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「バリウム検査」はなぜ”胃がん検診”で行われる?メリット・デメリットを医師が解説!

 公開日:2026/04/22
「バリウム検査」はなぜ"胃がん検診"で行われる?メリット・デメリットを医師が解説!

胃がん検診のバリウム検査を受ける前に!メディカルドック監修医が検査方法や受診の頻度、前日の食事・服装、下剤の重要性等を解説します。

杉本 大

監修医師
杉本 大(医師)

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杏林大学医学部卒業後、河北総合病院で初期研修。その後は市中病院で、消化器内科及び一般内科、プライマリケアまで幅広く診療・内視鏡検査など行なっています。
日本内科学会認定医・専門医、消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医、プライマリーケア学会認定医

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胃がん検診のバリウム検査とは?

バリウムによる胃がん検診は1960年代に広く普及し、職場や自治体単位での集団検診で広く用いられるようになりました。当時の研究で「胃透視による検診で胃がん死亡率が減少した」と報告されており、胃がん検診=バリウム検査という認識が広がりました。この記事では胃がん検診のバリウム検査について、細かく解説していきます。

胃がん検診は何をする?(バリウム・胃カメラ)

胃がん検診の目的は「胃がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させる」ことです。現在用いられている方法は、バリウム検査(胃X線検査)と胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の2つの方法で行われています。

胃がん検診の対象年齢と受診頻度は?

胃がん検診の対象者は、厚生労働省の指針(2024年改正)より、50歳以上のすべての人にバリウム検査か胃カメラのどちらかを受けるように定められています。バリウム検査(胃部X線検査)に関しては、当分の間40歳以上の者を対象として行ってもよいとされています。何年おきに胃がん検診を行うかについては、バリウム検査は1年おき、胃カメラは2年おきに行うように推奨されています。

バリウム検査の仕組みと目的は?

バリウム検査(胃X線検査)は飲んだバリウムを胃の中に薄く広げて、さらに胃の中を空気で膨らませることで、胃の形や表面の凹凸をレントゲンで撮影するものです。バリウムはX線を吸収するため、撮影すると白くうつります。一方X線が通過する空気や胃の壁は黒くうつります。この濃淡を利用して、胃の形や胃の表面粘膜の状態がより鮮明になるように工夫したやり方で行われているのです(2重造影法)。胃の粘膜が大きく隆起していたり、くぼみがあったりなど形が異なる変化があると、胃がんを含めた病気の可能性があると判定します。一方でバリウム検査だけでは、胃がんを確定診断することはできません。胃粘膜の異常を広くスクリーニングし、内視鏡検査が必要な人を適切に選別する役割を担います。

バリウム検査前日の準備と当日の服装・やり方

バリウム検査を予定したものの、前日から何か注意しておくことがあるのか、当日の服装や検査の進め方など細かなところがわからない方も多いと思います。前日の食事や水分の注意点、当日の服装、検査中の注意点などを解説していきます。

バリウム検査前日の食事と当日の水分補給

前日の食事は指定された時間まで(通常21時頃まで)に済ませるようにして、消化に負担のかかる食べ物(揚げ物、炒め物、ラーメンなど)や食物繊維の多い野菜や海藻、キノコ類も控えるようにしましょう。これらは胃の中に残りやすい食べ物で、バリウムがきれいに胃の表面をうつし出すことができなくなる恐れがあるためです。当日の朝は食事をせず、水分のみにします。
水分に関しては、水やお茶などであれば前日の就寝前までは自由に飲んでいいとされています。脱水症状を防ぐためにも適度な水分補給は必要です。当日も検査前の指定された時間までは水・お茶であれば少量ずつ飲んでもいいとされています。

バリウム検査に適した服装はある?

バリウム検査を受けるときの服装はX線撮影の妨げにならないよう、金属(ブラジャーのワイヤーやアクセサリー)などがないようにします。多くの医療機関では検査着を提供していると思いますので、着脱しやすい服装と外しにくい金属類は身に着けないようにしていきましょう。

