「認知症を予防」する可能性の高い「食べ物・飲み物」はご存知ですか?医師が解説!
認知症の予防法とは?Medical DOC監修医が認知症の予防法・なりやすい人の特徴・予防する可能性の高い食べ物・発症のリスクを上げやすい食べ物などを解説します。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「認知症」とは?
認知症とは記憶力や判断力、思考能力、情報処理能力などが低下して、日常生活に支障が出ている状態を指す病名です。認知症には原因や症状により、記憶力の低下が主体となるアルツハイマー型認知症、幻視があり認知機能の変動が目立つレビー小体型認知症、性格が変わり非常識な行動をとりやすくなる前頭側頭型認知症、脳梗塞を原因で発症する血管性認知症などに分類されます。
年齢を重ねると、誰しもが若い時と比べて記憶力が低下しますが、その程度は人によってまちまちで高齢になっても大きな支障なく、自立した生活ができている方も少なくありません。ここでは認知機能低下の予防という点に注目して解説をいたします。
認知症の予防法
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの神経変性疾患に関しては、現時点ではっきりとした予防法は確立していませんが、認知機能低下の予防には「考える」「行動する」ことを日常的に行うことが重要です。動脈硬化などによる脳への血流低下や脳梗塞が認知症の原因となる場合(脳血管性認知症やビンスワンガー病)もあり、これらの予防には生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)の予防や治療、禁煙、節酒が有効です。またビタミンB1や葉酸など特定の栄養素の欠乏も認知症の原因となるため、バランスの取れた食事を心がけましょう。
社会人サークルやボランティア活動への参加
認知症の予防には人と会話する、一緒に活動することは非常に大切です。他人と交流を行うことで、周囲への関心が高まり、より活動的に行動できるようになります。また、会話をするだけでも思い出したり、考えたりしながら話すことで認知症の予防につながります。
定年後再雇用制度を利用した勤務の継続や社会人サークルへの参加、町内会やボランティア活動への参加などを行い、社会的な交流を維持するように努めましょう。
適度な運動
ウォーキングなどの適度な運動は認知症の進行を抑えるだけでなく、肥満の予防や食欲の維持など一般的な健康を維持するためにも重要です。外出をして季節を感じることも認知症の予防につながるため、転倒や交通事故などに注意しつつ、散歩を行うとよいでしょう。
クロスワードや数独などの知的活動
クロスワードや数独、パズルゲームなどの知的活動も認知機能の維持に有用です。知的活動はその人ごとに合ったレベルのものが望ましく、成功体験を積み上げることで継続する意欲や自身につながります。
生活習慣病の対策
生活習慣病の予防には食事療法(減塩、バランスの取れた食事、カロリー調整)や運動療法、禁煙や節酒などがあります。食事療法では塩化ナトリウム6g前後を目標とした減塩や野菜や果物なども取り入れたバランスの取れた食事が重要です。運動療法は軽く息がきれる程度の軽い運動(有酸素運動)を30~60分以上行うとよいでしょう。
バランスの取れた食事
肉や魚にくわえて、野菜や果物などの副菜も摂取していれば、基本的には問題ありませんが、偏った食事を続けているとビタミンB1や葉酸などの栄養素の欠乏により、認知症を発症することがあります。胃や腸を切除している場合には、さらに不足しやすくなるため、食事内容の見直しやサプリメントを利用して対応しましょう。
認知症になりやすい人の特徴
認知症は高齢者に多い病気です。また、無気力で周囲への関心が乏しく、社会的な関わりが少ない人は認知機能が低下しやすく、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のある人や太っている人、うつ病などの精神疾患がある人、喫煙者、教育年数が低い人で認知症が多いことが知られています。このことを踏まえて、どのような人が認知症になりやすいかをご紹介します。
高齢者
2012年の統計では、認知症は男女ともに65歳から増え始め、75歳では10人に1人、80歳では5人に1人と急激に増加します。認知症の有病率は女性で高く、65歳ではほぼ同じ割合ですが、80歳以上では10%以上の差がみられます。
社会的な関わりが少ない人
人との交流がなく、引きこもりがちな生活な人は認知症になりやすいと考えられます。外出機会も減るため、運動不足になりやすいことも認知症になりやすい因子となります。
運動習慣がなく、休日はごろごろと過ごす人
休日にごろごろと過ごしている人は肥満になりやすく、糖尿病などの生活習慣病になりやすく、認知症になりやすいと考えられます。
炭水化物を主とする高カロリー食の人、偏食の人
炭水化物を中心とする高カロリーな食事をしている人は糖尿病などの生活習慣病になりやすく、認知症になりやすいと考えられます。また、過度な偏食の人ではビタミン欠乏などで急激に認知機能が低下してしまうこともあります。
教育年数が8年以下の人
教育年数が8年以下の人は8年以上の人に比べて2倍認知症になりやすいと報告されています。日本では義務教育期間は9年であるため、ほとんどの方が当てはまらないと思いますが、義務教育を受けられなかった方は注意が必要です。
認知症を予防する可能性の高い食べ物
認知症の予防では、有効であると証明された食事や栄養素はなく、バランスのよい食事で一部の栄養素が不足しないようにすることが最も重要です。一方で証明されてはいないものの、認知症の予防に効果があるではないかと考えられている食べ物や飲み物はあるため、それらをご紹介いたします。
青魚
ドコサヘキサエン酸(DHA)はサバやイワシなどの青魚に多く含まれる脂肪酸であり、人間の体内で産生ができない必須脂肪酸です。DHAの血中濃度が138μg/mlよりも低い人に比べ、高い人で10年後の認知機能低下のリスクが0.11~0.17倍になったとの報告があります。
乳製品
牛乳などの乳製品はカルシウムや各種ビタミン、良質な蛋白質を含んでおり、優れた栄養価を持つ食品として知られています。ある研究では牛乳や乳製品をたくさん食べている人では、そうでない人に比べて認知機能が低下しにくかったとの報告があります。
大豆製品
