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「アルツハイマー型認知症の原因」はご存知ですか?症状や予防法も医師が解説!

 公開日:2023/11/29
「アルツハイマー型認知症の原因」はご存知ですか?症状や予防法も医師が解説!

アルツハイマー型認知症の原因とは?Medical DOC監修医がアルツハイマー型認知症の原因・症状・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

プロフィールをもっと見る
医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「アルツハイマー型認知症」とは?

アルツハイマー型認知症とは、脳の神経細胞が減ることで脳が萎縮してしまう認知症のことです。認知症には、他にもレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、正常圧水頭症などがありますが、これらの中でもアルツハイマー型認知症は、もっとも患者数が多い病気です。
ところで、加齢による物忘れとアルツハイマー型認知症の違いをご存知でしょうか。いわゆる年相応の物忘れでは、ヒントを与えられれば忘れたことを思い出すことができて、時間や場所は認識することができます。一方で、アルツハイマー型認知症では物忘れをしている自覚がなく、時間や場所が分からなくなったり、体験したことそのものを丸ごと忘れてしまったりします。加齢による物忘れとアルツハイマー型認知症はまったくの別物なのです。
アルツハイマー型認知症になると、人生が終わってしまうのではと不安に感じている方が多いのではないでしょうか。たしかに、アルツハイマー型認知症が進行すると最終的には寝たきりになってしまうことがあります。しかし、病気を患いながら普通の方と変わらないような生活をしている方も少なくありません。アルツハイマー型認知症と診断を受けた後も普通に働いている方もいます。本記事ではどのような病気なのか解説していきますので、少しでも病気に対する理解を深めていただければ幸いです。

アルツハイマー型認知症の主な原因

アルツハイマー型認知症を発症する原因は判明していません。アルツハイマー認知症の病理学的な検討では、いくつも異常が見つかっていますが、それが病気の原因なのか、あるいは病気を発症した結果として存在しているのか明らかではないのです。これまで原因と考えられたものに対して数々の治療薬の開発が進められていますが、2023年末時点において病気そのものを改善することができる治療薬は残念ながらありません。
現時点で主な原因と考えられているものを列挙します。

アミロイドβの蓄積

アルツハイマー型認知症の患者さんでは、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳に蓄積していることが分かっています。アミロイドβは、いわば脳内に存在するゴミのようなものです。健康な方の脳にも存在しています。しかし異常に蓄積すると、脳の神経細胞が死滅して正常な情報伝達ができなくなってしまうのです。アミロイドβの蓄積は、アルツハイマー型認知症を発症する十数年も前から始まっていると言われています。また、アミロイドβが脳に溜まってくると、老人斑と呼ばれる脳のシミのようなものができることも特徴です。

タウタンパク質の増加

アルツハイマー型認知症は、タウタンパク質の増加も原因だと言われています。タウタンパク質が増加すると、神経細胞同士で行われる信号の伝達が損なわれてしまうのです。健康な方でもタウタンパク質は見られます。しかし、タウタンパク質が脳の特定部位に過剰に増加すると、影響をもたらすようになってしまうのです。脳脊髄液検査や血液検査でタウタンパク質の測定を行うことができます。

神経原線維変化

タウタンパク質が細胞質の中で線維化して沈着すると、神経原線維変化が見られます。正常な細胞には核と細胞質がありますが、神経原線維変化を起こすと核が周辺に追いやられたような形になり、異常な形をした線維のようなものになってしまうのです。通常、アルツハイマー型認知症がない方で神経原線維変化が見られることはありません。神経原線維変化が増えると、神経細胞が少しずつ死滅していくため脳が萎縮すると考えられています。

遺伝

アルツハイマー型認知症のなかには、遺伝が関係して発症しているケースがあります。家族性アルツハイマー型認知症と呼ばれるものです。両親や兄弟、姉妹が発症している場合は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高くなることが分かっています。65歳以上の双子10,000組以上を調査した研究によると、双子の片方がアルツハイマー型認知症を発症した場合、もう片方も発症する割合は約60%でした。家族性アルツハイマー型認知症の特徴は、発症年齢が早いことです。40~60代と比較的若い年齢で発症すると言われています。

ミエリンの異常

アルツハイマー型認知症では、ミエリンの異常が認められています。ミエリンとは、髄鞘とも呼ばれますが、神経細胞に機能を与える役割を有する鞘様の構造体で、神経信号を素早く伝える役割があります。高齢になると記憶力や認知機能、運動機能が衰えますがその原因の一つが神経回路の損傷があると言われています。その神経回路の損傷の原因の一つにミエリンの異常が関わっていることが知られています。若年者はミエリンが脱落しても修復機構が働いて神経回路が再生されますが、高齢の場合には修復能が低下しています。
他にもミエリンの異常によって脳内のアミロイドβが増加することも報告されています。

アルツハイマー型認知症の代表的な症状

アルツハイマー型認知症には、大きく分けて中核症状と周辺症状の2種類があります。中核症状とは、脳の細胞が死ぬことで起こる直接的な症状のことです。周辺症状は、本人の性格や環境、人間関係などが絡まり合って起こる精神症状などのことを指します。
アルツハイマー型認知症そのものの進行を止めることは難しいのですが、症状の緩和や軽減を行う治療法はありますので、気がついたら早めにご相談ください。

