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「アルツハイマー病」の新治療薬、薬価は年間で約298万円 保険適用を承認

 更新日:2023/12/25
アルツハイマー病新薬「レカネマブ」への公的医療保険適用を承認

2023年12月13日、中央社会保険医療協議会は製薬大手のエーザイなどが開発したアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」への公的医療保険適用を承認しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

中央社会保険医療協議会が承認した内容とは?

今回、中央社会保険医療協議会が承認したアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」への公的医療保険適用ついて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回、アルツハイマー病の新しい治療薬レカネマブへの公的医療保険適用の承認を出した中央社会保険医療協議会は、厚生労働省の諮問機関です。レカネマブは製薬大手のエーザイなどが開発した治療薬で、2023年7月にはアメリカで正式承認されています。アメリカでの卸売価格は年間2万6500ドル、日本円で約390万円と高額なことから、国内での価格が注目されていました。

国内の動きをめぐっては、エーザイの申請を受けて厚生労働省が2023年9月に製造販売を承認して、中医協で薬価や対象範囲などを議論してきました。今回の承認で薬価は1瓶200mgで4万5777円に設定し、2週間に1回、約1時間かけて点滴することになります。体重が50㎏の人では年間298万円となる見込みで、費用の大部分は公的保険で賄われることになります。

日本では、高額な薬価には患者の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」が適用され、住民税非課税世帯を除く年収約370万円以下で70歳以上の患者の場合は、外来による年間負担額の上限は14万4000円です。今回の公的医療保険の適用は2023年12月20日からで、年内にも医療現場で使用が始まります。2031年度には3万2000人への投与が予想されています。

アルツハイマー病とは?

今回のニュースで取り扱っているアルツハイマー病について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

アルツハイマー病は、アミロイドβという老廃物が脳に溜まることで起きる病気です。アミロイドβが蓄積されていくと「プロトフィブリル」と呼ばれる物質になります。抗アミロイドβ薬であるレカネマブは、薬の成分がプロトフィブリルに作用して目印の役割を果たし、そこに体内の免疫細胞が集まって攻撃します。856人が参加したレカネマブの中期治験では、同薬の投与によってアミロイドβの減少が大半の参加者で確認されたとされています。レカネマブが使えるのはアルツハイマー病患者で、アミロイドβがたまっていることが確認できた人に限られ、さらに認知症の症状が軽い軽度認知障害と、軽度の認知症の人だけが対象となります。こうした条件を鑑みると、レカネマブの投与対象となる患者は認知症患者全体の1割未満とみられています。また、治験の結果では、約1割の人に、脳がむくんだ状態になったり、脳内でわずかな出血が起きる副作用が確認されたりしています。

承認内容への受け止めは?

中央社会保険医療協議会がアルツハイマー病の新しい治療薬への公的医療保険適用を承認したことについて、受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回のレカネマブの保険適用は、いまだ根治療法のないアルツハイマー病の治療に光を与えるものとして歓迎されるものと考えます。その一方、費用が年間300万円近くかかり高額である、条件に当てはまる患者さんが限られる、副作用などの懸念される事項もあります。しかし、長い期間で見て、早期に病気の進行を抑えることで今後の介護負担を減らしたり、認知症患者にかかわる医療費を削減できる可能性も考えられます。今後、実臨床でのエビデンスの構築を期待します。

まとめ

中央社会保険医療協議会は2023年12月13日、製薬大手のエーザイなどが開発したアルツハイマー病の新しい治療薬レカネマブへの公的医療保険適用を承認しました。アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ、取り除くための初めての薬であるレカネマブに今後も大きな注目が集まりそうです。

この記事の監修医師