大豆製品は植物性蛋白質、ミネラル、ビタミン、食物繊維に加え、イソフラボンなどの栄養機能成分も含まれることから健康の増進につながることが期待されている食品です。ある研究では男性では変わりありませんでしたが、女性では大豆製品やイソフラボンの摂取量の多い方で認知機能低下のリスクが0.5~0.7倍に低下したと報告があります。
赤ワイン
1日グラス3-4杯以上の赤ワインを飲む人では飲まない人と比べて0.19倍~0.31倍、認知症になりにくかったと1997年にボルドー大学が報告しており、認知症予防に有効であるとテレビでも取り上げられたため、聞いたことがある方も少なくないと思います。ただし、チューリッヒ大学の報告では赤ワインを飲む男性は認知症となる人が少なかったものの、女性では逆に認知症の人が多かったとの報告がされており、注意が必要です。
緑茶・コーヒー
緑茶やコーヒーを日常的に飲用している人では認知症が少ないとの報告があります。カテキンやポリフェノールなどが認知症の予防に寄与しているのではとの検討もされていますが、詳細はまだわかっていません。ある研究では1日2杯以上の緑茶を飲んでいる人は飲んでいない人に比べて認知機能低下のリスクが70%に低下すると報告されています。
認知症発症のリスクを上げやすい食べ物
前項では認知症になりにくいのではないかと考えられている食べ物について解説しましたが、逆に認知症になりやすいのではと考えられている食べ物もあります。食事はバランスよく摂取することが大事であり、完全に除去する必要はありませんが、以下のものについては摂取を控えるとよいでしょう。
ラード、肉の脂身
牛や豚などの肉の脂身にはトランス脂肪酸が多く含まれ、血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増加させて動脈硬化を引き起こす原因となります。動脈硬化は動脈狭窄などによる脳血流の低下や脳梗塞を引き起こし、認知機能を悪化させる原因となります。
バターやマーガリン
ラードや肉の脂身ほどではありませんが、バターやマーガリンにもトランス脂肪酸は多く含まれます。パンを食べる時など日常的に使用することも多い食品であり、摂取量が多くならないように注意が必要です。
菓子パン
菓子パンも製造過程でバターやマーガリンなどを使用しており、トランス脂肪酸が多く含まれます。塩分も多く、高血圧のリスクにもなるため注意が必要です。また、パンを含む穀物の過剰摂取は認知症のリスクを高めるとの報告があります。穀物を過剰摂取している方は副菜をあまり食べておらず、その他の栄養素が不足していることが影響しているとも言われていますが、穀物の過剰摂取にも注意した方がよいでしょう。
「認知症の予防」についてよくある質問
ここまで認知症の予防などを紹介しました。ここでは「認知症の予防」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
コーヒーの摂取で認知症発症のリスクを軽減することはできるのでしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
はっきりとした結論は得られていませんが、コーヒーを日常的に摂取することは認知症の発症リスクを下げる可能性があると注目されています。ただ、カフェインが多く含まれており、飲用する時間や量によっては不眠などにより健康に悪影響が出てしまう可能性があります。無理に飲用することはせず、食後や人との社交時に取り入れるのがよいと思われます。
認知症予防に効果的なゲームについて教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
クロスワードや数独などの知的活動は認知症予防に有用と考えられています。「考える」「思い出す」などの行為を継続的に行えるものであれば、将棋や囲碁、クイズ、カラオケ、戦略ゲームなどさまざまなゲームが有用であるため、本人が楽しんで継続できるものを見つけるとよいでしょう。一方でパチンコやメダルゲームなどの「考える」「思い出す」などの知的活動をあまり必要せず、刺激を楽しむことが中心のものは避けましょう。
認知症予防に効果的な趣味はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
認知症の予防には日常的に考えたり、行動したりすること、周囲の人とコミュニケーションをとることが重要です。読書などの個人的に楽しむことができる趣味も非常によいですが、将棋や囲碁、卓球など複数名で楽しめる趣味を持ち、一緒に楽しむことができる仲間を見つけられるとさらに良いでしょう。
編集部まとめ
認知症に関してはまだわかっていないことも多く、認知症の発症を十分に予防することは困難ですが、認知機能低下のリスクを下げる方法に関しては少しずつ研究が進んでいます。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫による認知症などの一部の認知症は外科手術などの治療で認知機能が改善しますが、ほとんどの認知症は認知機能が改善しないことが多いため、とにかく認知機能を悪化させないことが重要です。食事に気をつける、適度な運動をする、節度のある飲酒をする、積極的に人と交流するなど普段の生活の中で取り組めることも多いため、今回の記事を参考にして認知症の予防に取り組んでいただければ幸いです。
「認知症の予防」と関連する病気
「認知症の予防」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経内科・脳神経外科の病気
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
- 脳血管性認知症
- ウェルニッケ脳症
- 正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
認知症の5−10%は正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、ビタミン欠乏などによる認知症であり、適切な治療によって認知機能が改善する可能性があります。しかし、多くの認知症は認知機能が改善しないままとなってしまいます。
日頃の生活習慣や社会活動などで認知症予防対策につながるものを取り入れて過ごしていただければと思います。
「認知症の予防」と関連する症状
「認知症の予防」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 物忘れがひどい
- 性格が変わった
- 怒りっぽい
- 不安に感じる