記憶障害

アルツハイマー型認知症では、昔のことは覚えているのに最近の出来事は忘れてしまう記憶障害がよく見られます。たとえば、朝ごはんを食べたこと、数分前に話した内容を思い出すことができません。思い出せないというよりも、食べたことや話したことそのものを忘れてしまっているというのが正しいでしょう。記憶障害を治すことは残念ながらできません。何度も同じことを聞くようになったり、ご飯を食べたのに食べていないと言うようになったりしたらアルツハイマー型認知症の初期症状が出ている可能性があります。

見当識障害

見当識障害とは、時間や場所が分からなくなる状態のことです。時間感覚がなくなるため、予定に合わせて準備したり、時間通りに物事を行ったりすることが難しくなります。今日が何日か分からなくなり、季節に合わせた服装をすることができなくなる方も珍しくありません。今いる場所が分からなくなり、出かけたまま帰宅できなくなることもあります。

理解・判断力の障害

アルツハイマー型認知症になると、理解力や判断力の低下が見られます。会話をしても内容の理解が追いつきません。考えるスピードが遅くなるので、何か尋ねても時間をかけて返事をするようになります。また、ATMの操作やコンロの使い方、電車の乗り方なども戸惑ってしまうことが増えます。

遂行(実行)機能障害

アルツハイマー型認知症では、計画を立てて行動することが難しくなります。良くあるのが、何度も同じものを買ってきてしまうことです。家にストックがあるのを忘れて買い物をしてしまうため、同じものがいくつも備蓄されているという状態に陥ります。こちらも症状を根本的に治す方法はありません。ただし、周りの方が声掛けをすることで、スムーズな生活を支援することができます。

うつ状態・幻覚など

アルツハイマー型では精神症状が見られることもあります。不安や焦燥感、うつ状態や幻覚などが代表的です。物取られ妄想といって、失くしたものを取られたと勘違いしてしまうことも良くあります。これらの症状は、記憶障害や見当識障害とは違い、周りの方の接し方によって症状をやわらげることが可能です。

受診・予防の目安となる「アルツハイマー型認知症の症状」のセルフチェック法

  • ・物や人の名前が出てこない場合
  • ・同じことを何度も聞くる場合
  • ・日にちや場所が分からなくなる場合

アルツハイマー型認知症を予防する方法

運動する

運動を行うと、アミロイドβを分解する酵素が活性化されることが知られています。また、脳の細胞死を抑制したり、海馬の神経細胞を活性化したりすることも明らかです。運動は、軽いウォーキングやジョギングなどで問題ありません。30分程度の運動を週に3~4回を目安に行いましょう。

睡眠をしっかり取る

睡眠は体や脳を休める時間であると共に、老廃物を回収したり排出したりする時間でもあります。老廃物と一緒にアミロイドβも排出されるため、睡眠はアルツハイマー型認知症の予防に有効なのではと言われています。アミロイドβの排出を促すためにも、しっかりと睡眠を取りましょう。

バランスの良い食事を摂る

バランスの良い食事を摂ることもアルツハイマー型認知症の予防に効果があると考えられています。肥満はアルツハイマー型認知症のリスクを高めるため、適切な摂取カロリーになるよう心がけてください。間食や糖分の摂取を控えることも大切です。糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスクを高めるため、間食や糖分の摂取を控えることが予防につながります。
また、歯周病の原因菌の一つ(Porphyromonas gingivalis)が脳内のアミロイドβ増加と関係しているという報告もあります。つまり、歯周病予防がアルツハイマー型認知症を予防することに繋がる可能性もあるのです。食事に気をつけることはもちろんですが、歯磨きや定期的な歯科検診も重要と言えるでしょう。

「アルツハイマー型認知症の原因」についてよくある質問

ここまでアルツハイマー型認知症の原因などを紹介しました。ここでは「アルツハイマー型認知症の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

アルツハイマー型認知症を悪化させる原因について教えてください。

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

ストレスを感じたり脳を使う機会が減ったりするとアルツハイマー型認知症が悪化する可能性があると言われています。
定期的に運動を継続することや、しっかりと睡眠をとること、一人の世界で閉じこもらずに誰かとコミュニケーションをとること、趣味や特技、仕事など頭や体を使って刺激となるようなことを積極的に行うことが、症状の悪化させる予防対策となるでしょう。

編集部まとめ

アルツハイマー型認知症の原因はいまだに判明していない部分がありますが、食事や運動、睡眠といった日常の生活習慣の改善させることが、発症や症状悪化を予防する方法として有用であると考えられています。
現状ではアルツハイマー型認知症を完治させることは難しいため、日頃からの予防に繋がる生活習慣を続けることや、初期症状が出た段階で適切な治療を受けることが重要です。気になる症状が見られたら、早めに精神科や脳神経内科を受診して検査を受け相談することをお勧めいたします。

「アルツハイマー型認知症の原因」と関連する病気

「アルツハイマー型認知症の原因」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経科の病気

  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症
  • 前頭側頭型認知症
  • 正常圧水頭症
  • 慢性硬膜下血腫
  • 頭部外傷

精神科の病気

入院治療や脱水によって意識が混乱し、認知症のような言動が見られる場合はせん妄の恐れがあります。せん妄は治療によって改善することが可能です。また、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫は外科手術によって治療可能な認知症として知られています。

「アルツハイマー型認知症の原因」と関連する症状

「アルツハイマー型認知症の原因」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 物忘れが多い
  • 気分の落ち込み
  • 幻覚
  • 幻聴

アルツハイマー型認知症でなくても、物忘れが増えたり幻覚や幻聴が見られたりすることがあります。このような症状があるときは、早めに精神科で相談しましょう。

この記事の監修医師