バリウム検査のやり方と「ゲップ」を我慢する理由

レントゲンを撮影する場所で、まず胃を膨らませるための発泡剤を少量の水で飲みます。発泡剤から空気が出て胃の中を膨らましていきます。レントゲンで撮影するとき、バリウム(白)と空気(黒)のコントラストをはっきりさせることで、より微細な粘膜の凹凸や早期がんを見つけることができるようになります(胃の二重造影法といいます)。空気が一つの造影剤となっているので、げっぷをしたくなりますが、ここを我慢するのがよい撮影条件となるうえで重要です。
その後バリウムを飲みます。白くて粘度が高い液体であり、のど越しも良くなく、味もあえておいしくないようにしてあります。美味しくしてしまうと胃の動きが活発になり撮影するのが難しくなる可能性があるためです。
すべてバリウムを飲んだら、検査台が動き、指示に従って体勢を変えて撮影していきます。姿勢を変えることで、胃の中のバリウムが移動していきます。その様子を見ながら撮影を繰り返していきます。時にはおなかを強く押して、撮影することもあります。おおよそ15分ぐらいの撮影で終了します。
飲んだバリウムはそのまま大腸まで流れ、便とともに排出されます。便秘気味の人だとバリウムがうまく排出されず、大腸の中で固まってしまう恐れがあります。たくさん大腸に残ってしまうと腸閉塞の原因になることもあるため、検査後に下剤を内服してなるべくバリウムをスムーズに排出するように促します。

バリウム検査後の下剤と注意点

バリウム検査の後に下剤を渡されると思います。別に便秘ではないし不要だと思われる方もいるかもしれませんが、思わぬ落とし穴もあります。理由も含めて解説していきましょう。

バリウム検査で処方された下剤は必ず飲むべき?

バリウム検査のあとは、飲んだバリウムを速やかに排泄する必要があります。そのために下剤を服用し、なるべく早く排泄するように促すのが重要です。検査で飲んだバリウムは体内で水分が吸収されていくと徐々に固まっていきます。個人差はありますが、10時間以上排泄がないと、バリウムが固まってくる可能性がでてくるとされています。なるべくバリウムが固まる時間を遅らすためにも、下剤とともに水分の摂取を多くすることも大事です。

バリウム検査後にバリウムが排便されないと体調不良になる?

バリウムが排出されないと、腸管の中で固まっていきます。少量であれば固まった後でも便とともに排出されますが、大量に腸管に残って固まってしまうと一つの大きな塊となり、腸閉塞の要因になります。腹部膨満感、腹痛、嘔気・嘔吐の要因になり、外科手術での対応が必要になる可能性もあるため気をつけなければなりません。

胃がん検診はバリウム検査と胃カメラどちらがいい?

ここまでバリウム検査について解説してきました。では実際のところ胃がん検診はバリウムと胃カメラのどちらが勝っているのでしょうか。

バリウム検査のメリット・デメリット

バリウム検査のメリットは、うまく写真を撮れる条件を整えれば、誰がとっても同じような撮影が可能です。また胃全体の形や変形を見ることができるため、胃が固くなるようなスキルス胃がんは胃カメラよりも検出しやすい場合があります。本人の負担も体位をいくつか変えながらX線撮影をするだけなので、胃カメラを受けるよりも我慢する時間は短いです。医師がいなくても検査ができることや、X線の機械だけで対応できるため、スペースやコストが少なく済み、短時間で多くの人を検査することができるのもメリットと言えます。
デメリットとしては、放射線の被ばくを避けられないこと、うまく写真を撮るための体位やタイミングをとることが難しく、小さな胃がんを見つけるのが難しいことが挙げられます。また飲んだバリウムを排泄するため下剤を飲む必要があること、バリウムがうまく排出できなかった場合の対応も必要です。近年は胃カメラの普及に伴い、バリウム検査の写真を診断する頻度が少なくなっています。できた写真を診断する医師の負担と精度の確保も問題になってきています。

胃カメラ(内視鏡)との違い

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)とバリウム検査は、どちらも胃がんやポリープ、潰瘍、炎症などの胃の状態を評価するための検査です。以下のような違いがあります。
胃カメラは、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察できるため、病変があった場合の大きさや位置を正確に判断できます。さらに病変の一部を採取して病理診断を追加することも可能です。そのため、胃がんなどの早期発見・確定診断をするのに適しています。慢性胃炎の状態もわかるため、ピロリ菌感染があるかどうかも推定が可能です。
バリウム検査は、バリウムと発泡剤を飲んでX線を照射し、胃の壁の表面にバリウムを付着させて撮影します。胃の粘膜全体像を観察でき、病変の形や大きさ、位置、硬さなどを客観的に把握できますが、その病変が癌なのか、ポリープなのかは判断できません。そのため「癌を確定する」ということはできない検査です。

