴の動作の訓練を行います。手を使った細かい作業、字を書く訓練も行います。
言語、飲み込みのリハビリテーション
言葉の障害について、ゆっくり話す練習や舌の運動を行います。発声練習や症状によっては文字盤やよく使う言葉を書いたカードを用いたコミュニケーションの訓練を行います。
のどの機能が低下していると、飲み込みがわるくなっていることがあります。飲み込みの機能に合わせて食事形態で飲み込みの訓練を行っていきます。飲み込みの機能が低下している場合は誤嚥に注意が必要です。
「アテローム血栓性脳梗塞」についてよくある質問
ここまでアテローム血栓性脳梗塞などを紹介しました。ここでは「アテローム血栓性脳梗塞」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞の違いについて教えてください。
上田 雅道 医師
アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞は血管のつまる場所にちがいがあります。
アテローム血栓性脳梗塞は主幹動脈といわれるような比較的太い血管がつまることによって起こります。ラクナ梗塞は主幹動脈から枝分かれした細い血管がつまることで起こります。こうしたちがいにより、アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞に比べて脳梗塞が大きくなりやすく、症状が強くなることが多いです。
アテローム血栓性脳梗塞を発症すると体のどこが詰まるのでしょうか?
上田 雅道 医師
アテローム血栓性脳梗塞を発症すると、脳梗塞が起こった部位によって症状や程度はことなります。手や足、言葉などさまざまな部位に症状が出る可能性があります。力が入らない、ふらつく、しびれる、言葉を話しにくいといった症状が代表的であり注意してください。
編集部まとめ
アテローム血栓性脳梗塞は予防をすることがまず重要です。高血圧や糖尿病、脂質異常症がある場合はしっかりと治療を受けてください。喫煙習慣がある人は禁煙が必要です。
アテローム血栓性脳梗塞を発症してしまった場合は、できるだけ早く治療を始める必要があります。力が入らない、ふらつく、しびれる、言葉を話しにくいといった症状が出たときはすぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。治療とリハビリテーションが後遺症を軽くすることに重要です。
「アテローム血栓性脳梗塞」と関連する病気
「アテローム血栓性脳梗塞」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経の病気
- 心原性脳塞栓症
- ラクナ梗塞
- 脳出血
上記の病気とアテローム血栓性脳梗塞を合わせて脳卒中と言いますが、似たような症状が出現します。画像検査や心電図検査、血液検査などによって分類され、それぞれの病型に応じた治療が行われます。
「アテローム血栓性脳梗塞」と関連する症状
「アテローム血栓性脳梗塞」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 力が入らない
- ふらつく
- しびれる
- ろれつが回らない、話しにく
脳梗塞は早期の治療が重要なので、これらの症状が急に出現した場合には、すぐに病院を受診するようにしてください。