「オキシトシンが不足」すると現れる症状はご存知ですか?不足しやすい人の特徴も解説!

オキシトシンが不足すると現れる症状とは?メディカルドック監修医がオキシトシンの働き・不足する原因・不足しやすい人の特徴・不足すると発症しやすい病気などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「オキシトシン」とは?

オキシトシンは、脳内で作られるホルモンの一種です。古くから出産時の子宮収縮や、母乳分泌に関わるホルモンとして知られています。そのため、オキシトシンの研究は女性を対象として進められてきました。しかし、近年では安心感や信頼感、社会的行動との関連もあると報告されており、性別に関係なく大切な物質であることがわかってきたのです。
オキシトシンはどこから分泌されるの?

オキシトシンは、脳の視床下部で作られ、下垂体後葉から血液中に分泌されます。血液中に分泌されたオキシトシンは、子宮や乳腺にある受容体と結合し、子宮の収縮や母乳の分泌を促すのです。
一部のオキシトシンは脳内でも神経伝達物質として働き、扁桃体や海馬、側坐核、前頭前野などの領域に作用して、安心感や信頼関係の形成などに関わると考えられています。
オキシトシンの働き

オキシトシンは、安らぎと結びつきをもたらす物質と考えられています。なぜなら、子宮や乳腺へ作用以外にも、不安の軽減や良好な対人関係の形成などに関わっているからです。
子宮の収縮を促す
出産時の周期的な子宮収縮(陣痛)には、オキシトシンが関わっています。また、産後の子宮収縮によって出血を抑えたり、妊娠中に広がった子宮を元の状態に戻したりするのもオキシトシンの働きの一つです。
母乳の分泌を促進する
オキシトシンは、母乳の分泌を促します。授乳の際に肌が触れ合ったり、赤ちゃんの唇が乳頭に触れたりする刺激でオキシトシンの分泌は高まり、母乳が出やすくなります。
不安や恐怖を軽減する
オキシトシンは、不安や恐怖を軽減すると知られています。不安や恐怖を感じるのは、脳の「扁桃体」と呼ばれる部位です。オキシトシンには、扁桃体の過剰な活動を抑える働きがあるため、ネガティブな感情の軽減につながるのです。
ストレスを緩和する
オキシトシンには、ストレスホルモンの一種であるコルチゾールの働きを弱める作用があります。近年では、オキシトシンの経鼻投与がうつや不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を改善するかどうかについての研究も進められています。
信頼関係を形成する
オキシトシンには、他者との信頼関係を形成する働きがあると報告されています。母子関係だけでなく、父子や夫婦、パートナーなど周囲の方との信頼感が高まり、対人関係を安定させる働きも期待できるでしょう。
オキシトシンが不足すると現れる症状

オキシトシンが不足すると、心身にさまざまな症状が現れます。ここでは、オキシトシン不足により起こりうる症状を3つ紹介します。
陣痛が弱くなる
出産の際にオキシトシンの分泌や働きが不十分だと、陣痛が弱くなったり、分娩が進まなかったりすることがあります。このようなときには、陣痛促進剤としてオキシトシン製剤を投与する場合があります。
母乳が出にくくなる
赤ちゃんが哺乳を始めると1分以内に血液中のオキシトシン濃度が上昇し、母乳が出やすい状態になります。しかし、ストレスや疲労などでオキシトシンの分泌が減ると、母乳が出にくくなってしまうことがあります。
体を休めたり、リラックスしながら赤ちゃんとスキンシップをとったりすることで、母乳が出やすくなります。授乳がうまくいかず赤ちゃんの体重が増えない場合には、産科や小児科で相談したり、育児用ミルクを併用したりしましょう。
気分の落ち込みや意欲の低下
オキシトシンが不足すると、不安や孤独感が高まり、気分の落ち込みや意欲の低下が生じやすくなります。うつ病の患者は血液中のオキシトシン濃度が低いとの報告もあり、オキシトシンの経鼻投与が、うつ病や不安障害などに対して効果を示す可能性について研究が進められています。
オキシトシンが不足する原因

オキシトシンの分泌は、年齢や生活環境、ストレスなどさまざまな原因によって変化します。ここでは、オキシトシンが不足する主な原因について見ていきましょう。
加齢
オキシトシンは、加齢とともに減少することが報告されています。
また、年齢を重ねるにつれて生活環境が変化し、人との交流や触れ合いが少なくなりがちです。こうした身体や生活の変化が重なることで、オキシトシンの分泌機会が減りやすくなることも考えられます。
スキンシップ不足
オキシトシンは、親しい人とのハグやタッチなど安心感のあるスキンシップによって分泌が高まります。しかし、人との触れ合いが少ない生活では、このような刺激が不足しやすくなります。その結果、オキシトシンの分泌が減る可能性もあります。
慢性的なストレス
強いストレスが長期間続くと、自律神経やホルモン分泌のバランスが乱れやすくなります。こうした状態では、安心感や信頼感に関わるオキシトシンの働きにも影響を与えることがあるでしょう。ストレスとうまく付き合い、リラックスできる環境を整えることも、オキシトシンの働きを保つうえで大切です。
オキシトシンが不足しやすい人の特徴