「バリウム検査」の見方と再検査が必要な結果

以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

「バリウム検査」の結果の見方

胃がん検診の結果は、以下のようなカテゴリーに分類されます。

  • 正常(異常なし):異常が抽出できず、特に問題はありません。ただ、今後ずっと検診が不要というわけではなく、40歳以上の方は1年おきのバリウム検査、50歳以上で胃カメラを検診で行うのなら2年おきに胃がん検診を受けましょう。
  • 要経過観察:直ちに積極的な治療や精密検査は必要性が低いものの、定期的に検査を行い、病状の変化を観察し、必要に応じて精密検査を行う場合があります。
  • 要精密検査(異常あり):検査の結果、異常が見つかった場合はさらに詳細な検査が必要です。

「バリウム検査」の再検査基準と内容

バリウム検査で要精密検査という結果だった場合、次に行う検査は胃カメラになります。保険診療になりますので、検査の内容にもよりますが費用は3割負担で5000〜15000円前後です。消化器内科などで胃カメラができる病院・クリニックであれば、検診結果をもって受診すると、診察及び検査の予定を立てられることが多いです。症状がなければ慌てて受診しなくてもよいですが、なるべく早期(3か月以内)に胃カメラを受けるように計画するほうが安全です。
胃カメラの結果によって、経過観察でよい場合やピロリ菌感染や胃潰瘍などであれば投薬治療、胃がんが発見された場合は切除(内視鏡切除や外科切除)などの方針が決まります。胃カメラをした病院と相談しながら今後を計画していきましょう。

「バリウム検査」で見つかる病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「バリウム検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃がん

胃がんとは、胃の粘膜の細胞ががん化して無秩序に増殖し、胃壁を超えて胃の周囲や遠隔臓器にも転移する悪性腫瘍の総称です。ピロリ菌感染のある胃から発生することが多く報告されていますが、塩分の過剰摂取で胃の粘膜が障害されることや喫煙の影響などからも発生する場合があります。治療の基本は切除であり、がんの大きさ・広がりの程度に応じて、内視鏡切除、外科切除が選択されます。切除しきれないほど広がってしまっている場合は、抗がん剤治療が選択されます。早期の段階では症状に乏しく、進行すると食欲低下、胃部不快感、体重減少などの症状が出てきます。症状がなくとも胃がん検診で異常があった場合や、1か月以上続く胃部不快感や体重減少があるようなら、消化器内科を受診して検査を受けるようにしましょう。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸粘膜の表面が、胃液に含まれる胃酸やペプシンによって傷つけられ、胃壁に陥凹を伴う深い傷ができる病気のことです。この傷が深くなると、出血や穿孔(穴が開く)などの重篤な合併症を起こすこともあります。一番はピロリ菌による慢性胃炎から発生することが多いですが、ストレスなどにより胃酸が過剰になったり防御する粘液物質が減ったりする事、痛み止めの薬が原因で発症します。市販の胃薬でも改善する場合もありますが、食欲低下や腹痛を伴う場合は、消化器内科を受診するようにしましょう。診断が確定すれば、投薬で改善します。

胃ポリープ

胃の粘膜から突き出た隆起性の良性病変の総称です。表面から盛り上がったもの全般を指します。多くの場合症状はなく、胃がん検診で偶然発見されることが多いです。ポリープは、ピロリ菌感染や、年齢・遺伝要因・生活習慣で胃に負担がかかっている、胃薬によるものなど様々な原因で発生します。初めて指摘された場合は、消化器内科を受診して一度は胃カメラでポリープの状態を確認しましょう。明らかに良性なものであれば、特に対処は不要です。ただし、数年に一度は胃カメラなどで経過観察を続けた方がより安全といえます。

慢性胃炎

胃の粘膜が全体的に発赤、腫脹しているような状態のことを指します。一番の要因はピロリ菌の感染です。胃炎自体はゆっくり進行するため、自覚症状がない場合も多いです。胃がん検診で慢性胃炎と指摘されたら、消化器内科を受診し内視鏡検査などを受けましょう。ピロリ菌感染由来と確認できたら、決められた投薬で治療を行います。

「胃がん検診」に引っかからないために 健康のための正しい生活習慣・改善法は?

食事習慣では塩分過多を控え、野菜・果物を積極的に摂取、規則正しい食事と早食いをしないなど、胃粘膜に負担をかけないようにしましょう。また禁煙をし、過度のアルコール摂取は避けます。そのほか、適度な運動や十分な睡眠、ストレスのかからない生活をすることなどを心がけることが大切です。

胃がん検診の定期的な受診

胃がん検診で正常な結果だったとしても、40歳以上の方は1年おきにバリウム検査が勧められます。また、50歳以上になると、1年おきのバリウム検査か2年おきに胃カメラの検診をする2つの選択肢が推奨されています。胃カメラの検診は自治体によってまだできないところもありますが、今後は全国的に広まってくる予定です。

バリウム以外に胃カメラによるピロリ菌検査も定期的に行う

ピロリ菌の検査は胃カメラを行う際に同時にできます。ピロリ菌がいた場合は、除菌治療を行い、治療後も1年に1回は胃カメラを受けて定期的に経過観察を行いましょう。

減塩を意識した食事改善

塩分過多は胃粘膜に負担をかけ、発がんの促進にもかかわっているとされています。減塩を意識した食事の工夫を心がけましょう。

「胃がん検診のバリウム検査」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「胃がん検診のバリウム検査」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

バリウム検査だけで、初期の胃がんもしっかり分かりますか?

杉本 大医師杉本 大(医師)

初期の胃がんの場合、胃の粘膜変化が小さいため、バリウム検査でのわずかな違いを検出することが難しい場合が多いです。初期の胃がんの検出は胃カメラの方が優れています。

胃カメラ検査とバリウム検査、結局どちらを受けた方がいいですか?

杉本 大医師杉本 大(医師)

どちらも一長一短がある検査です。自分の負担がそれなりにかかっても早期胃がんを含めた可能性をしっかり見極めたい場合には、胃カメラが良いです。胃カメラを受けるのが怖いと感じるのであれば、バリウム検査の方がやりやすいと思います。検診する自治体によっては、バリウム検査しか選択できない場合もあります。どちらの検査でも良いので、一度は胃がん検診を受けることをお勧めします。

下剤を飲んでもバリウムが出ない時はどうすればいいですか?

杉本 大医師杉本 大(医師)

下剤を飲んでから、24時間以内に排便が一度もないようなら医療機関に相談をしましょう。完全にバリウムが排出されるまでは2日ほどかかる場合もあるので、排出され始めているのであれば、水分摂取をこまめにとり、歩くなど体を動かして、腸管がより動くように過ごすことが大切です。腹痛や嘔気、腹満がでてくるようなら病院を受診して、バリウムが今どんな状況なのかを含めて確認してもらい、対応を決めてもらいましょう。

緑内障や高血圧の人は胃がん検診の胃部X線検査を受けられますか?

杉本 大医師杉本 大(医師)

検査を受けることは可能ですが、検査の際に胃の動きを抑える薬が使用できません。そのため胃の撮影が難しくなり、細かな病変を見つけられなくなる可能性があります。そのため、胃カメラの方がより正確に判断できるかもしれません。

まとめ

胃がん検診のバリウム検査について解説しました。胃カメラを受けるよりは検査時の負担は少ないものの、早期胃がんを見つけるうえでは、胃カメラの方が発見しやすいこと、検査後の下剤の負担などを考えると、今後の胃がん検診の中心は胃カメラに変わっていく可能性が高いです。
ただ、バリウム検査は今まで行われてきた蓄積があり、人的・機材的コストも低く、多くの人に対応可能なところから、検診でなるべく対象者全員に受けてもらうためには必要な検査でもあります。バリウム検査で異常があり、その後胃カメラで精密検査を行うという2段構えも有効なやり方です。
「まずは対象年齢になったら、バリウム検査もしくは胃カメラのどちらかでもいいので、検査をしていく。そのうえで異常があるようなら、胃カメラでより精密に状態を確認し、治療につなげていく。」これが現時点でできる現実的な、今後の胃がんの死亡率を下げるためにできる最善の方法ではないかと思います。

「胃がん検診のバリウム検査」の異常で考えられる病気

「胃がん検診のバリウム検査」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

消化器系

胃がんがなくても、慢性胃炎の疑いがあれば胃カメラを考えましょう。ピロリ菌感染がわかれば、除菌治療が第一の胃がん予防策になります。

「胃がん検診・バリウム検査」が望ましい症状

「胃がん検診・バリウム検査」が望ましい症状は4個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃がキリキリする
  • 空腹感がない
  • 体重がいつもより減ってきている

なんとなく胃の調子が悪いというときに、検査を考えてみましょう。強い腹痛があるときには、バリウムよりも胃カメラなどがよい場合もあります。

この記事の監修医師