オキシトシンの分泌は、生活習慣や人との関わり方にも影響されます。ここでは、オキシトシンが不足しやすい人の特徴を紹介します。
人との関わりが少ない人
オキシトシンは、スキンシップや会話など、人との交流によって分泌が促進されるホルモンです。そのため、家族や友人と過ごす時間が少なかったり、人と関わる機会の少ない生活が続いたりすると、オキシトシンが分泌されにくくなる可能性もあります。
過度なストレスを抱えている人
ストレスは誰もが感じるものですが、仕事や人間関係などによる強いストレスを長期間抱えると、ホルモンや自律神経のバランスが崩れやすくなります。その結果、オキシトシンの働きが十分に発揮されにくくなることもあるでしょう。
思いやりや共感の機会が少ない人
相手を思いやる気持ちや親切な行動は、オキシトシンの分泌を促進するとわかっています。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、信頼や共感といったポジティブな対人関係に深く関わるホルモンです。そのため、他者に関心を向けたり思いやりを示したりする機会が少ないと、分泌のきっかけも減ってしまうこともあります。
オキシトシンが不足するとどんな病気になりやすい?

オキシトシンが不足すると、心と身体の不調につながる可能性があります。ここでは、どのような病気があるのかを紹介します。
うつ病
オキシトシンは、安心感や信頼感に関わるホルモンで、気分の落ち込みや意欲低下といったうつ症状との関連が示唆されています。ただし、うつ病はオキシトシン不足だけで起こるものではなく、ストレスや環境の変化などさまざまな要因が複合的に関与します。
気分の落ち込みが長く続く、なにも楽しめない状態が続くなどの場合は、心療内科や精神科への受診を検討しましょう。休養や心理療法、抗うつ薬などの治療により、症状の緩和が期待できます。
産後うつ
産後うつは、ホルモンバランスの変動や生活環境の変化により発症する出産後のうつ病です。睡眠不足や育児ストレス、社会的孤立などが重なることも要因となっています。そして、妊娠中の血中オキシトシン濃度が低いと、産後うつのリスクが高いことも知られているのです。
「赤ちゃんがかわいいと思えない」「消えてしまいたい」といった気持ちがある場合は、早めに産婦人科や心療内科、精神科に相談することが大切です。
自律神経失調症
オキシトシンはストレスの緩和に関与するとされているため、不足すると自律神経のバランスが乱れる可能性もあります。自律神経は体内のあらゆる機能に関わっているため、バランスが乱れると、動悸やめまい、倦怠感、不眠などさまざまな不調が現れます。
検査で異常がないにも関わらず、このような不調が続く場合、自律神経が乱れている可能性もあります。自律神経失調症の原因には、ストレスのほかにも生活習慣の乱れが影響していることがあり、ストレス対策や生活の見直しにより症状の緩和が期待できます。ただし、つらい症状が続くときには1人で抱え込まず、内科を受診なさってください。
「オキシトシンの不足」についてよくある質問

ここまでオキシトシンの不足について紹介しました。ここでは「オキシトシンの不足」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
女性がオキシトシンをたくさん出すにはどんな方法がありますか?
木村 香菜(医師)
親しい人とのスキンシップは、オキシトシンの分泌を促します。ほかにも、マッサージを受けたり、心地よいと感じるものに触れたりするだけでもオキシトシンが分泌されるとわかっています。
オキシトシンの分泌を増やす食べ物について教えてください。
木村 香菜(医師)
特定の食べ物で、オキシトシンを直接的に増やすことはできません。バランスのよい食事を基本として、ホルモンのもととなるたんぱく質を不足しないよう摂取しましょう。
オキシトシンの分泌を促すために生活習慣で意識することはありますか?
木村 香菜(医師)
オキシトシンの分泌を促すには、心地よい刺激が必要です。人との交流だけでなく、自分を労わりながらセルフタッチする、好きな香りや音楽に触れる時間をつくる、ペットと過ごすなどによってもオキシトシンが分泌されやすくなります。
まとめ
オキシトシンは出産や授乳だけでなく、ストレスの緩和や人との信頼関係の形成など、心と身体の健康に関わる大切なホルモンです。そのため、オキシトシンが不足すると気分の落ち込みや意欲の低下などの不調につながる可能性があります。
人との交流や自分を労わる時間を大切にし、心と身体の不調が続くときには医療機関への相談も検討なさってください。
「オキシトシン」と関連する病気
「オキシトシン」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 産後うつ
- 乳汁分泌不全
このような病気では、血液中のオキシトシン濃度が低いこともあります。
「オキシトシン」と関連する症状
「オキシトシン」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 不安感が強い
- 気分の落ち込みが続く
- 孤独感を覚えやすい
- 人付き合いに疲れる
- 母乳が出にくい
これらの症状には、さまざまな要因が関わっています。オキシトシンもその要因の1つとして、関わっている可能性があります。
参考文献




